虹陽から子供連れがやって来た?未央はそれを聞いて、すぐにあの二人を思い浮かべたが、すぐに頭を左右に振ってその考えを消し去った。そんな偶然なんてあるわけない。それに、あの二人が精神的な疾患がある様子は見せなかったし。未央は少し考えてから、頷いた。「分かりました。その二人が来たら、ここへ通してください」そう言った後。彼女は悠生のほうを向いて、申し訳なさそうに言った。「すみません、悠奈ちゃんと少し待っていてください」悠生は笑って首を左右に振った。「あなたのほうが俺より忙しいようだね」彼は、ただからかうような一言だけ言って、隣の休憩室へと移った。未央は下を向いて、引き続き病院のカルテを整理し始めた。この時、病室の外から数人の足音が聞こえてきた。「博人、あなたの言う精神科医って頼りになる方?ねえ、博人、私はじめて立花にやって来たのよ。後で一緒にショッピングに行かない?」女の甘えた声がドア越しに聞こえてきた。カルテを持つ未央の手は細かく震え緊張していた。そして「ガチャッ」という音とともに、うっかりカルテの紙を破ってしまった。彼女は全くそれに構っていられず、呆然とドアのほうを見つめ、その瞳には激しい感情の渦が巻き起こった。この声、死んでも忘れることなどできない。西嶋博人たちだ!未央は携帯を持ち上げ、研修医の石田に彼らを連れて帰らせようと思った。しかし、時すでに遅し。「ガチャッ」ドアノブを捻り、外から勢いよくドアが開けられた。「白鳥先生、このお二人が虹陽からお越しの患者さんです」そして研修医は博人に向かって紹介した。「こちらがこの診療内科の院長、白鳥未央です」二人はお互いに対峙した。その瞬間、部屋の空気は凍り付いてしまったようだった。博人は目を見開いて驚き、視線を全くそらさず、デスクの前に座っている女性を見つめた。見慣れた彼女の姿だ。彼の凍り付いていた心が溶けて、この時、再びさざ波のように音を立て始めた。「未央……」彼は彼女のことをずっと探し続けていた。それがまさかこんなところで再会するとは思ってもいなかったのだ。博人は喜びの声をあげ、堪らず彼女のほうへと近寄っていった。彼は未央を自分の胸にしっかりと抱きしめたかった。それからたくさん彼女に伝えたいことがある。
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