All Chapters of 愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~: Chapter 211 - Chapter 220

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211.【番外編】サラリオと葵

「リリアーナ王女、ありがとうございます」サラリオ様は、リリアーナ王女が私に近付いてきたことに気がつくと、すぐにこちらへ来てくれた。そして、牽制として私の肩に手を添えている。その一瞬の張り詰めた空気は、私たちがただの恋愛で結ばれたのではなく、国益という重い鎖で繋がれている王族であることを改めて思い知らされた。「お二人のご結婚と今後のご健勝を祈っていますわ、それでは。」王女はその一言だけ言うと、深く一礼して去って行った。サラリオ様も緊張していたようで、小さく息を吐いたが、ひとまず取り越し苦労だったようだ。しかし、王女の目が微かに潤み湿っているのを私は見逃さなかった。(リリアーナ王女は、何を思っての涙なのだろう?王女の瞳は怒りや悔しさではなくて、寂しそうに見えたけれど。)その緊張をアゼルも察していたようで、周りに聞こえないようにそっと近付いてきた。「兄さん、葵、リリアーナ王女のことは俺が見ている。だから、二人は気にするな。今日は祝福の空気を乱させるな。」婚姻を強く迫ってきたリリアーナ王女が、この場で何か外交的な動きや騒ぎを起こさないかと、アゼルも注意していたようで、サラリオ様も小さく頷いてアゼルに任せていた。そんなアゼルと秘めた感情を持ち合わせたリリアーナ王女が、この婚姻の
last updateLast Updated : 2025-10-18
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212.【番外編】サラリオと葵

夜会が終わり、それぞれが部屋に戻ってから、重厚なドレスときつく締めあげた下着を脱いで、私はようやくホッと息を吐いた。「葵、大丈夫か?疲れていないか?」夜着に着替えたサラリオ様が心配そうな顔で尋ねてくる。「はい、大丈夫です。疲れてはいませんが緊張しました。でも、とても幸せで、楽しかったです。」「私もだ。葵と晴れて夫婦になれて嬉しいよ。」サラリオ様は私のところへきて、優しく抱きしめてくれた。ふわっと毛布を掛けられたような温かさに包まれながら、サラリオ様の胸の中でゆっくりと瞳を閉じる。サラリオ様の熱や力強い鼓動で私の緊張の疲れも解きほぐし、深い安堵へと導いていく。サラリオ様は私の肩に両手を置くと、真っ直ぐに私を見て真剣な表情で口を開いた。「私は、一生をかけて葵を幸せにする。この先、大変なこともあるかもしれないが、私の隣で王妃として、私についてきてくれないか?」「――――もちろんです。サラリオ様の側でお役に立てることが、今の私の最大の幸せです。添い遂げさせてください。」私がサラリオ様の顔を見て微笑むと、サラリオ様は力強く抱きしめて熱い口づけをした。お互いの瞳を合わせながら舌と舌を絡めて、愛おしさと情熱を交差する。サラリオ様の碧い瞳と私の黒い瞳が至近距離で交わり、お互いの存在を
last updateLast Updated : 2025-10-19
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214.【番外編】サラリオと葵

葵side 私たちの婚姻の儀から一か月もしないうちに、アゼルはルーウェン王国に招待されて国王と一緒に出掛けて行った。ルーウェン王国は、元々、このバギーニャ王国との親交を深めるためにリリアーナ王女をサラリオの王妃として受け入れて欲しいと言っていたこともあっただけに、今回のリリアーナ王女と第二王子のアゼルの婚約を極めて好意的に受け入れているようだった。国王としても、隣国のルーウェン王国との友好が保たれ、今以上に関係が強固になることは外交上の最大の成果だ。両国王の思惑が見事に一致し、二人の結婚はとんとん拍子に進んでいった。私が教養やマナーを覚えるために三年以上の教育を受けたのに対し、リリアーナ王女にはその準備期間が一切必要なかった。彼女は生まれた時から王女としての教育を受けており、その覚悟と知識は完璧だった。国同士の取り決めがあまりにも迅速に進むのを見ながら、私は愛の形にも、王族の道にも様々な速さがあるのだと感じた。その間もリリアーナ王女が訪問したり、アゼルがルーウェン王国へ行くなど、国同士の政略結婚ではあるが、二人はお互いを愛しあい、激しく育んでいた。訪問している時の二人は仲睦まじく腕を組みながら歩いていたりしていたが、会合や国務になると、すぐに切り替えて、今後の国のための政策や理想の国の姿など本質的な問題について熱く議論していた。時には意見が衝突することも厭わなかった。「最近のアゼル、なんだか前よりも活き活きしていて楽しそうね」
last updateLast Updated : 2025-10-23
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216.【番外編】サラリオと葵

葵sideサラリオ様と「子どもを授かりたい」と語り合ったあの夜から二か月が過ぎた。私たちは、毎日のように身体を重ね、二人で未来について語り合うことが増えていった。そして、ここ数日、身体にはかすかな異変が生じていた。吐き気はしないのに胃の奥がむかついて気持ちが悪い。体が火照るように熱を持ち、頭がボッーとしてダルい。そして朝は極度の倦怠感に襲われ、ベッドから起き上がるのが辛かった。(まさか、これは……)私は、侍女のメルが妊娠したときに話していたつわりの初期症状を思い出し、胸が高鳴るのを感じていた。ある朝、起き上がろうとすると強い吐き気に襲われ、顔を押さえてベッドにうずくまってしまった。「葵、大丈夫か!?すぐに医師を呼ぶように手配する!」サラリオ様は、私の様子に慌てて飛び起きる。その蒼い瞳には深い動揺が宿っていて、病気ではないかと不安に駆られているのがわかった。「サラリオ様、大丈夫です。病気ではないと思うので落ち着いてください」私は震える手でサラリオ様の手を握りしめた。「すぐに、女性の医師を呼んでいただいてもよろしいでしょうか。」私が、女性の医師を呼んで
last updateLast Updated : 2025-10-24
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217.【番外編】サラリオと葵

葵side「ねえ、今、動いた―――――」妊娠七か月。お腹の中にいる子どもが初めて力強く動くようになっていった。夜になると、まるで自分の存在を主張するかのように元気よくお腹を蹴って、ぼこぼこと動き回っている。その活発な動きを感じるたび、自分の身体に宿る生命の誕生を強く実感し、私の心は温かい光に包まれるようだった。「あと三か月もしたら、この子がお腹から出てくるのね。なんだか信じられないわ。」私がそうつぶやくと、サラリオ様はソファに座る私の隣に座り、そっとお腹に手を当てた。サラリオ様は、この小さな動きを「神聖な奇跡」と呼んでお腹の子との会話を楽しんでいた。「葵のお腹がどんどん大きくなっていくのも、こうして動くのも全てが不思議な感じだな。……あ、また蹴ったぞ。元気に出ておいで。会えるのを楽しみにしているからな」サラリオ様は、微笑みながら私のお腹に優しく話しかけた。妊娠期間中、私は王妃としての公務を続けながら、アゼルとリリアーナ王女の結婚、そしてルシアンとアンナ王女の第二子誕生という慶事を見守った。特に、アンナ王女が女の子を出産したという知らせは、私の出産への不安を希望に変えてくれた。バギーニャ王国の未来が、明るい命で満たされていくのを感じた。そして
last updateLast Updated : 2025-10-24
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218.【番外編】サラリオと葵

葵side第一子となる男の子セドリックが産まれてから、あっという間に三年の歳月が流れた。幼かった息子は、今や元気いっぱいの三歳。サラリオ様の碧い瞳と、私の黒い髪を併せ持つセドリックは、宮殿の庭園を走り回り、毎日を発見と冒険に満ちたものに変えてくれた。王妃としての私の生活は、以前よりも多忙になった。王国の公務に加え、未来の国王となるべき息子への教育と愛情を注ぐ日々だ。しかし、その忙しさは、私にとって何よりも充実した幸福を運んできた。「お母さま!見て!」庭園の噴水の前で、セドリックは小さな石を両手に抱え、誇らしげにこちらを見ている。その無邪気な笑顔を見るたび、私の胸は温かい感謝で満たされる。「まあ、立派な石ね。それは、誰にあげるのかしら?」私がしゃがんで尋ねると、セドリックは少し考えてから、駆け足でテラスに向かった。テラスでは、執務の合間に休憩を取っていたサラリオ様が、静かに書類に目を通している。「お父さま!これ!」セドリックは、その立派な石をサラリオ様の膝の上にどんと置いた。サラリオ様は驚きながらも、その石を手に取り満面の笑顔になった。「これはいいもんを見つけたな、セドリック。
last updateLast Updated : 2025-10-25
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219.【番外編】新たな国の始まり

葵sideバギーニャ王国の四人の王子がそれぞれ結婚をした。長兄のサラリオ様は、異国から来た私と。次兄のアゼルは、ルーウェン王国のリリアーナ王女と。三兄のルシアンは、ゼフィリア王国のアンナ王女と。そしてキリアンは国立図書館の司書だったエレナ。そして、どの夫婦も子宝が恵まれた。キリアンとエレナの小さな息子が生まれた時、私たちは皆で宮殿に集まった。賑やかな庭園では、五人の男の子と七人の女の子、合計十二人の小さな王族が賑やかに遊んでいた。「子どもたちは元気ですね。まるで小さな国のよう。」アンナ王女がにこやかに笑い、その横でリリアーナ王女も、優しく、そしてどこか誇らしげな瞳でその光景を見守っていた。芝生の上を無邪気に駆け回るわが子たちの姿は、私たち親にとって未来そのものだった。「あの子たちが、私たちの次の代を担うのね。」リリアーナ王女のその言葉に、アンナ王女は明るい笑い声を上げた。「リリアーナ王女ったら、気が早いですわ。まだ私たちの代にもなっていないと言うのに。」アンナ王女は、子どもたちを目で追いながらそう冗談めかして言った。しかし、アンナ王女の言葉を聞いたリリアーナ王女は、複雑な笑み
last updateLast Updated : 2025-10-25
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220.【番外編】新たな国の始まり

葵sideアゼルがルーウェン国王に就任してから、半年が経った。サラリオ様は兄として新しい国王となったアゼルを懸命に支え続けた。バギーニャ王国も国王は健在だが、実質の会議など公務はサラリオ様が行っており、アゼルと一緒になる場ではサポートをしていた。国内の政治だけでなく、他国との関係も今は極めて安定している。そしてついに、ルシアンとその王妃アンナの番が来た―――――ルシアンの戴冠は、アゼルの時のように突然の報ではなかった。 ゼフィリア王国の国王は、結婚して早い段階でルシアンが実質的に国政を担うように指導していたのだ。だからこそ、正式な発表に私たちは驚きよりも安堵をもたらした。ルシアンの戴冠式は、厳かで荘厳なものだった。ルシアンは、太陽のように明るい微笑みの中で、いつも冷静に物事を判断する一面があるが、王冠を戴くその瞬間、アンナ王女と目を合わせた一瞬の深い優しさを見た。アンナ王女の顔には、夫が国王となることへの深い喜びと、その重責を共に担う揺るぎない覚悟が滲んでいた。二人の間には私たち夫婦の温かさとはまた違う、信頼に裏打ちされた深い絆がある。彼らが国を治める姿は、最も模範的な王族の姿だろう。式典後、用意された部屋に入るとサラリオ様は静かに私の手を握
last updateLast Updated : 2025-10-26
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