祭壇に立った楓が何かの呪文を唱えているように見える。 その姿を護は禍津日神と見上げていた。 「直桜が目覚め始めた。準備は良いな」 禍津日神を振り返り、頷く。 護の表情を見て取ると、手を天に向かい掲げた。 「なれば最後は派手にいこうかの。雷鳴は武御雷神《たけみかずちのかみ》直伝の直桜の十八番じゃ」 禍津日神の掌に雷が生まれる。一直線に空に昇った雷鳴が広がる雲を刺激する。雲間に雷の筋が何本も走った。轟音と共に雷が激しくなる。 どくん、と禍津日神の体が波打った。 「荒魂が吾の中で暴れておるわ。この感覚は、久しいの。血が沸くわ」 禍津日神の目が護に向く。 右の手に力を込めて、禍津日神に向かい構えた。 洞窟の上を覆っていた雲は、あっという間に大きくなり、流れていった。 本土を優に覆い尽くすであろう巨大な重い雲から雨が降り出す。 「このままでは大雨の水害でこの国が沈もうなぁ、どうする、鬼」「止めます。この場で、直桜と直日神を返していただきます」「やってみよ」 同時に地面を蹴って、正面から突っ込む。 真っ直ぐに腹を狙いに行った護の右手は思い切り弾かれた。左手で禍津日神の右腕を摑まえる。強く引いても、体はピクリとも動かない。そのまま、また腹を狙うが、左手で弾かれた。 腕を解いて飛び退き、距離を取る。 まるで直桜とやり合っているような錯覚を覚えた。 (練習ですら対峙したことはないから、直桜の戦い方を知らない。素手でいかないと、意味がない。が、ここは武器を使うか) 悩む護に、禍津日神が小さく首を振った。 周囲を見回すと、囲んでいた13課の別動隊が動き出している。護と禍
Terakhir Diperbarui : 2025-07-24 Baca selengkapnya