All Chapters of いなくなった愛犬を探していたら異世界で獣人王になっていて、俺は愛妃になれと攫われた!(交際0日で獣人王と婚約しました)): Chapter 61 - Chapter 70

75 Chapters

嫉妬

だが、理久が変わったのは、そこだけじゃ無かった。 「理久……頭に、耳が……」 クロが、抱いている理久を見詰めながら唖然としたような声を発した。 「えっ?何?!」 理久の右手が、自分の頭にいく。 触ると、明らかに理久の頭にも、毛のある獣耳が生えていた。 そして、声も、女性のものになっていた。 「見てみろ……理久……」 クロは、目を細めた優しい視線を理久に向け呟くと、理久を抱いたままくるりと反転した。 すると、少し離れた壁に、縁の部分の美しい花の紋様に色とりどりの宝石を散りばめた大きな丸い鏡が飾ってあり、そこに、城の黒のメイドドレス姿の理久と、その彼女?を抱くクロが映る。 「えっ?!」 理久の頭にはやはり、ほわほわの白毛の獣耳が生えていて、黒のメイドドレスのスカートの部分の細工から、もふもふの白い尻尾も上手く出ていた。 しかも、何も練習しなくても、自然とその獣耳も尻尾もピクピクと動かせる。 「う……そ……」 理久自身が目を見開き驚く程違和感無く、理久は女性になっていたし、獣人になっていた。 だが、よくよく鏡の中の女装した理久とクロを見ると、次に理久の胸に去来したのは―― やはりクロの横には人間の男子の理久ではなく、獣人の女性の姿が本当にピッタリでよく似合ってるという事だった。 特に、堂々とした獣人王のクロの横には、華やかなドレスに身を包んだ美しい獣人女性のお妃様がよく似合っている。 そして、今さらながら新ためて思い知るのは、男の理久では、クロとどんなに深く身体も心も交わり合い愛し合っても、クロの赤ちゃんを産めないという現実。 すぐに理久の胸に、翼が理久に言い放った「違う世界の者同士は一緒に生きていけないし、幸せにはなれない!」と言った言葉が蘇り突き刺さり、掻き乱される。 途端に、鏡に映る理久は下を向き表情が曇った。 だが、それを見たクロもアビも、理久が女装姿にただ戸惑っているだけだと思った。 だから―― クロは、理久を抱く腕に更に力を入れて、理久の耳元で甘く囁いた。 「理久……凄くキレイだ……」 すると、理久の心に、雷に打たれたような衝撃が走った。 (信じてたのに……クロって……本当は、獣人の女の人好きなんじゃ?……) 思わず理久は、クロの腕の中でクロに顔を向けて
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波動

理久は、翼を助ける為に、率先してクロの祖父の秘密の部屋から赤絨毯の長く広い廊下に出た。獣人女性に化けた理久の、ロングメイドドレスのスカートとポニーテールと、白のもふもふの尻尾がふわりと揺れた。廊下を挟み左右の壁には、等間隔にランプが設置され、その中で、魔法由来の他に燃え移らない火事にならない赤い炎が揺らぐ。辺りは静まり返っている。さっき、理久がクロに取った態度で、二人の間に変な空気が流れている。そして、理久の横顔に、クロの熱の籠った視線が向けられている。しかし、理久は、それを素直に受け止められず、一度チラッとクロの青い瞳を見詰めてすぐにそらしてしまった。それでも――クロは、理久を見詰め続けて、理久の心臓は、クロの理久へのその眼差しに早る。それでも――今は、翼の事に集中すべきと思いながらも――こんな気持ちのままでは、翼を助けられないと思いながら――どうしても、クロが理久ではなく、理久そっくりの獣人女性に愛情を向けているという風に、理久の頭の中で変換されてしまう。クロは、やはり理久の様子が変だと、頭の獣耳をピクピクっとさせて反応させた。そこに、アビが背後から声をかけてきた。「理久さん。時間も無いので、ここで一度さっきお教えした魔法を使ってみましょう」アビに振り返り、理久は不安な表情になる。「えっ?でも、それじゃあアビさんが危ないんじゃ……」それに、いくら城の広い廊下とは言え、大丈夫だろうかとも思う。だがアビは、クスっと笑った後返した。「大丈夫です。理久さんが従兄弟殿に襲われた時にお命まで奪わないように反撃できるような、あくまで理久さんを守る為の護身用レベルの魔法の力にしてあります。それにそれくらいの魔法なら、僕は手前で消滅させられますし。ただ……この魔法が一時期にせよ、僕から得たとは、他言なさらないで下さい。あくまで、理久さんが元々持っていた力にして下さい」「えっ?……」理久は、戸惑った。アビの表情は、急に固くなる。「陛下は、僕の魔法系統一団が魔法を使えない普通の者に魔法を与える事が出きるのを知っておられましたが、普通の生活を送る普通の者達の多くはそれを知りません。もし多くの普通の者達がそれを知れば、自分にも魔法を与えてくれと我々魔法使いに殺到するでしょう。魔法を欲し得て悪用しようと言う者も多いのです。我々は、本当に
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囮(おとり)

クロが先頭になり、理久、アビと続き、翼を助けに城の赤絨毯の廊下を早足で向かう。アビがついさっき魔法をかけたので、今、クロとアビは城の警備兵の格好をしていて、アビは、魔法の杖も消して隠し持っている。そして、一階に下りる為に大階段の前に来て、みな一旦立ち止まる。理久の着るメイドドレスは、スカートはいかなる作業もしやすいよう、長さは足首より少し上で歩きやすい。しかし、理久がいつもの男子の理久でズボンを履いていようが、クロはどんな時も階段や歩き辛い所では理久を気遣い手を差し出してくれる。そう、大切な姫君にするかのように。そして今回も、クロは立ち止まり横にいる理久に手を黙って差し出した。さっきまでの、女装している理久に妬いていた理久なら、このクロの手を拒んだかも知れない。しかし、今は、理久は笑顔で素直に頷きクロの手を握りクロと並んで階段を下り始め、アビがそれに続いた。もう、理久にこだわりは無かった。クロが女装した理久をキレイだと言ってくれたのは、女装した理久ではなく、理久本人に言ってくれたとわかったから。クロは、階段で何度も理久に視線をやり、ギュっと理久の手を強く握ってくれた。一階のエントランスに着くと、そこにいたのはレメロンだけて、集まっていたはずの獣人騎士20人と上級魔法師長がいない。「陛下。先程また理久様の従兄弟殿の目撃情報があり、このままではアドオンの使者達に従兄弟殿が勘付かれるのも時間の問題ですので、騎士達を数グループに分けて先にアドオンの使者達のいる棟に捜索に行かせました。上級魔法師長は、念には念を入れ他の魔法使い達と城内の結界の確認に向かわせてございます。騎士達全員を捜索に向かわせましたので、私はここで何かあった時の為に待機いたします」レメロンが、クロに頭を下げながら冷静な声で報告した。クロが頷いた。「うむ。流石レメロンだな。それで良い。我々も後を追う」こう言う時のクロは、獣人王の威厳に満ちた声を出す。レメロンがよく出来た臣下であるのは、理久もなんとなくわかっていたが、それを新ためて今感じ取る。そこに、レメロンが、クロに何か差し出した。「では、これを……騎士達にはすでに渡しておりますので」それは、まるで理久の世界のイヤホンのような物一つと、何か小型の長方形の機械だった。「これは?」思わず理久がクロに尋ねた。「ああ
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もう一つのプロポーズ

クロは、すぐに理久とアビを、広い北棟側の一番端に連れて行った。 そこは丸々2階階まで吹き抜けになった外国の要人をもてなすための巨大な宴会用のホールになっていた。 広い南棟と北棟全てにアビが結界を張り、魔物がこのホール以外の部屋に入ったり、窓から逃げる事も出来ないようにした。 結果、魔物が取り憑いている翼も、廊下や階段を逃げながらホールに行くしかない。 そしてクロは、魔導通信機器で連絡を取り合い、密かに獣人騎士達に翼をこのホールに向い追い込ませ始めた。 しかし、アドオン人の使者達に気づかれないよう静かに翼を追い立てるのは、やはり獣人騎士達の知力、体力が高い必要があった。 メイド姿の理久は、学校の体育館ほどあろうかという広さのホールの真ん中に立ち、一人囮になり翼を待つ事にして、クロとアビは柱の陰に潜む事にした。 天井には沢山のシャンデリアがあった。だが、クロとアビを隠すためにも、その幾つかにしか魔法由来の明かりは無く、ホール内は仄かに明るいくらいでしかない。 アビはすぐに隠れた。 しかし、クロはそうする前に再び理久を抱き締めた。 「必ず、必ず、お前を守って、翼を捕獲する」 クロが、再び理久に約束してくれた。 そしてクロは、理久にそっと口付けした。 一瞬、理久の心臓が止まるかと思うくらいに大きく爆ぜた。 そして、アビが遠くから見ているかも知れなかったが、もう女装の自分に嫉妬の無かった理久は、キスを従順に受け入れた。 クロは、いつも理久への愛情が直情で昂ぶると、いつもの国王としてのクロの冷静さが嘘のように、本当の犬のように誰が側にいようとどこだろうと理久にそれを表してくる。 恥ずかしがりの日本男児の理久は、未だにそれに戸惑う時はあるし、クロにちょっとは人前での愛情表現の待てを教えないとと思うが、出来るだけクロの想いは受け入れたかった。 そして、二人きりなら、いくらでもクロの愛情表現は受けたいし、理久とクロには体格差がかなりあるが、クロのあの大きな体全ても理久の体全てで受け止めたい。 そして今はこんな時なのに、クロの唇が離れると寂しくて心がギュっとなった。 すると、クロの頭の獣耳がピクピクした。 「どうしたの?」 理久が聞いた。 「翼がこっちに来てる、微かな音がする」 流石に五感の能力
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ベッドでは野獣

気を失っている翼は、クロにおんぶされ、王城内の客人用にしつらえられた絢爛豪華な部屋に運ばれ、シルクのように軽く白く輝くカーテンのある天蓋付きの大きなベッドに、最高級のローブを着せられ寝かされた。 真夜中で、灯はベッドサイドのランプの仄かな光だけ、 獣人と人間の体の作りが近い事から、熊獣人の医師が眠ったままの翼を診察した。 アビから、理久はメイド、クロは城の衛兵の扮装から魔法が解かれいつもの姿に戻り、ベッドサイドからその様子を見守った。 幸い、翼は、胸の傷以外はどこも治療は必要なかった。 医師が退出して、ならと、意識の戻らない翼をクロが再びおぶって、理久と共に理久の世界に戻る案もレメロンから出た。 しかし、翼の意識がないままの異世界転移は人体にどんな影響があるかわからないとアビが反対して、やはり、今は理久もクロも翼も動けなくなった。 理久の世界では、理久の両親、翼の両親が、息子達が夜中になっても帰らないのを心配してるだろう。 でも、翼がいつ目覚めるかわからないので今すぐは帰れない。 そして、もう夜明けも近い。 アドオン国王がこのクロの城に入り、クロと調印式を行う時間も迫っている。 これからどうするのか?クロと話しあう必要があり、アビもレメロンも退出し、部屋には理久とクロと翼だけになる。 どうしようか理久は頭を悩ますが、穏やかな息をして心臓の動く翼の寝顔を見るとほっとした。 「翼は、代わりの者に看護させる。理久、これからどうするか話し合おう。今から俺の部屋へ行こう。それからお前も少し休め」 クロが、理久の背後から理久の肩に手を置き、やさしく囁く。 「でも……翼が……」 「ここではお前と話し合えない。大丈夫。この部屋にはアビが魔物が入らないよう特別結界を張っているし、外の廊下や部屋にも衛兵を入れる」 確かに、こんな状態の翼の横で話し合えない。 それに、クロにも休息が必要で、理久は頷いた。 クロに強く肩を抱かれながら、昨日の夜も一緒に過ごしたクロの寝室に入った。 やはりここは流石にこの王城の主の部屋で、更に広く、カーテンから家具に至るまで極めて華美で品質が良いのが誰にでもわかるのに、気品と威厳に満ちている。 翼も大変な時で、調印式まで時間も無いのに、理久は、すでにクロに肩を抱かれ二人きりにな
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夜明け前

クロの王城。 造りや素材に贅の詰まった調度品に囲まれた広いクロの寝室。 クロは、キングサイスより更に大きなワイドキングサイズの天蓋付きのベッドで眠っていた。  眠る前まで獣人だったクロの その姿は、今はいつもの獣人型でも、普通の大型犬でもなく、あの展望台から公園に理久を背に乗せて走った時の超巨大犬になっていた。 でも、これには理由があった。 部屋に無数にある窓のカーテン越しの外はまだ暗い。 クロの両瞼がパチっと開いた。 クロは、獣人の時も犬型の時も本来持つ獣の本能で直感で夜明け直前だとわかる。 子供の頃からこの早朝の時間に起きるようにもたたきこまれている。 ふと、クロが体に温もりを感じて斜め下に視線をやると、巨大犬クロの胸の辺りのもふもふふさふさの黒毛に、理久が顔を埋めてすやすやと眠っている。 アドオン国の鳥人族の国王との調印式まで後数時間と迫り、理久の従兄弟もまだ目覚めたと言う知らせがない。 やらなければならない事も問題もあれど、しかし―― 理久のその安らかな理久の寝顔を見て、その穏やかな寝息を感じると―― 途端に、クロに言葉では言い尽くせぬ幸せと安心感が込み上げた。 そして、眠る前、理久と獣人姿のクロで、このベッドの上で互いの性器を使い愛を確かめ合った余韻にも、クロは鼓動を早めながら浸る。 ――理久に会うまで、こんな気持ちや感覚は知らなかった―― クロは、赤ん坊の頃から父と母である国王夫妻から離されて、国王夫妻の居住している城とは別の距離の離れた宮殿で臣下達に次期国王として厳しく育てられた。 だが、それはクロだけでなく、この獣人王国の歴代の王達は皆そうだったし、王族の長い間のしきたりだった。 ――この国の王として何より優先すべき事は、どんな時も常に強い王として振る舞い、国の誇りと名誉、領土を守る事―― クロは、まだよちよち歩きの頃から臣下達から徹底的にその精神と感情を抑える事、剣術、武術、馬術を叩き込まれ、常に軍隊にいるような厳しい生活をしてきた。 だが、クロにはそれが日常で当たり前だったから違和感は無かった。 クロが17歳で国王になり、その教育の成果は発揮された。 クロは、毎日毎日国政漬けの厳しい生活を淡々と難なくこなし―― 繰り返されるモンスターの襲撃からもその度に領
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取り引き

それは―― クロにとって、理久だけは特別で―― そして、理久の"横"には、いつもクロがいて―― クロにとって、理久が必要という事だ。 ❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋ 同じ頃―― 王城の客室の天蓋付きベッドでまだ眠りながら、翼は夢の中で昔を思い出していた。 回想は、ずっと昔の、理久と翼が同じ幼稚園に行っていた5歳の時から始まった。 理久は、幼稚園に入る以前から他の子供より小さくてかわいくて、その上マイペースなので行動が危うく、この頃から、何事も卒無く何でもこなしていた翼は理久から目が離せなかった。 案の定、かわいくて目立つ理久は、幼稚園の同級生から何かにつけちょっかいやからかいを受けたので、常に翼が側にいてそれを払い続けた。 そして、理久も―― 「翼!翼!」 いつも翼の後を付いて回って、翼は、いつも理久の前に立ち、仲良く手をつないで理久を引っ張って歩いた。 小学生になっても、流石に手はつながなくなったが、基本仲は変わらなかった。 理久は、相変わらず小学校でも行動が何事もマイペースで器用でない。 だからいつもそれを助けるのは翼だった。 理久が他の小学生からちょっかいをかけられるのを防ぐのもいつも翼。 だが、小さな変化もあった。 それは、小学生になり、理久は変な大人からやたら道や公園で声をかけられるようになった。 だから小学生になってからすぐ翼は、理久を守るためにもっと強くなろうと空手を始めた。 試合の日には必ず理久が応援に来てくれたので、翼はいい所を理久に見せるためにひたすら強くなり、小学校卒業の頃にはすでに黒帯を所持していた。 いわゆる少子化で、同学年は3クラスしかなく、基本クラスは小学生6年間ずっと一緒。 この6年間も、翼の毎日は理久を中心に回っていた。 中学生になっても、クラスが少なく、理久と翼はずっと同じクラス。 翼は、相変わらず理久を守るのは自分しかいないと自負して、あらゆる事で理久をサポートした。 そして、理久が心配すぎて、理久がする事のほとんどに口出しした。 理久は、中学生になってもかわいい男子で、翼は、理久が同級生や先輩、後輩からちょっかいやからかい、イジリを受けないよう常に監視していた。 周りの生徒達も「理久には翼がついてるから」と、翼を
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ヘソ天

フワフワと翼の目の前で浮かぶ光の球体は、翼に取り引きの詳しい内容を手短に話した。翼は、一瞬何かを考え、次に頭に理久の顔を浮かべ、そして、答えた。「いいだろう。その話しに乗った!」❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋❋ちょうどその少し後――理久とクロは、まだクロの寝室の天蓋付きベッドで横たわっていた。「う……ん……」理久は、ふとぼんやりと目を開けた。カーテン越しの窓からは、まだ薄っすらとしたようやく明け始めたばかりの光が入る。瞼を上げたり下げたりパチパチさせながら理久の意識もどんどん明瞭になってくる。すると、理久がついさっきこのベッドの上で、獣人王クロと性器と性器で愛を確かめ合った事を思い出した。理久は一瞬、体がカッと熱くなった。実は、さっき理久とクロが性器同士で一度二人で果てた後も、クロの陰茎がまだ強く立ち上がっていて筋まで浮かべていた。だからクロは、理久にクロの陰茎を直に握ってもらい、その上からクロの手を重ね、クロの陰茎だけ再び擦り上げた。その内に、クロは体が熱くなり自分のシャツを脱ぎ捨てて、理久の体を舐めたりキスしたくなり、理久のシャツも脱がした。二人のそれはベッドの下に散乱した。今の目覚めたばかりの理久は、下半身ズボンだけの姿で、理久の上半身には、クロのキスマークや牙の甘噛みの跡がいくつも浮かぶ。そんな今の理久の顔、頬の辺りに湿っぽい、だけど柔らかい感覚を感じて、理久はハっとなった。すると――「ハッハッハッハッ……」仰向けの理久のすぐ目の前に通常のサイズの犬でなく巨大な犬になったクロの顔があった。あの展望台の時の大きさ。そして、うれしそうに息を弾ませながら、クロの大きな舌の先で理久の頬をペロペロペロペロ舐めていた。「クロ!」理久の声も、くすぐったさにうれしそうに弾み、理久の両腕が巨大犬クロの首に巻き付く。「ハッハッハッハッ!」クロの息がさらに興奮気味に昂り、さらに熱烈に理久の頬をペロペロペロペロ舐めた。「アハハ!クロ!クロ!クロ!くすぐったいよ!」理久には、獣人のクロも、やっぱり犬(今は普通でなくデカいが……)のクロもうれしかった。理久の世界にいた時は、しょっちゅうこうやって普通の大きさの犬のクロに頬や鼻や唇を理久は舐められて楽しかった。ただジャレ合ってるだけの何気ない事だが、一度姿を消したクロと
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仮病

(クソ犬っ!許さん!よくも理久を!純粋な理久をたぶらかしてこんな訳わからん世界に拉致した上に、理久の体を!) 翼は、本気の本気でキレた。 頭の中がぐつぐつと煮え立つ。 そして、目を鋭く眇め、早足でクロに向い突進する。 クロを殴る気満々だ。 一発や二発では足りるはずない。 クロも翼の殺気を感じた。 しかし、クロは、余裕の笑みを浮かべそれを受けて立つ気で、理久をクロの背中に隠すと翼に対して真正面を向く。 勿論、ただ黙って殴られる気はない。 だが、理久は、一時は、翼の命を本気で危惧したから、そんな二人の雰囲気が目に入らないくらいに、自分が今上半身裸なのも頭から飛んで忘れたくらいに翼が無事だったのがうれしかった。 「翼!良かった!」 理久が、ヒョコっとクロの背中から飛び出し、翼の目の前に笑顔で駆け寄る。 その理久の表情に、一発で翼の殺気は削がれた。 だが次の瞬間、翼の目に再び、理久の上半身の素肌に残る理久とクロとの愛の交歓の跡が入る。 「理久っ!」 翼は、悔しさの余り叫んで、正面からガバっと理久を抱き締めた。 その光景に、目を大きく開いて驚愕したのはクロだった。 「理久……理久……理久は俺の事、心配だったか?」 翼が、理久を抱き締めたまま、切なそうな声をだした。 「当たり前だろ。めちゃくちゃ心配した!」 理久も翼の背中を抱き締めて、理久にとって従兄弟の翼の無事を実感して本当に安堵した。 だが―― 「理久!翼から離れろ!それから、これを着ろ!」 いつもの優しい声とは違い、かなり殺伐とした感じでクロが言った。 理久に対してクロのこんな本当に冷たい声を聞いた事が無くて、理久はビクっとする。 そして、不安そうに理久はクロを見詰めた。 だがクロは、やはりいつもと違い、理久に向けていた視線も厳しかった。 そして、クロの腕が翼から理久を離して、理久の肩に白の前開きのシャツを掛けた。 そんな二人を見て、翼は思った。 (まだいける……まだ大丈夫……俺は理久を取り戻せる!必ず理久を俺は取り戻す!だから、あの、俺に取りついた化け物の言う通りに行動する!) そして翼は、突然左腕を抑えて、両目を閉じて唸るように言った。 「いっ……痛い……痛い……腕が痛い……早く!早く!俺達の
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意地

すぐに、昨晩も翼を診察した頭に熊耳の獣人の医師が来て、天蓋付きベッドに横になる翼の腕を診た。 それを、翼から少し離れた所に立って黙って見詰める理久と獣人クロ。 理久とクロ二人は横に並びながら、距離は人一人ぶん空け、互いにまだ緊張感のある空気が流れる。 クロは、さっき、嫉妬から理久を咎めた事を謝りたいのに―― とにかく今すぐ謝りたいのに―― クロが、ここまでするのは、理久だけなのに― 翼や、医師や、侍従や、アビやレメロンもいるこの状況では出来なくて、チラチラと横にいる理久を何度も見る。 理久も、何かクロに言いたげで、チラチラとクロを何度も見る。 理久とクロは、お互いに、お互いを凄く意識していた。 そんな理久とクロを、翼は診察を受けながらベッドの上で不満そうに見詰める。 そしてさっきの計画通り、わざと辛らそうな演技をして、理久への態度をいつもと変える。 「理久!こっちに来てくれ!不安なんだ!」 理久は、いつもしっかり者の翼の豹変に驚きながらも、それだけ翼が精神的に追いつめられていると、理久にもその責任があると、やはり、翼は理久の従兄弟だと、クロをチラっと気にかけた後、翼のいるベッドの横の椅子に座り、 診察を受ける翼を見守る。 「腕の骨は、多分大丈夫だと思いますが、念の為、魔法治癒師なら骨の状況を透視出来るので、お呼びになるのがよろしいかと……」 医師がそう告げると、翼の不安そうにする演技に拍車がかかる。 「理久!早く帰りたい!俺の世界に! 理久!一緒に早く帰りたい!」 翼は、上半身起きて、理久に抱きついた。 理久は、又チラリとクロを横目で見た。 クロは、グッと堪えてるような表情で、 理久と翼を凝視していた。 でも、翼の表情も不安そうで、理久は翼を抱き締めて安心させようと背中を擦って励ました。 「ごめん、翼……もう少し、もう少し待って。必ず帰れるから。必ず帰して上げるから」 本当なら、クロが婚約者の理久の代わりに翼にそう言って安心させるべきだと、クロは思った。 嫉妬で理久に対しても子供みたいに意地になっている場合では無いと。 しかし―― どうしても、理久の翼への近しい態度から、理久の翼への気持ちが釈然としない。 翼の気持ちに気づかない理久は何も悪くないのに、理久
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