葵sideルシアンが正式にゼフィリア国王に就任してから、さらに二年が過ぎた。アゼルはルーウェン国王として、ルシアンはゼフィリア国王として国を導いている。そして、ついに私たちの番が来た――――。バギーニャ国王である父上が、長年の責務を終え、サラリオ様に王位を譲る日が決まったのだ。アゼルやルシアンの時のような切迫した事情はなく、平和裡にそして満場一致の承認をもって、その日がやってきた。戴冠式を控え、サラリオ様はいつも以上に厳格な表情をしていた。彼は長兄として、次期国王として幼い頃からずっと国の重責を誰よりも深く背負ってきた。その彼の決意と重圧が、私にも痛いほど伝わってきた。ある日、私は彼の執務室を訪ねると、サラリオ様は膨大な書類の山を前に疲れた顔でペンを動かしていた。「サラリオ様、少し休まれたらいかがですか?」「葵か。大丈夫だ。だが、少し話し相手になってもらえるか。正直に言うと、少し怖いんだ。」彼は、私にだけ見せる弱さを露わにした。「父上から託される重責、国民の期待、そして君とこの国の子どもたちの未来。すべてを背負いきれるのか、不安になる。」
Last Updated : 2025-10-26 Read more