朝食を悠長に摂っていると夫(ニセ)の出勤時間に間に合わないため、早速お弁当作りに取り掛かることにした。三成家の広い厨房を借り、なにを作ろうかと悩む。勝手が違うからなぁ…。 冷蔵庫を見ると使い慣れない食材ばかりが詰め込まれていて、よく解らなかった。担当のコックに聞きながら、利用しやすそうな食材を分けてもらった。 というわけで今日のメニューは、鹿児島県産の高級黒豚を利用した『ヒレとんかつ弁当』。 グリーンバンブーより高級なお肉で作るとんかつ。流石三成家の冷蔵庫は、普通のスーパーで売っている肉や野菜類は入っていない。 それ以外に付け合わせのカボチャのサラダと特製だし巻きを作った。小松菜の胡麻和えも入れておいた。どれも一矢が好きな物だ。グリーンバンブーの食材や調味料が違うから、味付けは同じでも違う味になって楽しめると思う。 幼少期からうちの洋食を食べ慣れている一矢だから、お弁当はよく洋食物を入れている。まあ、悪くないという感想が来るから、洋食のお弁当は気に入っている模様。 でも、一矢はどうしてわざわざ私のお弁当を買ってくれるのかな。 超お金持ちの御曹司が、貧乏くさい洋食屋の弁当を毎日買いに来るなんて…どう考えてもおかしいわよね。 …はっ。もしかして! ピシャーン、と自分の中で雷が鳴った音がした。 うちが相当貧乏で、店の経営が傾いていると思われている…?(貯金少ないから、その考え自体は当たっているけど!) 幼少期に受けた恩があるから、『弁当を買う』という形で返している、とか…? きっとそうだわ! それ以外、理由が思いつかないもの。 いい機会だから、もうお弁当は買わなくてもいいって言ってみようか。 一矢のためにお弁当を作るのは、全然苦じゃない…むしろ一矢に少しでも会えて、嬉しいって思っていたけれど、その考えは間違っていた。 この屋敷で少し暮らしてみて、ここでご飯を食べて、後悔している。 今までどれだけ貧相なお弁当を一矢に作り、食べさせていたのだろう、と――… やっぱり『幼少期に施しを受けた恩返し』よね。それしかない。 お金を出せば無添加でかつ豪華なお弁当も買えるし、三成家では素晴らしいコックを何人も雇っているのだから、彼らに作ってもらうというのもできる。なのにわざわざグリーンバンブーのお弁当を買ってくれていたな
Terakhir Diperbarui : 2025-06-16 Baca selengkapnya