「甘いわね…」「甘いですね…」食後、悠一のお土産を出して麻衣と友香2人にも、感想を求めた。「え?甘酸っぱくない!?」〝甘い〟だけではない味と不思議な食感を共有したかったのに、彼女たちの感想はただ「甘い」だけで、雪乃は驚いてしまった。「違うわよ。これは甘酸っぱい。めちゃくちゃ美味しい!」友香もそれにうんうんと頷いた。「甘いのはあなた達よ」「そうですね。激甘でした」「……」どうやら、先ほどのやり取りを聞かれていたらしい…。雪乃は頬を染めて、慌てて言った。「あれは、た、たまたまよっ…」「……」「……」いやいや、そんな訳ないから。2人のジト目とニヤニヤした口元に、雪乃はいたたまれなくなった。だから、その後はただ黙々とデザートを口に運び、ひたすら食べ続けていた。それを見た2人はふふっと微笑い、優しく問いかけた。「どうするか、決めたの?」「……」雪乃は沈黙で答えた。ただその顔には困ったような、恥ずかしいような表情が浮かんでいて、彼女の気持ちが、少なくともマイナスには動いていない事を物語っていた。麻衣は心の中で「お幸せに」と呟き、友香は嬉しそうに微笑んでいた。雪乃は実際、あの誘拐犯のアパートに悠一が乗り込んで来て、自分に手を差し伸べてくれた時からほぼ、気持ちは彼に向いていた。だが、どうしても踏み切れなかった。それは、やはり前世での、彼の自分に対する態度があまりにも冷たくて、どう考えても好かれているようには思えなかったからだ。それが今世ではこんなにも気にかけてくれて、「愛している」とまで言ってくれる。なぜだろう…?前世も今世も、自分に変わりはないのに…。ただ違う点は、自分がお嬢さまぶっているかどうか…ということだけで、その他についてはまったく変わっていないのだ。それが最大の違いだと言われればそれまでだが、正直、たったそれだけの違いでこんなに変わるの?と思わなくもない。だから、その辺りの事が納得いかなければ、結局自分は悠一を信じきれずにいるような気がするのだった。その夜。ピンポーン…雪乃は悠一の部屋のチャイムを鳴らした。「雪乃」カチャリ…と静かにドアが開けられ、出て来た悠一の嬉しそうな顔に彼女は目を逸らした。それから2人は少しの間黙って向かい合っていたのだが、やがて彼に促されるようにして、揃って中に入って行った
Última actualización : 2025-08-29 Leer más