All Chapters of 愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~: Chapter 191 - Chapter 200

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191.【番外編】アゼルの恋の物語④

アゼルside「リリアーナ王女、本日はご出席頂きありがとうございます。」夜会の喧騒から少し離れたテラスで、夜風に当たっていた王女を見つけ、俺は声を掛けた。結婚式の華やかな光が、彼女の潤んだ瞳をきらりと反射させる。「あら、アゼル殿下。お久しぶりですね。」リリアーナ王女は、すぐにいつもの凛とした美しい顔で挨拶を返してくれた。その表情には、先ほどの影は一切見えない。「サラリオ殿下もご結婚されて、将来は殿下と葵様が国を引っ張っていくのでしょうね。」王女の言葉は、建前と本音が複雑に絡み合っていた。まるで、自分自身に言い聞かせているようにもとれる。俺の警戒心はさらに強くなった。「大変失礼なのですが、王女。先ほど婚姻の儀で複雑な表情を浮かべておられましたね。何か思う点がおありなのですか?」外交辞令をかなぐり捨てて単刀直入に切り込んだ。彼女が何かを企んでいるのなら、ここで早めに牽制しておくべきだと思ったからだ。俺がそう言うと、王女は一瞬だけ表情を氷のように固めて、その小さな身体を目立たない程度に震わせた。しかし、すぐに持ち直した。「ふふ、そんなことはありませんわ。感慨深くなっていまして。」
last updateLast Updated : 2025-10-08
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192.【番外編】アゼルの恋の物語⑤

アゼルside「祝福の場にふさわしくない言葉を溢してしまったわね。聞かなかったことにして頂けると嬉しいわ。」リリアーナ王女は、自分でも心の内を明かしたことに戸惑いながら、不安そうに俺に言ってきた。彼女は、夜会の喧騒から逃れるようにテラスの暗がりに身を寄せ俯いた。その姿は、一国の王女としての完璧な鎧を脱ぎ捨てた一人の傷ついた女性の姿だった。「承知いたしました。他言は致しません。」彼女の目を真っ直ぐ見つめ、静かに答えた。「私はリリアーナ王女が悔しがることはないと思います。兄とは、ただタイミングが合わなかっただけで、王女のせいではありません。それに王女は素敵で努力されて、器量もあってとても素敵です。」何を言っているのだろう―――。気がついたら、俺は王女に熱を込めて口走っていた。『タイミングが合わなかっただけで自分のせいではない』。それは、葵との失恋で、俺が自分自身に言い聞かせていた言葉だった。「慰めの言葉?ありがとう。」王女は、俺の言葉を社交辞令だと受け取っているようでまたクスリと微笑んでいる。彼女が、同じ苦しみを同じ理由で抱えている。そう思った瞬間、俺はもう放っておけなかった。王女の笑顔が、俺の心を
last updateLast Updated : 2025-10-09
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193.【番外編】アゼルの恋の物語⑥

アゼルside婚姻の儀を終えてからも、ゼフィリア王国とルーウェン王国の王族は、宮殿に滞在していた。今回は五日間の滞在を予定しており、二日目に婚姻の儀を執り行い、残り三日は会議も行うが、観光、夜会など国同士の親交を深めるためのものだった。三日目の朝、朝食を食べ終えると、リリアーナ王女が侍女たちを引き連れて俺に声を掛けてきた。「この近くを案内していただきたいのですが、よろしくて?」「今からでも良ければ案内します。どちらへ向かいましょうか。」「ええ、お願いしたいわ。できれば馬に乗って出掛けたいの。」「分かりました。すぐに用意します。」馬を用意して王女の元へ向かうと、彼女は既に乗馬用の衣服に着替えており、準備万端だった。侍女たちは、王女の早すぎる準備に慌てているようだった。俺は、念のため大人二人でも乗れる大きな馬を用意したが、王女は静かに首を横に振った。「大丈夫。一人で乗れるわ。大人が二人だとこの子たちが可愛そう。」王女は用意された馬の頭を優しく撫でて微笑む。その姿には、凛とした強さだけでなく、動物への深い優しさと芯の強さが感じられた。彼女は、侍女たちや護衛を断り、俺の後ろについて、ゆっくりと馬を進めていった。
last updateLast Updated : 2025-10-09
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194.【番外編】アゼルの恋の物語⑦

アゼルsideそれからの三日間は、リリアーナ王女と同じ時間を過ごした。宮殿に戻ってからも、俺たちは人目を気にせずテラスや書斎で語り合った。国の統治から外交の真面目な話、そして幼少期の夢まで内容は多岐に渡った。時には熱く議論しながらお互いの価値観をぶつけ合い、そして深く理解し合っていった。彼女は俺のストイックな思考を理解し、俺は彼女の報われない努力に心から共感した。そして、王女がルーウェン王国へ帰る別れの日―――。「アゼル殿下、この数日、色々とお世話になりました。」王女が深々とお辞儀をする。婚姻の儀の時に見せた影はなく、その瞳には力強い光が宿っていた。彼女の顔には、もう迷いも悔しさもなかった。「こちらこそ。私も王女とお話が出来て心から嬉しかったです。」隣国とはいえ国を隔てて、なかなか会える機会はない。永遠の別れではないのに、俺は彼女を失うような強い胸騒ぎを覚えていた。この機会を逃せば、次、いつ会えるかさえも分からなかった。その時、王女が俺のところに一歩近付いてきた。瞳は少し潤み、何か言いたげな表情で訴えている。そして、以前の帰国の際に、兄にしたように俺の身体に触れそうなほど近くまで来ると耳元で静かに囁いた。
last updateLast Updated : 2025-10-10
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196.【番外編】ルシアンとアンナ王女の愛②

ルシアンside数日後の夜、リアンが早く眠りにつき、久しぶりにアンナと二人きりになった。ベッドサイドに座り、リアンのすやすやと眠る寝顔を眺めているアンナの隣に座り、顔を覗く。「アンナ、いつもお疲れさま。最近元気がないようだけど、どうかしたの?」アンナの冷たくなった手にそっと自分の手を重ねた。「それが私にも分からないの。なんだか胃の調子が優れないんだけど、特に思い当たる節もなくて。そのせいか、食欲もなくて気力も出なくて、日中でも意識が散漫してしまって……。ごめんなさい。明日からは気をつけるわ。」「それはいいんだ。アンナ、あんまり無理をしないで。アンナは今でも十分に頑張っているよ。リアンのことも、いつもありがとう。リアンが元気でいるのも、アンナのおかげだよ。」「ルシアン……。この子の母親になれたのもあなたのおかげよ。ありがとう。」アンナは瞳を潤ませて、僕の胸に顔をうずめると腰に手を回して抱き着いてきた。僕も背中に手を回して深く抱き合うと、そのまま見つめ合い、お互いを求め合うようにゆっくりと長く、深く、熱いキスをした。「ルシアン、ルシアンと結婚出来てとっても幸せ」「僕もだよ。アンナ、好きだよ。愛している」
last updateLast Updated : 2025-10-11
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197.【番外編】ルシアンとアンナ王女の愛③

ルシアンside「あなたたちは互いを愛し、信じて生涯を共にすると誓いますか?」「はい、誓います――。」アゼル兄さんとリリアーナ王女は、力強く宣言をした。そして、そのまま見せつけるかのように長い間キスをして周囲をどよめかせていた。その情熱的なキスは、僕たちの時の遠慮がちな一瞬の触れ合いとは、あまりにも違い対照的だった。「アゼル殿下とリリアーナ王女、お熱いのね。」かつての自分たちの初々しさを思い出しているのだろうか、それともこの公然の情熱に戸惑っているのか、隣にいたアンナが僕の服の袖を掴み、もう片方の手で口元を隠しながら顔を赤らめている。婚姻の儀での浅瀬の水路を渡る儀式も、リリアーナ王女は体制を崩さずに凛として前を向き、力強く歩いている。アゼル兄さんも隣で微笑みながら、王女の少し前を歩き、水流の抵抗が少なくなるようにさりげなくエスコートをしていた。その姿は、お互いの強さを尊重し合う、新しい王族の夫婦像そのものだった。儀式が終わり、アンナとリアンを連れて二人にお祝いの言葉を告げに行った。「アゼル兄さん、リリアーナ王女。この度はご結婚おめでとうございます。」二人は満面の笑顔で応えた。
last updateLast Updated : 2025-10-11
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200.【番外編】ルシアンとアンナ王女の愛⑥

ルシアンside「え?私のお腹に赤ちゃん?赤ちゃんがいるの!?」「今、医師に診てもらったらそう言われた。まだ妊娠して間もないらしい。アンナの体調不良はつわりだったんだ。」「そうなの、ルシアンと私の子がこのお腹にいるのね。嬉しいわ。」そう言うとアンナは、先ほどまでの苦痛の表情とは違い、愛おしそうにお腹に手を当てて、ゆっくりと撫でている。「気がついてなかったんだね。痛みに耐える中、アンナが『出逢えて良かった』なんて言うから、僕は生きた心地がしなかったよ。」僕が不安を告げると、アンナはキョトンとした後に僕の手を両手でやさしく包み込むと、優しく微笑んだ。「あれはね、私が痛みに苦しんでいる時もルシアンが側で寄り添ってくれたのが嬉しくて、愛おしくて、幸せだなって思ったら口に出ちゃったの。それに、心配しないで。私はあなたと一分一秒でも長く一緒にいたいから、あなたよりも先に死んだりしないわ。」アンナは僕の頭を優しく撫でてから顔を近づけてキスをした。汗で冷え切っていた身体に恐怖を感じていたが、キスをしている今、アンナの唇も舌も温かく、僕の不安を溶かしていく。「あー!パパとママ、チューしている!!!」
last updateLast Updated : 2025-10-13
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