「私は、生まれてきてから夫を支えることは女性の使命だと教えられてきました。夫のために人生も身も捧げるのが当たり前と教えられてきました。それが自分の価値を証明するための方法だったのかもしれません」思わず、心の奥底に秘めていた本音を漏らしてしまった。すると、侯爵夫人は優しく私の手を取った。「葵様。葵様の国のように義務ではありませんが、この国でも愛する人のために人生を捧げるという考えはあります。ここでは、女性は尊い存在です。愛され、敬われ、そして愛に応えることで、共に未来を築いていくことが、夫婦の喜びなのです。どちらか一方が一方に『捧げる』ものではなく、互いの力を合わせ、『共に創造する』ことなのです」(共に想像する……。)その言葉は私の心を深く深く打った。日本の「尽くす」価値観が、この国では「捧げる」ではなく「共に創造する」という意味合いを持つことを、この時、私は肌で理解した。私はこれまで誰かに「価値」を与えられることでしか自分の存在を認められなかった。けれど、この国の女性たちは自身の中に価値を見出しそれを誇りとしていた。私は、自分の中に隠された力、まだ見ぬ可能性を自覚し始めた。私が日本で培ってきた知識や、困難に耐え抜いてきた経験は、もしかしたらこの国で私自身の「創造する力」となるのかもしれない。王子たちからの寵愛が、単なる「愛される」こと以上の意味を持ち始めた瞬間だった。それは、私の自己認識が大きく変化するまさに転換点だった。
Huling Na-update : 2025-06-21 Magbasa pa