サラリオside「葵?どうしたんだ。そんな深刻な顔をして。」執務室に現れた葵の表情を見て、私の胸に嫌な予感がよぎった。何事もないかのように振る舞い、笑顔を向けても葵の顔は強張ったままだった。彼女の視線は、揺るぎない決意を秘めて私を真っ直ぐに見つめていた。「サラリオ様、大切なお話があります。」その言葉に、私の心臓がドクンと大きく鳴り響く。「……なんだろうか。」「私、ゼフィリア王国に行きたいと思います。」その言葉は、私の耳には信じられないほど遠く、しかしはっきりと響いた。私は反射的に叫んでいた。「待て、駄目だ。まだ期限まで日にちはある。対策を考えよう。」「でも……何度話し合いを重ねてもいい策は出ませんでした。そして、すぐには出ないことをサラリオ様もお感じになっているのではないでしょうか?これ以上、みなさんを悩ませるのは大変心苦しいのです。」周りのことを優先し、気持ちを尊重する葵の事だ。いつか、いつの日か葵が、自らゼフィリア王国へ行くと言いだす日が来るのではないかと危惧していた。
Last Updated : 2025-09-24 Read more