突然いなくなった国王のクロだったが…クロの国は、至って普通の暮らしが続いていた。すでにクロに譲位して引退していたクロの父で前国王は、以前自分が幼い頃、自分の父も何日か姿を消して無事帰って来た事を覚えていた。そして、その姿を消していた事のあるクロの祖父は、戻って何十年後のその死の直前クロの父だけに…「何日か姿を消していた時、違う世界に行って、本当に愛した人と暮らしていた」と、涙ながらに告白した。クロの父は驚きはしたが、自分の父が自分の母以外を愛した事には何の批判も無かった。国王とは、決して愛した者と結婚できるとは限らない。むしろ、愛した者と出来る方が稀だ。それは、国と国の戦略的友好の為、国王と臣下の相互利益関係を深める為…国王は、愛の無い政略結婚は普通で当たり前だからだ。クロの祖父も祖母も、結婚式の当日お互いの顔を初めて見た政略結婚だった。クロももしかしたらすぐ帰るかもと、クロの父は無論捜索もしていたが、クロの失踪を隠して、病気療養にして待っていた。そして…クロは自分の世界に帰ったが、クロは、理久を忘れられなかった。忘れられなくて…どうしても、どうしても忘れられなくて…とうとう、狂いそうになって…父と母に相談の上…理久に、化け物だと拒絶されるかもしれないのを覚悟し、それでも堂々とプロポーズする決心をした。そして、出来れば、クロの国に来て、一緒に暮らして欲しかった。あんな危険な呪術は、魔術師に頼んで消さなければならないのは分かっていたが…理久の世界の服に似た物を至急作らせ、それを着て…又、祖父の部屋に行き、古の文字を唱えた。クロは職務の間に、理久に遂に会いに来てしまった。魔術の穴を出てすぐ、何故かすぐに公園内に理久のいい匂いがして、クロは歓喜し体が熱くなった。そしてその匂いを辿ると、理久が暗がりのベンチにいた。今すぐに駆け出して、理久を思い切り抱きしめ、キスして、有無を言わず自分の国に攫いたい!そんな野獣そのものの激しい衝動を感じて体中が更に燃え上がるように熱くなり、クロは自分を諌めた時…理久は、座って泣いていた。そして、「クロ…俺の側に帰って来てくれ!帰って来てくれたら、ご飯でもおやつでも何でも、お前の好きな物食べさせて上げるから…なぁ…クロ…」と、一人ごちていた。ひとしきり話し終え、理久とクロの間に沈
Last Updated : 2025-06-24 Read more