Semua Bab 愛されなかった武士の娘が寵愛の国へ転身~王子たちの溺愛が止まらない~: Bab 11 - Bab 20

76 Bab

11.寵愛の波紋、謎の女を絶望する貴婦人(後編)

しかし、女性たちの反応は私にとって理解不能なものだった。「本当に可愛らしい方ね」「健気でいらっしゃる」「私たちにはない儚い魅力があるわ」そんな言葉と共に彼女たちは好意的な表情で私に近づいてきたのだ。彼女たちの瞳に宿るのは、嫌悪や嫉妬ではなく、純粋な好奇心とどこか親愛の情のようなものだった。私は、頭が真っ白になり、呆然と立ち尽くすしかなかった。この国の女性たちは、男性たちに惜しみなく愛され、深く敬われている。だからだろうか、彼女たちは自分を卑下することなく、他者の良いところを素直に「素敵」と称え、その才能や魅力を心から認める、寛容で明るい心の持ち主ばかりだったのだ。彼女たちの言葉と態度は、私が日本で経験した「女社会」とはあまりにもかけ離れていた。「あの……私、嫌われているわけではないのですか……?」私は、溢れそうになる涙を必死に堪えながら震える声で尋ねた。これまで積み重ねてきた嫌悪と冷遇の記憶が、目の前の優しい光景とあまりにかけ離れていて感情の整理ができなかったのだ。涙腺はとうに限界を迎え、私の問いが終わるやいなや大粒の雫がボロボロと頬を伝い落ちた。私の突然の涙に、その場にいた全ての女性たちと王子たちは驚きに目を見開いた。「あら、なぜそんなことを……」「まさか!とんでもない!」女性たちは慌てて私を囲み口々に否定の言葉を紡いだ。「そんなはずございませんわ!むしろ、わたくしどもは、異国の地からいらした方がどんなに美しい方なのか、どんな魅力をお持ちなのか、ぜひお会いしてみたいとずっと心待ちにしておりましたのよ!」彼女たちは、私を「羨望」はしていたけれど、それは「恨み」や「憎しみ」ではなく、「憧れ」や「会ってみたい」という純粋な好意だったと説明してくれた。そして、王子たちもまた私の涙に動揺を隠せない。「そんなわけないだろう、葵!誰がお前を嫌うというのだ!」サラリオ殿下は、焦ったように私の両手を握りしめ力説する。「泣かないで、葵。君の笑顔が一番だよ」ルシアン殿下はハンカチで私の目尻に触れて涙を拭いながら、優しく甘い言葉を囁きかける。「なに馬鹿なこと言ってるんだよ。お前を傷つける奴は誰もいないし、俺たちが守るから」アゼル殿下は、呆れた顔をしながらも私の肩を力強く抱き寄せる。「兄さんたちの言う通りだよ。葵を嫌う人なんていないしもっと知りたくて興味
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-11
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12.尽くす側から尽くされる側へ

(私に向けられる視線が、嫉妬や嫌悪ではなく純粋な興味や好意だったなんて……。)『異国の地から来た女性に王子たちが夢中』という噂が宮殿内外に広まっていることを知り、私は女性たちから妬まれているのではないかと怯えていた。しかし、女性たちから向けられたのは攻撃的な視線や言葉ではなく好奇の目だった。夜、部屋に戻ってからも私はとめどなく涙を流し続けた。悲しみの涙ではなく、安堵とそして今まで知らなかった温かさに触れたことによる深い感動の涙だった。(私はこの地にいてもいいんだ……。)翌朝、目が覚めると枕元に置かれた花瓶に見たことのない可憐な花が飾られていた。小さな白い花弁が寄り添うように咲き、甘く優しい香りを放っている。その傍らには一枚のメッセージカード。サラリオ様の筆跡だった。「葵へ。君を不安にさせていたなんて思いもしなかった。事前に気がつくことが出来なかったのが大変心苦しく、申し訳なく思っている。君が切なそうに涙するのは私も心が痛む。どうかこの花のようにありのままの君の美しさで咲き誇ってほしい。皆、君を愛し、守る者がここにいることを忘れないでほしい。」深い愛情が込められたメッセージに私の胸は温かくなり、私はまた少し涙した。サラリオは不安に感じていることを全て理解してくれていた。そして、私に寄り添おうと花まで用意してくれたのだ。その日以降、王子たちの寵愛はさらに優しさと細やかさを増したように感じた。サラリオは、以前にも増して私の心の機敏に気遣ってくれるようになり、少しでも顔色が悪ければ、すぐに私の手を握り熱がないか確認するようになった。ルシアンは、私が笑顔を見せるたびに自分のことのように喜び、「やっぱり葵は笑顔が一番だよ。葵の笑顔って癒されるし、この花よりも綺麗だね!」といつも私を明るい言葉で包んでくれた。アゼルは、口数は少ないけれど私が少しでも困っている様子を見せるとすぐに駆けつけて助けてくれる。その行動で強い愛情を示してくれた。キリアンは、私がおどおどせずに自分の意見を話すと興味深そうに耳を傾け、「葵と話をしていると楽しいよ。もっと聞かせて」と微笑んでいた。相手のために尽くすことだけを考えてきた今までは、私に気を止めてくれる人などいなかった。体調が悪くても家事はこなさなくてはいけず、鞭を打って動いていた。そんな過去の生活との違いに、気にかけてくれる
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-12
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13.可愛い2人の王子と母性

「葵、ちょっといいかい。葵に紹介したい人がいるんだ」ルシアン殿下に呼ばれて執務室へ向かった。部屋をノックして入るとそこにいたのは小さな男の子たちだった。「紹介するよ。第五王子のレオンと第六王子のリオだ」第五王子のレオンは金色の髪に大きな琥珀色の瞳を持つ7歳の可愛らしい男の子だった。第六王子のリオは、3歳でルシアン殿下の太ももをギュッと掴みこちらを覗いている。プラチナブロンドのふわふわした髪が可愛い男の子だった。「二人とも普段はベビーシッターがいる別の屋敷で暮らしているんだが、たまにこうして遊びに来るんだ。」「レオンです。よろしくお願いします」「リオでしゅ。」「葵です。よろしくお願いします。私、このお屋敷のこともこの国のこともまだ知らないことばかりなの。レオン君、リオ君、教えてくれるかな?」「うん、いいよー」こうして、レオンとリオは屋敷に来るたびに私に声を掛けてくれるようになった。レオンは、身体は小さいが兄たちのような紳士になりたいようでドアを開けてエスコートしてくれたり、自分が覚えたばかりの文字を私に教えてくれた。会話は分かるようになったが、文字の読解は出来なかったのでぴったりの先生が出来た。お礼を言うと誇らしげに満面の笑みで返すレオンがとても可愛かった。「お姉ちゃま、あそぼー!」 リオは私の足元にちょこんと座り込んでじっと私を見上げてくる。そして、両手を広げて潤んだ瞳で抱っこをせがまれると可愛くてギュッと抱きしめていた。レオンとリオの無垢な瞳に、私の心はたちまち解き放たれていくのを感じた。日本にいた時は子供と触れ合う機会がほとんどなかった。特に、子を産めない私にとって子供はどこか遠い存在だった。そんな私にただただ純粋に懐いてくれるのが嬉しかった。「お姉ちゃま、これ見て!」 レオンは掌に乗せた小さな虫を見せてくれた。私は最初、少し躊躇したが彼がキラキラとした瞳で私を見上げるので恐る恐る覗き込んだ。レオンは「すごいだろう?」と誇らしげに胸を張る。リオは、私の指を小さな手でそっと握りしめ私の膝に顔を埋めてきた。その温かさに、私の胸は締め付けられるような愛おしさでいっぱいになった。私の中に今まで気づかなかった母性のようなものが芽生え始めていることを感じた。同時に、彼らが将来、この国を背負っていく存在であることを改めて認識した。彼らの無邪気な
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-13
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14.幼い王子に兄たちの嫉妬

そんなある日の午後、私は広々とした庭園でレオンとリオと遊んでいた。二人は私の周りを蝶のように跳ね回り、無邪気な笑顔を振りまいていた。「お姉ちゃま、ぎゅーして!」レオンが駆け寄ってきて私のスカートの裾を掴んだ。その後に続いて、リオも「リオもー!」と小さな腕を広げてぴょんぴょん跳ねる。私は屈んで、まずはレオンにハグをした。彼は私の首に腕を回し小さな頬を私の頬に擦り寄せる。「お姉ちゃま、大好き!」そう言ってレオンは私の頬に「ブチュッ」と音を立ててキスをした。その可愛らしい仕草に私は思わず笑みがこぼれる。次にリオを抱っこすると彼もまた満面の笑みで私の口にキスをしてくれた。「お姉ちゃま、好き。ぶちゅー!」その微笑ましい光景を少し離れた場所から見守る視線があった。サラリオ、ルシアン、そしてアゼルだ。サラリオはぱっと見はいつもと変わらないが少しだけ口を紡ぎ何か堪えているようだった。「レオンとリオはいいなー。僕も葵にギュッしてもらおうかな」「おい、ルシアンお前は何を言っているんだ!」ルシアンはそう冗談を言って穏やかに笑っているが、どこか本心にも聞こえてドキッとさせた。ルシアンの言葉にすぐにアゼルが反応して制する。アゼルは、腕を組み不機嫌そうな顔でその様子をじっと見つめていた。二人の王子が私から離れるとアゼル様はすっと私たちに近づいてきた。「おい、レオン、リオ。そろそろ訓練の時間だぞ。お姉様から離れろ」彼の声には、いつものぶっきらぼうさに加えて、僅かな苛立ちと分かりやすいほどの嫉妬が滲んでいた。レオンとリオはまだ遊びたかったようで不満そうに口を尖らせたが渋々返事をして帰って行った。「お前は、あんな小さな子どもにまで懐かれるのか」アゼルは不満そうな顔をしていたが、レオンとリオがいなくなると私の頬に触れ、じっと見つめた。彼の指先は少し冷たかったがその眼差しには熱いものが宿っている。さきほど、レオンとリオに頬を触れられた時とは違う感情が芽生え心臓がバクバクしている。(アゼル様……?)
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-14
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15.葵だから、アゼルの告白

(違う…。この優しさは、ここが女性を大切にする国だからだ。勘違いしてはいけない。)「ア、アゼル様は私の変化に気づいてくれますよね。この国では、男性が女性に尽くすのが当然だと伺いましたから女性の変化に気づくのも長けていらっしゃるのですか?」私はバクバクする心臓を落ち着かせるために言うとアゼルの表情が初めて見るような複雑な色に変わった。彼は私の言葉を遮るように強く私の手を握った。「違う、そんなんじゃない。」その一言は、彼の胸の奥から絞り出すような響きがあった「葵……俺は女性に尽くすのがこの国の男の務めだと教えられてきた。だが、お前に尽くすのはそれだけじゃない」彼の瞳は、熱い炎のように私を見つめていた。彼の言葉は、私の心を今までで一番深く揺さぶった。アゼルはそのまま私の手を握ったまま少し俯いた。「初めてお前に会った時、最初はただの変わったところから来たヤツだとしか思わなかった。だが……お前があの宮殿での行事の時、皆に嫌われていると勘違いしてボロボロ泣いた時だ。あの時、お前を守ってやりたいと心から思った。こんなにも弱く、傷つきやすいお前が、俺の腕の中で泣いていたらどんなにいいだろうと……」アゼルの言葉が私の耳に熱く響く。あの日の私の涙が彼にとってそんなにも特別なものになっていたなんて。「俺は、他の誰でもなくお前だから尽くしたいんだ。お前だから守りたいんだ。お前だから、俺のものにしたい」(私、だから……?)彼の瞳は、情熱的な炎を宿しながらもどこか切なげな光を帯びていた。今までの「尽くす」という行為は、この国の価値観に縛られたものではなく純粋に「私」という人間への彼自身の選び取った愛情だった。私に向けられるアゼルの真剣な想いは、私の胸に新たな熱を生み出した。ただ愛される喜びとは違う、もっと深く抗えないような感情だった。その事実が、私に今まで知らなかった甘やかな喜びとそして小さな優越感を与えた。アゼルの言葉が私の心に深く刻み込まれている。私は、彼の逞しい腕の中で今まで感じたことのない甘くそして熱い感情に包まれていた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-15
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16.アゼルの告白と特別な女性

少し離れた場所でアゼルのあまりにストレートな愛情表現を見ていたサラリオとルシアンは呆れたような、しかし少しだけ羨ましげな表情を浮かべていた。特にサラリオの碧眼の奥には、獲物を見つけた時のような一瞬だけ強い光が宿っていた。ルシアンが悪戯っぽい笑みを浮かべてサラリオに囁く。「ああ、兄さん。このままでいいの?アゼルに葵を取られちゃうかもしれないよ」サラリオは、ルシアンの言葉に動揺したようにわずかに表情を硬くした。「な、何を言っているんだ。そんなこと……」サラリオの言葉はどこか歯切れが悪かった。ルシアンはそんなサラリオの様子を見るのが楽しかった。「あれ?兄さんは何も言わないの?それなら僕が参戦しようかな」「おい、ルシアン!!」ルシアンは悪戯っぽくにやりと不敵な笑みを浮かべながら、その場を後にしていった。(あ、あいつら……。人の気も知らないで。)サラリオは小さくため息をつくとその場にがくりと座り込んだ。普段の冷静さとは異なる、珍しい焦燥とかすかな後悔のような感情が浮かんでいる。☆アゼルの腕の中に包まれていたが、身体を話すとアゼルはポツリと呟いた。「それに、葵は他の女性とは何かが違う。あのルシアンもお前と話しているといつもよりも真剣な顔をしている。キリアンもお前と知識を交換している時だけ普段見せないような表情をする。あのサラリオでさえ、お前を前にすると普段の冷徹さが薄れる。お前は、俺たちの誰の心も揺るがす力を持っている。何か不思議な力を持っている気がするんだよな。なんか魔法でも使えるのか?」「え……?」そう言ってアゼルは身体検査でもするように私の腕やお腹、脚をポンポンと触り確かめていく。予期せぬ発言に言葉を失っていた。「……アゼル、何をやっているんだ。」呆れ切った顔をしてサラリオが止めに入った。「葵は何か他の女性とは違う気がするんだ。国が違うとかそいうことじゃなくて、何かもっと深い、繋がりのようなものを感じるんだよな。」その言葉にサラリオは一瞬、硬直したように見えたがすぐに戻った。「なにを言っているんだお前は。強引すぎると怖がる女性もいるんだから気をつけろよ。」「はいはい」そう言ってサラリオに返事をすると私の耳元で小さく囁いた。「葵は嫌だった?でもさっきのが俺の気持ちだから」私は初めて男性の腕に導かれて抱かれたことへの衝撃で頭がい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-16
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17.甘い言葉とルシアンの教え

バギーニャ王国での日々は甘い戸惑いに満ちていた。「美しい」「綺麗」「可憐」「健気」──王子たちから毎日のように甘く囁かれる褒め言葉や、手の甲にそっと落とされるキスや、ふわっと包み込むようなハグでの挨拶など、どれもこれも私の心を動揺させて、慣れる日は一向に訪れない。未だに私は頬を赤く染め、心臓をバクバクとさせて困惑していた。私の様子を見て、最初のうちは王子たちも少し困ったような、申し訳なさそうな顔をしていた。しかし、しばらく経っても一向に慣れない私に対して、サラリオは「どうしたら葵は喜んでくれるの?」といつもその碧眼を細めて顔を近づけ微笑んでくる。それだけ鼓動が早まり意識が遠のきそうだった。アゼルは「そろそろ慣れろよ」と呆れたように、けれど少し楽しげに言う。キリアンは「葵は、この国の他の女性とは違う反応で面白い」と珍しく口元に笑みを浮かべて私の様子を観察しているようだった。褒められるたびに動揺するのは、夫・幸助との過去が原因だった。幸助さんからは、女性として扱われることはおろか、褒め言葉など一度も向けられたことがなかった。王子たちからの甘い言葉に思惑や打算がないことは分かっていても、「とんでもございません」「そんな私なんかにはもったいないお言葉です」と自分を卑下する言葉が口をついて出てしまう。褒められることに慣れていない私の心は、彼らの甘い言葉を受け止める準備ができていなかった。そんなある日のことだった。庭園の片隅で私が鑑賞をしているとルシアンがやってきた。「葵、今日のドレス、君の髪の色と合っていてとても似合っている。素敵だね。」「そんな、とんでもございません。」「…ねえ、葵?なんでそうやって否定するの?」いつものように返すと、ルシアンがいつにもまして真剣な瞳で尋ねてきた。「みんな心の底から葵のこと素敵だと思って言っているのに、それを『とんでもない』とか『もったいない』って否定するのはおかしくない?」ルシアンの言葉は、まるで私の心を見透かしているかのように真っ直ぐに響いた。彼の問いかけは、私がこれまで当たり前のように使ってきた言葉の裏に隠された意味を容赦なく突きつけてくるようだった。「だって……私なんか……」「違うよ、葵。」私はまた、いつものように口ごもろうとした。だが、ルシアンはそれを許さなかった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-17
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18.卑下からの脱却

「例えばさ、僕が凄く素敵な花を見つけて君に見せたかったとする。君はなんて答える?」「わぁ、本当。すごく綺麗ですね、とか?」「そうでしょ?でも、もし『そんなことない』って返されたら綺麗だと思っていた花がさっきまでより綺麗に思えなくなると思わない?同時に、僕の綺麗と思う目っておかしいのかな?って少し寂しくならない?」「……そうですね。」「それと同じで、僕が『葵は本当に綺麗だね』って言ったら、葵は『とんでもないです』って返すけど、それって僕の目がおかしいとか、嘘を言っているって言われているみたいで、ちょっと寂しいんだ」「お花は分かりますが、私への言葉も同じなんでしょうか?」「そうだよ、僕はそう思っている。」「それに誰かに褒められたらさ、『ありがとう』って言われた方が嬉しいと思わない?」彼の言葉に含まれる真剣な響きに私はハッと息をのんだ。彼らは、心からそう思って言ってくれている。その純粋な気持ちを私は無意識のうちに否定していたのだ。ルシアンの問いかけに、私の胸の中で何かが音を立てて崩れるのを感じた。それは、長年私を縛り付けていた、日本の「謙遜」という名の呪いだったのかもしれない。(そうか、私は、彼らの純粋な好意を無意識のうちに跳ね返していたのか!!)「ありがとう」。たったそれだけの言葉が、こんなにも重い意味を持っていたなんて。彼らにとって、それは決して喜びではなかっただろう。ルシアンの問いかけは、私に今までの自分の態度が彼らの愛情に対しどれほど失礼なものだったかを突きつけた。私は、彼らが私に注いでくれる限りない愛情にどう応えればいいのか初めて真剣に考え始めた。「葵、葵は自分が思っている以上に魅力的で素敵な女性なんだよ」「……ありがとう、ございます?」小さく掠れた声だったけれど、私は生まれて初めて感謝を彼らに向けて口にしていた。ルシアンは、その言葉に満面の笑みを浮かべた。その笑顔は、太陽のように眩しく私の心を温かく照らしてくれた。「ふふ、よく出来ました。葵はとってもキュートだよ、可愛い」そう言って子どもを褒めるように私に目線を合わせて頭をよしよしと撫でるルシアン。(……キュート?もしかしてからかわれた?)しかし、この相手からしてもらった尽くしを嬉しく受け止めることをきっかけに葵の心にも、そして王子たち、ひいてはこの国の未来を変えていくこと
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-18
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19.喜んで受け取ること①

「葵様、その髪飾りとてもよくお似合いですわ!さすがはサラリオ様がお選びになっただけありますね」私の部屋に、朝の挨拶に訪れたメルが目を細めて微笑んだ。「あ、ありがとう…」ルシアンに言われてからありがとうと伝えるようにしているが、まだ慣れずになんだか気恥ずかしい。彼女たちの言葉は、お世辞のような響きはなく心からの賛美が込められているのが伝わってくる。他人の持ち物を評価する際のどこか探りをいれたり、品定めをするような視線とは全く異なる素直な褒め言葉は心がふわりと軽くなる。宮殿の生活では、様々な貴族の女性たちと顔を合わせる機会があった。彼女たちは皆、胸を張って生き生きとしていた。豪華なドレスを身にまとい、最新の流行について語り合い、時には政治や経済について堂々と意見を交わす姿は、私の知る日本の女性像とはかけ離れていた。日本では女性が公の場で意見を述べることは稀で、ましてや政治や経済、仕事の話の場で男性の会話に口を挟むなど、あってはならない行為とされていた。ある日の午後、宮殿の庭園で開かれた茶会に招かれた私は数人の貴婦人たちと話す機会があった。「葵様はとても奥ゆかしい方ですわね。」「そんな……とんでもございません。お褒めいただきありがとうございます。」ルシアンの言葉を思い出し、葵は自分が返した言葉を反省した。「エリーゼ様、今日の髪飾りとてもお似合いで素敵ですね」メルが言ってくれた言葉を真似して話してみた。もちろんエリーゼ様の髪飾りが本当に素敵だと思って出た言葉である。「ありがとう。嬉しいわ。夫がプレゼントしてくれて私もとても気に入ってますの」決して自慢をするわけでも、見せつけるわけでもなく、少女のように好きな人からもらったプレゼントだと嬉しそうに語るエリーゼ様は普段の気品ある大人の女性とは違った表情でとても可愛らしかった。「今の表情もとても素敵、私もこうすればいいのか……」「え?」エリーゼ様は不思議そうな顔をしてこちらを見てきた。(し、しまった……。)
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-19
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20.喜んで受け取ること②

「す、すみません。褒められることが今までなくて、どんな言葉を返せばいいか分からなくて。あ、でも本当にエリーゼ様の髪飾りは素敵だと思ったんです。太陽みたいに光り輝くオレンジもエリーゼ様のお人柄をあらわしているようで綺麗だなと。」私は焦りながらも本心だということを熱弁した。「ふふふ、ありがとうございます。それなら葵様はいつもどのようにされているのですか?王子たちの言動に葵様は、少し困ったような顔をされているように感じたのですが。嫌な気持ちなのですか?」「いえ、そんな、嫌な気持ちだなんてとんでもございません。ただ、私の生まれ育った国では褒められたら一度謙遜する文化があるのです。また褒め言葉を口にする機会自体が少なく言われると恥ずかしくてどう返せばいいのか分からないのです。」「けんそん?」「えっと……否定する、というか誰かに褒められたら『そんなことありません、でも嬉しいです、ありがとうございます。』と言った感じでしょうか」「そのような文化もあるのですね。ここでは馴染みがないので不思議な感じですわ。それだと葵様もこの国は不思議に思われたでしょう?」「はい…。最初は戸惑いました。でも、素敵なことは素敵と褒め称えられるこの国はとても素敵だと思っています。」「ありがとう。嬉しいですわ。この国のことが大好きなの」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-20
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