雪が舞っていた。「ロホ!もう少しで町だよー!」前を飛ぶ小さなドラゴンがくるくると宙を回る。だが、その羽ばたきも少し重たそうだった。ロホと呼ばれた女性は「……飛ばなくていい。疲れるから歩きなさい、ファド」「えー、でも、空のほうが見通し良いんだもん」「おまえの羽、濡れてる。羽風で雪を巻き込んでるよ。歩く方が賢明」「……はーい……」不服そうにファドと呼ばれたドラゴンがロホの肩に乗った。流麗な白い鬣を持つ馬は鼻をふん、と鳴らして雪を蹴る。細い道を縫うように進むぺガスの背中で、ロホは空を見上げた。空は白く、どこまでも遠かった。銀髪は腰まで伸び、今日は気まぐれに編み込んである。翠の瞳の奥に炎のような静けさを宿し、ロホは雪を踏みしめていた。左に剣、右に小剣、太ももにはナイフ。背には弓。フードを被り皮鎧とローブを重ね、常に“戦い”と“日常”の狭間にいる魔法戦士。その隣を、翼を小刻みに揺らしながら飛ぶのはドラゴンの子供・ファド。中型犬ほどの体躯で、おしゃべりといたずらが大好きな旅の相棒。そして、ロホの背に静かに寄り添うのは、流麗な白い鬣を持つ馬――ぺガス。言葉は話さないが、その瞳と言動で十分すぎるほど意志が伝わる、誇り高き旅の仲間。「私がその人に出会ったのは、その町に入ってすぐのことです」その町の名前は「カイレ」。 雪と霧に包まれる、小さな谷間の町だった。町の宿屋は古びていたが、火の温もりがあった。「……いらっしゃいませ。雪の旅、お疲れ様でした」出迎えたのは、まだ十にも満たない少女だった。母親は病気らしく、代わりに受付をしているのだという。名をティレといった。「お客様申し訳ございませんが、お馬のほうはご自身で小屋につないでいただけますでしょうか、一人しかいないので・・・」 ロホは頷きペガスを馬小屋に連れていき、まぐさもたっぷり与えた。「宿、空いてる?後お風呂も・・・」ロホの問いに、ティレはこくりと頷く。「一番奥の部屋です。……あの……ローブ、濡れてます」「ありがとう。でも乾かすから、大丈夫」ファドはストーブの前で大の字になって伸びていた。「天国ぅ……」「……こいつ、火があるといつもこうなるんだよね」「……ふぅ……」宿の共同浴場に音を立てず湯に沈む、湯殿にはロホしかおらず足を伸ばし、腕を伸ばして伸びをする。湯気が舞い、ローブを脱い
Terakhir Diperbarui : 2025-05-16 Baca selengkapnya