「こんな状況なのに、まだ強がるの?」莉子は口を歪めて言った。「ほんと、自分がどれだけ頭が良いとでも思ってるの?もういい加減その芝居、やめたら?」宏昌も厳しい口調で言い放つ。「もうやめなさい。ここは大人が話している場だ。お前は口を挟むな」悠良はそんな言葉にも動じず、口元にうっすらと皮肉めいた笑みを浮かべた。「おじいさまには今回の危機を乗り越える妙案でもあるんですか?」宏昌は手に持った茶碗を強く握りしめた。「お前と寒河江社長が仕事の話をしていたということにするしかない。もともと両社は提携してるだろう?そう説明すれば問題ない。あとは時間が経てば自然と沈静化する。ただし、これを最後に、寒河江社長との関わりは控えなさい。このプロジェクトからも手を引くべきだ」悠良は皮肉げに小さく笑った。やっぱり。小林家では、いつも犠牲になるのは自分だ。どんな時も、どんな人間よりも、自分の価値は低く見られる。だが今回は、小林家のためではない。自分と、母のためだ。悠良の瞳が鋭く光る。「ですが、私の方法なら、莉子を寒河江さんにうまく近づけることができます。それどころか、寒河江家に一歩踏み込むための第一歩になるかもしれません」宏昌はその言葉に驚き、目を見開いて信じられないといった様子で尋ねた。「本当か?そのスキャンダルを収めるだけでなく、莉子を寒河江と接触させられると?」「ただし、条件があります」「言ってみなさい」今の宏昌には条件などどうでもよかった。莉子が伶と近づけるのなら、それが何よりも優先されるべきことだった。「母の墓を元の場所に戻してください。それさえしてくれれば、今回の件は私が片付けます」宏昌はすぐに頷いた。「わかった。お前が言った通りにできるなら、問題はない」「では。まずネットに出回っている写真には私の正面の顔は映っていません。もし本当に記者たちが確証を持っていたのなら、わざわざ病院にまで来て張り込みなんてしないはずです。つまり、これはチャンスなんです」『寒河江とデートしていたのは莉子』だと発信すればいいんです。現在、彼らは接触している段階ですし、まだ公表もしていない。それなら話として成立する」「どちらも独身ですし、仮に少し調べられても、筋は通ります」宏昌
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