Semua Bab もう一度あなたと: Bab 81 - Bab 90

108 Bab

81.

あ~、失敗した…。雪乃はため息をついて、自分の状況を嘆いた。まさか、女子高生までグルだったなんてね…。彼女のため息にビクッと反応をした女子高生、水野琴音(みずのことね)は、涙目で雪乃に謝罪した。「ごめんなさい…こんな事してしまって……」「……」なんと言われようと、後の祭りである。雪乃はちらりと隣の部屋の状況を窺って、小声で彼女に訊いた。「なんでこんなバカな事したの?犯罪だってわかってる?」琴音は悪い人間には見えなかった。実際、ここへ来てからもずっと自分の側にいて、気分は悪くないか、身体は痛くないか、お腹は空かないか…といろいろと気を遣ってくれていた。隣にいる連中も遊び半分な感じで、まったく必死さが感じられない。でも彼らは狡猾だった。ここへ来てからというもの、度々彼らは雑談のように「琴音がいなかったら成功しなかった」「琴音の行動がきっかけでスタートした」などと言い、あわよくば彼女を主犯に仕立て上げようとしていた。雪乃はそれが気に食わなかった。やった事の責任も取れないなら、やるんじゃないわよっ。だが、いくら腹立たしく思ったところで自分のスマホは取り上げられているし、どうしようもなかった。それで、彼女は一か八かで琴音に訊いた。「あなた、携帯待ってる?私の代わりに連絡してくれない?」「え!?」思わず大きな声を出してしまって、隣から「どうした?」と声をかけられた。それに彼女は「なんでもない」と答え、雪乃に対してヒソヒソと問いかけてきた。「私に裏切り者になれって言うんですか?」泣きそうな顔だ。でも雪乃はそれにしっかりと頷き、言った。「このままじゃ、あなた主犯にされちゃうわよ?いくら貰ったのか知らないけど、割に合わないんじゃないの?」そう言うと、彼女も同じ思いだったのか、その目に迷いを見せた。「主犯かそうでないかで、罪の重さは違うわ。いい?これは〝誘拐〟よ。罪は罪でも、誘拐は重罪なの。その主犯になってごらんなさい、どれほどの罪になるか考えてみて」「で、でも…私は未成年だから、大した罪にはならないって…」青褪めた琴音が言うのに、雪乃はゆっくりと首を振った。「いいえ。法的にどうでも、きっと私の婚約者が許さないわ。あなたたちは、良くて刑務所送りよ」「そんな!」今や彼女は身体全体でがくがくと震えていた。琴音には、身体の弱
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-04
Baca selengkapnya

82.

「どこに連絡すれば、いいですか?」雪乃は、彼女が決心してくれたことに安堵して、微笑んだ。「不自然にならないように、今度お使いを頼まれた時でいいわ。よく聞いてね。那須川グループの本社…検索したら出てくるから。そこに電話して、秘書のマキっていう人に連絡して。藤堂雪乃の件で、て言えばいいわ」「私なんかが電話して、相手にしてもらえますか?」琴音は不安だった。自分はただの女子高生なのだ。そんな自分が連絡して、万が一いたずらだと思われたら…。雪乃は不安そうに瞳を揺らす琴音に、優しく言った。「いたずらを疑われたら、〝ボディーガードの名前は田中だ〟て言ってみて?」見返すと、少し楽しげに、雪乃が瞳を煌めかせた。「ね?いかにも偽名でしょう?でも、本名なんだって。名乗っても偽名だと思われるから、名乗っても平気なんだって!ふふっ」彼女は本当に面白そうにそう言って、微笑った。琴音も思わず一緒に笑ってしまって、緊張していたのが緩んだ。素敵な人…。きっとこの人は、自分を気にしてこんな風に言ってくれたに違いない。琴音はそう思って、よしっ…と気合を入れた。「やってみます」「うん」雪乃は頷きながらも、真剣な目をして言った。「無理はしないで。あなたの安全を優先させてね。私は大丈夫だから」「でもー」「本当に。私の婚約者はすごいの。時間はかかっても絶対に助けてくれる。だから、あなたは無理をしないで。ね?」そう重ねて言われて、琴音もようやく頷いた。それに、それはたぶん本当のことなんだろう…と彼女は思った。この人…雪乃さんの婚約者さんは、きっとすごい人なんだろう。自分には全く縁のない世界の人たちなんだろうけど、こんなに素敵な人の婚約者なんだから、その人も素敵な人に違いない。琴音はそう納得して、〝大企業に電話をする〟というミッションに挑む勇気を出した。真木は、省吾の秘書の杉田と一緒に、何人かの若者と対面していた。彼らは皆一様に派手な身なりをし、始めはチャラチャラした雰囲気でこちらをジロジロと見て、一言で言って不愉快な連中だった。誰もがスーツを着た自分たちを〝おっさん〟と呼び、ニヤニヤしながら「なんの用だよ?」と見下した口調で言うのに真木の額には青筋が浮かび、今にも怒鳴りつけてしまいそうだった。真木は、雪乃が攫われてしまったことに焦っていた。確かに彼女の買
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-04
Baca selengkapnya

83.

『社長、奥さまの居場所がわかりました』「どこだ!?」それは本当に〝灯台下暗し〟で、彼女が攫われたモールのすぐ近くの、寂れた古いアパートだった。密告者の女性…水野はそこに自分と雪乃以外にあと4人の男女がいると言った。男3・女1だ。水野は言った。自分が雪乃にジュースをかけ、トイレに誘導した後、適当に連れ去る…というなんともお粗末な計画だったそうだ。つまりは、大まかな計画以外は行き当たりばったりでやったという訳だ。悠一はそれを聞いて、益々歯噛みした。俺を相手に行き当たりばったりとは…。舐めたマネをしてくれる。悠一は怒りを抑えた声音で言った。「若かろうが女だろうが、関係ない。抵抗したら殴り倒してでも捕まえろ!…いや、待て。俺も行く。モール入り口で待て」『かしこまりました』悠一は通話を終えるとすぐに省吾の元を去り、そして真木は、新たに揃えたボディーガードたちを見渡して、厳しい口調で言った。「失敗は許されない。手加減無しで行くぞ」「了解!」そうして、彼らは雪乃の救出に向かった。杉田はそれを見送って、省吾へ連絡した。「たった今、向かいました。こちらの下っ端もいるようですが、どうしますか?」それには、省吾は簡潔に答えた。『放っておけ。一緒に処分してもらうよう、話はついている』「了解しました」それで彼らの会話は終わった。省吾が普段便利に使っていた人間の、そのまた下の者になど、彼は興味がなかった。ただ己の利になれば使い続けるし、迷惑をかけるようなら捨てるだけだ。そうして省吾はまた煙草を取り出し、杉田の代わりの部下に火をつけさせた。煙を吸い込んでふぅ~と吹いた時、あの日の雪乃の迷惑そうな顔を思い出して、ニヤッと笑った。あの那須川悠一を尻に敷く女が現れるとは…。俺が友香に逆らえないのも、なるようになったということか…。そう思って、省吾は久しぶりに愉快な気持ちになった。一方…雪乃は、琴音が彼らから使いっ走りのように利用されていることに不快感を覚えていたが、今彼女はその時間を利用して、この場所を報せてくれている。そう思うと、彼女の胸は緊張でどきどきしていた。どうか、上手くいきますように…。雪乃は琴音の無事を祈りつつ、真木や悠一が彼女を信じて動いてくれることを願っていた。モールで買い物をして、フードコートで休憩をしていた時に琴音
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-04
Baca selengkapnya

84.

悠一!その時、雪乃の胸を満たしたのは、紛れもなく〝喜び〟だった。この瞬間、彼女は前世の、あの正に命を落とした、あの、粗末な小屋の中にいた。あの時、彼女は陽斗が戻って来て、扉を開けてくれることを願った。彼女たちを連れて来た運転手が、彼女を探しに来てくれることを、願った。そして、決して来ることはない悠一が、助けてくれることを願った。彼との結婚を後悔しながらも、胸の奥深くで確かに、手を差し伸べる彼を思い描いたのだ。雪乃は今、目の前でただ彼女を心配する悠一に、強く抱きしめられていた。「雪乃…雪乃…ああ、無事で良かった…!」「悠一……」雪乃は彼の胸元のジャケットを握り締め、ぶわりと涙が溢れ出てくるのを止められなかった。彼女は恐ろしかったのではない。ただ、絶望を知っていただけに、嬉しかったのだ。前世、彼は一度たりとも彼女を振り返ることがなかった。ましてや心配など、期待するべくもなかった。それが今、この今世で、彼は雪乃を強く掻き抱き、彼女の無事を喜んでいる。そんな現実を、雪乃は確かに〝嬉しい〟と思ってしまったのだった。「悠一……」グスンと鼻を鳴らすと、彼は雪乃の身体をそっと離し、「ケガはないか?」と全身に目を走らせた。「大丈夫」雪乃はニコッと笑い、「琴音ちゃんのおかげ」と小さな声で言った。水野琴音。あの女子高生か…。悠一は、真木と落ち合ったモール入り口にいた、女の子の姿を思い出した。「彼女に助けられたのか?」そう訊く悠一に、雪乃もコクンと頷いた。「そうか…」彼はホッと緩んだ顔で雪乃を見つめ、もう一度、今度は優しく抱きしめた。その時周りでは、若い男女の不満タラタラな喚き声や、そんな彼らを威圧する男たちのドスの効いた声が入り乱れていた。「俺たちじゃねーよ!」「琴音って女の言う通りにしただけよ!」彼らは皆、雪乃が睨んだ通り、琴音に主導されたと喚いていた。一番年下の彼女が、しかもあんなに気の優しそうな子が、そんな事をするわけがない。雪乃の証言もあって、誰もそんな言葉に惑わされはしなかった。「雪乃さん!」アパートを出た所で走り寄って来た彼女に、「裏切り者!」「覚えてろよ!」と喚いた時点で、彼女を主犯だと主張することはもう無理になったのだが、そんな事には気がつかない彼らは尚も、ぶつぶつと不満を述べていた。はぁ…。雪乃は一
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-09
Baca selengkapnya

85.

十中八九、大元の犯人は春奈だろう…。だが悠一は、今回捕まえた若い奴らの他にも、誰かいると睨んでいた。いくらなんでも、奴らと春奈が知り合いとは思えない。間にまだいるはずだ。そう思って、ふと原省吾の事を思い出した。確か、あの人の所の下っ端が入ってるって言ってたな…。気は進まないが、頼るしかないか…。悠一は、捕まえた若者たちの罪の意識の薄さからいって、隠れている奴はかなりずる賢い奴に違いないと思っていた。犯罪の全体ではなく一部を任せることで、罪の重さを意識的に分散させている。しかもターゲットに関して何も知らせず、報酬の高さだけを声高に謳うことで、彼らのゲーム脳を刺激しているようだった。実際、真木が言うには、彼らは未だに自分たちが何をしでかしたのか、まったく理解していないようだ、というのだ。悠一ははぁ…と大きくため息をついた。なんでこんなバカばっかりなんだ!若いとはいえ、皆20歳前くらいの年齢なのに、下手をしたら小学生よりも頭が悪い…。彼はしばらくこめかみをグリグリと強く揉んで、そして立ち上がった。「田中」「はい」雪乃に付けたボディーガードを呼ぶと、彼は直立不動で応えた。それを見て悠一は、ああ…と思い、言った。「今回の事は、雪乃にも責任がある。お前だけのせいじゃない」それは彼を〝咎めない〟という意味だったが、田中は己の失態を深く反省していた。悠一はフッと笑った。「俺は会社に戻る。お前たちには引き続き彼女の警護を任せる。次はないからな?それから…」ふと、ケンをどうすべきか考えた。あれは春奈がガッツリ咥え込んでいる。国に戻すのは、やめた方がよさそうだ…。そう決断して、言った。「ケンはとりあえず、このまま保養所で匿ってろ。あれの処遇に関しては、いずれまた考える」「了解しました」答えると、田中は悠一の前を辞し、チームのメンバーに警護の配置について、指示を出しに戻って行った。それを見届けて、悠一は真木を伴って会社へと戻って行ったのだった。「どう思う…?」車の中で、いきなりそう問いかけられた。「犯人についてですか?」真木はバックミラーに映る悠一を見て応えた。「ああ。あいつらが今回の事を主導したとは思えん。バカ過ぎる。A国の春奈と連絡を取る手段すら、知らんだろう」「そうですね…。では、もっと痛めつけて吐かせますか?それと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-09
Baca selengkapnya

86.

「もうやだ!帰してよ!」水野琴音以外で唯一いた女は、彼らの中の一人の〝彼女〟だった。という訳で、彼女を一人だけ隔離し、〝彼氏〟との話の相違点を追及した。「お前の彼氏は、交渉役がお前たちを主導した男に身代金を渡し、その男からお前たちに〝報酬〟が支払われると言う。でもお前は、交渉役が5人分5億を直接受け取って、全員で〝山分け〟すると言う。どっちが正解だ?」さっきから何度も訊かれて、彼女はいい加減イライラが爆発した。「知らないわよ!!私は、彼氏から、そう聞いたの!!何度も同じこと訊かないでよ!!」「……」やはり、答えは同じだった。つまり、彼氏が嘘をついているのか?男の言うことが本当なら、主導者が別にいる事になるが、女の言うことが本当なら、始めはどうであれ、最終的に自分たちが主導してやったと吐いていることになる。自分たちが不利になるような事を、わざわざ嘘つかないだろう…。ちなみに、金を受け取ったらすぐに、雪乃をそのままにして逃げるつもりだったらしい。隠すことも、処分することも考えてなかった…と女は言った。バカなのか賢いのか、わからない奴らだ。部屋に入る前、このやり取りを聞いていた真木は、この無計画さ故に答えが見つかり難かった事を考えると、つくづく水野琴音の存在を有難く思った。彼女が彼らを裏切ってくれたおかげで、自分たちは雪乃を早い内に見つける事ができたのだ。そう思うと、真木は苦笑するしかなかった。尋問されている彼女は。やだ、イケメン…。ふいに現れた真木を見て、ほんの少しだけ態度を和らげた。本当は、彼氏たちと引き離されて一人だけ別部屋に連れて来られた時、〝ヤラれる〟と思った。だって、自分はピチピチの女子高生だし、皆が「色っぽいね」て言ってくれるし、チャンスがあればヤリたいんじゃないの?だから彼女は、身を守る為に言った。「私に手を出したら許さないんだから!パパが黙ってないわよ!?」「……」でも目の前のおじさんたちは、皆眉を顰めて無視をした。なによ!興味ないふりなんかして!知ってんのよ、あんたたち〝おじさん〟が、女子高生大好きなことくらい!でも、絶対!嫌よ!タダでなんかさせるもんですか!!彼女はフンッとそっぽを向いて、反抗的に質問に答えていた。でも後から来た男を見た時、びっくりしたのだ。はぁ…こんなイケオジ、現実にいる
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-09
Baca selengkapnya

87.

チッ!河本賢也は搭乗口で〝連絡係〟からのメッセージを受け取って、その内容に舌打ちした。『失敗した。実行・交渉役は捕まった。俺も逃げる』それだけだった。とっくに知ってるっつーの!見張りは立てなかったのかよ!?呑気に菓子食ってたとか、マジあり得ねぇ!賢也は、彼らには内緒で〝連絡係〟をスパイとして使っていた。あの手の奴らはすぐに裏切るからな。自分も人の事は言えないのだが、だからこそ分かるのだ。案の定、奴らは交渉役を巻き込んで、金を全部自分らの物にしようとしやがった!だから失敗すんだよ!!賢也はイライラと爪先で床をガシガシと蹴りつけていた。おかげで俺まで逃げなきゃなんねぇ…。彼は春奈のいるA国に行くつもりはなかった。行けば絶対に罵られるし、今までせしめてきた金も返さないといけなくなる。そんなのは御免だ!賢也は、今回の計画の資金としてある程度の額を春奈からせしめていたので、少しの間ならやっていく事ができる。その間に何か考えねぇと、ヤバいな…。賢也は知っていた。那須川悠一の恐ろしさを。だから、自分で直接関わることはしなかったのだ。失敗した以上、捕まった奴らはもう表には出てこられないだろう。あとは〝連絡係〟に上手いこと逃げてもらわないと、芋づる式に自分に辿り着いてしまう。それだけは駄目だ!いっそのこと、奴に春奈を密告させるか…?その考えに至って、彼にはもうその方法しかないように思えて仕方なかった。よしっ…。賢也は、先ほど『逃げる』と言ってきた男に再びメッセージを送った。『もし捕まったら、計画の発案者をチクって許してもらえ。結局、お前は何もしてないんだから、きっと大丈夫だ。いいか、始めにこの計画を立てたのは〝春奈〟だ。この名前を忘れんなよ!じゃあな、元気でやれよ!』それだけ送って、彼はS国へと旅立って行った。彼は知らなかった。そのメッセージを読んでいるのが〝連絡係〟の彼ではなく、その男を捕まえた原省吾だったことを。ふん…。やはり愚かだな…。彼は男から取り上げたスマホに送られてきたメッセージを見て、鼻で嗤った。彼の傍らには、彼の部下によってボコボコに殴られ、顔の形もあやふやになった〝連絡係〟が転がっていた。「さて…。コイツはどこへ行った?」男の前にしゃがんで、省吾が言った。「し、知らない……」口の端から血を流
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-09
Baca selengkapnya

88.

「社長ー」オフィスに入って来た真木の呼びかけに、悠一は顔を上げた。「原省吾の部下から連絡がありました」「ふん…?」首を傾げて、先を促す。「奴らの仲間を一人捕らえた、と。あと、一人高飛びしたそうです。おそらく、そいつが探している奴ではないでしょうか…?」「かもな…」悠一は手にしていたペンを置き、ふぅ…と椅子にもたれた。「引き取るよう言ってきましたが…」「ああ…頼む」それに「かしこまりました」と応え、真木はオフィスを出て行った。悠一は思った。春奈に繋がるだろうか…。個人的には春奈など、どう処分しても心は痛まない。だが、雪乃はどうだろうか…。今彼女に黙って処理したところで、いずれバレるだろう。その時、彼女は自分をどう思うだろうか。それを思うと、悠一は頭を悩ませた。見逃すことはあり得ない。絶対に処分はする。だがー。あの女と連絡が取れなくても、納得がいくようにしなければならない。どうするべきか…。悠一はもう一度、今度は深く息を吐き出した。その頃、春奈はー。ちょっと!どういうこと!?なんでケンも賢也も、連絡つかないのよ!?春奈は賢也が自分に黙って出国して以来、電話をかけたりメッセージを送ったりと、何度もしていた。でも一度も通話が繋がったことも、メッセージの返信がきたこともなかった。そして、捨て駒として使ったはずのケンからの連絡も途絶えていた。始め、それは彼が、彼女の予定通り計画を失敗したのだと思って、これ以上の関わりは持たないよう敢えて連絡をとらなかった。でも賢也が勝手なことをして、もう何日も経つのにまったく音沙汰がないのはおかしい…と思い始めた。そこで、危険は承知の上で〝一度だけ〟と決めて、ケンの携帯にも連絡をしてみた。すると、やはり彼とも連絡が取れなくなっていた。ほんと、どういうこと!?春奈は焦っていた。今や彼女は、毎日のように何度も彼らに連絡をとっていた。でも、やっぱりどちらとも繋がらなかった。まさか、私のお金、持ち逃げしたんじゃないわよね!?春奈の関心は賢也にあった。ケンはバカがつくほど素直だし、何より自分に惚れているから裏切ることはない…と思う。だけど賢也は、正直あまり信用が置けない。彼に先にお金を渡したのは、間違いだったのかもしれない。まぁ、「渡さないならやらない」と言われれば、そうしない
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-09
Baca selengkapnya

89.

「上手くいったか?」悠一は、電話越しにも微笑んでいるのがわかる文の声音に、ふっ…と微笑った。実は管理人夫妻は、ケンを足留めするように説得する任務を請け負っていた。でも、保養所の管理に男手が欲しかったのも本当。ケンを気に入ったのも本当だった。「はい。とても良い子ですわ」「……」いや、良い子はそもそも誘拐などしようとしない。悠一はその言葉を飲み込んで、「うん」と頷いた。「こき使ってやれ。頼むよ」「ええ。お任せください、坊ちゃん」ふふっと微笑ってそう言われ、悠一は苦笑した。文は悠一の乳母だった。彼女は悠一が小学部を卒業した頃自ら職を辞し、保養所の管理人になるべく、夫と田舎に引っ込んだのだった。「戻るつもりはないのか?」「ここで十分ですよ」やんわり断わられて、悠一はため息を零した。「最後に俺の子を育てる気はないのか?」そう言うと、文はくすくすと笑って言った。「そういう事は、子供ができてから仰ってくださいな」「……」確かにそうだ。現状、作れる感じですらない。悠一はふんと鼻を鳴らし、文にまた連絡をする旨を伝え、通話を切った。S国ー。「はぁ〜、こっちの太陽はからっとしてんなぁ〜!」照りつける陽射しに手を翳し、空港を出た河本賢也が楽しげに言った。服装もリゾートに遊びに来たようなシャツに半パン、サングラスと、一見地元民のような出で立ちだった。彼は手にしたスーツケースを引っ張りながら「さてと…」と呟き、キョロキョロと人の良さそうな〝誰か〟を探した。こんな時、彼はすぐにタクシーに乗ったりしない。ぼったくられたりするかもしれないし、良いホテルや美味しいレストランを逃してしまうかもしれない。だから、「そういう事は地元の人間に訊くのが一番だよな」と、早速その情報源を探し始めたのである。できれば女の子が良い。そのまま食事を奢ってデートもできる。美味しいものを食べながら情報収集。これぞ〝一石二鳥〟てものだ。「あ…みぃつけた♡」賢也はふふ〜んと鼻歌混じりにターゲットを物色し、地元民ではなさそうだが、同じように辺りをキョロキョロと見回している一人の女の子を見つけた。こういう一人でいる若い女の子は、一人でも大丈夫な要素を持っている。つまり、この場所に詳しいか、案内人がいるか…だ。前者なら案内してもらえばいいし、後者なら一緒にさ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-17
Baca selengkapnya

90.

「俺、しばらくこの国にいるつもりなんだけど、換金できるような所、どこか知らない?」タクシーの中で訊いた。いざという時の為に、先に知っておきたかったのだ。「換金?両替じゃなくて?」首を傾げる智奈に、賢也は悪戯っぽくニヤリと笑って言った。「現金ってあんまり持って入れないじゃん?だから、売れそうな物をいくつか持って来てんの」「へぇ~」ちなみにそれは何かと尋ねると、賢也はジュエリーだと答えた。智奈はそれ以上は訊かず、2人を乗せたタクシーは大きな家々が並び建つ住宅街に入り、そこでも一際大きな邸の前で停まった。「ここ!?」タクシーから降りて、目の前に建つ邸の大きさに賢也は驚いて、思わずポカンと口を開けてしまった。それを見て智奈はふふっと笑い、賢也の手を取ると引っ張って言った。「叔父さんが待ってるわ」「あ、うん…」ここへ来て、彼は急に不安を覚えた。なんか、話しがうますぎるな…?だがここまで来てしまった以上、帰るわけにもいかない。とりあえず、彼は引っ張られるままに、彼女の叔父が住むという邸に向けて足を進めた。ちなみに2人の荷物は、迎えに出てきた使用人らしき人物が持ってついて来ていた。「叔父さん、ただいま!」「……おかえり」玄関扉を潜ると智奈が賢也の手をパッと離し、タタッと小走りで、ある人物に向かって行った。そうして甘えるようにその腕に抱きつき、それから、一緒に出てきた女性には身体ごと抱きついて言った。「叔母さん、ただいま!」「おかえりなさい」「……」その光景を見て、賢也は戸惑っていた。自分の家ではまず見ない光景だったからだ。そうしていると、智奈の叔父という人物が、近づいて来た。「君が賢也くん?」「はい」と頷くと、彼は一瞬賢也の全身を見て、それから言った。「智奈が強引で済まなかったね。ぜひ、ゆっくりしていってくれ」「ありがとうございます」賢也はそう答えながら、心の中で呟いた。あ…これ歓迎されてない感じ?泊めても精々が1〜2日ってやつだな…。そう理解して、とりあえず「まぁ、いいか」と表面上にこやかに握手した。同じように、彼女の叔母という人物もあまり歓迎ムードではなく、賢也も、泊まるのは今晩だけにしよう…と心に決めて、智奈に案内されるまま2階の客室へと向かって階段を上がって行ったのだった。その夜。「智奈、彼とは
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-17
Baca selengkapnya
Sebelumnya
1
...
67891011
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status