「そうだよね、残念だったよ。大人っぽいタイプが好きなんだと思ってたのに、まさかあんな薄味なやつが好みだったとはね」悠良は無意識に俯いて、自分の体を一瞥した。薄味......そこまで言われるほどじゃないと思うけど。「なあ、いつまで座ってるつもりだ。足が痺れてきたぞ」伶が耳元で低く言った。悠良は慌てて彼の膝から身を起こした。どうも今のは、自分に対する皮肉に聞こえてならない。「別に、重くないし」彼女は四十数キロしかない。軽い方だろう。「そうか?」伶は気の抜けたような声でそう言うと、探るような目で彼女の全身を眺め回した。悠良は口を尖らせて、あまり話す気になれなかった。山荘で伶が見捨てた時から、彼のことは信用していない。加えて、彼の底が知れないところもあるし、なるべく距離を取るようにしている。酒を飲んだのも、ただ貸しを返すだけ。彼女はうつむきながらグラスを手に取り、一口飲んだ。香りが口いっぱいに広がり、思ったより辛くなかった。悠良は眉を緩め、このお酒、案外悪くないと思った。つい、もう数口飲んでしまう。伶はソファにもたれかかり、腕を組んで悠良をじっと見ていた。「俺に付き合って飲むって言ってたのに、自分だけ楽しんでるのか?」悠良は少し躊躇ったあと、グラスを持って伶のグラスに軽く触れた。伶は口元を緩め、楽しげに笑った。そしてグラスを仰いで、中の酒を一気に飲み干した。それから酒瓶を手に取り、彼女と自分のグラスに再び酒を注いだ。「ここにいて、白川に見られたらどうする?白川家の連中が君に文句言ってくるかもな」悠良はその言葉にわずかに眉をひそめた。「白川家のことよく知ってるみたいですね」「昔ちょっと関わったことがあるから」伶はさらりと言った。悠良は、今日白川家から出てきたときに彼の車を見かけた気がしたのを思い出した。今彼が乗っている車と、まったく同じだった。でもはっきり見たわけじゃないし、確信は持てなかった。試すように訊いてみた。「寒河江さん、今日は白川家に行きました?」「いや」伶は間髪入れずに答えた。悠良はそれ以上は聞かなかった。伶と白川家は関係が良くないはずだし、わざわざ行く理由もなさそうだ。伶はグラスを手に、手首を返して琥珀色
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