「あーちゃんと、そこのメイドが仲いいのが気になるだよね?」 ぐっと心臓に痛みが走る。アルの顔を見れず俯くけれど、クムト様は話を続けた。「あーちゃんさ、ちゃんと言ってないよね? 君……えっとネフィだっけ。じゃフィーちゃんね。ご主人が悩んでるの気付かなかった? 前はあーちゃんに対してツンケンしてたのに、急に仲良くなったらそりゃ気になるでしょ。それとも、そんなに深刻に考えてなかった?」 やめて、言わないで。 そう言おうとしても、声が出ない。真相を聞くのが怖くて、耳を塞ぐ。隣でアルの動く気配だけが伝わってくる。「いや、それは……だってあんなの、女の子には酷でしょ? リリーには教えたくなかったんだ」 ネフィも黙り、永遠に感じる沈黙が部屋に満ちる。それをクムト様は呆れたような溜息で壊した。「あのさ~、今の方が酷なの! そりゃ驚くだろうけど、王太子妃として知っておかなきゃいけない事だし、あーちゃんへの信頼も揺らいじゃうよ? フィーちゃんも、今まで培ってきた関係が崩れちゃう。それは嫌だよね?」 それを聞いて、アルが私を覗き込み、囁いた。「そう……なの? 僕、君を不安にさせてたの?」 触れるアルの指が震えている。顔を上げ視線が合うと、アルは驚いたような表情をした。それも滲んできて、堪えられなくなってしまう。ゆっくりと頷くと、アルは私を抱きしめ何度も繰り返した。「ごめん……ごめんね。ネフィとはそんなんじゃないから、絶対に僕にはリリーだけだから! まさかそんなに悩んでたなんて、気付かずにごめん」 ネフィも後に続き頭を下げる。「私も、リージュ様がそこまで気に病んでいらっしゃるとは思わず……申し訳ございません。しかし殿下の仰る通り、何もございませんからご安心ください。ただ、その……非常に言いにくい事でございまして……」 アルとネフィは助けを求めるように、クムト様に視線を向けた。私もクムト様を見つめ、言葉を待つ。「はぁ~、もう。君達、過保護じゃない? りっちゃんは王太子妃になる覚悟を決めた子なんだよ? そこは仕方のない事だって理解してくれるって」
Huling Na-update : 2025-09-30 Magbasa pa