勿論私もそれで構わないのだけど、あくまで悪いのは当主であるフィシだ。 ルナールの一族を騙し討ちにしたのもあいつだし、はっきり言って全部あいつが悪い。 だからこそ、アルバや残された臣下達が可哀想に思えてくる。 「アルバ。馬鹿な当《とう》…… フィシのせいで貴方達がメレフ一帯を失ったら、一族は単に損するだけですよね。 もし……私の提案を受け入れて頂けるのであれば、あの金山は貴方達に差しあげようと思います。」 「アデリナ?」 それは同情心からくる、咄嗟の思いつきだった。 結局、悪い奴以外は誰にとっても最良な状態が一番いいはずだ。 ルナール一族はこれで自分達の奪われた土地を奪い返すという長年の夢が叶ったけれど、ガドル一族は、クブルクに土地を奪われた状態になってしまう。 アルバは良くても、一族の誰かに逆恨みされるとも限らない。 しかも相手は元々独立した支配権を持っている一族。 それが新たな戦争の火種にならないとは言い切れない。 だからまずは訝しがるローランドを説得する。 「陛下。お願いします。クブルクにはまだまだ強力な味方が必要でしょ? 悪い風にはしませんから、どうかアルバ達にあの金山を譲る事を許可して下さい。 それと………」 私はローランドにとある事を耳打ちする。 彼は一瞬戸惑ったような顔をしたが。 「っ……、お前はどうしてそうも、またっ… はあ。分かった。アデリナ。 今回ばかりはお前の意見に従おう。 だが……!今後は一切、クブルクにとって不利益になる様な取り引きはしない。 分かったか?」 「はい……ありがとうございます!陛下。 では。」 許可を得て、私は微笑みながらアルバ達の方を向いた。皆も固唾を飲んで見守っている。
Terakhir Diperbarui : 2025-08-01 Baca selengkapnya