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only/otherなキミとなら のすべてのチャプター: チャプター 191 - チャプター 200

206 チャプター

第190話 誘惑と取引③

 晴翔の腕の中で鈴木の股間に栗花落が頬擦りする。栗花落の頭を鈴木が撫でた。 「さっきの話の続きですが、礼音は向井先生の側に居るだけで、僕らが期待する仕事をしてくれる。向井先生は礼音から色んな情報を引き出せたでしょう? だから敢えて手出しせず、側に居てもらおうと思ったんです」「俺たちにRoseHouseの実態を掴ませるのが、君らの目的なのか?」  鈴木が首を傾げて笑った。 その顔は可愛らしくて、とても無垢だ。 かえって怖い。 「ある程度、RoseHouseについて知ってもらえないと、向井先生を引き込めないから。僕たちにとって向井先生は神で、spouseになった空咲さんは特別です。マザーは向井先生がほしいんですよ」  どくり、と心臓が下がった。 鈴木の晴翔を見下ろす目が、仄暗く染まって見えた。 「でもこれ以上、礼音に無理させるのは可哀想だから。僕らは同郷の出身者を大事にします。だから、引き取ろうと思って」  栗花落の顎を上向けて、鈴木がまた深いキスをした。 自分から顔を寄せて、栗花落が鈴木の唇を吸った。 腕の中の栗花落の顔が、徐々に蕩けていく。 「ぁ……、や……、きもちぃ、もっとぉ……」  栗花落の股間が硬さを増す。 晴翔は鈴木から栗花落を引き剥がした。 「こんな風に快楽で支配して、頭を使わせない状態にするのが、君らの言う大事にするってことなのか? 栗花落さんは嫌々、警察になった訳でも、この事件に関わっている訳でもない。栗花落さんなりに戦ってるんだ」  自分の股間に栗花落の顔を押し付ける鈴木から、その体を奪う。 栗花落を羽交い絞めにするつもりで
last update最終更新日 : 2025-10-16
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第191話 七不思議解明サークル顧問・蘆屋先生

 うつらうつらと寝こける栗花落を抱いて、晴翔は困っていた。 栗花落を理玖の所に連れていけば、鈴木圭のフェロモンを中和してもらえる。 だが同時に、今起こった事態を説明しなければならなくなる。 (秘密にしないと、栗花落さんがまた狙われる。今夜の約束も、話せない)  とはいえ、いつまでもこの部屋にいるわけにはいかない。 第一研究棟103号室は七不思議解明サークルのサークル室だ。 DollとRISEの協力者と思われる七不思議解明サークルに関わる場所に長居は危険だ。 (いくら鈴木君から仕掛けてきたとはいえ、いや、だからこそ危険か。あの得体のしれない感じ、秋風君とは違う意味で違和感だ)  晴翔が知っていた鈴木圭とは明らかに違っていた。 (普段は演技で、あの感じが性根なんだろうな。臥龍岡先生にそっくりだ)  人の心の内面まで見透かしたような、その上で掌の上で転がしているような笑い方や話し方、余裕ぶった表情。人当たりが良さそうに笑いながら人を値踏みしている目。全部が気持ち悪い。  窓の外に人影を感じて、見上げた。 清掃員姿の男が背を向けて掃除をしていた。 鍵を開けて、窓を薄く開く。 「今日から栗花落さんに一人、付いてくれるか。今夜は理玖さんにも手厚く。一人は俺に」  清掃員が帽子のつばを握って被り直すような仕草をした。 掃除しながら、少しずつ離れていった。 (まさかSPがバレていたとはなぁ。素人だからって甘く見ちゃダメか)  理玖に危険が及ばないよう、あくまで身辺警護の意味合いで呼んだSPだ。 身分を明かす前から入れているので、理玖にも警察にも話すタイミングを失ったまま、今に至っている。
last update最終更新日 : 2025-10-17
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第192話 折笠の友人

 理玖に頼まれて七不思議解明サークルについて調べていた晴翔が、ギリギリ覚えていた情報。 顧問の蘆屋道行はnormalで、医学部の教授であること。 サークル長の小林裕真はonlyで、RoseHouse出身者で秋風と仲が良いこと。 その他のサークル員四名はRoseHouseとは関わりがないWOだったこと。  「どうして蘆屋先生が、ここに……」  鈴木との話し合いが終わった頃合いでやってきて、理玖に電話連絡をしていたことも。 ICレコーダーを手にしている状況も、全くわからない。 混乱する晴翔に向かい、蘆屋が指をさした。 「とりあえず、ずらかるから。その子、背負って一緒に来い。この部屋、鍵かけにゃならん」「はい……」  敵なのか味方なのかも、よくわからない。 だが今は、言う通りにするしかない。 蘆屋に手を借りながら栗花落を背負うと、晴翔は部屋を出た。 「俺が君らを見付けて部屋に鍵を掛ける分には問題ないんだよ。今のこの状況なら、君が俺の部屋にその子を連れてくるのも、特に問題ないだろ、多分」「はぁ……」  蘆屋がICレコーダーを晴翔に手渡した。 「あの部屋はねぇ、盗聴器ついてんだよ。だから君らが何を話していたか、俺は知ってるんだけど。それを圭は知らない」「どうして、そんなもの……。七不思議解明サークルはRISEじゃないんですか?」「違うよ」  蘆屋がにべもなく否定した。 「違うけど、そうでもある。だから、会話の内容は、君が望むなら向井君に内緒にするけど、どうする?」「どう、って。この状態で戻ったら、どの
last update最終更新日 : 2025-10-18
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第193話 七不思議解明サークル①

 部屋の中に入ると、理玖と國好が待機していた。 思わず気まずくて、目を逸らしてしまった。 「理玖さん、國好さん……、勝手に動いて、すみません」  歩み寄った國好が、晴翔の背中から栗花落を降ろした。 「いいえ。白石襲撃に続き、大事な時に場を離れた俺の失態です。すみませんでした」  栗花落を抱きかかえたまま、國好が頭を下げた。 「いえ……。國好さんが理玖さんに付いているって知っていて、俺が出ていったんです。もう少し早くに戻られていたら、俺が困ってました」  理玖に付いていた國好が晴翔を迎えに戻ってから一緒に講堂の片付けに向かう予定でいた。 タイミングとしてはギリギリだったろう。 國好が悔しそうに首を振った。 「しかも空咲さんは栗花落を助けるために向かってくださった。警察官が一般人に迷惑をかけるなど、言語道断です」  國好が悔しそうに栗花落を見詰める。 栗花落の顔に理玖が手を伸ばした。 「僕のフェロモンがもう少し効果があれば良かったんですが。二日も経つと流石に無理だったみたいだね」  フェロモンは短時間で単発的な効果しかないと、理玖は前に話していた。 中々フェロモンが効かなかったと話していた鈴木の言から考えれば、理玖が保険でかけた鎮静フェロモンが全く効果がなかったわけではないのだろうが。助けるには至らなかった。 「俺と会う前に鈴木君のフェロモンを相当、吸わされたみたいで。その影響で栗花落さんは警官をやめてRISEに入ると、RoseHouseを守ると話していました」  國好の顔が更に悔しそうに歪んだ。 
last update最終更新日 : 2025-10-19
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第194話 七不思議解明サークル②

「昨日、秋風君に? もしかして、栗花落さんのこと?」  それはつまり、秋風が今日の作戦を悩んでいた証であり、RISEのやり方に疑問を持っている証だ。 小林が眼鏡を上げながら深く頷いた。 「秋風はこのままRISEにいるべきか、迷っています。だけど、抜け出せない。彼のしがらみは、髪の毛についてしまったガムよりしつこい。もしくは難易度マックスの知恵の輪です」  分かり易いが、その例えはどうだろうと思った。 「小林君は昨日、秋風君にこう相談されたそうだよ。もし自分が栗花落礼音を犯してしまったら、向井先生に助けてって伝えてほしいって」  理玖が小林の話を補足してくれた。 「秋風にとって、栗花落さんは大事な友達だそうです。だけど、同じくらい臥龍岡先生や圭が大事なんだそうです。味方でいたいけど、栗花落さんを巻き込むようなやり方だけはしたくないと、そう言っていました」  小林の話に、晴翔は唇を噛んだ。 「臥龍岡先生なら、栗花落さんに手を出してくるだろうと、僕は考えていたけど。秋風君にとって、栗花落さんが最後の一線だったようだね」  理玖の言葉に余計、心が詰まった。 秋風もまた、自分の心を潰してRoseHouseに貢献している。 「盗聴器やICレコーダーは、その為に?」  晴翔は蘆屋を振り返った。 「小林君がやってみたいって、しつこいからさぁ。自分のサークル室に仕掛けるなら違法じゃないし、あくまで遊びのつもりでね。まさか今日の午前中にあの場所でセックスしたり脅迫めいた話をする人がいるなんて思わないだろ」  ふいっと顔を逸らして、蘆屋がべっと舌を出した。 「ジェームズ・ボ
last update最終更新日 : 2025-10-19
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第195話 七不思議解明サークル③

「小林君のスパイ活動のお陰で、色々知れて助かったよ。恐らく秋風君は今も鈴木君のフェロモンで夢の中だ。そうなると予想していたから、昨日のうちに小林君に助けを求めた。小林君が蘆屋先生にヘルプするとも予想していたでしょうね」  小林が満足そうに得意げな顔をした。 理玖の目が蘆屋に向く。 「折笠先生なら、どうすると思いますか?」  理玖の問いかけに、蘆屋が頭を掻いた。 「放ってはおかないだろ。折笠にとって臥龍岡先生も圭も大事な愛人だ。薔薇の園の呪いを解くために自殺したのに、これじゃ死に損だからね。まだ死んでないけど」「どういう意味です?」  眉間に皺が寄ったのに、自分でもわかった。 「RoseHouseやマザーの教えっていう呪縛を解いてあげたかったんだってさ。孤児とはいえ施設の子供に人殺しさせようとする躾が正しいわけないだろ。だから死んで、わからせてやろうと思う、とか言ってね。いつもの冗談だと思って聞き流したけど、まさか本気だったとは俺も思わなかったよ」  蘆屋の話し方は怠そうだが、表情が悲痛で、晴翔は息を飲んだ。 (臥龍岡先生や鈴木君が安倍忠行のクローンだってことも、RoseHouseの実態も、蘆屋先生は知らないんだ。だから孤児って思ってる。いくら友人でも、流石にそこまでは話さないか)  本人たちが間接的な協力者といっているくらいだ。 核心に迫る話はしなかったのだろう。 (安倍晴子は自分の子に人殺しをさせようとした。事実はさらに重い)  頼りにしていた大事な人を失っても、臥龍岡は止まらなかった。 目は醒めていないのだろう。 蘆屋がこうして動き出したのも、聞き流してしまった自責なのかもしれない。 
last update最終更新日 : 2025-10-20
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第196話 七不思議解明サークル④

「二人には他にも、栗花落さんを守ってもらう仕事があります。彼にはRISEに潜入捜査してもらいますから」  國好が、あからさまに顔を顰めた。 「理玖さん、流石にそれは酷すぎます。あの状態の栗花落さんをRISEに行かせるなんて」  鈴木のフェロモンに犯されて意に反した決断をしていた栗花落を、國好の名を呼んでいた栗花落を、理玖は見ていない。 あの姿を見たら、そんな提案はできないはずだ。 「恐らく、正気を戻した栗花落さんは自分からRISEに行くでしょう。退職届を出してね。僕は栗花落さんを失う気はない。今の彼が出来得る仕事を宛がうべきです。RISEへの違和感のない潜入は、今の彼にしかできません」  理玖は國好を見詰めた。 國好の顔に戸惑いが浮いている。 「しかし、鈴木のフェロモンで正気を失えば、臥龍岡の操り人形になりかねません」「それも込みです。RISEには佐藤さんがいます。本気の犯罪に栗花落さんを巻き込みはしません」  國好の顔から、否定の色が消えた。 「恐らく、RISEでの栗花落さんの扱いは人質止まりです。臥龍岡先生が栗花落さんを連れ戻したい本当の理由は、彼の口から実体験が語られることの阻止。リアルな現実をこれ以上、僕らに知られないために、栗花落さんに自分の意志でRoseHouseに恭順させたいんです」  晴翔は、鈴木とのさっきのやり取りを思い出していた。 (栗花落さんを通して理玖さんに、ある程度の情報を得させようとしたけど、思った以上に栗花落さんが突っ込んだ事実を知っていて、それを理玖さんに話してしまったから。これ以上は放置できないと考えたのか)  秋風から栗花落礼音の存在を聞いて調べるのは臥龍岡にとっては簡単だ。 晴翔を呼び出す前に、栗花落をレイ
last update最終更新日 : 2025-10-20
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第197話 秘密の会合

 約束の夜、二十一時五十分。 晴翔は一人、プルマンリッドホテルのフロアにいた。 (本当に理玖さんにも國好さんにも内緒で出てきちゃったな)  Sky総研のSPは一人、同行させているが、念のため一キロ圏内まで離れている。 晴翔はエレベーターに乗り込み、最上階へと向かった。 ピアスの抑制剤を確認しつつ、一番上の小さなピアスに触れる。 今日の帰り際に理玖がくれたピアスだった。 『前から渡そうと思ってたんだけど、タイミングがなくて。その……御守りみたいなもの』  そう言って目を逸らす理玖は、いつもより可愛かった。 (毎日、一緒にいるのに渡すタイミング失い続けてる理玖さん、可愛い。理玖さんが俺のために選んでくれたピアスとか、速攻で付けるに決まってる)  指でスリスリ撫でながら、エレベーターを降りる。 ピアスに勇気をもらって、晴翔は1503号室の部屋の前に立った。 一度、大きく深呼吸して部屋のベルを鳴らす。すぐに扉が開いて臥龍岡叶大が顔を出した。 「お待ちしていました。中へどうぞ」  にこやかに出迎えて、中へと誘われる。 広い部屋の奥には大きな窓が広がる。ぼんやりした夜景が壁にかかる絵画のようだった。 「時間通りですね。真面目な空咲君らしい」  臥龍岡がシャンパンの瓶を持ち挙げた。 「如何です?」「車なので、遠慮します」「それは、残念。カフェインレスのコーヒーにでもしておきますか」  想定していたように、ドリップコーヒーを取り出した。 二人掛けのソファを手で勧められ、とりあえず腰を下ろした。
last update最終更新日 : 2025-10-21
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第198話 向井理玖の秘密

 鈴木圭と同じ顔で同じ仕草で、臥龍岡叶大が笑む。 不気味な空気を感じながら、晴翔は息を飲んだ。 (Spyri`s noteが佐藤さんが隠したUSBから見つかった以上、RoseHouseが持っていたのは明らかだ。ドイツの、理玖さんの曾お爺さんの研究室から持ってきたのは、間違いない)  譲り受けたのか盗んだのかは知れないが、安倍晴子が持ち帰ったのだろう。 RoseHouseで行われているWOを確実に生み出す手法は、Spyri`s noteを下敷きにしている可能性が高いと理玖は話していた。 安倍晴子の息子であり薔薇の園に長く従事していた臥龍岡が、Spyri`s noteの存在や内容を知っていても不思議ではない。 (noteの中では、結果としてレイノルド・シュピリはクローン実験に一度も成功していない。臥龍岡が理玖さんの事実を知るはずはない)  遊ぶような目で晴翔を眺めていた臥龍岡が、口を開いた。 「向井理玖はonlyの中でも特別なruler、だからこそ孤高の天才足り得る。WOに関わる人間なら一度は聞く、界隈の有名な噂です。Sky総研副社長の空咲さんなら、御存じですよね」  晴翔は頷いた。今更、晴翔の肩書を臥龍岡が知っていようと驚かない。 噂についても同じだ。その真意を確かめるために、晴翔は慶愛大に理玖に会いに来た。 「向井先生はrulerだから天才なわけじゃない。rulerも天才も生まれる前から約束されていた。そんな風に作られた人間なんです」  ドクリ、と心臓が下がって鼓動が徐々に速さを増した。 (やっぱり知ってる。理玖さんの真実を、臥龍岡は掴んでる) 「どうして、臥龍岡先生がその話を知っているんですか。それを聞いて、俺が信じると思うんですか?」  臥
last update最終更新日 : 2025-10-22
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第199話 ベッドで交渉①

 コーヒーを煽る晴翔を、臥龍岡が笑んで眺めた。 「そのコーヒーに興奮剤が混ざっていたら、spouseの空咲さんでも興奮して、私を押し倒したくなりますよ。ベッドが役に立ってしまいますね」  臥龍岡が楽しそうな顔を向ける。 それは既に白石凌の襲撃で経験済みだ。 「薬で興奮すれば、それが導入剤になって私のフェロモンも効果が出ますね。私のフェロモンは特殊なので、たっぷり気持ち善くなれる代わりに私の言葉を疑わない程、私を好きになれる媚薬です」  媚薬、という表現は言い得て妙だと思った。 「佐藤さんも、そんな風に取り込んだんですか」  コーヒーカップを持ったまま、晴翔は問い掛けた。 臥龍岡の表情が一瞬、止まった気がした。 「どうでしょう。個人的に従順なお人形より、嫌がりながら私の体にハマって沼る殿方を愛でるのが好きなので。空咲さんが、そんな風に私にハマってくれたら楽しいですね」  何とも良い性格をしている。 意外だとも思わない所が余計に臥龍岡の性格のヤバさを感じる。 (理玖さんの推理だと、臥龍岡は佐藤さんに自分の特殊なフェロモンを使用していない。それどころか、積木君や秋風君にフェロモンを使っているのは鈴木圭が主だ。何故だろう)  十年前の時点で、花園叶は特殊なフェロモンを佐藤に使用している。 感情を上塗りされて叶を愛した佐藤は、spouse実験に巻き込まれた。 折笠が逃がしてくれなければ、spouseになっていたかもしれない。  ある可能性に気が付いて、晴翔はもう一口、コーヒーを含んだ。 「試してみますか? 俺が貴方にハマるかどうか」  もう一口、コーヒーを
last update最終更新日 : 2025-10-23
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