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All Chapters of only/otherなキミとなら: Chapter 231 - Chapter 240

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第230話 外野の意地①

 更待の体を診察し、一通り手当てする。大きな問題はなさそうだ。 腹部の打撲も口腔内の切傷も見た目より軽傷だった。  真野が悔しそうに俯いた。 「ごめん、先生。自分から首突っ込んだのに、更待さん連れ帰ってくんのが、やっとで。祐里も冴鳥先生も守れなかった。唐木田さんは完全に鈴木先輩のフェロモンにやられてたし、冴鳥先生も途中からおかしくなってた。あのままじゃ祐里も……。わかってんのに俺、二人を置いて逃げてきた。ごめん」  ふむ、と理玖は真野を眺めた。 とりあえず頭を撫でた。 「真野君は、よくやってくれた。充分すぎる働きだよ」  真野が困惑した顔を向ける。 「むしろ謝るべきは僕だ。真野君に事情を説明していなかった。色々、驚いたよね。とりあえず、栗花落さんにはRISEに潜入捜査に入ってもらってるんだ。だから、心配いらない」  理玖を眺めて、真野がポカンと口を開けた。 「え? 潜入? だったら、更待さんは知ってたの?」  腫れた頬を庇いながら、更待が顔を上げた。 「すみません。俺が必死じゃないと、鈴木に気付かれるから。説明も出来なくて……っ!」  口腔内の傷が沁みるんだろう。 冷蔵庫にあった冷感シートを晴翔が更待の左頬に貼ってやっていた。 「秋風君は自分から僕にSOSを出してきた。積木君と同じ条件で、僕はそれを受け入れた。立ち位置は栗花落さんと同じだと思ってくれていい」  困惑した表情で、真野が考えを纏めながら話す。 「じゃぁ……、大和と秋風先輩と栗花落さんは、RI
last updateLast Updated : 2025-11-16
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第231話 外野の意地②

「ということは、唐木田さんが本音で鈴木君に惚れてしまった可能性があるね」  國好があり得ない程、驚いた顔で腰を浮かせた。 何を質問したらいいか、わからない様子で口がハクハクしている。 「更待さんも唐木田さんも感情優位でフェロモンを感知する特殊な両性具有です。更待さんは匂いを感知する分、認識できますが、唐木田さんにはそれがない。だから一見すると、唐木田さんの方が感度が低く見える。けれど、唐木田さんは僅差でotherが優位です。onlyよりotherの方がフェロモンの煽りを受けるし、onlyの鈴木君のフェロモンも更待さんより強く感じるはずです」  さらさらっと語った理玖の説明に、國好が何度も頷く。 「今の説明は理解できました。それがどうなると、唐木田が鈴木圭に恋をした話になるのでしょうか」  恋をした、という表現が國好らしからぬ響きで、中々にピュアに聞こえる。 「唐木田さんはSAフェロモン受容体の絶対数が少ない。そもそもフェロモンを感知する力が弱いんです。鈴木君のフェロモンが特殊だと言っても、結局はSAフェロモンに違いない。受容体が興奮したとしても限界がある。その限界を底上げする要素は、感情しかありません」  國好が口を開けて唖然としている。 珍しい表情だなと思う。 「僕らの知らない所で、僕らが知らない接触があったのかもしれませんね。多少、好意に近い感情を持った段階でフェロモン効果が出れば、あとは洗脳のフェロモンで感情の底上げは無限に可能でしょうから」  國好の顔に安堵が降りた。 「そういう話なら、少しは納得できます」「問題は、唐木田さんが最初から鈴木君のフェロモンを受け入れていた場合ですかね。そういうつもりで洗脳されに行ったとしたら、フェロモンの効果が無くなればいいという
last updateLast Updated : 2025-11-17
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第232話 警察官の素質①

 理玖はふぅむ、と顎を摩った。 のっそりと立ち上がると、仮眠室に置いておいた大きな箱を持って戻った。 「これも僕の勝算の内の一つなんだけど、真野君にも渡しておこうか」  テーブルの上に置いた箱の蓋を開ける。 中には手のひらサイズの巾着が山のように入っている。 その一つを手に取り、巾着の中身を取り出した。 「何それ、飴?」  透明な密封袋に五つほど、白くて丸い飴玉が入っている。 「僕が作った特別製の兵糧丸。……を、模して作った鎮静丸だ!」  得意げに見せ付ける。 真野が不可解な顔をした。 「一昨日と昨日、理玖さんの実家に行ったんだ。その時に、レシピをママン……理玖さんのお母さんに聞いて作ったんだ。勿論、ただの兵糧丸ではないんだけど」「ママン? レシピ? 向井先生のお母さんて、料理研究家のローラ・向井なんだよね? 忍者飯も作れんの?」  晴翔の説明が中途半端で、余計に真野が首を傾げている。 「僕のrulerのフェロモンを食材に吸着させて作った。つまりこれは、僕の鎮静のフェロモンそのもの。直に使うほどではないけど、一定以上の効果は期待できる。一粒で晴翔君のフェロモンを五時間無効化したんだ!」  フェロモンを吸着させるのに糠や小麦粉、そば粉など試してみたが、一番吸着性が高く保存しても薬効が変わらなかったのがゼラチンだった。 硬めのゼラチンにフェロモンを吸着させ丸めて飴で薄くコーティングする。 兵糧丸をヒントに作った理玖のとっておきの奥の手だ。 「へぇ、凄いんだ」  真野があっさりめの返事を返した。
last updateLast Updated : 2025-11-18
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第233話 警察官の素質②

「で、この鎮静丸なんだけど。昨日これを作るのに、深津君と冴鳥先生に協力してもらってる。晴翔君だけが被験体じゃ不安だったし、人手も欲しかったからね。出来上がったサンプルは多めに渡してある」  真野がぱちくり、と目を見開いた。  冴鳥と深津の講義が終わってから理玖のアパートに来てもらって、四人で色々試したばかりだ。 まだ試作段階なので、効果を試すために持ち帰ってもらった。 今日の誘拐事件を考えると、タイミングとしては良かったと思う。 「持ってるだけじゃ、ダメなんだ。洗脳のフェロモンにかかっちゃったら、持ってても使おうって自分じゃ思えない」  真野が中々に鋭い指摘をした。 「まさに真野君が言った、それその通りでね。事前に口の中に含んででもいない限り、意味がない。真野君の話を聞いて思ったよ。だけど、誰かが持っていてくれれば、使える。特にフェロモンに左右されないnormalが持っていてくれたら」  理玖は真野の手をとり、どっさりと鎮静丸の巾着を渡した。 「真野君が持っていてくれるのが、一番、意味がある」  真野が手渡された巾着を見詰めた。 「ここから先は、どんな展開だろうと、恐らく危険が付きまとう。だから本当は真野君を巻き込みたくない。だけど、真野君にしか頼めない事態も起こり得ると思う。その時はこの鎮静丸でWOを守ってほしい」「……大和と、秋風先輩を味方に付ける作戦は、成功したよね。あとは、鈴木先輩?」  真野が顔を上げた。 「鈴木君と臥龍岡先生。僕は臥龍岡先生に、泣きながら助けてって、言わせたいんだよ」  理玖を見上げる真野の顔が、苦笑した。 「性格悪いね、先生。いいよ、危険じゃない範
last updateLast Updated : 2025-11-18
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第234話 お迎え①

 指定された十九時。 理玖の研究室の扉がノックされた。 警戒しながら、晴翔が扉を開く。 佐藤が立っていた。 「お迎えデースよ。茶会の場所までの案内は、俺だ。國好はいねぇよな。警察官は連れてくんなって言われてんだけど」  佐藤が部屋の中を見回す。 研究室には、理玖と晴翔しかいない。 「初めからそのつもりです。行きましょうか」  紙袋を持って、理玖は立ち上がった。 理玖の手元を佐藤がじっと見詰める。 「危険物じゃないですよ。臥龍岡先生と鈴木君にお土産です」  ふぅん、と鼻を鳴らして、佐藤が歩き出す。 理玖と晴翔はその後ろをついて歩いた。  陽が伸びたとはいえ、この時間の構内は暗い。 薄暗い学校は、それだけで怪談の空気感がある。 理玖は何となく、いつもより晴翔にくっ付いて歩いた。 「RISEの活動場所、七不思議だって話したの、覚えてるか?」  七不思議という単語に、理玖の肩がピクリと震える。 晴翔が、さりげなく理玖の手を握ってくれた。 「消去法であてるなら、体育館の泣き声ですかね。迎賓館や図書室は向かないし、呪いの研究室じゃないなら、それくらいしか残ってない」  晴翔が思い出しながら話す。 「ま、その通りだね。で、具体的にどこだと思う?」  佐藤の問いかけに、晴翔が考えながら首を捻った。 「体育倉庫の二階は人気もなくて使いやすいけど。あそこはある意味、誰でも入れちゃうし、秘密の実験とかをするには向かないですね」 
last updateLast Updated : 2025-11-19
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第235話 お迎え②

「ビンゴだね。第一体育館は昭和元年の創設だ。時期的にもピッタリ。秘密の地下を作るために体育館を作ったのかなって思っちゃうよねぇ」  佐藤が体育館の裏手に向かい、歩き出した。 「いやでも! 第一体育館に地下があるなんて、公になっていませんよね。そんな場所があるなら理事長は把握しているでしょ。厳重な管理もされているはずです。どうしてRISEが利用できるんです?」  晴翔が佐藤に駆け寄った。 呪いの研究室の半地下にある防空壕は、大学ですら中に入れると把握していなかった。 Dollが見付けて勝手に使っていたのは、わかる。 「それがこの大学のダメなところだよね。関係者に簡単に貸出しちゃうんだもん」  佐藤がポケットから鍵を出してフリフリした。 「何で俺が迎賓館に秘密の文書、隠せたんだと思う?」  あぁ、と理玖は納得した。 晴翔も、力が抜けたようだ。 「実家のお兄さんの名前を使って、修繕の申し出をしたんですね。本来ならその鍵は栃木の宮大工佐藤組が持っていないといけない鍵、という訳ですね」  つまり、この場所は佐藤が臥龍岡に協力してから使い始めた場所、という訳だ。 「中は案外綺麗でさ。ちょっとは掃除したけど、すぐにでも人が住めちゃうレベルで快適よ?」  佐藤がまた歩き出した。 体育館の裏手は人がいない上、木々が茂って暗く、とても怖い。 第一体育館は古いので雰囲気があって余計に怖さが増す。 理玖は晴翔の手を握って腕に縋るようにして歩いた。 「暗いから足元、気を付けて」  晴翔が理玖を引き寄せて歩いてくれた。 体育館裏の奥の方に、こ
last updateLast Updated : 2025-11-19
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第236話 お茶会①

 細く長い階段を降りていく。 言い合うような声が聞こえてきた。 「も……、や、めて……。僕には効果ないって、いってるのにっ」  弱々しくも抵抗する声が、深津だと気が付いて、晴翔が階段を駆け下りた。 理玖も走って追いかける。 「深津君! ……え?」  階段を降りきって部屋に入ったところで、晴翔が驚きの声を漏らした。 地下に広がる部屋は、まるでマンションの一室のような空間だ。 多少の古さは感じるが、佐藤が言った通り生活するには充分な一間が広がっていた。  奥の壁側から向かって中央に置かれた大きなテーブルにはアフタヌーンティの準備がされている。 反対側の壁際にはベッドが四台、並んでいた。 一番奥に、栗花落と秋風が身を寄せ合って眠っている。 その手前のベッドに冴鳥が倒れている。眠っているというより、気を失っているように見える。 更にその手前隣のベッドで、唐木田が眠っていた。 「一体、どういう……」  冴鳥が眠るベッドの端に座った深津が、鈴木に顎を掴まれて無理やりに口付けられていた。 「空咲さん、向井、先生……」  深津が涙目で名前を呼んだ。 その声で我に返った晴翔が、鈴木に大股に歩み寄った。 「手を放せ」  短く言い放ち、鈴木の手を掴み上げた。 鈴木が冷めた目で晴翔を見上げた。 「あーぁ、詰まらないな」  苛立ちを含んだ声音を零して、鈴木
last updateLast Updated : 2025-11-20
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第237話 お茶会②

「やっぱり向井先生の方がrulerの力が強いんですね。先生に圭のフェロモンが効果あるか、是非試してみたいな」  楽しそうにする臥龍岡の視線から理玖を隠すように、晴翔が前に出た。 どうやら臥龍岡は深津がrulerとして覚醒したというフェイクを信じているらしい。 (しかも僕と同じフェロモンを使うと思っている。鎮静丸のせいだろうけど、rulerに対する正しい知識はなさそうだ) 「深津君や冴鳥先生を誘拐して、何をするつもりだったんですか」  晴翔が臥龍岡を見据える。 声には怒気が含んで聞こえた。 「勿論、実験ですよ。圭のフェロモンは冴鳥先生には効果がありました。だから礼音に種付けしてもらおうと思っていたんです。rulerのspouseになった特別なotherは総てのonlyを妊娠させられる、でしょ?」  臥龍岡がニコリと笑んだ。 RISEが晴翔を使ってやろうとしていた実験だ。 お茶会に合わせて、標的を冴鳥に切り替えたらしい。 「向井先生と空咲さんが来たタイミングで、冴鳥先生と礼音がセックスしている姿を見せてあげたかったんですが、深津君以外、寝ちゃったから。残念です」  晴翔が、ギリっと歯軋りした。 「冴鳥先生と栗花落さんを洗脳して望まないセックスをさせて、深津君にまで見せ付けるつもりだったんですか。趣味が悪すぎる」「深津君は音也に気持ち良くしてもらおうと思ってましたよ。ただ見ているのも暇でしょうから」  何でもないように話す臥龍岡を晴翔が睨んだ。 「でも、深津君には鈴木君のフェロモンの効果がなかった。更待さんにも、効果はありませんでしたね。なるほど……。鈴木君のフェロモンは、万能という訳ではないらしい」
last updateLast Updated : 2025-11-20
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第238話 お茶会③

 晴翔が困惑した顔を理玖に向けた。 「何を考えているんですか、理玖さん。効果がない保証なんてないんですよ。onlyの理玖さんはともかくとしても、俺はotherだから……」「自信、ない?」  晴翔の腕を掴んで、見上げる。 不安な目が冴鳥に向いた。 「あの冴鳥先生ですら、ドロドロにハマったって、言ってましたよね。俺は洗脳されてる栗花落さんも見てる。自分の意志でどうにかできるものじゃないでしょう」  晴翔の反応は、WOのフェロモンに対する一般的解釈であり常識だ。 フェロモンで煽られる本能に、WOの脳は抗えない。  理玖は晴翔の腕を引き寄せて顔を両手で包んだ。 「晴翔君は僕を愛しているよね。世界で一番、僕が好きだよね。僕と出会う前からずっと僕に憧れてて、出会ってからは僕しか好きじゃないよね?」  晴翔の顔が赤く染まった。 自分で言っていても、恥ずかしい。 「当然です。俺が愛しているのは、理玖さんだけです」  晴翔がきっぱりと言い切った。 「僕も、晴翔君が好きだよ。晴翔君に出会うためにこの場所に来たんだと思うくらい、運命を感じてる。晴翔君じゃなきゃダメだ。晴翔君が僕の原動力で、晴翔君以外は要らない」  晴翔が真っ赤になって困惑の表情が深まった。 「待って、理玖さん。嬉しいけど、なんで今、そんな話……」「晴翔君は、僕のことだけ考えていればいい。頭の中を僕でいっぱいにして。僕と……、エッチしてる時の、一番好きな僕を思い浮かべて」  照れた顔で見上げる。 晴翔の体
last updateLast Updated : 2025-11-21
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第239話 お茶会④

 理玖が注射し終えた頃に、晴翔の顔が紅潮し始めた。 「はぁ……、疼いてきたけど、どう、ですか」  口元を抑えて、荒れる息を整えている。 受容体が多い晴翔は薬剤の反応も早い。 (白石君には、一体どれだけの量を注射されたんだろう。短時間であの状態に陥るくらいだから、かなり大量に打たれたんだろうな)  素人に薬剤量の匙加減ができるとも思えない。 本当に脳障害や、下手したら心停止していたかもと考えると恐ろしい。 「じゃ、試してみますね」  鈴木が晴翔の膝の上に座る。 その姿を見ているだけで、ちょっとイラっとする。 「手、どかして。キスしましょ、空咲さん」  甘えた声で、晴翔の手をやんわり退ける。 唇が近付いて、触れる前にぴたりと止まった。 「ぁ……、はぁ、……んっ」  晴翔の目が蕩けて、震える唇が請うように開く。 「僕とキス、したい?」  誘う鈴木の目が隣にいる理玖に向く。 確実にイラっとした。 見ていたくないが、目を離すわけにもいかない。 「キス……、したい。も、欲しい……」  晴翔が自分から鈴木の唇を食んだ。 舐めあげて、舌を差し込む。 ぐちゅぐちゅと水音を立てて、晴翔が鈴木の舌を絡めて吸い上げる。 「堕ちるの、早かったですね」  臥龍岡がクスリと笑っ
last updateLast Updated : 2025-11-21
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