All Chapters of いなくなった愛犬を探していたら異世界で獣人王になっていて、俺は愛妃になれと攫われた!(交際0日で獣人王と婚約しました)): Chapter 11 - Chapter 20

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プロポーズ

突然いなくなった国王のクロだったが…クロの国は、至って普通の暮らしが続いていた。すでにクロに譲位して引退していたクロの父で前国王は、以前自分が幼い頃、自分の父も何日か姿を消して無事帰って来た事を覚えていた。そして、その姿を消していた事のあるクロの祖父は、戻って何十年後のその死の直前クロの父だけに…「何日か姿を消していた時、違う世界に行って、本当に愛した人と暮らしていた」と、涙ながらに告白した。クロの父は驚きはしたが、自分の父が自分の母以外を愛した事には何の批判も無かった。国王とは、決して愛した者と結婚できるとは限らない。むしろ、愛した者と出来る方が稀だ。それは、国と国の戦略的友好の為、国王と臣下の相互利益関係を深める為…国王は、愛の無い政略結婚は普通で当たり前だからだ。クロの祖父も祖母も、結婚式の当日お互いの顔を初めて見た政略結婚だった。クロももしかしたらすぐ帰るかもと、クロの父は無論捜索もしていたが、クロの失踪を隠して、病気療養にして待っていた。そして…クロは自分の世界に帰ったが、クロは、理久を忘れられなかった。忘れられなくて…どうしても、どうしても忘れられなくて…とうとう、狂いそうになって…父と母に相談の上…理久に、化け物だと拒絶されるかもしれないのを覚悟し、それでも堂々とプロポーズする決心をした。そして、出来れば、クロの国に来て、一緒に暮らして欲しかった。あんな危険な呪術は、魔術師に頼んで消さなければならないのは分かっていたが…理久の世界の服に似た物を至急作らせ、それを着て…又、祖父の部屋に行き、古の文字を唱えた。クロは職務の間に、理久に遂に会いに来てしまった。魔術の穴を出てすぐ、何故かすぐに公園内に理久のいい匂いがして、クロは歓喜し体が熱くなった。そしてその匂いを辿ると、理久が暗がりのベンチにいた。今すぐに駆け出して、理久を思い切り抱きしめ、キスして、有無を言わず自分の国に攫いたい!そんな野獣そのものの激しい衝動を感じて体中が更に燃え上がるように熱くなり、クロは自分を諌めた時…理久は、座って泣いていた。そして、「クロ…俺の側に帰って来てくれ!帰って来てくれたら、ご飯でもおやつでも何でも、お前の好きな物食べさせて上げるから…なぁ…クロ…」と、一人ごちていた。ひとしきり話し終え、理久とクロの間に沈
last updateLast Updated : 2025-06-24
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プロポーズ2

「えっ?えええっ?!」 驚きの余り、理久の瞳孔が開く。 「けけけけっ…結婚って!俺達男同士だし!」 「何を言う。理久の世界も、同性で愛し合うって、テレビで言ってたよな。それに、この世界でも同性で愛し合うし結婚もする」 クロは、更に理久の手を握る両手に力を込めた。 「でっ…で、でも…クロには、跡継ぎがいるだろう?俺…産んで上げられないし…」 「大丈夫だ」 「なっ、何が大丈夫なんだよ!」 「この世界には、男でも子供を産める魔法がある。それに、もしダメでも、俺には沢山兄弟がいるから大丈夫だ!」 クロは、全く意に返さず微笑む。 「そっ、そんなご都合設定の魔法ある?それに、俺、根っからの一般人だから、王家の暮らしとかしきたりなんて無理無理無理無理!絶対無理!」 「理久、俺は、お前に妃として多くは望まない。お前は、俺の傍にいてくれさえすればいい…俺を、俺だけを愛してくれ…俺だけ愛してくれさえすればいい…」 一段と低く甘くなったクロの声に、理久はドキッとした。 クロは、それを見透かしたように、理久の左手の甲をクロの口元に持って行き、優しいキスをした。 「理久、左手にキスは、この世界の正式なプロポーズだ。頼む。俺と、結婚してくれ…」 理久は、クロの美声と上目遣いの男の色気に、同性なのに思わずクラッとなった。 「クロ…ありがとう…」 理久は、跪いたままのクロの長い黒髪を撫でた。 クロはその理久の反応にいい予感を感じて、尻尾をブンブン振った。 理久には、そんな大の年上の男がとても可愛く映る。 しかし… 「クロ…ごめん…俺、クロと結婚は出来ない…」 そう答えた理久を見上げていたクロは唖然と瞠目して、立派な耳と尾が又しなだれた。 「何故?俺が…俺が…獣人だからか?やっぱり…俺が怖いか?」 「違う…それは、違うよ…」 理久の首が横に2度振られた。 「俺…まだ高校生になったばかりで、これからもっと勉強して大学も行きたいし、自分の世界に戻って暮らさなきゃ…」 理久にしたら、結婚なんてまだまだあまりにも遠い遠い何年も先の将来の話しにしか思えない。 それに、あくまで理久が生きていける世界は、理久の生まれた人間の世界としか思え無い。 「理久…」 クロの青い瞳が、苦し気に細められる。
last updateLast Updated : 2025-07-01
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懇願

 クロの興奮してギラギラ金色に光る瞳も、理久の瞳から視線を外さない。 それでもやはり、理久は、クロが怖くない。 理久は、椅子に座ったまま、ただただ、目の前で跪くクロの髪を優しく撫で続けた。  犬のクロに、いつもしていたように… かなり長い時間をかけて。 やがて… 激しかったクロの唸りが、徐々に徐々に小さくなり、収まった。 鋭利な爪の方も、元の人型のように戻った。 クロに、やっと落ち着きが見えた。「り……理久……理久……すまない…」 クロが、王国の支配者らしからぬ弱々しい声を出し、両膝立ちになり、椅子に座る理久の胸下辺りに抱きついた。「いいよ……クロ……いいんだ…」 理久にはよく分かっていた。 クロは、最終的には理久を絶対に傷つけたりしない… そして、クロがまだあの犬のクロにしか思えなくて、思わずその自分より大きな体を頭から抱き締めてやった。 どれだけの時間だろうか… 又長い時間、理久とクロは抱き締め合い合った。 言葉なんて無くても、こうやって抱き合っていると、理久の心はポカポカ温かくなる。 と同時に、何処か体の奥の方が…なんと言うか、ムズムズしてキュッとなる。 やがて…「それに、俺達、二度と会えない訳じゃ無いだろう?クロのおじいちゃんの呪術があれば、いつでもずっと、ずっと会えるだろう?」 理久がクロの頭を抱いたままそう言うと、クロが急に一瞬固まった。 だが、クロは、ゆっくり理久を見上げた。「ああ……そうだな…」 クロは、理久を思いやる余りに、誤魔化している事がある事を隠してゆっくり微笑んだ。「理久……確か、明日向こうの世界は、祝日だな?」 真顔に戻ったクロが跪いたまま、椅子に座る理久に尋ねた。「クロ……あんな短い間しか向こうにいなかったのに良く覚えてるな」 理久は感心した後、「うん」と頷いた。「実は……今日理久を迎えに行く前に、俺はすでに一回向こうへ行ってた…」 実はクロは、自分の両親に理久の事を相談し向こうの世界の服を作らせた後だったが… 理久を迎えに来るまでに、どうしても調整したい事があった。 だが、その以外な言葉に、理久の心臓が跳ねた。「じゃぁ、その時、俺の事、見に来なかったのか?俺の事!」 理久が叫び、今度は興奮したようにクロの両手を自分のそれで握った。「理久!見に行った……当たり前だ
last updateLast Updated : 2025-07-02
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 理久の目の前に少し距離を空け、人型のクロがTシャツとジーパン姿で立っていた。 ここは何処なのか? 周りはただただ真っ白で… ただ、クロの足元に、赤い色の訳の分からない沢山の円や記号が描かれている。「クロ!もしかして、それ、クロのおじいちゃんのやつ?」 理久がそう言い近づこうとすると、クロが表情を歪ませ叫んだ。「来るな!理久!」「えっ?!」 理久が戸惑うと、次にクロは悲し気に理久を見詰めてきた。「理久…お別れだ…もう二度と…お前に会えない…」「えっ?!なっ……何?何言ってんの?……又会えるって言ったじゃん!」 理久が更に戸惑い動揺すると、円や記号がゆっくり消えていき、やがてクロも足元から消えていく。「待て!クロ!」 理久の叫びに、クロは悲しく微笑む。「イヤだ!クロ!クロ!待ってくれ!」 だが…「理久!理久!」 そのクロの声で、理久は目覚めた。 理久は、悪い夢を見ていただけだった。 眠っていたのは、クロの巨大なお城の中の客室のだだっ広い寝室。 端々に繊細な金細工をほどこされた、クロの特大キングサイズのベッド。 白いシーツや枕は最高級に柔らかく、寝心地はとても良かったはずだった。 ベッドの横の机に置かれていたランプに灯が点っている。 そして、カーテン越しにも、まだ窓の外の世界が暗闇だと分かる。 理久は結局、クロの懇願に負けて、訳の分からない異世界で一夜を過ごす事になった。 クロの様々な告白の後、本格的に食事が始まったが… 「暫く会えなくなるかも知れない」の言葉が気になって、理久は食事も余り喉を通らなかった。 そしてその後、クロが犬そのものだった時のように、「一緒に風呂に入りたい!」「一緒のベッドで眠りたい!」 と人型のクロに激しくおねだりされた。 理久はキツく言う事も出来ず、それでも、困惑と焦りの表情でなんとかそれらを拒否した。 そして理久は、白いローブを着て1人で客室で眠りに入ったはずなのに… 今現在、涙でグスグスで右向きで横たわる理久の顔のすぐ前に、向かい合う形でクロの顔があった。「理久!大丈夫か?凄くうなされてたから…悪い夢でも見たか?んっ?…」 クロが甘く優しく呟き、理久の涙を指で掬う。 いつの間にかクロにベッドに勝手にもぐりこまれて、本当はきつく注意しないといけないのに… 理久は、さっ
last updateLast Updated : 2025-07-04
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目覚め

 夢にうなされた後、犬型のクロと一緒に寝たお陰だろう… 理久は再び悪夢を見る事もなく深く眠り、やがて朝になり目覚めた。「う…ぅ…ん」 そっと、理久が瞼を上げる。 そして、きっと… あの黒の毛並みの犬型のクロが傍にいると思い出し喜んだ瞬間… 右向きで横たわる理久のすぐ真向かいに、いつの間にか獣人型になって眠っているクロがいた。 しかも… クロは、着ているローブがはだけた鍛えられた逞しい胸で、理久を頭から抱いていた。「?!」 理久は、思わず悲鳴を上げそうになったのをなんとか堪えた。 しかし… クロの胸の筋肉が逞しくて、同じ男なのに妙にエロくて内心大パニックだった。 そしてその反動で理久が身じろぎした所為で、クロもやがて目覚めた。「おはよう…理久…あっ!えっとこれは、わざとじゃなくて、その…いつの間にか獣人になっていてだな!」 そう言いながらアタフタして、クロが起き上がりベッドの上に正座すると、急遽犬型に変身した。 そして、又、耳と尻尾が、逞しい大型犬があまりに哀れに見える程にしおしおになる。「フッ…ハハハッ…」 理久は、クロがかわいくて思わず笑ってしまったが…「分かった。いいよ…クロ…でも…お仕置きはするよ…」 理久が、天使の様ににっこり笑った。 しかし… それに、クロはビクッとして少し体が後ろへ下がり、耳が更に萎れる。 あっちの世界にいた時に、ごくたまに犬のクロにお仕置きと言えば、くすぐりの刑が主だった。 理久のくすぐりは絶妙で、クロはいつも息も絶え絶えに悶えのたうった。「クロ!コチョコチョコチョコチョコチョ!」 理久が宣言通り、ふざけた感じで犬クロの脇や腹をくすぐりだした。「ウーッ!ウーッ!ウーッ!」 クロは、柔らかいキングサイズベッドの上でへそ天でのたうちながら、戸惑っているような獣声を上げる。 それがかわいくて理久の指先が、更にヒートアップした。 しかし…「理久!」 クロがそう叫び獣人型に戻ると、今度は上から、理久をベッドに押し倒した。「ハァハァハァハァ……」 激しい息を繰り返し、ローブを乱したクロが上気だった顔で理久を見下ろしてくる。「ハァハァハァハァ…理久…理久…理久…」 クロのその姿と眇られた青い瞳を見て、理久は怖いと思わず、逆に体の分からない奥が又キュっとした。 そして、二人で暫
last updateLast Updated : 2025-07-05
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朝食の前に、着替えだった。 就寝用の白のローブ姿の理久にもこの世界の服が用意された。 着る前に、どんな感じかそれらをベッドの上に広げる。 黒い上等そうなパンツはいいとしても、胸元や袖にフリフリのレースの付いた白い長袖シャツに目が思わず点になる。 (こ……これを……俺が……!マジで……!?本当に、マジで……!マジでマジで……?) 童話の中の王子様みたいで勘弁して欲しかったが、城の中ではこういうのを着ないといけないのだと……耐える事にした。 「理久は……一人で着替えるよな?」 獣人型のクロが背後から妙な事を聞いてきたので、理久はキョトンとした。 「う……うん、一人で着替えるけど……」 するとクロが、体格に似合わず小声でゴニョゴニョゴニョゴニョと言った。 「そうだ。それでいい……理久の裸を、他の奴には見せたくない……」 余りに歯切れも悪く、理久に聞きとれなかった。 「うん?何て言った?クロ!」 「あっ、いや……何でも無い……理久は、ここで着替えてくれ」 そう言いクロは、扉一つ隔てて続きになっている隣室に一人行った。 するとすぐ、何人かがそこに入ってきた音がした。 理久が慌てて着替えて隣室に行くと、大きな姿見を前にクロが立ち、その回りに黒のロングスカートの同じ制服の3人の侍女獣人がいた。 「クロ?!」 理久が動揺して背後から声を掛けると、鏡に映ったクロと目が合った。 「今から着替える。一応俺は、着替えは侍女がやる事になってるんだ」 クロが事もなげに言う。 美女達は、理久にも深々と頭を下げたが …… だが、なんだか理久は、クロに微笑みかけ回りに群がる余りに美し過ぎる侍女達にモヤモヤとしだす。 「アレクサンドル様、今朝のご気分はいかがですか?」 リーダー的な美女の一人が、クロを見詰めながら甘えるような声で尋ねる。 多分、理久の父や普通のサラリーマンのおじさん達なら、一発で鼻の下を伸ばしてニヤつくんだろうが…… クロは、前を向き落ち着いていて美女を見る事も無く、鏡に映る理久と目を一心に合わせ、それに答えた。 「ああ、今朝は理久が側にいてくれるから、とても目覚めがいい」 「それは、よろしゅうございましたね。アレクサンドル様」 尚もリーダー的美女は微笑み、クロの白のロー
last updateLast Updated : 2025-07-06
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鏡2

「え?」「まぁ!」「それは!」 侍女達は、一同驚きの声を上げたが、クロは、振り返ったまますぐに理久に優しく微笑みを返した。「じゃぁ……理久、今日は、お前に頼もうかな」「クロ……」 理久は、胸を撫で下ろした。 すぐ、不思議そうにしながら侍女達が部屋から去った。「じゃぁ……」 理久は、おずおずとクロの前へ行き、クロの白色のローブの襟元に両手をかけた。 クロの方がかなり背が高いから、理久はクロを見上げている。 そして、そっと肩から脱がせ、獣人型のクロの引き締まった逞しい胸元が露わになった。 余りに完璧なそのクロの肉体。 そして、大人の男の色気がダダ漏れだった。 理久は同じ男同士ながら、なんだか目のやり場に困り下を向きながら、今度は前で結ばれた腰紐を解こうとした。 だが、突然…… クロが、理久のその両手を取って尋ねた。「どうして?…どうしてこんな風にやってくれるんだ?」 理久は、クロの目を見たが、すぐに逸し申し訳なさそうに床を見た。「ごめん……俺の、俺のワガママだって、分かってる……ごめん、クロ……でも…」 理久は、再びクロの青い瞳を見上げた。「クロは、獣人の王様で、あの俺の犬のクロじゃないのも分かってる。でも……なんだか俺が犬のクロと向こうの世界で暮らしてた時を思い出して、クロが他の人に触られてるのを見るのが嫌だったんだ……ごめん……ごめ……」 理久が、全てを言い終えようとした。 しかし、その前に、クロが理久を素肌の胸に抱き寄せた。「えっ……」 理久は、思わず直立したまま固まった。 体格の差から、クロの立派な胸板がすぐ目の前にあり、クロの熱い体温を感じる。 そして、更に、更に強く抱き締められ、何も考えられなくなる。 その上、理久の胸の鼓動が高まって、外に漏れ聞こえそうだった。 暫く、ただそのまま二人で、無言の時間が流れた。 だがその内…… クロが、優しく優しく呟いた。「理久がこんな事しなくても、俺は一人で着替えられるし、これからは侍女に一切頼まず自分一人で着替える」 理久はハッとして、抱かれたままクロを見上げた。「でも……」 クロも理久を見詰め、理久の腰の辺りにズンとくる感じでクスッと笑って言った。「犬の方だろうが理久が俺を愛してくれてて嫉妬してくれてるんだから、俺がこれからは一人で着替えるのは当然
last updateLast Updated : 2025-07-07
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妖精男子

 結局、クロは一人で就寝用ローブから服に着替えた。 理久は、クロに着替えを手渡しするお手伝いしかしなかった。 しかし、その間も、クロの下着を付けている部分以外の体が全て露わになり、理久は目のやり所に困惑した。 同じ男同士と思っても、獣人クロの均整の取れた肉体美はあまりにも刺激的過ぎた。 着替えの後、朝食の用意された大きな部屋へ理久とクロは向かった。 しかし、朝から、クロが強く抱き締めてなかなか離してくれなかった余韻と、クロの肉体美が頭からなかなか離れなくて、理久は、頭かボーッとしたまま鼓動を速めたまま、城の廊下をクロと並んで歩く。 最初理久は、王様のクロの後ろを歩こうとしたが、クロは、理久にクロの横にいるようにと優しく呟いた。 そして、手と手が触れそうな位に、クロは理久に近寄って来る。 美しく豪華で広大な城中を二人で歩きつづけていると、獣人の侍従や侍女、騎士達が、クロと理久を見ると立ち止まり深々と頭を下げる。 やはりクロにはこれが当たり前で堂々としているが、理久は生粋の一般小市民なので、どうしてもおずおずとしてしまう。 そんな中、ふと……クロが、ウサギの獣人について理久に話しておかないといけない事があり、声をかけようとした。 すると同時に…… 理久には、横に別れた通路に大きなキレイな黄色の蝶の後ろ姿が見え、余りにキレイで声を上げた。「あっ!」 理久は、そちらの方に行こうとした。 すると……「理久……」 クロが理久の右手をしっかり握って止めて言った。「理久、俺から少しも離れるな。迷子になるぞ」 クロが優し気に細めた目元に、理久は思わずドキっとした。 でも、これだけクロが超イケメンだから動揺するのも仕方無いと、理久は自分を正当化する。「うん……でも、あれ……蝶……」 理久がもう一度、今度は前を向いた蝶を指指して見ると…… それは思っていたものでは無くて、美しい男子の妖精だった。 思わず、その指が震える。「よっ……よっ……妖精が……いる……妖精がいるんですけど……クロ……」「ああ、この世界には普通に沢山いるぞ。彼もこの城で働いている」「ハハッ……妖精が……働いてるんだ。そっ……そうなんだ……流石……異世界、不思議過ぎる……」 理久が驚いていると、妖精がペコっと頭を下げた。 それに理久も返してお辞儀すると、妖精が驚
last updateLast Updated : 2025-07-08
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アクシデント

理久と獣人王クロは、手を繋いだまま城の赤い絨毯の引かれた廊下を歩き続けた。 しかも、いつの間にかしっかり恋人繋ぎ。 そして、丁度理久には不安な事がもう2つあった。 だからクロが理久の手を握るのと同じ位強く、理久も無自覚にクロの手を握っていた。 クロは、着替える前、今朝の食事には、クロの両親を呼んでいると理久に言ったのだ。 今は違うと言っても、前国王様と王妃様。 理久は、何を喋ればいいかパニクるし、不安だし。 もしかしたらクロが理久との結婚を真剣に考えて、早くから計画を立て両親を呼んでいたのなら、いくら理由があったにせよ、理久がプロポーズを断ったこの状況では、両親に会うのはいたたまれ無い気もした。 それで理久が落ち着かないでいると、クロはそっと微笑んで言った。 「理久……そんな固くならなくても大丈夫だ。今回は両親はただ会ってお前に礼を言うだけだ。それに、お前には俺が側にいる」 そう言われててもやはり、理久は緊張する。 それに2つ目は、朝食なのに、ナイフ、フォーク、スプーン、その他。 食事はマナーが重視されるので、お箸派の理久は更に緊張が高まる。 部屋に着くと昨夜と同じ様に、沢山の男女の獣人達が、配膳の用意の最終段階で忙しく立ち回っていた。 横長の大きなテーブルには、すでに沢山の食器とキレイな器に入った理久には珍しいフルーツの数々と、ジュースのような液体の入ったガラスの縦長のポットがある。 理久の世界のイギリスのアフタヌーンティーを思い出させるような、プレートを3段重ねた大きなティースタンドまである。 ティースタンドはまだ空で、これから何を並べるのか? 理久はそれが少し気になった。 テーブルには、テーブルを挟んで、部屋の入り口から見て左に2人分と右に3人分と椅子も配置されていた。 理久は、朝食はクロの両親とクロと自分だけだと思っていたので、もう一人誰かいるのか?それがかなり気になった。 「理久……ちょっと一つ、言っておかなければならない事があって……」 クロは、さっき言いかけたウサギ族に対する注意事項の件を、又、理久の耳元で囁いた。 昨夜から色々あり過ぎて、しかも、クロの理久への恋情が余りに大きくて…… どうしてもそっちばかりに気が行ってしまい、クロは言う期会をずっと逸していた。
last updateLast Updated : 2025-07-10
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アクシデント2

一瞬の事で、一体何が起こったか分からず呆然とする理久が気付くと…… 理久は、クロに強く抱き締められ壁に背中が着いていた。 少し距離があったのに、クロは野生的な恐るべきスピードで理久の元に来た。 やはり理久は、食器やナイフが当たりケガをする事も無く、食べ物や飲み物で体や服も汚れなかった。 クロは、完璧に理久を守った。 しかし、テーブルの上にあった幾つかの食器がクロに当たり、テーブルから飛んだ食べ物、飲み物でクロの体の後ろ半分がかなり汚れてしまった。 何一つ汚れ無かった理久は、アワアワ焦り、理久を抱き締めるクロを見た後左を見る。 すると…… 床にへたり込むアベルも、同じく理久が昨日見たもう一人の使用人かわいい系ウサギ男子リオンが盾になり、ケガや汚れから庇われていた。「大丈夫か理久?ケガは無いか?」 クロが、理久の頬を両手で持ち上げ心配一杯の表情で聞いてきた。「う……うん……俺は……大丈夫……でも、クロ……ごめん。俺が悪かったんだ。俺が考えも無しに配膳に手を出したから……」 クロの目を見てそう言い理久は、又恐る恐るアベルに視線を移した。 そして…… この大事な時にやらかしてしまった事と、回りの使用人獣人達がすっかりドン引いてしまっている雰囲気に動揺しながらなんとか言葉を繋げた。「ごめんなさい……本当にごめんなさいアベルさん……アベルさんは大丈夫?……」「とんでもない。こちらこそ申し訳ありませんでした……理久様。私は大丈夫です。理久様」 立ち上がれないアベルも、言葉がなかなか続かない。 クロと同じ部分を飲み物などで汚し、床に両膝立ちするリオンにまだ抱き締められながら、顔面蒼白になっていた。「陛下、理久様、どうか、どうかアベルをお許し下さい!アベルは今朝は体調が優れなかったので休む様に言ったのですが、今日はたまたま他にも突然の病気や急用で欠勤の者が多くて、無理をして配膳しておりました。でもやはり、私が絶対にアベルを止めるべきでした!全て私の不注意でございます!」 代わりに、両膝立ちしたままリオンが更にアベルを抱き締め、理久とクロに頭を下げながら懇願し言った。 一見、かなりベビーフェイスに見えるリオンだが…… 実体は、それとは又違っている。 そこに……「これは一体どうした事だ?!」 妃と共にやって来た犬系獣人の前国王が、テーブ
last updateLast Updated : 2025-07-11
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