「あの…大丈夫ですか?」朝のジョギングの帰り道、雪乃は道端で蹲っている青年に声をかけた。そこは木陰になっていて、彼の黒一色の服装ではなかなか目につきにくいところだったが、偶然にも雪乃は吹いた風に被っていたキャップを飛ばされ、追いかけた先で気がついたのだった。「あの…?」青年は額に脂汗をかき、とても苦しそうにお腹を押さえていた。「病院に行きますか?」「……っ」青年の前に屈んでそう問いかけるが、痛みの為か返事をもらえず、雪乃は困った。声をかけた以上、このまま知らん顔はできない。でも見たところ外国人っぽいし…。病院に連れて行っても大丈夫かな?医療費とか沢山かかったら、かえって迷惑かけちゃうかも……。雪乃は悩んだ末、もう目の前がマンションだった為、とりあえず中に連れて行って休ませることにした。「うち、このマンションなんで。中で休んでください。腹痛の薬もあると思いますし…」「あ、ありがとう…」それだけ言って、青年はぐったりと気を失ってしまった。え?……どうしよう…。私一人じゃあ運べないし…。そう思って、ポケットからスマホを取り出した。トゥルルルル…トゥルルルル…なかなか相手が出ない。今日は来てないの?もう!普段、用もないのに来てるくせに!雪乃はイライラと唇を引き結んだ。その時ー『雪乃』耳から身体を震わせる深い声音が応答した。「き、今日はマンションに来てる?」動揺を隠すように急いで問うと、悠一はクスッと微笑って言った。『行ってない。なんだ?寂しくなったのか?』「違うわよ!」何なの、この男!?自惚れてんじゃないわよ!雪乃は、少し赤くなった顔を歪めて言った。「いないならいいわ!じゃあね!」『待て』「?」強い口調で制されて、タップしかけた指を思わず止めた。『何かあったのか?』「?いいえ?」ただ人手が欲しかっただけだ。雪乃はそれだけ答えると、通話を切った。目の前で人が気を失っているのだ。長話をしている暇はない。仕方ない…。雪乃は気合を入れて、倒れている青年の頬を叩いた。「すみませんっ。起きてください!」パシンッと結構強めに叩いても、彼は目を覚まさなかった。う〜ん…駄目か〜。どうしようかと考えていると、ふいに後ろから声をかけられた。「奥さま」振り返ると、一人の屈強な男が立っていた。「私で良ければ、
Last Updated : 2025-07-23 Read more