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All Chapters of only/otherなキミとなら: Chapter 151 - Chapter 160

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第150話 アダム・ワースからの招待状

『招待状  向井理玖様 空咲晴翔様  以前よりお誘い申し上げていたティーパーティを開催いたします。 悦楽に満ちた芳醇なパーティです。 是非、ご参加ください。 向井先生と歓談できる時を楽しみにしています。 6/13㈮ お迎えに上がります。  隣人の文学教授 アダム・ワースより 愛を込めて』 「……これはまた、マニアックだな」  理玖は一言、呟いた。 理玖の手元を覗き込んでいた冴鳥が不可解な顔をしている。 「僕はドイルよりクリスティが好きだって、文学教授に伝えてくれる?」  今度は秋風が不可解な顔になった。 「悪ぃけど、その辺は俺にもよくわかんねぇよ。ミステリー読まねぇし。名前くらいならわかるから、伝えとくけど」「そうか、なら、そうだな。ここは敢えて趣旨を合わせるよ。……御指名頂いたシェリンフォードは、ご招待を有難くお受けいたします。って伝えてくれる?」  秋風の不可解な顔が険しくなった。 「しぇりん、何?」  本当にわかっていなそうな顔だ。 「この会話も録音しているんだろうから、そのまま聞いてもらえばいいよ。モリアーティごっこには付き合ってあげるけど、僕はアダム・ワースを犯罪王にする気はない。僕がシャーロックになるつもりもない。だから、シェリンフォードだ」  秋風の顔に再び、怒りが上った。 「ごっこ、ってなんだよ。俺たちは遊びでやってるつもりはねぇよ」「そうだね。君たちがしている行いは遊び以下だ。多くの非合法な実験を重ね
last updateLast Updated : 2025-09-14
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第151話 直接対決①

「私のリサーチ不足で、すみません。コナン・ドイルなら知らない人間の方が少ないと思って、無難なチョイスをしました。確かに向井先生の推理はポワロ寄りですよね」  悪気など全くない顔で臥龍岡が笑む。 無難なチョイスという割に、内容はマニアックだったと思う。 (ここでの会話は盗聴済み、203号室に仕掛けていた盗聴器についても認める発言だけど。開き直りって感じもしないな)  恐らくは、隣の103号室にでも身を潜めて会話を聞いていたのだろう。 理玖のこれまでの推理など、盗聴した会話を聞いていない限り、臥龍岡は知り得ない。 「お気付きだと思いますが、ここでの会話は警察に筒抜けです。発言には気を付けた方がいい」「御気遣い、痛み入ります。けど、問題ありません。聞かれて困るような会話はしていませんから」  理玖は思わず臥龍岡を見詰めた。 変わらぬ張り付いた笑顔が理玖を眺めていた。 「私は秋風君に、茶会の招待状を託しただけです。我々の遊びに付きって頂けるのなら、嬉しいですよ」  理玖は秋風を窺った。 冴鳥に抱き止められている秋風の呼吸は穏やかになりつつある。 少し申し訳ない気持ちで、理玖は口を開いた。 「僕の目的が破壊でも、ですか? 貴方方を利用して、貴方方が命より大事にしている故郷を破滅させるつもりでも?」  後ろの秋風が、ひゅっと息を上げた。 しかし、臥龍岡の表情は変わらない。 「破壊、か。そうですね。そうなったら我々は、もしかしたら命を失うのと同じくらい苦しむのかもしれません。しかし人として生きるなら、それが理想なのでしょうね」  悲しげな瞳が俯く。 「けど、向井
last updateLast Updated : 2025-09-15
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第152話 直接対決②

「大丈夫ですか、向井先生。顔色が悪いようですが」  臥龍岡が理玖の肩に触れる。 体が大袈裟に震えて、理玖は仰け反った。 理玖の顔を覗き込んだ臥龍岡が、満足そうに笑んだ。 「薔薇の園への招待なら、いつでもできます。本当に招待状が欲しいかどうか、もう一度よく考えてみてくださいね」  耳元で囁かれて、肌がぞわりと粟立った。 「その前に、お茶会をしましょう。向井先生とはこんな風に立ち話ではなく、腰を据えてじっくりお話がしたいですから。是非、いらしてくださいね」  理玖の肩から手を離して、臥龍岡が秋風に歩み寄った。 「落ち着いたなら、帰ろうか。秋風君」  差し伸べた臥龍岡の手を秋風が握った。 その手を冴鳥が捕まえた。 「俺と帰ろう、音也君。俺は音也君と話をしに来た。なのに、全然話せていない」  秋風が一瞬、戸惑った表情をした。 しかし、冴鳥の手を振り払い、臥龍岡の手を握った。 「俺は初めから話す気なんか、ねぇよ。拓海兄さんを使って向井先生を呼び出したかっただけだから」  顔を逸らす秋風に、佐藤と話していた時のような堂々とした声の張りはない。 「嘘は良くないよ、秋風君」  理玖は表情を整えて秋風に向き合った。 (今は気が付いた可能性より、目の前の秋風君だ。目的を忘れるな。でないと、臥龍岡先生に飲まれる)  会うたびに、話す度に、いつも思う。 臥龍岡には他人を惑わす不思議な雰囲気がある。 そんなモノに飲まれてやるのは、悔しい。 
last updateLast Updated : 2025-09-16
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第153話 図書室の増える蔵書①

 理玖と冴鳥が呪いの研究室で秋風、臥龍岡と対峙していた頃。 晴翔は第二学生棟の第三図書室にいた。  「一番奥の棚、つっても、奥の棚は一つじゃねぇよな」  図書室の中央にある大きなテーブルの上に広げられた間取図を眺めて、真野がぼやいた。  今日、真野を呼んだのは理玖の判断だった。 七不思議の解明は人海戦術になりそうだから人手が欲しい。というのも理由の一つだ。 WO関連の事案において、フェロモンに左右されないnormalがいてくれるのは心強い。 なにより、深津が真野を押したのが、最大の理由だ。 『こういう事件なら、祥太はきっと力になってくれるから』  という、深津の強い押しだった。 (こんな風に関わりを重ねて、前とは違う関係性を作っていけたら、二人にとっても良い変化なんだろうな)  晴翔的には、ちょっとした兄心が働いた。 更に理玖にはもう一つ、狙いがあるようだった。 「でもさ、古い本が置いてある場所は限られるよね」  深津が七不思議解明サークルのHPを確認しながら呟いた。 晴翔は広い図書館の中をぐるっと見渡した。 室内が二階建てになっている図書室は一階と二階の壁をぐるりと囲むように本棚が並べられている。  慶愛大学には、全部で四つの図書室がある。 第一図書室は第一学生棟五階にあり、新しい文学作品の蔵書が多く、カフェテリアが併設されていることもあり学生がフランクに利用できる。 第二図書室は第二学生棟三階の北側に位置し、主に医学関連本が置いてあるので医学部や医療保健学部の学生が使用する機会が多い。 第三図書室は第二学生棟八階の南側にある、慶愛大学の中で最も大きい図書室だ。理工学、物理学、生物学系の本
last updateLast Updated : 2025-09-17
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第154話 図書室の増える蔵書②

一階左奥の本棚を覗く。 一見して、普通の本棚と本だ。 大学の歴史が書かれている『慶愛大学の歩み』という、A3判ハードカバーの本がずらりと並んでいる。 奥の一角には小窓があるものの、電灯の明かりが届かず、薄暗い。 「この雰囲気だけで、何かありそうって思っちゃうっすねぇ」  本棚を確認しながら、栗花落がふるりと震えた。 「栗花落さんも怖い話が苦手ですか?」「向井先生ほどじゃないっすけど、得意じゃねぇっす。子供の頃、そういう番組とか観ちゃったときは、國好さんに一緒にお風呂入って貰ったりしてましたよ」  過換気になった時、晴翔と理玖は國好から栗花落の事情をある程度聞いた。 それを栗花落も知っているんだろう。 「そうなんですね。栗花落さんは普段、國好さんを何て呼んでるんですか?」  本棚の本を一冊ずつ確認しながら、何気なく問う。 「……明良兄さん」  照れた声が聞こえて、栗花落を振り返った。 暗くてよく見えないが、顔が赤い気がする。 「でも、仕事中に呼ぶと叱られるんで。俺にとっては明良兄さんも満流兄さんも、兄さんなんすけどね」「あ、そっか……」  レイプ事件後、國好の家に通っていた佐藤満流は、その関係で國好明良と友人になった。同じ家に住んでいた栗花落もまた、佐藤満流と親交があった。 全く不思議な話ではない。 「じゃぁ、佐藤さん、心配ですね」  理玖に佐藤の本音を知ってほしいと話した國好と同じくらい強い想いが、栗花落の中にもあった。きっと同じくらい信頼する家族なんだろう。 「そうでもねぇっす。満流兄さんなら上手
last updateLast Updated : 2025-09-17
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第155話 内緒の呼び出し

「どうして止めずに行かせた?」  栗花落が珍しく先輩のように更待に話しかけている。 ちょっと怒っている感じだ。 「違うんです、祥太……。トイレに行くって、図書室を出ていって。帰ってこないなって思ってたら、メッセが来て。大和に会ってくるって」  深津がスマホを見せてくれた。 メッセを見た深津が慌てて更待に声を掛けたようだ。 「すみません。真野さん、特に変わった様子もなくて。トイレ行って戻りますって軽く言ってたから、そうだと思っちゃって」  更待が懸命に栗花落に頭を下げている。 「どこで会うとか、詳しいことは書いてない?」  晴翔の問いかけに深津が首を振った。 深津が見せてくれたメッセは『大和に会ってくる』それだけだ。 その後に深津が何を送っても返事はない。 「既読は付いてるから読んではいるね」  晴翔は自分のスマホから真野にメッセを送った。 「邪魔しないから場所だけ教えて、って伝えました。あとは信じて待ちましょう」  晴翔の言葉にも、栗花落と更待の顔は引き攣っている。 「理玖さんと冴鳥先生が秋風君に会っているタイミングで、積木君が接触してきた。その相手が俺じゃなくて真野君なのが気になります。状況を十分理解している真野君が、何も言わずに一人で行ったのにも、きっと意味がある」  ただの呼び出しなら、真野は深津なり晴翔なり、相談したはずだ。 すぐに晴翔のスマホが鳴った。 『体育倉庫。大和は俺と話したいらしい。俺も大和と話したいから、二人で話させて。聞いててもいいから』  
last updateLast Updated : 2025-09-18
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第156話 積木大和の懺悔

「白石のさ、空咲さんへの気持ちはきっと、憧れ程度だったと思う。白石が本当に好きだったのは祥太だ」「……は?」  突然の発言に、真野が驚いた声を上げた。 「だから、かもしれない。白石は祥太と同じバスケ部で文学部で接点多いし、仲良いし。俺は深津を介した友達でしかねぇし。羨ましかったのは、本当だよ」  積木の声が沈んで聞こえて、それがかえって本音なんだと思わせた。 「俺がRISEにいるのは、理由があるからだけど。normalが滅べばいいなんて、本気で思ってねぇよ。だって祥太はnormalじゃん。何でお前、WOじゃねぇんだよ」  苛立ちを含んだ声が戸惑って聞こえる。 「俺だってotherだったらいいって、何回も思ってるよ。けど、仕方ねぇだろ。なりたくてなれるもんじゃねぇんだから」  真野の声が戸惑いを含んでいる。 勘のいい真野だ。積木の言葉や声に何かを感じ取っているんだろう。 「otherじゃなくてonlyだったら、俺だって堂々とお前を口説けたんだ」  何かが動いた気配がした。 真野が息を飲んだように聞こえた。 「好きなんだよ、祥太が! けど、俺にこんなん言われたらキモいだろ。お前は深津が好きだし、normalだし。俺はonlyと結婚しなきゃなんねぇし。姉さんの敵討ちだって、諦めたくねぇんだよ」  服が擦れる音がする。 栗花落がそっと中を覗いた。手招きして晴翔を呼ぶ。 「刺したりはしてなさそうっす。抱きしめただけっすね」  耳元で教えてくれた。 覗き込んだ先で、積木が真野を抱きしめていた。 「……待て、待て待て。
last updateLast Updated : 2025-09-19
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第157話 おあいこ

 秋風と臥龍岡との話し合いを終えて研究室に戻った理玖は、栗花落から國好に送られた音声データを確認して、イヤホンを外した。「真野君、期待以上の活躍だね」 ちょっと満足した心持で、晴翔からのメッセを確認する。「臥龍岡先生の部屋は、どうですか?」 「人の気配はありません。鍵も締まっているようなので、不在と思われます」 唐木田がさりげなく廊下を巡回しながら確認してきてくれた。「それじゃ、皆には僕の研究室に戻ってきてもらいましょう。念のため、積木君は顔を隠せた方がいいけど」 「その辺りは栗花落が繕っているでしょうから、問題ないでしょう」 國好が大丈夫というのなら、大丈夫なのだろう。  理玖は晴翔に返信した。 ほどなくして、晴翔たちが戻ってきた。  部屋に入った晴翔が一直線に理玖に向かってきて、全身を確かめた。「何もされていませんか? 怪我とか、してないですよね」 ペタペタ顔を触られながら、頷く。「この通り、元気だよ」 「良かった……」 晴翔が理玖を抱きしめる。  本当に、人前でも全く遠慮がないなと思う。「むしろ僕より冴鳥先生の方がダメージが大きいかも」 ソファに腰掛けた冴鳥から色が抜け落ちているように見える。  戻ってきてからもずっと、冴鳥の落ち込みっぷりが戻らない。「拓海さん、大丈夫?」 隣に腰掛けた深津を、冴鳥が無言で抱きしめた。  冴鳥も周囲に気を遣う余裕がないらしい。  抱きしめるというより深津に縋り付いている感じだ。「一体、何があったんですか?」 引き攣った様子で晴翔が問い掛ける。  冴鳥の落ち込みようは半端じゃないから、心配になったんだろう。「その話もしたいんだけど、後回しかな。今は……」 理玖は晴翔の後ろに目を向けた。  栗花落と真野に引っ張られて部屋に入ってきた積木に視線を合わせた。「久し振りだね、積木君。来てくれて、ありがとう。歓
last updateLast Updated : 2025-09-19
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第158話 天才家系

 人数分のコーヒーを淹れて、ソファや椅子に腰掛ける。 今朝、晴翔と作ったお弁当とおやつのクッキーをテーブルに出した。 「遠足とか運動会みたいっすね」  栗花落の指摘に理玖は頷く。 「だって今日は、ある意味でイベントですから。昼くらいまでかかりそうだからお弁当は必要かなと思って」  今朝は仕事より朝がゆっくりだったので、時間があった。 おにぎりと卵焼き、唐揚げくらいは作れた。 「たくさん作ったから、いっぱい食べてください。理玖さんの卵焼きと唐揚げ、美味しいですよ」  晴翔が楽しそうに勧めている。 「いっただきまーっす」  何のかんの、栗花落は遠慮なく食べてくれるから、嬉しい。 「うわぁ、本当に卵焼き美味しいですね」  深津が感動している。 ちょっと照れる。 「唐揚げも美味い。時間経ってんのに、カリってする」「おにぎりの具の高菜明太、美味しいです」  真野と積木も喜んでくれたから、良かったと思った。 「理玖さんの高菜明太、絶品だろ。俺、最初にこれに惚れたんだよ」「へぇ、向井先生は空咲さんの胃袋、先に掴んだんだ」  晴翔の言葉に真野が変な関心をしている。 「前から思ってたんですけど、向井先生のお母さんて、もしかして料理研究家の方ですか? 時々テレビに出てる、スイス人の」  深津に問われて、理玖は苦笑しながら頷いた。 「よく気が付いたね。料理研究家のローラ・向井、僕の母親だよ」
last updateLast Updated : 2025-09-20
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第159話 積木大和の事情①

 食事を終えて、おやつのクッキーを食みながら、話を始めた。 「とりあえず、積木君には聞きたいことが山ほどあるんだけど。その前に、約束して欲しい」  積木が改めて理玖に向き合った。 「僕に協力しながら、最後まで臥龍岡先生の協力者であってほしいんだ」  積木の顔に疑問符が浮いている。 秋風と同じ顔だと思った。 「君たちRISEは、五年前の事件に端を発して、理研と薔薇の園を潰す目的で集まった。間違いない?」  理玖は栗花落の様子を見ながら言葉を選んだ。 栗花落の隣には國好がいる。 今はまだ、呼吸は安定していそうだ。 「潰すというか、Dollを潰して不当な実験と売春を終わらせる。代わりにRISEが安全な実験を引き受ける、っていうのが建前で。臥龍岡先生の目的は理研のWO少子化対策部の廃止とRoseHouseの閉鎖。その為に奥井って理研の部長を叩きたいみたいだけど……」  積木が言葉を切って、俯いた。 「正直、RoseHouseの閉鎖に関しては、どこまで本気なのか……。いや、なんていうのかな。正直俺には、臥龍岡先生がRoseHouse側の人間に見えるんです」  積木の表情が険しくなった。 「それは、どうして?」  積木が、ぐっと唇を噛んだ。 「俺が大講堂で向井先生に話したRISEの目的、覚えていますか?」「覚えているよ。normalを排してWOだけの世界を作る。その為にrulerの僕を迎えてWOの生殖本能を煽り、rulerのspouseになった特別なotherである晴翔君を使ってonlyをどんどん妊娠させたいと、そういう話だったよね」 
last updateLast Updated : 2025-09-21
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