理玖が実験経過と躾マニュアルを凡そ読み終わった頃。 「やっと開いた……」 隣で寄木細工の秘密箱を開けるため苦戦していた晴翔が零した。 「細かくて難しかったです」 そう言いながら、蓋を開ける。 理玖は晴翔と中を覗き込んだ。 「なにもないね」 中には綿のようなものが敷き詰めてあるだけで、何も入っていない。 晴翔が綿を掴んで取り出した。 ひらり、と紙切れが綿の下から落ちた。 「なんだろう」 二つ折りの紙を拾い上げる。それは紙切れではなく写真だった。 広げた写真を見詰めて、理玖は息を飲んだ。 セピア色の写真には、五人の人間が映っている。 写真の下に走り書きがしてあった。 『2014.1.13 叶 成人式。庭先にて』 理玖と同じように息を飲んで、晴翔が写真を見詰めていた。 「この、袴を着ている男性が、臥龍岡先生なんでしょうか」 信じられないような晴翔の声音には、理玖も頷けた。 今現在、理玖たちが知っている臥龍岡叶大とは顔がまるで別人だ。 「袴を着ているし、成人した叶は、この人物なんだろうけど……」 理玖は映っている他の人物を見比べた。 女性が二人に、男性が三人、そのうち一人が紋付袴を着た『叶』だろう。 「ここに映っている叶が臥龍岡先生なら、隣に映っている少年は鈴木圭君だね」 理玖は少年
Last Updated : 2025-10-08 Read more