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203 チャプター

第200話 ベッドで交渉②

 起き上がった臥龍岡が腰を動かして晴翔の股間に自分の股間を押し当てた。 「あーぁ、バレちゃいましたね。まさか向井先生ではなく空咲さんに指摘されるとは思いませんでした」  臥龍岡が、いともあっさり誤魔化しもせず白状した。 「昼間、鈴木君に興奮剤を持たせて俺を襲わせれば、話は早かったと思いますが。何故、そうしなかったんですか」  洗脳が使える鈴木を使えば早かったはずだ。 わざわざあんな手の込んだ真似をしてまで晴翔を呼び出すのは、二度手間だしリスキーだ。 「空咲さんを洗脳しても、無意味だからです。空咲さんには空咲さんのまま、向井先生の隣にいてもらわないと、困ります」  臥龍岡が晴翔の唇に指を押し当てた。 「昼間の演出は栗花落礼音の心を折るためでもありましたけど。それ以上に、空咲さんの心を乱す為です。正義感の強い空咲さんは圭のやり方に怒りを覚えたでしょう? 今宵の誘いには絶対に乗ってくれるだろうし、怒りで心を乱したまま、私に会いに来てくれる。交渉を有利に進めるための前座です」  まんまと臥龍岡の戦略にハマったのだなと思った。 実際、晴翔はその通りの心境でこの場所に来た。 そう気が付いても、先程までの怒りも焦りも込み上げてこなかった。 「話しているうちに空咲さんが冷静になっちゃったので、切り替えたつもりでしたけど。空咲さんて、向井先生相手じゃないと勃起しないんですか? それとも、フェロモン感じないと勃たないんですか?」  臥龍岡が晴翔の上で腰を振る。 気持ちいいが、欲情しない。 「知りませんよ。少なくとも、貴方相手では無理みたいです」  自分でも正直、ビックリしている。 股間が驚くほど反応しない。
last update最終更新日 : 2025-10-24
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第201話 交渉のテーブル①

 改めて淹れ直したコーヒーを、臥龍岡が晴翔に差し出した。 晴翔は部屋に来た時のように臥龍岡に向かい合ってソファに座った。 (自分の推理が読まれるのは構わないって、理玖さん言ってたけど。何処まで読まれてもいいんだろう)  晴翔なら手の内は隠しておきたい。 そのほうが、どう考えても有利だ。 (有利になる必要はないってコトなのかな)  コーヒーに映る自分の顔を眺めながら、臥龍岡がクスリと笑った。 「空咲さんがそれだけ無防備に私と圭の関係を会話の中に撒き散らしているってことは、少なくとも向井先生と空咲さんの間では共通認識。ソースは私が提示した種以外なら、栗花落礼音、更にもう一つ、向井先生が手に入れた形に残る何か。ソースが礼音なら、警察官の國好明良も把握している」  臥龍岡の目が上がった。 その顔は、すっかりいつもの臥龍岡に戻っていた。 「yesなら沈黙で構いませんよ」  咄嗟に反応できなくて、晴翔は黙った。 無理に否定する必要がなくて、言葉が出なかった。 (臥龍岡先生の会話運びは巧みだ。俺の小さな心の動きを掴んで利用してくる。まるで心の内を全部見透かされているみたいだ) 「最初にヒントを与えたのは私ですし、RoseHouseの真実に辿り着くのは大歓迎です。動かぬ証拠があっても、向井先生は告発しないでしょうから」  臥龍岡が平然とコーヒーを啜る。 「動かぬ証拠を、警察官も把握しているんですよ。RoseHouseは、いつガサが入ってもおかしくない状況です」「しないでしょう。國好明良には出来ない。何故なら、栗花落礼音は彼の家族だから」  晴翔は、ぐっと言葉を飲
last update最終更新日 : 2025-10-25
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第202話 交渉のテーブル②

「有り得ない、そんなの……Spyri`s noteには記載がなかった」「Spyri`s noteには全例失敗の記述のみ。日本での実験なんて、書かれていなかったでしょう。記載なんかできませんよ。文献に残して誰かの目に触れたら、世界中がパニックです。特に向井先生は特別です。私や圭のように、ただのクローンではないのだから」  臥龍岡の口から、クローンという言葉が初めて飛び出した。 「レイノルド・シュピリが最も作りたかった人間は、自分以上に高い能力を有した特別なonly。彼はrulerになりたかった。その生態を余すことなく調べ尽くすためにね。レイノルド・シュピリはWO学術界の父とも呼ばれる存在ですが、残念ながらrulerではなかったんです」  恐る恐る顔を上げる。 「じゃぁ、理玖さんは、成功例……?」  臥龍岡が頷いた。 「レイノルド・シュピリが唯一残したmasterpeace、世界にたった一人しか存在しない、人工的に作られたrulerです」「人工的に……」  響きがあまりに乾いていて、まるで人を指す言葉には思えない。 「至高の造形物ですよ。いや、物なんて言い方はmasterpeaceに対して失礼です。人間が神以上の御業で人間を生み出した。その証であり、向井先生自身が人を超越した存在、つまり神です。だから向井先生はRISEにとり、RoseHouseにとり神であり、晴子が最も欲しがる存在なんです」  一番初めに聞いたのは、積木大和の言葉だった。 それすらも晴翔は佐藤の録音データで聞いた。 『向井先生は我等の神です』  あの時とは、まるで違った意味に聴こえる。
last update最終更新日 : 2025-10-25
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