バギーニャ王国での生活にも少しずつ慣れ、王立図書館での学びも深まり充実した日々を送っていた。ある日の午後、レオンとリオが庭園で遊んでいると、レオンが転び、膝を擦りむいてしまった。大した怪我ではなかったが小さな擦り傷からわずかに血がにじんでいる。メルが慌てて宮廷の医者を呼びに行こうとするのを私は思わず止めた。「メル、待って。私が……」とっさに庭の片隅に群生している、見慣れた野草に目が留まった。日本で「オオバコ」と呼ばれているその草は、傷の治りを早め止血する効能があることを知っていた。この国の薬草図鑑には載っておらず、ただの野草として扱われているようだった。私はしゃがみ込み、オオバコを数枚摘み取ると手のひらで揉み始めた。汁が滲み出てくるまで揉み潰しそれを優しくレオン様の擦りむいた膝に当てた。「お姉ちゃま、これ、何?」レオンは興味津々といった顔で私の手元を覗き込んでいる。「これは少しだけ痛みを和らげてくれるおまじないよ」そう答えると私は布で軽く押さえてやった。数分もしないうちにレオンの膝の出血が止まり腫れも引いていくのが分かった。「すごい!止まった!」
Last Updated : 2025-07-05 Read more