「大久保さんの言う通りだ」伶の短い一言で、悠良も彼が結婚式を望んでいるのだと理解した。悠良は少し考え直した。大久保の言葉にも一理ある。自分は結婚式を挙げていないから、特に気にしていなかった。けれど、自分の考えだけで伶に結婚式をさせないわけにはいかない。すぐに態度を変えて、言い直した。「わかったよ。それじゃあ結婚式を挙げましょう。YKの用事が落ち着いたらね」伶の目元には笑みが浮かんでいた。「じゃあその時にどんな式にするか一緒に相談しよう」大久保が思い出したように口を開く。「西洋風にしてみてはいかがですか?大奥様と大旦那様も昔、西洋風で挙げられて、とても素敵でしたよ」悠良は「西洋風」と聞いて急に気持ちが乗ってきた。「そうね、西洋風もいいわね。私の両親も西洋風で挙げてたし、家には今も写真が残ってるの」子どもの頃から西洋風が好きだったのも、母の影響かもしれない。伶は即決した。「なら西洋風で」食事を終えた悠良は、満足そうにソファに身を預けた。大久保がいちごとメロンを持ってきてくれる。お腹いっぱいのはずなのに、果物を見ると急に食べられそうな気がした。いちごを一粒口に入れて尋ねた。「大久保さん、どうして私がいちごとメロン好きだって知ってたの?」「もちろん、旦那様に教えていただいたんですよ」大久保はにこにこと答えた。悠良は思いもよらなかった。伶が自分の好きな果物まで知っていたなんて。驚いた表情を見て、大久保が言葉を続ける。「実は、旦那様は奥様のことを、奥様が思っている以上によく理解しておられるんですよ」悠良は少し意外に思った。伶は確かに、自分のことをよく知っている。もし昔から知り合いで、注意深く見ていなければ、ここまでわかるはずがない。――伶は、本当に自分を大切にしてくれている。大久保は台所でコーヒーを淹れると、伶に持っていこうとした。「奥様、ソファで休んでてくださいね。私が旦那様にコーヒーを持っていきますから」悠良はスマホの時間を見て眉を寄せる。「もうこんな時間なのに、まだコーヒーを飲むの?」これを飲んだら徹夜になるに違いない。「旦那様がおっしゃってましたよ。今夜は徹夜になりそうだって」悠良はさらに眉をひそめた。伶は本当に自分
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