Semua Bab 幼馴染の専業ニセ嫁始めましたが、どうやらニセ夫の溺愛は本物のようです: Bab 31 - Bab 40

58 Bab

8.ニセ嫁、旦那様(ニセ)の為に、腕を振るって愛妻弁当を作ります。 その3

 朝食を悠長に摂っていると夫(ニセ)の出勤時間に間に合わないため、早速お弁当作りに取り掛かることにした。三成家の広い厨房を借り、なにを作ろうかと悩む。勝手が違うからなぁ…。  冷蔵庫を見ると使い慣れない食材ばかりが詰め込まれていて、よく解らなかった。担当のコックに聞きながら、利用しやすそうな食材を分けてもらった。 というわけで今日のメニューは、鹿児島県産の高級黒豚を利用した『ヒレとんかつ弁当』。 グリーンバンブーより高級なお肉で作るとんかつ。流石三成家の冷蔵庫は、普通のスーパーで売っている肉や野菜類は入っていない。  それ以外に付け合わせのカボチャのサラダと特製だし巻きを作った。小松菜の胡麻和えも入れておいた。どれも一矢が好きな物だ。グリーンバンブーの食材や調味料が違うから、味付けは同じでも違う味になって楽しめると思う。 幼少期からうちの洋食を食べ慣れている一矢だから、お弁当はよく洋食物を入れている。まあ、悪くないという感想が来るから、洋食のお弁当は気に入っている模様。  でも、一矢はどうしてわざわざ私のお弁当を買ってくれるのかな。 超お金持ちの御曹司が、貧乏くさい洋食屋の弁当を毎日買いに来るなんて…どう考えてもおかしいわよね。  …はっ。もしかして! ピシャーン、と自分の中で雷が鳴った音がした。 うちが相当貧乏で、店の経営が傾いていると思われている…?(貯金少ないから、その考え自体は当たっているけど!)  幼少期に受けた恩があるから、『弁当を買う』という形で返している、とか…?  きっとそうだわ!  それ以外、理由が思いつかないもの。  いい機会だから、もうお弁当は買わなくてもいいって言ってみようか。  一矢のためにお弁当を作るのは、全然苦じゃない…むしろ一矢に少しでも会えて、嬉しいって思っていたけれど、その考えは間違っていた。  この屋敷で少し暮らしてみて、ここでご飯を食べて、後悔している。  今までどれだけ貧相なお弁当を一矢に作り、食べさせていたのだろう、と――…  やっぱり『幼少期に施しを受けた恩返し』よね。それしかない。  お金を出せば無添加でかつ豪華なお弁当も買えるし、三成家では素晴らしいコックを何人も雇っているのだから、彼らに作ってもらうというのもできる。なのにわざわざグリーンバンブーのお弁当を買ってくれていたな
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-16
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8.ニセ嫁、旦那様(ニセ)の為に、腕を振るって愛妻弁当を作ります。 その4

 午前八時。一矢がブリオーニのスーツ姿で私の前に現れた。 きゃああーぁん。一矢、カッコイイ!  ニセ嫁でも、『お嫁さん』なのだと思うと、顔がにやけちゃうっ。 でも、フニャけた顔をしていたら、また鬼松に文句を言われちゃう。背筋を伸ばしておかなきゃ。「伊織。私のために弁当を作ってくれたのだな」「ええ。勿論よ。旦那様(ニセだけど)のために作りました」 にっこり笑ってできたばかりのお弁当を差し出した。「あー」ゴホン、ゴホン、ウェッホン、と一矢がそわそわしながら咳ばらいを何度もした。「う、うむ。愛妻弁当というのも悪くないな。よし、いただこう」「はい、どうぞ」 お重に詰めた『とんかつ御膳弁当』を受け渡しの際、一矢に手が触れてしまった。「あっ、ご、ごめんなさい」 愛妻弁当と言われたのがダメージ大きかったのだと思う。恥ずかしくなってしまい、ぱっと手を戻して、俯いた。ひゃあっ…顔が熱いよぉ。「あー、その、なんだ…」 一矢も折角セットした銀髪が乱れるくらい、頭の後ろをぼりぼりと掻いている。「弁当、楽しみにしている。明日もまた私のために作ってくれ」「は、はい…」 なにこの空気。恥ずかしいよぉー!「では、伊織。行ってくる」「あ、はい! 行ってらっしゃい、旦那様(ニセ)」 笑顔で手を振って見送った。「伊織も修業を頑張るのだぞ。期待している」 リムレスフレームの眼鏡の角度を整え、キリッとした姿勢になった一矢は、中松に重要書類などの入った本革の重そうな鞄を託し、風呂敷に包んだお弁当の方を大事そうに抱えて出て行った。 …よっぽど、お弁当が好きなのね。 ふふ。 明日は旦那様(ニセ)のリクエストを聞いて、もっと喜んでもらえるお弁当を作ろーっと! 見えなくなるまで一矢を見送った。鬼は今、一矢を会社に送っていくからいない。鬼のいぬ間に洗濯とはよく言ったものだ。少しのんびりしようと思っていたら、会社に一矢を送り届けたらすぐさま鬼が帰ってきた。そして背後からひんやりした声で私に話しかける。「伊織様、修業のお時間でございます」「わっ、わかってるわよ!」 慌てて振り向くと、そこには涼しい顔をした鬼松が立っていた。彼は鋭い眼光を遠慮もなく私にぶつけ、じっと見つめる。「それより、今日はどんな修業をするの?」「本日はテーブルマナー講座とウォーキングレッスン、そし
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-17
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その1

 あれから順調に月日は流れた。婚約披露(私の中では婚約疲労)パーティーが一週間に迫った。鬼の指導のお陰でマナー全般は身に着き、歩く姿も美しくなった…と思う!(自画自賛)鬼はあまり褒めてくれない。多分まだ合格点を手放しで付けるには遠いのだろう。しくしく。  これでも頑張っているのよ。ニセ嫁として!  しかも、グリーンバンブーの焼き場の修業も同時進行で! 今日は私がパーティーの予行練習をするため、一矢が懇意にしている取引先への挨拶に同行することに。  うまくできるかしら。失敗したら鬼の嫌味が飛んでくるでしょうね。怖い。嫌味だけならまだいいけど、辛辣な叱りの言葉を浴びせられるかもしれないし…。 とにかく失敗は出来ない。 気分はまるでシンデレラだ。慣れない衣装で着飾り、かぼちゃの馬車に揺れられて、舞踏会へ行く姫のよう。 さあ、どんなご挨拶になるのやら。「いいですか、伊織様。くれぐれも粗相がないようにお願いいたします。三条(さんじょう)様は昔から一矢様をご贔屓にして下さる、数少ない取引先様でございますからね」 リムジンを運転しながら鬼が言った。「解っているわ、中松(鬼)。出しゃばらないように気を付けます」 ふうー。それ、耳にタコが出来るくらい何百回も聞いた。  今までの私なら、鬼松を睨みつけなが言い返していたけれど、令嬢になるために我慢している。ニセ嫁やめたらぜったい土下座させてやる、と心に誓って。 今回私たちがお邪魔する三条家は、義理姉の親戚関係だとか。ということは腹違いのお母さまの親戚?  よくわからないけれど、立場はこちらの方が上みたい。三成家は三条家を取引先にしているから、三条家<三成家という方程式が成立しているのだけど、ひとつ私が懸念していることがある。 三条家には年頃の…二十歳くらいになる成人女性の一人娘がいらっしゃるようで…。 もう、行く前から嫌な予感しかしない。 鬼松の運転するリムジンが三条家に到着した。三成本家よりも小さい家だけど、それでも十分に大きなお屋敷。グリーンバンブー何個分かしら。(私の基準は全部グリーンバンブー)お部屋も沢山あるんだろうなぁ。  センサーがリムジンを感知したのだろう。ナンバー照合とかもしているのかしら。なんの確認もしていないのに、大きな鉄門が開いていく。どういうしくみなのか庶民の私にはさっぱり解
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その2

 厳しく鋭い目線を私へ向けていたが、こちらの目線に気が付いたのか、すっと奥へその感情を引っ込めた。もしかしたら…彼が一人娘を一矢にあてがうつもりで考えていたのなら、ぽっと出の私の存在は面白く無いだろう。中松の言うとおりだと思った。 修業中、中松に上流階級の醜い権力争いや思惑、令嬢のあしらい方などを様々叩き込まれた。  お陰で私をひと睨みした三条さんの考えがわかるようになったのだ。  今回、中松がスムーズな縁談になった経緯を説明するために、シナリオを立ててくれた。 身分を持たない庶民の私と一矢を結婚させるためには、私が一矢の幼馴染で、昔からお互いを思い合うからこそ婚約した、と、理由づけることにした。なんとも脆いシナリオだろうか。私は本当のことだれど、一矢はそうじゃないのに。「やあ、一矢君。よく来てくれたね。そちらのお嬢さんが噂のシンデレラガールかね?」 シンデレラガール…。まあ、そういう扱いなのは仕方ない。ニセ嫁とは思われていないわよね…?「辰雄(たつお)さん、彼女はシンデレラガールではありませんよ。私が本家と犬猿の仲だということはご存じでしょう。彼女は私が大変な思いをしている幼少期から今日(こんにち)まで、ずっと傍で支えてくれたのです。彼女以外、私は他の女性と結婚は考えておりませんでした」「そうか」 幾分納得のいかない顔を遠慮なく見せた彼の思惑が、私にも伝わってきた。  一矢を懇意にしていた本当の理由――それは、一人娘をあてがうために、今日まで一矢に取り入ろうと努力してきたのだ。それを、私が横からかっさらった。彼の中で私は悪の存在とも言えよう。   「それより私の妻となる女性を紹介しましょう。まだ正式ではありませんが、辰雄さんにはいち早く知らせておこうと思った次第です」 一矢は愛想笑いを浮かべたまま、挨拶を続ける。「伊織、こちらが三条辰雄さんだ。ずっと三成と懇意にして下さっている取引先の方だ。一応、義理姉の親戚筋になる。義理母の遠縁の方だ」 一歩下がって一矢の後ろに隠れるようにしていた私が、一矢の隣に並んだ。お腹に力を入れ、優雅に微笑むことを忘れず、自己紹介をしてニセ令嬢としての責務を果たした。  悪だと思われても構わない。一矢のためだ。「伊織さんとやらに、娘の花蓮(かれん)を紹介しなくてはいけないな。娘は一矢君を大変慕っていたから、伊織さん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その3

 余計なことを言わないように笑顔を貼り付けていると、娘をここに呼んでくれ、と、三条さんが先程玄関で出迎えてくれた初老の執事に伝え、花蓮さんというお嬢様を呼びだした。  現れたお嬢様は高級で上品な召し物――薄い水色のパブスリーブ、首元にリボンが付いたシルク素材のワンピースに身を包み、大変美しい容姿をされていた。腰まである赤みを帯びたウェーブがかった艶やかな髪をきちんとセットし、つぶらで目が大きく、鼻もつんと小ぶりなのに上を向いていて、全体的に美しく整っていて愛らしい。  一矢を見た途端、ピンクのバラの如く頬を染め、目を潤ませた。  しかしその横にいる私の姿を見た途端、目力が増して嫉妬の炎が見える。一瞬だったが、中松に鍛えられたお陰で私はそれを見逃さなかった。  ああ…。私、完全邪魔者認定―。きつい…。  まあ、これがニセ嫁たる仕事だから。悪意一手引き受けもやむを得ないわ。頑張るしかない。  愚鈍なフリでそういう視線には気が付かないように見せ、笑っておいた。「一矢様が久しぶりにわが家へいらっしゃったから、花蓮は嬉しゅうございます。どうか、ゆっくりしていらして下さいな」 ふわぁー。めちゃくちゃ上品!  育ちがちがーう! 私とは大ちがいざまーす。   「花蓮とは久しく会っていなかったな。すまない。会社が軌道に乗ってきたものだから忙しく、折角の夕食の誘いに応じられなくて悪かった」「そうですわ。花蓮、一矢様が来て下さるのを、首を長くして待っておりましたのよ」 わー。私の入る隙無いー。どうしたらいいのぉー。(汗)  そんな私が困っていると思ったのだろう。一矢が花蓮さんに私を紹介してくれた。「花蓮。こちらの女性は緑竹伊織さんだ。幼馴染で、私が妻に選んだ女性だ。是非、仲良くして欲しい。とても良い女性だから花蓮も気に入ると思う」「まあ」花蓮さんは口元を手で覆い、私に近寄ってきた。ぎゅうっと両手を握られ、お嬢様とは思えない程の力を掌に受けた。  痛いっ! 結構怪力ね。恨みがこもっているわ。 「初めまして。三条花蓮と申します。一矢様には私が幼少期からのお付き合いで、彼のことを大変慕っております。どうぞよろしくお願いいたします。緑竹様は、どちらの財閥のお方?」「花蓮、彼女の家柄はそういう類ではない。今は三成家で花嫁修業をしている。どうだ、とても綺麗な女
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その4

「まあ…それでは、三成家が衰退してしまうのではないでしょうか? 花蓮なら一矢様を全面的に支え、今後ご活躍される一矢様のバックボーンとなることが出来ますのに」 庶民ですみませんね、って言いたいわぁ…。「花蓮、色々考えてくれてありがとう。しかしもう決めたことだ。家庭を持つ以上は、必ず自身の会社を大きくし、成功させる努力を惜しまない。しかし三条家の助けも必要だ。今後とも変わらず懇意にして欲しい。どうか、よろしく頼む」「一矢様…」 花蓮さんは目に涙を浮かべて、一矢を見つめた。「花蓮は、ずっと…幼い頃から、一矢様をお慕いしておりました」 あぁ…ごめんなさい…。あなたも一矢がほんとうに好きなのね。それなのに、偽装でごめんなさい。ニセだから胸が痛んだ。「花蓮の気持ちは嬉しいが、それは私が兄の様に接していたから、憧れに近いものがあったのだろう。お前は私にとって妹みたいな存在であったから、つい、兄の様に振舞ってしまったことは侘びよう。すまなかった。でも、花蓮は素晴らしいレディ―だ。私なんかよりも、もっとお前に相応しく素晴らしい男性に出会えるはずだ。見分を広めるといい。籠の中の鳥である必要は無い」 はあー。普段の一矢とはぜんぜん違う。 こんな一面もあるのね。すごく饒舌だわ。世間を渡り歩かなくてはいけないのだから、このくらいは朝飯前なのね。 ご令嬢を深く傷つけないように、しっかりとお断りするそのスマートさ。天晴よ。「解りました。一矢様のご結婚、祝福させていただきます。どうか、お幸せに」 花蓮さんが微笑んだ。本物の花の様に美しい。一矢によく似合っている。下品な私よりもずっと、お似合いだ。ニセ嫁を語って申し訳ない。「一矢様、わたくし、伊織様とお話してみたいわ。よろしくて?」 ご令嬢の目が鋭く光った。 ちょっと待って。これ…嫌な予感しか無いんだけど…。「伊織、どうだ? 花蓮と少し話してくれるか?」「はい、喜んで」 嫌とは言えずに微笑んだ。「花蓮のお部屋にいらして、伊織様。一矢様との思い出の写真が沢山ありますの。アルバム見ながらお喋りしましょう」 いーやーあー。 心の叫びとは裏腹に、速攻で部屋を連れ出されてしまった。跡が残るくらい強い力で腕を掴まれた。ゴテゴテのネイルを施した鋭い爪を立てられる。痛い…。 さあ、ご令嬢との対決――どうなる!?「こちら
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-22
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その5

 さっと体制を整え、戦闘態勢ならいつでも受けて立つぞ、と身構えた。「そそっかしくて、よく一矢に叱られてしまうの。をほほ」 なんとか笑顔を保つ。怒っちゃだめ。怒ったら…うう…(怒)。「あなた、財閥のご令嬢でもないと先程おっしゃいましたけれど、よくそれで一矢様に釣り合うとお思いになられたのですね。神経を疑いますわ」 こっちこそアナタの性悪神経を疑うわ! でも、喧嘩したら一矢が恥をかいてしまう。堪えるしかない。 これが巷で噂の悪役令嬢というヤツね。初めてお目にかかったわ。 「わたくしは、一矢様のお申し出をなんどもお断りいたしました。誰に言われなくても、彼と釣り合わないことは、自身が重々承知しております。しかし彼は、どうしてもわたくしが良いとおっしゃって下さり、こんなわたくしを選んで下さいましたので、彼のプロポーズを謹んでお受けいたしました。感謝しております」 にっこり笑って言ってやったら、相手の顔がみるみる般若のようになった。 まあ、怖い。中松とやり合っている時の私のようだわ。「花蓮様も、一矢様を幼い頃から慕っていたとおっしゃいましたが、それはわたくしも同じで御座います。彼を支え愛したいと思っている気持ちだけは、誰にも負けないつもりでおります。花蓮様は花蓮様の知らない一矢様を存じていらっしゃるように、わたくしはわたくしにしか知らない一矢様を存じております。それで良いではございませんか。花蓮様が知る一矢様は、どうか花蓮様の思い出として、大切になさって下さい」 では、と部屋を出ようとした私を、低い、ひくーい声が制した。「…初めて、だったのに」「えっ?」「一矢様は」一旦深呼吸した花蓮様が、マシンガンの如く喋り始めた。「幼い頃から花蓮を可愛がってくださっていて、花蓮の初めては全て一矢様に捧げ、将来を誓い合いましたのに、こんな裏切りはございませんわ! 花蓮はずっと、一矢様が迎えに来て下さる日を夢見て、ずっとずっとお慕いし、お待ちしておりましたのに! こんなどこの馬の骨かもわからないクズ女に一矢様を盗られてしまうなんて、絶対に絶対に赦せませんわ――っ!!」 唖然とした。 ちょっと…言い過ぎじゃない? クズ呼ばわりされる筋合い、他人のアナタにござーませんわよぉぉぉお――――っ! 一矢も一矢よ! こんな面倒なご令嬢に手を出すなら、きちんと後始末く
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-23
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その6

「きゃあっ、止めてっ! いたいっ! いたぁーいっ!」 むんずと掴まれた髪の毛が引きちぎられそうになったので必死に抵抗した。本気で痛い。なんなの、このご令嬢! 頭おかしいわよっ! どうかしている!! なりふり構わないにも程があるでしょーがああああ! 痛みと衝撃で頭がクラクラしそうだったが、このままじゃ髪がなくなってしまう。本気で焦って、必死に抵抗したけれど、相手の力は想像以上に強かった。「なんの騒ぎですか!」 様子を見に来てくれた中松が、飛んできてくれた。 やああーん。救世主―!  この時ばかりは、彼が鬼じゃなくて神に見えた。今だけ神松になった。 中松が私と極悪令嬢の間に割って入り、彼女から引き剥がしてくれた。「花蓮様、なにごとですか! 一矢様がお選びになられた女性に対して、このような仕打ちをなさるとは! 御父上にご報告させてもらいますよ!」「あ、これはその……」 花蓮様がオロオロと泣きそうな顔を見せた。「急に一矢様が婚約されると聞いて…幼い頃からお慕いしておりましたのに、ずっと、花蓮を選んで頂けるとそれを信じて今日まで生きてまいりました。それなのに…それなのに……」 遂に彼女が泣き崩れた。酷い髪になり、ボロボロになった私の方が泣きたいよ! 一矢がロングヘアが好きという謎の情報を手に入れてから、一生懸命手入れしながら長く伸ばしていた髪が、この悪令嬢のお陰でブチブチと悲惨に引きちぎられたのよお――――っ! もおぉっ! ハゲたらどーしてくれるのよおおおお――――っ!!(涙)「だからと言え、伊織様にこのような仕打ちは見過ごせません。さあ、行きましょう。きちんと一矢様にも報告させていただきますから」「それだけはおやめください。どうかそれだけは……」 ボロボロと泣きながら令嬢が私に向かって土下座してきた。「ごめんなさい、伊織様。貴女が羨ましくて…なんの家柄も無い貴女が選ばれたことが、妬ましくて……」 正直な人ね。どうせ無血統ですよ。「それ故、無礼を働いてしまいました。申しわけございません。どうか一矢様には言わないで……」 はらはらと涙を流す姿を見て、なんだか可哀相になってきた。このお嬢様も一矢をずっと好いてきたのよね。それなのに、急に婚約者(しかもニセ)が出てきたら面白くないわよね。わかるよその気持ち。「お顔をお上げになって」 私の言葉
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-24
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その7

 何度もこの屋敷に来た事のある中松が、レストルームに案内してくれた。中は広くピカピカの大理石が光っている。どうしてこうお金持ちの家は、調度品から扱っているものまで高級品ばかりなのだろうか。見慣れた壁とか、安い材質は使わないのだろうか。建設費はいくらくらいするのだろうか。計算したら恐ろしい金額になるのだろう。添え付けの鏡を見ながら、低く唸った。これはひどい。 悲惨な状態の髪型を中松が即席でヘアアレンジをしてくれた。携帯用の櫛(くし)に、ワックスとピンは私の髪型が崩れたらいけないと思い、持っていてくれたようだ。大変用意が良い。流石、執事の中の神。キングオブ執事!「大丈夫でございますか?」 ちぎられた髪を誤魔化すようにワックスを塗り、中松の綺麗な指が私の髪をあっという間に整えていく。「これが大丈夫に見える?」「見えませんね」「まあ、頭が引きちぎれるかと思ったけど、中松が助けに来てくれたからよかった。そう言えばお礼言っていなかったわね。ありがとう」 とりあえずお礼は言っておかなきゃね。神松のお陰で助かったわけだもの。「心配でございましたから」「粗相するとでも思った?」 相変わらず信用が無いわね。「いいえ。そうではございません。伊織様は大丈夫だと思っておりましたから。そうではなくて、花蓮様の方です。前からあのご令嬢は猫かぶりだと思っておりましたから。あまり良い噂は聞きませんので、伊織様になにかするのではないかと思い、目を光らせておりました」「見事ね。読み通りよ。はい、録音機。見つかる前に渡しておくね」 実は中松から、一矢には内緒でボイスレコーダーを持つように言われていた。三条家に入ってからドレスの内側に付けた録音機を回し、今までの会話を録音していたのだ。それをストップして彼に渡した。「いいのが録れているわ。あのご令嬢に酷いこと言われたし」「それはまた」中松は不敵な顔で笑った。「お灸を据えなくてはいけませんね」  出た! 悪魔の鬼松! 敵にだけは回したくない男。「応急処置ですが、セットが出来上がりました。そろそろ戻らなくては一矢様が怪しみます」 手際もいいし、新しいアレンジも応急処置とか言いながら綺麗だった。  この男は本当になんでもできるのね。どんなことでも完璧にこなしちゃう。腹の立つ男ね。いつかぎゃふんと言わせてやりたい。「随分時間
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-25
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9.なりふり構わない意地悪令嬢に、ニセ嫁タジタジざまぁーす。 その8

 「そろそろ戻りましょう。まあ、恐らくあの令嬢は嘘泣きで三条様に泣きつくでしょうね。そうなれば、早速これの出番です。お灸を据えるかどうかは、相手次第ですが」 神松は鬼の笑顔で微笑んだ。怖いー、この笑顔。目が笑っていないから。 目の奥の笑顔の線がどこかで切れてしまったのかな。とにかく恐ろしい。「さあ、行きますよ」 促されたので頷き、レストルームの扉を開けようとしたその時――「安心しろ。お前は、俺が絶対に守ってやる」 低い中松の囁きが耳をくすぐった。「えっ!?」「さあ、早く。一矢様がお待ちです。参りますよ」 ぼそぼそ低い声で話すものだから全然わかんないけど、お前を守ってやるとか言わなかった? 中松って…もしかして、いいひとなの!? まあ、気のせい…よね。早く戻りましょう。 最初に案内された部屋に戻ると、彼の読み通り花蓮様は泣いて三条氏に縋り付いていた。 酷い暴言を吐かれた上に、誰にも叩かれたことの無い頬を伊織様にぶたれた、と報告している。こちらは大事な髪の毛を思いきり引きちぎられたんですけど?「伊織。一体どういうことだ! なぜ、花蓮が泣いて戻ってきたのだ?」 一矢は全面的に花蓮さんを信用しているのか、三条氏の手前叱責しているのか、それはどうか良く解らなかった。口調がいつもより厳しい。 ただひとつ言えることは、中松が居なかったら悪のご令嬢様に罵声を浴びせられて髪の毛まで引きちぎられたにも関わらず、濡れ衣を着せられて大変なことになっていた。 明日の神松のお弁当、ミートボールひとつ増量しよう。そして、当分は神松と呼び湛えよう。 ありがとう、神松!「私の娘を泣かせるとはどういうつもりだね、緑竹さん」三条さんの鋭い目が光った。「お言葉ですが三条様、一矢様。無礼な態度を取られた上に暴言を吐かれたのは、花蓮様の方でございますよ。伊織様は被害を受けられた側でございます。ここに証拠がございますので、どうか聞いて頂けますでしょうか」――証拠はあるのですか? 中松の言葉がよみがえる。 ああ、彼はこうやって人を追い詰め、降りかかる火の粉を自ら守り、払う術を持っているのだ。きっと一矢も権力争いやら様々やり込められることが常々あるのだろう。それを事前に察し、守っているのが中松。彼等が固く信頼し合っているのが、特に一矢が中松を傍においているのがよくわ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-26
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