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All Chapters of only/otherなキミとなら: Chapter 121 - Chapter 130

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第120話 本物のruler

 目を開けたら、作り物のように美しい顔が理玖を見詰めていた。 中性的な顔立ちが笑む。 講義でrulerの質問をしたときの、あの顔だ。 「おはようございます、向井先生」「お、おはよ……」  あまりに可愛らしくて、理玖でもドキドキしてしまう。 (化粧しているからかな。素顔も見てみたい)  手を握られて、ドキドキする。 そのまま引き起こされたと思ったら、抱き付かれた。 ドキリとして、手が泳いだ。 「助けてくれて、ありがとうございました。先生は、本物のrulerだったんですね」「本物の……、君は、違うの?」  体を離した深津がニコリと笑んだ。 「もうみんな起きているから、リビングに行きましょう」  理玖の手を引いて立ち上がる。 つられて理玖も立ち上がった。 (奥手で内向的……。確かに真野君の話からもそういう印象を受けたけど。本人はかなり違う。女装するだけで、こんなに変わるんだ)  深津に手を引かれて歩きながら、その後ろ姿をぼんやりと眺めた。 「理玖さん。目が覚めて良かった」  リビングに入るなり、晴翔が理玖を抱きしめた。 冴鳥と話の途中だったように見えたが、大丈夫なのかと気になった。 「深津君に向けたつもりだったけど、全員、眠っちゃったよね。大丈夫だった?」  一見すると、皆、元気そうだ。 むしろ理玖の方がちょっと怠い。 「フェロモンを感じて眠ったけど、俺と冴鳥先生はすぐに目が覚めました。その後、深津君も起き
last updateLast Updated : 2025-08-20
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第121話 暑苦しいけど嫌いじゃない

 理玖が考え込んでいるうちに、深津がもじもじとし始めた。 「それで、あの……、お世話になりっぱなしで、こんな話をするのは申し訳ないんですけど。空咲さんと向井先生にお願いが、あるんです」  もじもじと照れる仕草まで可愛い。 今は女装しているから女の子のようだが、男の子の姿で照れている顔を見てみたいと思った。 (可愛いし、頭も良さそうだし、ちょっと小悪魔っぽい顔とかするし。魔性系だ)  理玖の乙女脳が勝手に解析を始めた。 プリンス系イケメンと美人な魔性系男子が並ぶと非常に絵になる。 冴鳥と深津は一回り近く歳が離れているはずだが、歳の差はあまり感じない。 (バランスがいい二人だな。僕と晴翔君はどうなんだろう。僕みたいなチンチクリンが王子様系イケメンの隣にいて、良いんだろうか)  晴翔と二人並んだ絵面を想像して愕然とした。 アンバランスさが否めない。 「お願いって、もしかして、真野君?」  理玖が乙女脳全開にしている隣で、晴翔が聞きづらそうに問い掛けた。 深津がこくりと頷いた。 「祥太と話をしないといけないって、思ってたけど、上手く話せる自信がなかったんです。でも、向井先生のお陰で頭がすっきりして、やっぱりこのままじゃいけないって、思って」  興奮剤で常に発情しているような状態だったわけだから無理もない。 むしろ、考えていただけ偉いと思う。 「会いたくないってわけでは、ない?」  晴翔の問いかけに、深津はすぐには反応しなかった。 「……今の僕は、拓海さんと一緒にいるために祥太とちゃんと話がしたい。祥太のためじゃないんです。祥太は昔からずっ
last updateLast Updated : 2025-08-21
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第122話《6/2㈪》追加の警護

 冴鳥の所に送られてきた荷物と手紙は國好に託した。 預かった薬と共に科捜研で調べてくれるらしい。 「送り主は折笠先生になっていますが、恐らくは臥龍岡先生……。もしくは理研の奥井照正部長だと思います」  國好が怪訝な顔をした。 「理研の奥井が関わっているのは間違いないでしょうが。今までのやり方から考えると奥井が直接、手を出しているとは思えませんが」  國好の指摘通り、これまで奥井は陰に隠れて実験や薬を降ろすだけで、実行は折笠や臥龍岡に任せている。 「冴鳥先生と深津君がspouseになったと気が付いたのは五月七日、折笠先生に相談に行ったのは八日だそうです。荷物が届いたのは十五日、折笠先生が倒れた翌日。だから冴鳥先生は余計に、折笠先生からの荷物だと疑わなかった」  USBを託された経緯なども考えると、元気なうちに折笠が冴鳥宛に荷物を送っておくような手間を裂いても、冴鳥は不思議には思わないだろう。  國好が理解した顔で頷いた。 「対応が早すぎるんですね」  理玖は頷いた。 「折笠先生が冴鳥先生から話を聞いてすぐに報告していたとして、報告を受けた時点で郵送しなければ届かないスピード感です。しかも折笠先生は冴鳥先生と深津君の名前を伏せて報告している。別ルート、つまり臥龍岡先生から情報を聞き出す手間も必要になる。そう考えると、奥井部長が薬を準備して直接送っていなければ間に合わないんです」  抑制剤や興奮剤は恐らく正規の処方薬ではない。 理研が実験的に製造している未認可薬を臥龍岡が常時、携帯しているとは考え難い。 奥井が直接、冴鳥に折笠名義で送ったと考えるのが妥当だ。 「何よりこの手紙の文章、かなり指示が具体的です。書いたのはWOや医
last updateLast Updated : 2025-08-22
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第123話 WOの両性具有

『唐木田冬志(33)男性、警察官。 第二の性はother。 第一次性徴で第二の性が発覚するも、兆候は見られず。 第二次性徴で受容体が少ないが故に、onlyのフェロモンを感知しづらいとの医師の診断を受ける。 最低量の抑制剤を処方されていたが、飲まずに過ごせる日も多く、感覚としてはnormalと変わらない生活を送る。 大学生の時、飲み会後に友人男性に押し倒される。男性はotherで、onlyのフェロモンに酔った時と同じ感覚だったと話す。 警察学校入学時のWO検査でPOEフェロモンと同量のSAフェロモン値を検測される』  「どうやら俺にはotherとonlyの両方の特性が備わっているみたいなんです。かろうじてPOEフェロモンが多いからotherに分類されていますが。イレギュラー扱いでrulerにもカテゴライズされています」  唐木田の言に、理玖はげんなりした。 日本ではフェロモン量が多いonlyとイレギュラーが便宜上、rulerにカテゴライズされる。 いわゆる「その他」は全部、rulerなわけだ。 それが日本のrulerの現状だ。 「まず先にお話しすると、rulerとは特異なフェロモンを有する特殊なonlyを指します。イレギュラーなWOを纏める言葉ではありません。日本のruler定義は便宜上で、正式な認定ではありません」  大事な定義を前置きして、理玖は改めて唐木田のWOの経歴に目を落とした。 「otherのPOEフェロモンとonlyのSAフェロモンが同程度確認されているんですね。両方の特徴が同じ強さで出てもおかしくない。体調の不良はありませんか?」  唐木田が考える顔をした。 「特に感じません。俺自身は他のWOのフェロモンを強くは感知しないので、感覚としてはnormalに近いと思います」「つま
last updateLast Updated : 2025-08-23
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第124話 クール系イケメンは可愛い

「それでっすね、向井先生。実は特殊体質が唐木田さんだけじゃなくてっすね」「二人の体質って言ってましたよね。更待さんもなんですね。もしかして、狙って連れてきましたか?」  理玖の指摘に栗花落が苦笑している。 唐木田と話している間中、更待がソワソワしている様子だったから、待っているんだろうと思っていた。 「警視庁のWO犯罪対策班はotherとonlyの在籍が多いんす。捜査に役立つ場合も多いんで余計なんすけど、中には唐木田さんや更待みたいに、特殊な人もいるんすよ」  役に立つことは確かにありそうだ。 今回も理研の実験など考えたらフェロモンを感知できる方がいい。 (けど、逆に危険でもある。何も感じないnormalの方がいい場合もある。考え出したら、キリがない)  二人は警察官だ。 WOであっても自分や周囲を守る訓練は受けているだろう。 「僕は、自分が納得いく形で事件を収束させたいと考えています。その為に國好さんたち警察の皆様の力は不可欠です。だけど、WOの学者としてWOに不当な暴力を受けてほしくない。どんな場面でも自分たちを守る行動だけは、忘れないでください」  ただでさえ社会的に冷遇されがちなWOの中でも、特殊体質という異質のレッテルを貼られている人たちが傷付く様は見たくない。 「理玖さん……」  どうしてか隣の晴翔が一番感動した顔をしている。 「大丈夫っすよ。俺ら、警察官ですから。そういう訓練はちゃんと……」  栗花落の言葉を遮って、更待が立ち上がった。 手に持った本を前に出して頭を下げた。 「向井先生の大ファンです。サインください!」  咄嗟に返事
last updateLast Updated : 2025-08-24
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第125話《6/3㈫》呼び出し

 そんなわけで警備員姿をした警察官が二人、追加になった。 昨日、科捜研に出向いていた國好は今日は朝から大学に出勤している。 「急ぎの案件にしてもらっていますが、一週間以上はかかりそうだとの話でした」「充分です。結果を待ちましょう」  午前中の二年生の講義を終え、午後は真野に声を掛けようかなどと考えていたら、研究室の電話が鳴った。 「この部屋って固定電話があるの?」  思わずビックリしてしまった。 晴翔のデスクに近い窓際に、そういえばそれっぽいものがある。 「前の203号室にもありましたよ。滅多に使いませんけどね」  晴翔が学内用のスマホを持っているから、ほとんどの連絡がそこに入る。 基本は職員メールでのやり取りになるので、理玖は電話自体、滅多に使わない。 「はい、第一研究棟201号室向井理玖です。……はい、……え! はい……。あ、代わりますか? はぁ……、わかりました。失礼します」  晴翔が慌てたり蒼い顔で電話対応している。 電話を切った晴翔が理玖を振り返った。 「午後一で、二人揃って理事長室に来るようにと、理事長ご本人からの連絡でした」  理玖は飲んでいた烏龍茶を吹いた。 「理事長って、福澤理恵奈理事長?」「慶愛大学に理事長は福澤理事長しかいません」  二人して当然を言い合う会話をしてしまった。 道理で晴翔の顔色が悪いわけだ。  慶愛大学の理事長は福澤理恵奈、三十七歳の女性だ。 親族経営と揶揄されながらも、その仕事振りは評価されている。 教授などの教員陣に有名人やその分野で話題の人
last updateLast Updated : 2025-08-25
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第126話 対面①

 午後一時、理玖と晴翔は第一学生棟の南側に隣接する本館の応接室に向かった。 理事長の呼び出しを既に把握していた國好が同行してくれた。 「理事長に許可はとってあります。心配はないものと考えますが、何かあれば突入します」  國好が理玖のシャツの襟の裏側に盗聴器をセットした。 (警察は既に奥井部長を被疑者に定めているんだな)  更に言うなら、大学も警察の見込みを知っている。 欲しいのは、確かな証拠なのだろう。 Dollの資金の振込先というのは強い証拠だが、言い逃れできる隙が大きい。 (今のところ、振込口座が個人名義である以外に奥井部長に繋がる証拠がない。自白はしないだろうから、見付けるしかないけど)  大学も警察も、理研とRose Houseを摘発する方向で動き出している。 長年、包囲網を逃げ切ってきた奥井が、その気配に気づかないはずはない。 (今、この時期に大学に来たからには、奥井部長なりの目的があるはず。それを確かめないと、迂闊に動けない)  応接室の前で國好と視線を合わせて頷く。 晴翔が扉を開けた。 「お、来たね。顔を見るのは久しぶりだ。出向時以来かな、向井先生」  福澤がにんまりと笑んだ。 相変わらず、歳の割に若々しい。内面が外見に現れているようだ。 応接室には既に奥井と羽生の姿があった。 強気な笑みを見詰めて、理玖は礼をした。隣で晴翔が理玖に合わせて頭を下げる。 「遅くなって申し訳ありません」「いいや、指定した時間通りだよ。君の真面目さは相変わらず好ましいね。二人とも、入りたまえよ」  福澤に促されて、理玖と晴翔は部屋の
last updateLast Updated : 2025-08-26
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第127話 対面②

「本当なら、折笠先生に戻ってきてもらうのが一番だと思っています。僕はまだ、その可能性を諦めていませんから」  あまりに失礼なことを言われるので、少し挑戦的な言葉を吐いた。 羽生が驚いた顔で言葉を飲んだ。 「けど、折笠君は昏睡状態が続いているんだろう? 初動の心肺蘇生をしたのは向井君だと聞いたよ。気持ちはわかるけどねぇ。向井君は折笠君が苦手だと思っていたけど、戻ってきてほしいの?」  冗談めかした奥井の言葉に悪意を感じた。 「苦手ですし、好きでもないです。けど、救命に僕の心象は関係ない。折笠先生がWO研究において頼りになる先輩なのも事実です。戻ってきてほしいと願っていますよ」  奥井が少しだけ気まずそうな顔をした。 「なるほど、向井先生は思うのではなく、願うのだね」  福澤が満足そうに笑んで、頷いた。 「正直なところ、残念ながら折笠先生の復帰は絶望的だ。けど、向井先生が講義を担ってくれていれば、戻ってきた時にいつでも折笠先生に戻せるね」  福澤の言葉に、理玖は迷いなく頷いた。 「意外だなぁ。向井君は折笠君と距離を取っていると思っていたけど。いつの間にか仲良しになっていたんだね。何か特別な関係にでもなったのかな?」  奥井の目が探るように理玖に向く。 一瞬、昇った怒りを抑え込んで、理玖は平然と答えた。 「今までと変わりません。苦手だし好きでもない、頼りになる先輩です」  同じ言葉を敢えて繰り返す。 福澤が鼻で笑った。 「私も意外ですよ、奥井部長。こいうった場で後輩相手に下世話なジョークを投げる方だとは思いませんでした」&nb
last updateLast Updated : 2025-08-26
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第128話 内緒話①

 奥井と羽生が出ていった応接室に福澤の笑い声が高らかに響いた。 「あっはは! あの顔を見たかい? 特に空咲君の素性を知った時の顔ったら! 自分から振ったくせに、何とも滑稽だ!」  福澤が腹を抱えて笑っている。 そういえばこういう人だったなと、理玖は思い出した。 「講義の話はついでで、奥井部長を追い詰めるために僕らを呼びましたね」  もっと言うなら理玖もついでだ。 福澤が見せ付けたかった相手は晴翔だろう。 「私の独断ではないよ。空咲翔吾社長との決め事さ。Sky総研は既に理研に圧をかけ始めている。それには奥井も気が付いている。そこに持ってきて、大学内に副社長がいると知れば、明らかに焦って何かやらかすだろうからね」  涙を拭いながら、福澤がとんでもない話をした。 「もしかして、講師として招いたのも罠ですか?」  晴翔が呆れ顔で問う。 「それに関しては、私の発案ではないんだ。あくまで本人の希望を通してやったのさ。どちらにしても、焦っているんだろう」「奥井部長の方から、申し出が?」  福澤が立ち上がり、理玖たちを促した。 「詳しい話は、場所を移そう。國好警部補は来ているかい?」  理玖は頷いた。 國好が警部補だったのを、初めて知った。 「ならば一緒に話をしよう。理事長室においで」  福澤に連れられて、理玖と晴翔は応接室を出た。 廊下で待機していた國好と共に理事長室に入る。 中では羽生が待機していた。 「ご苦労だったね、羽生部長。なかなかの名演技だったよ」
last updateLast Updated : 2025-08-27
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第129話 内緒話②

「Dollの実験について、詳細な記録が理研にあるはずなんだ。少なくとも十五年前からDollという組織は稼働している。しかし、奥井の個人的な実験はもっと前から始まっていたはずだ。その記録が見つかれば、動かぬ証拠となる。既に目星は付いている。そう時間はかからんよ」  羽生の話に息を飲んだ。 (十年前、佐藤さんが折笠先生や臥龍岡先生と出会った頃。その頃には、奥井部長は実験を始めていた)  奥井の実験がプロトタイプになって、やがてDollという組織での実験にシフトしていったんだろう。 (佐藤さんも、関係があるのかもしれないな) 「その証拠は羽生部長が見付けてくれる。私は引き続き千晴に圧を掛け続ける。だから空咲君はRISEの実験のために囮になりたまえ」  福澤が何でもない事のように話すので、思わず聞き流しそうになった。 「……は? 何を言っているんですか? どういう意味ですか?」  自分の顔が険しくなっているのが理玖にもわかった。 「意味って、現行犯逮捕のための囮だよ。RISEはrulerのspouseになった特別なotherで実験したいんだろ。させてやればいい」「嫌です。晴翔君を危険には晒せません」  福澤の提案を、理玖はきっぱりと否定した。 「こちらも周到に準備して望めば問題ないだろう。警察が突入するタイミングをしっかり計算すれば問題ない」「問題しかありません。その作戦は僕の中にありません」  やはり福澤の提案を間髪入れずに否定する。 「やれやれ、よっぽどspouseが可愛いんだね。なら向井君はどうするつもりなんだい?」  福澤が呆れ気味に理玖に問う。
last updateLast Updated : 2025-08-27
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