親子二人はすぐに紫陽山に着いた。今日はやはりいい天気で、そよ風が爽やかな涼しさを運んできた。未央は病院のみんなとすぐに合流するつもりはなかった。理玖は確かに良い子だが、所詮まだ小さな子供だ。子供が大人と一緒にいると、どうしても退屈に感じてしまう。そこで、彼女は息子と二人だけで良い場所を見つけ、ちょうど親子の触れ合う空間を作ることにした。「ママ、着いたの?」理玖は好奇心いっぱいにキョロキョロと周りを見回した。やはり子供だけあって、エネルギーがかなりみなぎっている。もう到着したと聞くと、すぐに未央の手を離し、火をつけられた花火のように飛び出していった。その一瞬で今までの不愉快なことを頭から追い出し、完全に自分の世界に浸ることができた。未央は呆れながらそれを見ていた。車のトランクを開け、自分のパネルと食べ物やおもちゃなどを取り出した。そして、理玖に手を振って言った。「理玖、ママと一緒に絵を描かない?」「やる!」とても興奮した様子の理玖は戻ってくる時、両手を後ろに組み、何かを隠しているような表情で彼女を見ていた。「ママ、プレゼントをあげる!じゃじゃーん!」未央は目の前に出されたそちらに咲いた花でできた花束を見て、目頭が熱くなった。非常に慎重に、そして大切にそれを自分の胸に抱えた。「ママ、とても嬉しいわ。ありがとう、理玖。それじゃ、今日はこの花束を描かない?」「やった!」理玖は大喜びだった。未央は眼差しがますます優しくなり、彼を連れて良い場所を見つけてそこに座り、二人のパネルを固定した。理玖はやはりまだ子供で、自由奔放に絵を描いた。見た目は形になっていないが、それなりに味があった。未央はしばらく彼のことを見て、一人で絵を描けると確認してから、ようやく自分の意識を目の前のパネルに集中させた。彼女はどれくらい真剣にスケッチをしていなかっただろうか?周りのすべては自然の息吹に満ちていて、温かく穏やかで、まったく離れたくなかった。その一瞬、未央は紫陽山に小さな家を建てて、毎日日の出とともに起き、夕陽が沈むと寝るという生活を送りたいと思った。それも悪くない。都市の騒がしさや苦しみはなく、あるのは淡々とした静けさだけだ。未央は口元をわずかに上げて、素敵な瞬間を楽しんでいたが、突然、理玖の好奇そ
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