愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~

愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~

last updateآخر تحديث : 2025-10-30
بواسطة:  中道 舞夜مكتمل
لغة: Japanese
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政略結婚したが夫から全く愛されなかった私が神話の〇〇として寵愛の国に転生? 「夫の成功のために尽くすのが女の幸せ」そう教育されてきたのに、夫には想い人がいて迷惑がられる日々。途方に暮れていると滝の激流に吸い込まれタイムスリップ。行きついた先は、なんと女性に尽くす『寵愛の国』 私が溺愛!?戸惑う姿が謙虚でかわいいと王子たちの溺愛合戦勃発! そして、葵の転生は神話にぴったり。やがて自分の役割を自覚する。『尽くす』行為の行きつく先は?国を動かす壮大な恋愛ファンタジー。

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الفصل الأول

1.囚われた花嫁

【あなたの居るべき場所はここではない。この囚われの世界から逃れ、本当に求められている場所へ来るのです。】

朦朧とする意識の中、優しい声で男が私に囁きかけてくる。声がする方へ手を伸ばそうとすると目が覚めた。

「夢か……。でも優しい声だったな」

私は、横目で隣に眠る夫・幸助の顔を見た。整った顔立ちで目を閉じている幸助からは、結婚にしてから一度たりともあんなにやさしい声は聞いたことはない。優しい声どころか、私たちは形だけの夫婦でそこに愛は存在しなかった。

夫の成功こそが女の幸せーーー

武力で国を統制していた時代、祖先はある藩の党首だった。党首として武力はもちろんのこと、多くの女性を寵愛し子孫繁栄に努めたそうだ。

武士の末裔として生まれた私は、小さい頃から『将来、夫になった人に忠誠心を持ち従うこと』を家訓として祖父母や両親に言い聞かされてきた。結婚相手の成功と子孫繁栄、そのために影ながら支えること、旦那様にこの身を捧げることが女の役目だと信じて疑わなかった。

武力の時代が終わりを迎えてから数十年。

私、高岡葵は16歳の時にこの地域では資産家と名高い佐々木の家へと嫁いだ。

佐々木家は江戸時代より薬種問屋として医師に薬を売る商売をしていた。時代が移り変わり、問屋だけではなく、自分の息子たちを医師に育て上げ病院というものを作った。

昔から親交のある佐々木家と高岡家は親同士が決めた政略結婚である。

夫である佐々木幸助は、寡黙で何を考えているのか分からない人だった。結婚式当日まで私たちは顔すら合わせることもなく、初めて顔を合わせた日に、結納・顔合わせ・入籍と婚姻の儀を一気に行いその夜から一緒に住むことになった。

今日初めて顔を合わせた相手と生活を共にする。部屋には綺麗に整えられた寝具とかすかな灯りが障子に私たちの影を映している。

その時、私は幸助さんの元へ嫁いだのだと改めて実感した。

(し、子孫繁栄って……。頭では分かっているけれど、私も子どもを授かるためにそうなるということ????)

若干の不安と戸惑いを感じ、手が微かに震えている。

バサッー

分厚い布団を手に取り、先に中に入る幸助さんを見つめ緊張の面持ちで腰を下ろし次の言葉を待った。しかし、その言葉は私の予想外のものだった。

「今日は疲れているでしょうから、そのままお休みください。」

そう言って私に背中を向けて眠る幸助さん。幸助さんなりの配慮だと感じ、その日は休ませてもらうことにした。そして、そんな優しく気配りしてくれる幸助さんのもとへ嫁いだのだからこの身と人生を捧げようと強く決意をした。

しかし、翌日も、その翌日も幸助さんが私に触れてくることはない。

最初の頃は、まだ社会や男女の恋も知らない生娘な私のことを思い心の準備ができるまで待ってくれているのだと思っていたが、こうも何もないと不安になる。準備ができたことを伝えるべきなのだろうか。そんな悩みを抱えていた。

そして、嫁いでしばらくしたある日、私は意を決して寝る前の幸助さんに言葉を掛けた。

「私は幸助さんのために嫁いできました。覚悟は出来ております」

そう伝えると幸助さんは、ピクリともせずに無表情のままだった。そして、彼の本当の気持ちを知ることとなる。

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1.囚われた花嫁
【あなたの居るべき場所はここではない。この囚われの世界から逃れ、本当に求められている場所へ来るのです。】朦朧とする意識の中、優しい声で男が私に囁きかけてくる。声がする方へ手を伸ばそうとすると目が覚めた。「夢か……。でも優しい声だったな」私は、横目で隣に眠る夫・幸助の顔を見た。整った顔立ちで目を閉じている幸助からは、結婚にしてから一度たりともあんなにやさしい声は聞いたことはない。優しい声どころか、私たちは形だけの夫婦でそこに愛は存在しなかった。夫の成功こそが女の幸せーーー武力で国を統制していた時代、祖先はある藩の党首だった。党首として武力はもちろんのこと、多くの女性を寵愛し子孫繁栄に努めたそうだ。武士の末裔として生まれた私は、小さい頃から『将来、夫になった人に忠誠心を持ち従うこと』を家訓として祖父母や両親に言い聞かされてきた。結婚相手の成功と子孫繁栄、そのために影ながら支えること、旦那様にこの身を捧げることが女の役目だと信じて疑わなかった。武力の時代が終わりを迎えてから数十年。私、高岡葵は16歳の時にこの地域では資産家と名高い佐々木の家へと嫁いだ。佐々木家は江戸時代より薬種問屋として医師に薬を売る商売をしていた。時代が移り変わり、問屋だけではなく、自分の息子たちを医師に育て上げ病院というものを作った。昔から親交のある佐々木家と高岡家は親同士が決めた政略結婚である。夫である佐々木幸助は、寡黙で何を考えているのか分からない人だった。結婚式当日まで私たちは顔すら合わせることもなく、初めて顔を合わせた日に、結納・顔合わせ・入籍と婚姻の儀を一気に行いその夜から一緒に住むことになった。今日初めて顔を合わせた相手と生活を共にする。部屋には綺麗に整えられた寝具とかすかな灯りが障子に私たちの影を映している。その時、私は幸助さんの元へ嫁いだのだと改めて実感した。(し、子孫繁栄って……。頭では分かっているけれど、私も子どもを授かるためにそうなるということ????)若干の不安と戸惑いを感じ、手が微かに震えている。バサッー分厚い布団を手に取り、先に中に入る幸助さんを見つめ緊張の面持ちで腰を下ろし次の言葉を待った。しかし、その言葉は私の予想外のものだった。「今日は疲れているでしょうから、そのままお休みください。」そう言って私に背中を向けて眠る幸助さん。幸助さ
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2.愛されない私と突然の異世界転身
「葵さんの気持ちは分かりました。しかし、私はあなたと男女の仲になるつもりはありません。私には好きな人がいます。本当はその人と一緒になりたい。だから本当は独身の方がありがたいのです。」拒否されるなんて思ってもいなかった。穴があったら入りたいほど恥ずかしさでその場から逃げたくなった。(これでは私が求めているみたい……。幸助さんは私が邪魔ということ?私がいなくなれば幸助さんはその方と結ばれるの?)ハッキリと邪魔など傷つく言葉を言われたわけではない。でもその中途半端な優しさが余計に辛かった。幸助さんのために人生もこの身体も差し出す覚悟できたのに、いらないと言われてしまい私は途方に暮れていた。少しでも幸助さんの役に立ちたいと掃除や炊事など家事に励んだ。薬草も少しずつ覚えていき、仕事でも支えていきたいと思っていた。2年が経過し私は18歳になった。周りは結婚したら毎日のように身体を重ねるため半年もせずに子どもを授かっていた。2年も経つのに子どもがいないことを不審がる声も出ていて、次第に影で言うのではなく面と向かって言ってくる人も出てきた。頻度を尋ねてきたり下品な言葉を口にされることもあった。(そうは言っても、幸助さんは私に指一本触れてこないのです……。)全く触れてこないのに子どもが出来ることはないくらい私でも分かる歳になっていた。報われない思いを胸に一人涙したが、誰かに見られ幸助さんに悪い噂が流れる事を恐れ、人が滅多に来ない山奥へ向かうと遠くから人影が見えた。「幸助さん……。」「佐紀さん」そこには夫の幸助さんと佐紀さんという女性が2人でいた。私の前で見せたことのない愛おしそうな優しい瞳で佐紀さんを見つめ微笑んでいる。(幸助さん、、、、やはり私はいない方がいいのですね。)ザッザッザッザッ悲しみにくれて、全速力であてもなく林の中を走り彷徨った。そのたびに地面に落ちた葉が踏まれ音が鳴っている。そのうち、自分がどこにいるか分からなくなった。(このまま帰れなくなるかもしれない……。でも幸助さんにとってはその方が都合がいいのかも。……私も一度は誰かに愛されてみたかった。あんなに優しい瞳で見つめられたかった。)大木がところ狭しと並んでいるせいで、陽の光を遮断し辺りは暗く肌寒い。陽の光が当たる場所を求め私は歩き続けた。しかしいつまで経っても見慣れた景色も陽の光も見え
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3.目覚めのキスと碧い瞳の王子様
(ここは……どこ?)うっすらと目を開けると、金髪の男性たちが馬に乗り私を見ている。しかし、普段目にしている馬とは違い、男性たちが乗っている馬は白く太陽の光に照らされ輝いていた。身体を起こされ抱きかかえられ、何か喋りかけているが言葉が分からない。彼らの視線から心配している様子が窺える。首を横に振り、私は気が遠のいて視界はまた真っ暗になった。「ん……」目が覚めると私は部屋のベッドで横になっていた。繊細な装飾が施されたベッドの柱やふかふかで真っ白な布団は上級階級者が使用するような質のいい物が使われている。(え!?)布団をめくると、一糸まとわぬ姿の自分がいる。林を彷徨い汚れを取るために履き物を脱いだが服は着ていたはずだ。慌てて毛布で身体を隠して辺りを見渡すと女性が3人遠くに見えた。そのうちの一人が私が目を覚ましたことに気が付き近寄ってくる。恐怖で身構えたが、彼女は笑顔だった。何か話しかけてくるが、やはり言葉が分からない。先程の金髪の男性といい、部屋にいた女性も、金やブロンズの髪に目鼻立ちはハッキリした顔立ちで日本人には到底思えない。見た目と言葉の違いにここが日本ではないことを察した。コンコンーー部屋をノックする音がするので振り向くと、先ほど助けてくれた男性の一人がこちらに近づいてきた。見知らぬ土地、見知らぬ屋敷で衣服をまとっていない状態に身体は怯え小さく丸まりながらも、威嚇をした。しかし、男性は「心配することはない」という顔で話しかけてくる。言葉が分からず困った顔をしていると、男性は何かを察したようにベッドの縁に座り、髪を撫でながらおでこにキスをしてきた。「きゃっ……」幸助さんには唇どころかおでこさえ触れてこなかったので初めて男性からキスをされて動揺して背中から全身がピクンと跳ねた。「どう?これで言葉が分かるかな?」先程までは何を言っているかサッパリ分からなかった言葉を理解できるようになっていた。(なんで?さっきまで何を言っているか全然分からなかったのに言葉が分かる!)「ビックリさせてごめんね。こうするしか言葉を理解できる方法がなくて。」理解できずに茫然としている私に男性は続けて話してくる。「私はサラリオ。混乱しているよね。心配しなくても大丈夫。怖い思いはさせないよ。順を追って話そう。」サラリオという男性はそう言って私を安心させようと
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4.龍愛の国の王子サラリオ
「お助けいただきましてありがとうございました。」サラリオの部屋に入るとすぐに私は床に膝と額をつけて頭を下げた。夫の幸助さんにお礼を言う時、見送りや帰りを出迎える時、私はこうして敬意を払っていた。「何をしているんですか。頭をあげてください。」サラリオは驚いた声で慌てて頭をあげるように言ってくる。不思議に思い顔をあげるとサラリオは私の目の前に駆け寄り膝をついて手を差し伸べてきた。「お美しいお顔を床につけたりしてはいけません。」(お、お、おうつくしい……??)そう言って膝と額を優しく撫でたあと、手の甲にキスをしてきた。「ひゃっ……」「ああ、失敬。そなたの国では男性からこのようなことをしないのかな」おでこや手の甲だけでなく男性にキスなんて今まで一度もしてもらったことなんてない。「この国では女性を敬い、喜ばせるのは当然のことです。女性たちが輝いてこそ明るさや活力が生まれるのです。あなたのように床に顔をつけるなんてとんでもない。お美しい顔が汚れてしまいます。あなたはにっこりと微笑むだけで皆を幸せにするのです。」(にっこりと微笑むだけで幸せにする……?そんな馬鹿な!!)馴染みのない言葉に耳を疑った。「ここはバギーニャ王国。父はこの国の王で、私は第一皇子のサラリオです。あなたは?」「私は高岡葵と申します。日本から来ました。」「タクヮァオクヮァ?」「葵です。アオイと呼んでくださいませ」「アオイね、これなら言えるよ。アオイの来たところは知らないな」「信じてもらえないと思うのですが、私、山奥の滝にいたら急に渦を巻いて激流に飲み込まれてしまって……気がついたらここにいたんです。」急に滝に飲まれた……こんな話を誰が信じるだろうと思っていたら予想外にもサラリオは納得した顔をしている。「ああ、そういうことね。たまに水以外の物が飲み込まれるんだけど人が来たのは初めてだよ。」(え、ええーーあっさり信じてくれるの???)「世界中の滝や湖の水は、バギーニャ王国の泉と繋がっているんだ。ある条件が揃うと水の循環をするんだけれど今回はそれがアオイの国の水だったみたい。」「それってバギーニャ王国の泉にいけば元いた世界に戻れるってことですか?」「いや。水の交換は数年に1度でタイミングで行われるけれど、具体的な日にちも分からなければ、どこの国の水と循環するかも分からな
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5.戸惑う私と王子たちの寵愛合戦
数日が過ぎても、日本とは全く異なるこの世界に理解が追いつけずにいた。第一王子サラリオのおかげで、豪華な部屋に彩り豊かな食事と華やかなドレス、身の回りのお世話をしてくれるメイドもいて、今まで以上に優雅な生活となったがその優雅で贅沢な暮らしは今までと180度変わり戸惑いを隠せなかった。「アオイ様、掃除は私たちがやります。お膝を汚してはなりません。」「え、汚れてないよ。それにいつもメルたちが綺麗にしてくれているじゃない。私にもやらせて。」「なりません。アオイ様はゆっくりくつろいでいてください」(今までこんなことがないから、くつろぐってどうすればいいか分からないよ……。)ソファに座るように促されたが落ち着かずそわそわした。「ねえ、メル?あなたたちの気持ちはとても嬉しいの。王子だけでなく私にも良くしてくれることに感謝している。だからこそ、あなたたちのお役に立ちたいの。私に出来ることがあったら教えてくれないかしら?炊事と掃除はずっとやってきたから役に立つはずよ。」そう言うとメルや他のメイドたちは困惑していた。「アオイ様……ありがとうございます。ただ、私どもはそのような言葉を掛けられたことがなくどうすればいいのか分からないのです。」「それなら、私をあなたたちと同じメイドにして一緒に働かせて」「……え?」サラリオが外出から帰ってきて廊下を歩いている時だった。屋敷の厨房から見慣れない背丈のメイドの姿が映った。「アオイ!!君は一体何をしているのだ?」「あ、夕食の準備に野菜を切っています。」「なんで君が?メルたちはどうした?」「メルは今掃除をしているので、私は教えてもらいながら料理をしようかと」「そんなことを言って怪我をしたらどうする?」「大丈夫です。包丁の扱いには慣れています。それに助けてくださった王子や、いつもよくしてくれるメルたちのお役に立ちたいのです。……お願いです、このままやらせてくれませんか?」真っ直ぐにサラリオを見て伝えると驚いて困惑していた。「アオイのようにやらせてくれと懇願する女性は大変珍しい。その謙虚さがアオイの魅惑になって素敵に輝いているのかな。アオイが怪我をしないように注意しながら教えてやってくれ」サラリオは微笑み返す。(……魅惑だなんて。輝くとかサラッと言うんだもんな。)日本では言われたことのない女性を褒めたたえる台
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6.寵愛の国の真実(前編)
「葵様、何かお困りごとはございませんか?」私の専属の侍女であるメルがいつもと変わらぬ穏やかな声で尋ねる。メルは、私の戸惑いや不安を敏感に察してくれる心強い存在だった。彼女は、私がこの世界に来て初めて信頼できると感じた人かもしれない。「メル……あの、少しお尋ねしてもよろしいでしょうか?」思い切ってずっと心に引っかかっていた疑問を口にした。メルはにこやかに頷き、私の言葉を待つ。「この国では、なぜ男性が女性にこれほどまでに尽くすのでしょうか?私のいた国では、女性は男性に尽くすのが当然で、夫の成功のために尽力し子を産むことが何よりも重んじられていて、このような待遇を受けるのは、ありがたい一方で考えられないのです。」私の言葉にメルは優しく微笑んだ。その瞳には、私を憐れむような色も嘲笑うような色も一切なく、ただただ温かい理解が宿っていた。「葵様がおられた国と、このバギーニャ王国では国の在り方に対する考え方が根本的に異なるのです」メルはそう前置きしゆっくりと話し始めた。「この国では、国を豊かにするのは決してお金でも権力でもなく我々自身だと考えられています。人々が活気ある暮らしを送り、その笑顔が増えることこそが国の豊かさや発展に繋がると深く信じられているのです」「人々が、活気ある暮らし……?」私は戸惑いながら繰り返した。私のいた日本で「国の豊かさ」といえば、軍事力、他国との経済力などが真っ先に思い浮かんだ。人々の「活気」が国の豊かさの指標になるなど考えたこともなかった。「はい。そして、その活気の源こそが女性であると。ご存じの通り、子どもを産めるのは女性だけです。そして、その出産は女性が自らの命を落とす危険を伴う崇高な行いです。だからこそこの国では尊い命を繋いでくださる女性たちに最大の敬意を払っているのです」メルの言葉に私ははっと息をのんだ。子どもを産むことが命がけの行為であることはもちろん知っていた。けれど、日本ではそれは「女の務め」「嫁の役目」でありどこか当然のことのように扱われていた。「……使命、ではないのですか?」絞り出すように尋ねるとメルは首を横に振った。「いいえ。この国では、子どもを産むことが女性の『使命』だとは決して考えられていません。子どもは、愛する人との間に宿る喜びと希望の証。だからこそ、愛する人の子どもだから産みたいと、女性自らが心か
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7.寵愛の国の真実(後編)
この国の男性たちが、女性に、そこまでの愛を捧げているとは――。私の目にうっすらと涙が滲んだ。これまでの孤独と、この世界で与えられている途方もない愛情とのギャップに、心が追いつかなかった。メルと私が話している間、扉の向こうで気配を感じた。視線を向けると、そこにはサラリオ殿下が静かに立っていた。いつから聞いていたのだろう。殿下は咎めるような顔一つせず、優しく微笑んで私たちの会話に加わった。「メルが話していた通りだ、葵」サラリオ殿下の声は、いつも通り穏やかだがその言葉には確固たる自信と深い信念が込められていた。「このバギーニャ王国は、肥沃な土地と豊富な水や食料といった豊かな資源に恵まれている。我々は、その豊かな資源を他国との関係を保つ『商人』の礎としている。物資を送り、人々がこの国に観光に訪れることで活気が生まれ、それがこの国の真の財力となっているのだ」殿下の言葉に、私の頭の中でこの国の仕組みが少しずつ理解されていく。貨幣経済や軍事力だけが国の力を示すものではない、と。「太陽のように笑う人が増えれば増えるほど、この国は豊かになる。そして、その活気と笑顔の象徴こそが、家族であり、子どもであり、そして何よりも女性なのだ」サラリオ殿下の言葉は、私の心を深く揺さぶった。日本では、女性は家族の、家の、国の「基盤」であり「裏方」だった。だが、この国では女性そのものが「豊かさの象徴」であり、輝く太陽のような存在として心から敬愛されている。そのことが、私にとって大きな衝撃だった。「葵はこの国の、そして私にとっても、最も尊い宝だ、よく覚えておいて。」サラリオ殿下は私の目を見つめ、そう断言した。今まで誰からも向けられたことのない甘い視線に、私は恥ずかしさで俯き目を逸らした。「そ、そんなめっそうもない……。」「あれ、また葵に目を逸らされてしまった。僕の気持ちが伝わるまで何度も伝えるからね。」サラリオ殿下の瞳から、私に対して語りかけている偽りない気持ちは感じている。しかし、今までの人生で経験したことのない、心の奥から温かくなり胸が熱くなる感情をどのように処理すればいいか分からなかった。今まで経験したことのない全く新しい価値観が私の目の前に広がっていた。私は、この国で本当に「私自身」として生きていけるのだろうか。不安と期待が入り混じった複雑な感情が胸を駆け巡る。しかし一
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8.王子たちの寵愛合戦、勃発(前編)
執務室で王子たちと初めて会った翌日から、彼らの寵愛が始まった。彼らが私に向ける熱烈な眼差しに私はすっかり翻弄されていた。まるで「宝物」のように扱われることに、戸惑いとほんのわずかな胸の高鳴りが混じり合う。まるで龍愛の国に迷い込んだのではないかと思うほど夢の世界のようだった。そしてその寵愛は、衆人環視の中で行われるばかりではなかった。王子たちは、それぞれが私の元へこっそりと会いに来るようになったのだ。私が目覚めたばかりの朝、侍女のメルが朝食を運んできた直後、そっと扉がノックされた。開くと、そこには静かに佇むサラリオ様の姿がある。「おはよう、葵。よく眠れたか?」こうしてサラリオ様は毎日少しの時間でも見つけては私の部屋を訪れ他愛のない会話を交わした。知らない土地に迷い込んだ私が心細くならないよう気遣ってくれていることが嬉しかった。ある日、私が髪を梳かしていると細く長い指先で私の髪に触れた。「この髪は、朝日に当たると真珠のように輝くのだな」そう言いながら自分の口元まで髪を持っていき頬で髪を撫でている。澄み切った泉のような綺麗な碧い瞳で見つめるサラリオ様は妖艶で私の心までもくすぐってくる。彼の静かで深い眼差しは、常に私を追い、他の何者も寄せ付けないような強い独占欲を秘めているかのようだった。私が庭園で見慣れない花を眺めていると、第三王子ルシアンが声を掛けてくれた。「葵、一人で何を見ているの?」軽やかに私の手を引いて庭園の奥深くへと誘った。「この花はね、夜にしか咲かないんだ。とても儚いだろう?まるで葵みたい」甘い言葉を囁きながら、珍しい花々や美しい景色を見せてくれる。ルシアンは毎日、私が退屈しないようにと趣向を凝らした遊びを提案した。ある日は、宮廷の池で小舟を漕ぎ私が驚くとわざと水しぶきを上げて笑った。またある日は、甘い香りのする異国の菓子をたくさん持ってきて「これ、君の好きそうな味だよ。ほら、あーん」とまるで子供をあやすように私に食べさせようとした。彼の無邪気で自信に満ちたアプローチは私の心をくすぐり、戸惑いつつもいつの間にか笑顔が溢れていることに気づかされた。
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9.王子たちの寵愛合戦合戦、勃発(後編)
ドンッドンドンッー夜更けが近くになり寝る支度をしていると荒々しく扉をノックする音が聞こえてくる。「おい、まだ起きているか?」第二王子アゼルだ。私が開ける間も惜しむかのようにいつも部屋に入ってくる。彼は口は悪いがいつも私を思いやっている優しさがあるのを知っている。昼間は他の王子たちのように私を甘やかすことはせず、人前ではむしろ少し突き放すような態度を取っているが、夜になると様子が全く変わった。「寒くないか?」「困ったことや何か悩んでるなら言ってみろ。俺が解決してやる」そう言って私のことを気遣う一言を毎日かけてくれる。ある晩、私が物思いにふけっていることに気が付いたアゼルは、私の手を強く握り頭を撫でた。その逞しい筋肉に守られているかのような安心感を与えてくれる。彼の不器用ながらもまっすぐで情熱的な愛情表現は心が温まった。第四王子キリアン様は、他の王子たちとは異なり早朝の誰もいない図書館で私を待ち伏せしていた。彼はいつも分厚い書物を抱え、その冷たい銀色の瞳は常に深い探求心を宿している。「君の国の歴史書はないか?前に語っていた武士の文化に興味がある」彼は私に直接的な甘い言葉をかけることはないが、私自身や私の国のことに興味を持ち、熱心に聞いてくる。ある日は、彼が研究している古代文字の話をしてくれた。彼が解読した文字の意味を語るその声は、普段の無表情からは想像できないほど熱を帯びていた。キリアンはいつも冷静で何を考えているのか分かりにくいけれど、彼の隣にいると好奇心が満たされ心が静かに落ち着くような不思議な感覚に包まれた。四人の王子たちが、それぞれ異なる時間帯に、それぞれ異なる方法で、私に「秘密の寵愛」を注ぎ始めた。私の周りには、いつも王子たちの甘い香りが漂っているようだった。彼らの求愛はこの龍愛の国の「女性への尽くし」の極致であり、私が日本で経験したことのない「愛される喜び」を次々と教えてくれた。宮廷の女性たちは表向きは笑顔で私に接していたが、水面下では、私が王子たちにこぞって寵愛されているという噂が渦巻いていることを知っていた。そのことが私の耳に入らぬよう守ってくれていたことを知ったのは、ほんの数日後のことだった。
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10.寵愛の波紋、謎の女を絶望する貴婦人(前編)
バギーニャ王国に降り立って以来、私の周りで起こることはすべてが初めての経験ばかりだった。第一王子サラリオ殿下をはじめとする王子方からの熱烈な寵愛。それは私の凍えた心を溶かし始めていたが、同時に新たな不安の種でもあった。「異国の地から来た女性に、王子たちが夢中?何それ」そんな囁きが、宮殿内外に瞬く間に広まっているらしい。もちろん『異国の地から来た女性』とは私のことだ。侍女のメルたちは、私の耳にそんな噂が届かないように、と気を遣ってくれていた。けれど、ある日、サラリオ殿下のお屋敷を訪れた貴婦人たちの会話が、偶然にも私の耳に飛び込んできたのだ。「謎の東洋の女性のことご存知?」「ええ、知っているわ!王子方がこぞって夢中だとか」「一体どんな女性なのかしらね」足元から冷たいものが這い上がってくるような感覚に襲われた。(……当然だ。王子たちからの寵愛を受けているなんて聞いたら面白くないわよね。私はきっと疎まれ、蔑まれ、また嫌われる。)脳裏に日本の義母の冷たい視線が蘇った。子を産めない私に向けられた、氷のような眼差し。周囲の女性たちからの憐れみと嘲笑の混じった囁き。ここでもまた同じことの繰り返しなのだ。王子たちの寵愛を受ければ受けるほど、私は周りの女性たちから恨まれる。「わ、私にできることはありませんか……?」「このお屋敷の役に立てることはありませんか?」「何かお手伝いできることは?」私は焦燥感に駆られ、メルや顔を合わせた王子方に繰り返し尋ねた。日本の常識が染み付いた私にとって、存在意義を示すためには何か「役に立つ」ことしか思いつかなかったのだ。そうすることで少しでも彼女たちの反感を買わないで済むのではないかと、心のどこかで必死に願っていた。しかし、王子方はただ優しく「葵はここにいるだけで良い」と微笑むばかりで私の不安は募る一方だった。そして、ある日。お屋敷で大規模な行事が催され、宮廷内外の多くの貴族女性たちが訪問してくることになった。その日も、王子方は私に対してまるで壊れ物を扱うかのように優しく、常に傍らに寄り添い、何かと気を配ってくださった。そんな彼らの寵愛を受ける私は、彼女たちの視線が突き刺さるような気がして、一層低姿勢になり、恥ずかしがりながらおどおどと振る舞ってしまった。日本の習慣で、身を低くすることで、波風を立てずに済むと信じていたのだ。そん
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