Semua Bab only/otherなキミとなら: Bab 181 - Bab 190

258 Bab

第180話 眠っていた願い

 理玖が実験経過と躾マニュアルを凡そ読み終わった頃。 「やっと開いた……」  隣で寄木細工の秘密箱を開けるため苦戦していた晴翔が零した。 「細かくて難しかったです」  そう言いながら、蓋を開ける。 理玖は晴翔と中を覗き込んだ。 「なにもないね」  中には綿のようなものが敷き詰めてあるだけで、何も入っていない。 晴翔が綿を掴んで取り出した。  ひらり、と紙切れが綿の下から落ちた。 「なんだろう」  二つ折りの紙を拾い上げる。それは紙切れではなく写真だった。 広げた写真を見詰めて、理玖は息を飲んだ。 セピア色の写真には、五人の人間が映っている。 写真の下に走り書きがしてあった。 『2014.1.13 叶 成人式。庭先にて』  理玖と同じように息を飲んで、晴翔が写真を見詰めていた。 「この、袴を着ている男性が、臥龍岡先生なんでしょうか」  信じられないような晴翔の声音には、理玖も頷けた。 今現在、理玖たちが知っている臥龍岡叶大とは顔がまるで別人だ。 「袴を着ているし、成人した叶は、この人物なんだろうけど……」  理玖は映っている他の人物を見比べた。 女性が二人に、男性が三人、そのうち一人が紋付袴を着た『叶』だろう。 「ここに映っている叶が臥龍岡先生なら、隣に映っている少年は鈴木圭君だね」  理玖は少年
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第181話 守るフェロモン

 書類を仕舞って箪笥を元に戻すと、同じように鍵を掛けた。 指輪の鍵と木札を小物入れに仕舞い、國好に渡す。 「このアンティーク調の鍵は僕が責任もって保管します」「お願いします。……向井先生、礼音の件ですが」  國好が悔しそうに唇を噛んだ。 「今回の捜査から外す方向で検討します。礼音自身も心配ですが、それ以上に、ここから先は礼音の存在が足枷になります。必要な情報は既に得た。礼音がいない方がスムーズです」  栗花落の気持ちを考えれば、苦渋の決断なのだろう。 「そうですか。國好さんがそう判断されるなら、異論はありません。ただ、栗花落さんはonlyです。rulerの僕の側に居た方がある意味で安全であるとも、伝えておきます」  國好が不思議そうに顔を上げた。 「栗花落さんは臥龍岡先生が自分を覚えていないと話していましたが。秋風君とは仲が良かった様子だし、既に調べているでしょう。RoseHouse出身の警察官は、そう多くないでしょうし、僕の警護に付いているのも把握されていると考えた方がいい。栗花落さん自身が狙われる可能性もなくはない」  國好が蒼白な顔で息を飲んだ。 「一番、怖いのは臥龍岡叶大と鈴木圭の得体のしれないフェロモンです。積木君の話や佐藤さんの日記を読む限り、短時間の洗脳効果があり、定期的に接触することで効果を持続できる。依存性もありそうだ」「だとしたら余計に、これ以上、礼音を関わらせるわけにはいきません。確実に狙われて、捜査の弊害になる」  國好の表情が深刻さを増している。 理玖は、不意に思い付いた可能性について、考え込んだ。 「ちょっと……、試してみたいことがあるんですが、良いですか?」
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第182話《6/9㈪》早朝の入電①

 頭の上でアラーム音が鳴って、理玖は目を覚ました。 手探りでベッドサイドを探る。 その手に、スマホが手渡された。 「まだ五時過ぎ……、なんで、アラーム……。理玖さん、電話みたいですよ」  理玖を抱いていた晴翔が眠たい目を擦っている。 (……あれ? どういう状況? 寝てた……のかな? 確か……)  記憶の糸を手繰り寄せる。 佐藤の秘密を暴露して、栗花落にフェロモンを流し込んで、そのまま眠ってしまった。 理玖は周囲を眺めた。 自分の家の、自分のベッドだ。 (運ばれて、そのまま寝ちゃってたのか)  訳が分からないが、とりあえず電話が鳴っているから取った方がいいんだろう。 なり続けるスマホに表示された名前を見付けて、理玖は起き上がった。 「羽生部長ですか、おはようございます」『寝ていたか。早朝にすまない。取り急ぎ、伝えたいことがあってな』  羽生の声に緊張感が籠っている。 理玖は咄嗟に電話をスピーカーに切り替えた。 一瞬で、目が覚めた。 『例の証拠は掴んだ。共有クラウドにアップしておいたから、確認してくれ。見てもらえばわかるが、期待以上の内容だ』  羽生の言葉に、理玖は息を飲んだ。 普段から、大袈裟な言い回しをしない人だ。その羽生が期待以上というのだから、相当な内容なんだろう。 共有クラウドは理玖以外に、國好、福澤が閲覧可能だ。警察の目にもすぐに入る。 「それ以外に、気になることが、あったんですね」
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第183話《6/9㈪》早朝の入電②

 そのデータにRoseHouseは一切出てこない。 まさに奥井に罪を被せるためのデータだ。改ざんされていると考えた方が自然だ。 『部門科長や幹部クラスが管理するクラウドに保存されたデータは、削除した内容も含めて十年、保存される。仮に改ざんがあった場合、不自然な痕跡が見つかれば疑いはかかる。十年分の修正が発覚すれば、それ以前を疑うのは必然だ。奥井のかけた保険だったんだろうが、かえって役に立った。状況から考えて、改ざんはなさそうに思うがな』  改ざんすれば痕跡が残り、余計に疑われるシステムだ。 痕跡さえ見つかれば、RoseHouseを叩く糸口にはなるかもしれないが。安倍千晴が羽生にデータを掴ませようと動いた以上、可能性は低そうだ。 「最初から、RoseHouseの干渉を書き込まなかったと考えるべきですね」  Doll発足の十五年前から、理研には暗黙にRoseHouseを庇う姿勢が既にあったのだろう。 『……RoseHouseの中に、病院施設があるのを知っているな。あそこに、RoseHouseが行っている実験のデータが保管されている。それに関しては理研にはデータがない。俺の立場でもRoseHouseから持ち出すのは難しいな』  理玖は、はっと気が付いた。 Dollでしていた実験は、あくまで理研の実験だ。 未認可の薬を試したり、人工的にspouseを作ろうとしたり、rulerにspouseを作らせようとする。 それらの実験は、総て実行のリーダーが理研の奥井だった。 「RoseHouse内にガサ入れ出来ないと、意味がないんですね」『もう一つのデータにDollからRoseHouseへの寄付金の流れの詳細が載っている。その方面からなら叩けるが、弱いだろうな』  改めて、理研がRoseHouseを守ろうとする姿勢を思い知った
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第184話 早めの朝ごはん

 羽生からの電話ですっかり目が覚めてしまったので、シャワーを浴びて朝食をとった。 昨日は栗花落に鎮静のフェロモンを吹き込んで、理玖はそのまま眠ってしまったらしい。 晴翔はあの場で目が覚めて、業平と共に理玖を送り届けてくれた。 國好は栗花落に心配しきりで、眠ったままの栗花落を連れて早々に帰ったそうだ。 「栗花落さんは捜査から外れるんですかね」  目玉焼きを食べながら、晴翔が息を吐いた。 國好は、外す方向で検討すると話した。 栗花落の姿からしても、理玖としてもこれ以上のゴリ押しはできない。 「昨日の様子からしたら、それが妥当だろうね。捜査の状況的にも、彼のメンタル的にも」  今更、栗花落が抜ける状況は、理玖的にも痛い。 栗花落の中にはRoseHouseの実体験が詰まっている。まだまだ詰まっている情報を引き出したい気持ちもあるが。無理にそれをすれば、栗花落のメンタルが壊れる。 「総てを拾い上げる覚悟、か」  晴翔が、ぽそりと呟いた。 「理玖さんは、どうやってRoseHouseを破壊するつもりなんですか」  晴翔の真摯な目が理玖に向く。 「まだ具体的なプランはないんだ。だけど、物理的にも社会的にも、この社会から消したいと思ってる」「消す……?」  理玖は晴翔に向かい、頷いた。 「RoseHouseは閉鎖して更地に持っていきたい。安倍晴子には逮捕されてもらう。あの場所も躾も間違っていた。だから、失墜したと知らしめたい。その為の手段に、子供たちの出生を関わらせる気はない」「それは、体外受精やクローン実験を公にしないってことですか?」 
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第185話 収束に向かい始めた事件

 結局、眼鏡を買いに行く暇がなかった。 仕方がなく、今日は大学にコンタクトで出勤したのだが。とりあえず、伊達眼鏡をかけることにした。 「前の黒縁と違って、素顔が丸見えですね」  晴翔が重い溜息を吐いた。 今日かけている伊達眼鏡はフレームが細くてシルバーだし、レンズも小さい。顔全体に占める眼鏡の面積は前より小さくて主張が少なめなのは事実だが。 「僕の顔を気にする人なんかいないから、心配ないよ。気にしているの、晴翔君だけだよ」  眼鏡がないと気になるし、童顔を隠したいのも本音だから、理玖にとって眼鏡は必須アイテムだ。 だが、素顔でいると理玖以上に晴翔が落ち着かないので、掛けざるを得なかった。 「今日も充分、可愛いですから」  じっとりとした目で、頬にキスされる。 何とも言えない気持ちながら、ちょっと嬉しい。 「そういえば今日、國好さんが遅いですね」  出勤すると理玖たちより早くに待機していて、挨拶をしてから外回りに付いてくれるのが常だ。 「栗花落さん、何かあったのかな」  理玖が今朝まで目を覚まさなかったくらいだ。 栗花落も似たような状況には違いない。 そんな話をしていたら、研究室の扉がノックされた。 「失礼します、向井先生……」  入ってきたのは唐木田だった。 明らかに顔が引き攣っている。 「緊急事態ですか?」  理玖の問いかけに、唐木田が頷いた。 「今朝方、送付されてきた理研の羽生部長からのデータ、向井先生も確認さ
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第186話 記述のない真実

「その前に、USBだね。確認しておかないと」  理玖はデスクで個人使用のPCを開いた。 昨日、迎賓館で見付けたUSBを差し込む。 三つあるフォルダのうち、一つを開いた。 「さしあたっては昨日、見付けた書類をPDFで保存しているだけのようだけど……」  一つのフォルダは躾マニュアル、もう一つのフォルダはRoseHouseの実験結果だ。 (羽生部長が話していたRoseHouseにしかない実験結果のデータ。十年前までの分なら、ここにある)  残りの十年分も、入手したい所だ。 理玖は何気なく、最後の一つのフォルダに目を向けた。『S』とタイトルが付いたフォルダに、手が止まった。 「理玖さん?」  晴翔が不思議そうな顔をしている。 だが、咄嗟に手が動かなかった。 「あ……、ぅん。開いて、みようか」  震えそうになる指でマウスをクリックする。『S』のフォルダを開くと、『Spyri‘s note』の表紙が現れた。 「……ぁぁ、やっぱり、そうか」  空っぽな落胆の声が出た。 理玖にとってあってほしくなかった現実が目の前に広がっている。 理玖の顔を見詰めて、晴翔の表情が強張った。 「……理玖さんの、曾お爺さんの実験、ですか? でも、レイノルド・シュピリの実験自体は違法ではないでしょう? 法規制が整ってからは実験を中止しているんですよね。責任を問うべきは利用した安倍晴子です」  晴翔の言う通り、後ろ
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第187話《6/10㈫》途中経過

 次の日には國好からWO犯罪対策班の会議の詳細を聞けた。 「本日中に奥井照正に殺人未遂容疑の逮捕状を申請、理科学研究所WO少子化対策部及びWO研究部には、今週中に家宅捜索が入ります」「殺人未遂ですか?」  國好から飛び出した意外な罪状に、理玖は思わず聞き返した。 「深津祐里に飲ませようと送り付けた、抑制剤と偽った興奮剤。更には五年前、積木莉汐に興奮剤を規定値以上に注射し酩酊状態にして屋上から落下させた点。この二点が間接的ながら傷害と殺人未遂にあたります。その他、薬事法違反や不法侵入などの細かい罪状も含めると実刑は間違いありません」  國好が興奮気味に語る。 表情は変化ないが、言葉もいつもより強い。 「奥井はDollのリーダーとして検挙されます。Dollが理研の指示で動いていた事実も、裁判で明らかに出来るでしょう。より具体的な罪状が追加になると思います」  WO犯罪対策班が長年、追いかけてきたDollをようやく白日の下に晒せる。 國好にとっては積年の想いがやっと結んだ。 「しかし、実験に絡めてRoseHouseの関わりを明らかにするには至りませんでした。所長の安倍千晴については今後の裁判次第になりますが、どこまで追求できるか、わかりません」  國好の顔が曇った。 羽生が入手したデータ自体が、安倍千晴が自分の首の代わりに差し出した生贄のようなものだ。難しい所だろうと、理玖も思う。 「理研にガサが入れば、千晴所長も逃げきれないかもしれません。その辺りは羽生部長が上手くやってくれそうな気がします」  それも含めて、羽生は理研に残り権限と立場を得たのだろうと理玖は考えている。 「俺もそう考えます。羽生部長も、はっきりとは言いませんでしたが、それらしい物言いをしていましたから
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第188話 誘惑と取引①

 火曜の二限には二年生のWOの講義が入っている。 PC作業の手を止めて、晴翔は時計を確認した。 「そろそろ、理玖さんの講義が終わるかな。片付けの手伝い、行かなきゃ」  小休憩のつもりでコーヒーを手にすると、ソファに座り込んだ。  頭の中が真っ白で、何も思い浮かばない。  昨日、理玖からあの話を聞いてから、ずっとそうだ。 (別にいいんだ。俺が見ている、俺が知ってる理玖さんが、俺の側に居てくれたら、それでいい。それでいいのに)  胸の中にぼんやり広がる不安の正体に、自分はきっと気が付いている。 なのに、気が付きたくなくて、わからない振りをしている。 (理玖さんは今までどんな思いで……。だから日曜日も、あんなに余裕ない感じで栗花落さんを攻めて……。いつから気が付いていたんだ……)  色んな思いが錯綜して、思考が纏まらない。 晴翔はソファにゴロリと横になった。  不意に折笠の顔が浮かんで、解せない気持ちになった。 (折笠先生は、臥龍岡先生や鈴木君が安倍忠行の……、恩師のクローンだって、知っていた、んだよな)  臥龍岡叶大は別にしても、鈴木圭に関しては産まれた時から知っていてもおかしくない。 その後、あの書類を安倍忠行から託されたなら、二人がクローンだと知ったはずだ。 (恩師と同じ人間だと知った上で、愛人だった。本当に愛人だったのかな。いやでも、セックスしてたんだし。発情対策? otherになる薬の実験のため? どんな気持ちで、抱いていたんだろう)  まるで父親のように守
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第189話 誘惑と取引②

「そんな礼音だから、知ってはいけないコトまで知ってしまったんだね。『あの部屋』で、マザーにいっぱい、叱られたでしょ。だから礼音は今でも、他の子より過換気を起こしやすいんだよ。忘れなきゃいけないことまで覚えている、悪い子だから」  栗花落がひくりと肩を上げて呼吸をした。 胸を掴んで、息を止めている。 晴翔は國好がするように栗花落を抱きしめた。 奥にある長椅子に一緒に腰掛ける。 (知ってはいけないコトって、人工授精やクローンのことか。栗花落さんは、自分が知ってることを秋風音也以外知らないって話していたけど、違うのか? 栗花落さんの存在に気が付いてから、調べたのか?)  鈴木の言葉はまるで、忘れさせるための折檻を『あの部屋』で行った、と言っているように聞こえる。 理玖たちと事件に関わって、心の奥底に仕舞い込んだ記憶の蓋が開いてしまったのだろうか。 「あの部屋……、マザー……、怖い、痛いの、嫌だ。良い子になるから、許して……」  晴翔の腕から逃れようと、栗花落が暴れ出した。 (記憶がフラッシュバックして幼児退行した時と、同じだ。記憶を抉って、わざと栗花落さんを煽ってる)  よく考えれば、今日の栗花落は会った瞬間から変だった。 既に、この部屋で鈴木に何かされていたのかもしれない。 (鈴木圭の特殊なフェロモン。でもそれは、理玖さんのrulerのフェロモンで防げたはず。効果なかったのか?)  晴翔は震える栗花落を鈴木から隠すように包んだ。 「大丈夫だから、怯えなくていい。栗花落さんは間違ってない。RoseHouseなんか、全部忘れていい。助けてっていうのは、間違いなんかじゃないんです」
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