雲井家のような一流の名家ともなれば、医療チームも医療資源も最高水準だ。正道が受けている治療も、当然ながら最上のものだった。それでも、どれほど権力や財力があっても、こうした不可逆の病だけはどうにもならない。たった五年で、正道は歩くことすらできなくなり、今では車椅子での生活を送っていた。仁志は薄く笑った。「明日香に会いたいとは言わないのか?」星は言った。「明日香には会いたいとは言ってない。でも、靖には何度か会いたいって言ってた」そして、ふと明日香の子どものことを思い出した。「そういえば、明日香の子どもも、もう八歳くらいになるよね?」仁志の口元に、意味深な笑みが浮かんだ。「知佳のことか?それとも今、漁村で暮らしている本当の娘のことか?」知佳のことは、星も知っていた。だが、本当の娘のことは、まったく知らなかった。「本当の娘って、今どうしてるの?」仁志は答えた。「明日香がつきっきりで教えてる」星はしばらく黙り込み、信じられないという顔で言った。「それって……明日香は本当の娘に会ったってこと?」仁志は平然と言った。「どっちも漁村で暮らしてるんだ。遅かれ早かれ、会うことにはなる」星はちらりと彼を見た。きっとこの件も、仁志が裏で手を回しているのだろうと察した。「知佳がまだこっちにいるなら、明日香はまだ返り咲けるって思ってるはずだよね?もし知佳が自分の実の娘じゃなくて、すり替えられた偽の娘だって知ったら、明日香、気が狂うんじゃない?」仁志は星の腰を抱き寄せた。「お前の人生をあいつは何年も盗んだ。そんな女を簡単に死なせるのは、甘すぎる。贅沢な暮らしをしてきた年数のぶんだけ、きっちり償わせる。あいつのことはずっと俺が見張る。絶対に這い上がらせない」ふたりがそんな話をしていると、葵がぱたぱたと駆け寄ってきた。可愛らしい顔を上げ、うるんだ目で仁志を見つめる。無邪気で愛らしいその表情は、見る者の心をたやすくほどいてしまいそうだった。「パパ、今日ね、幼稚園ですっごく面白いことがいっぱいあったの。ママにひみつのお話したいから、今夜はママと一緒に寝てもいい?」仁志は葵をとても可愛がっていた。だが、朔であれ葵であれ、夜に星を独占することだけは絶対に許さなかった。ほかのことなら、葵が甘えて頼めばたいていは聞いてし
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