All Chapters of 夫も息子もあの女を選ぶんだから、離婚する!: Chapter 2431

2431 Chapters

第2431話

綾羽の両親に苦しめられていたあの時期を除けば、明日香はほとんど苦労らしい苦労をしたことがない。幼い頃から、明日香は自分という人間をよく分かっていた。自分は生まれながらのお姫様で、この世の栄華を享受するために生まれてきたのだ、と。どれほど境遇が悪くなろうと、一生何不自由なく豊かに暮らせるはずだった。彼女はあまりにも強い手札を持っていた。負けたくても負けられないような人生だった。それでも彼女は負けた。しかも、見る影もないほど徹底的に。もし星と仁志がいなければ、今ごろ雲井家は自分のものになっていたかもしれないのに!そのことを思い出すたび、明日香は憎しみで目を真っ赤にした。自分が、よりにもよって星に負けたなど。けれど、彼女にはまだまったく望みがないわけではなかった。まだ知佳がいる。知佳が雲井家にいる限り、自分には必ず逆転の目がある。かつて母は、身分の壁を越えるために、あれほど長い間、父に尽くして世話をしてきた。ならば自分にも、知佳の力で再び返り咲けるその日まで待つだけの忍耐はある。だが、明日香はあまりにも甘く考えていた。漁村での過酷な暮らしは、彼女の想像をはるかに超えていた。かつての彼女は、雲井家で大勢の使用人に囲まれ、家事など何ひとつしたことがない。けれど今は、何もかも自分でやらなければならない。金もない。どう生き延び、何を食べるかさえ、ままならなかった。最初は、容姿を頼りに、近所の人から食べ物や日用品を少し借りられないかと考えた。だが明日香は忘れていた。自分の顔は、傷がまだ完全には治っていないまま漁村へ送られてきたのだ。高度な医療技術もなければ、大金を惜しみなく注ぎ込むこともできない。元通りに戻すなど、到底無理だった。村人たちは、彼女の顔に走る無数の傷跡を見ると、少しも関心を示さなかった。それどころか、疫病神でも見るように避けた。明日香は、仕方なく野生の果実を摘んで空腹をしのぐしかなかった。容姿を利用することもできなくなり、何もかも自分でこなさなければならない。水ひとつ汲むにも、自分で動くしかない。少しでも動きが遅ければ、空腹のまま過ごすことになりかねない。それは、使用人に囲まれて育った明日香が、一度たりとも経験したことのない生活だった。漁村は僻地で、店らしい店も
Read more
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status