「わぁ〜、綺麗」等身大の鏡に映った自分に、奈月は感嘆の声をあげた。オフショルダーのマーメイドドレス。真っ白な透け感のある生地を何枚も重ねて、胸元をまるで花びらが開いたような形に整えている。全体的にレースが施されているドレスの、スカートはフィッシュテールでスタイル良く魅せていて、足元から上に向かって花をモチーフにした刺繍が、ドレスの裾まで一分の隙もなく美しく仕上げられていた。「素敵……」ドレスに合わせたジュエリー、ティアラ、ハイヒールと、一式飾られていたのを取り出して身に着けた。ライティングにも気を配って写真を撮ってもらうのは、本当に気持ちがいい。「ほんと綺麗なドレスですねぇ」カメラマンを呼ぶわけにいかないから、仕方なく家政婦の三和良子(みわよしこ)にスマホを渡し、何枚も連写して数パターンのポーズを撮ってもらった。「もういいわ。ありがとう」奈月は満足気にOKを出し、急いで確認していく。そんな彼女を見ながら良子はどこかそわそわと落ち着かず、思い切って口を開いた。「あの、奈月さまー」「なーに?」呼ばれた本人は振り返りもせず、夢中で写真を見ながら返事をする。「そろそろドレスは脱いだ方がよろしいのでは…?」「ん〜、なんで?」不安気な良子とは対照的に、奈月は呑気な口調だった。「そ、それは、奥さまのウェディングドレスでは…」「そうよ〜」何十枚と撮った写真をスッススッスと流し見て、気になったものは矯めつ眇めつしながら何度も確認し、そうしてようやく、ベストなものを3枚決めた。「ふふ〜ん、これ見たらびっくりするかなぁ?きっと姉さんより綺麗だって言ってくれるわっ」奈月は期待に胸躍らせて、『いつかを夢見てー』という曖昧ながらもはっきりと要求したキャプションを添えて、それぞれの角度から撮った彼女のウェディングフォトを投稿した。「よしっ」できた!と投稿し終わった事に満足して、奈月は着替える為に立ち上がった。「三和さん、お願い」「はい」その命令し慣れた口調に、良子は嫌悪しながらも逆らえなかった。本物の奥さまがこの別荘にやって来た時、良子は度肝を抜かれた。彼女は奈月を佐倉希純の妻だと思っていたので、そうではなく、ちゃんとした奥さまが存在したことに騙された気分になったのである。しかもすごく美人。当然怒っていたが、奈月のように当たり散
Terakhir Diperbarui : 2025-06-28 Baca selengkapnya