保健室を介して栗花落に安定剤の処方を出した。 呼吸は安定して傾眠傾向だったので、今は仮眠室で休んでもらっている。 更待と唐木田を部屋の警備に残して、理玖と晴翔は國好と共に部屋を移した。 真野と待ち合わせをした第一図書館の個室は作りもしっかりして壁も厚いので、内緒話にはぴったりの場所だ。 「栗花落は、俺がWO犯罪対策班に移動になってすぐに保護した子供です。当時は十五歳で、親からの性的虐待に気が付いた中学教師の通報がきっかけでした」 國好が俯きがちに淡々と話してくれた。 「栗花落の家から違法なonlyの興奮剤が見つかり、入手ルートがDollだとわかりました。慶愛大とは別の大学のDollで、仕切り役も折笠ではなかった。最初のDollの検挙事件でした」 十一年前の日本だと、onlyの興奮剤は治験すら始まっていない。 日本に存在してはいけない薬だ。 「栗花落がRoseHouseの出身者だと知り、聴取にも行きましたが、その時点でRoseHouseに怪しい点は見付けられなかった。里親の性的虐待が認められて、児童相談所を通して保護扱いになり、ウチで引き取りました」「國好さんの家に、ですか?」 晴翔の問いかけに、國好が小さく頷いた。 「RoseHouseは礼音を戻してくれと言ってきましたが、本人が戻りたがらず。その姿があまりに必死だったので、親父が引き取ると決めました。礼音が……、大学を卒業するまでは、ウチで面倒を見ようと」 十一年前なら、國好の父親はまだ現場に出ていたんだろう。 RoseHouse出身なら他に身寄りもないだろうから、行く場所もなかったはずだ。 「ウチで過ごしている時の礼音は、普段のように明るくてお調子者で、でもやけに気が回る子供でした。大人の顔色を
Last Updated : 2025-09-06 Read more