しばらくの沈黙の後。先に口を開いたのは、大人の色気ダダ漏れのローランドだった。
「アデリナ……触れるぞ……?」
「は、はいっ、ど、どうぞ」
頬を赤らめながら、私の顔に手を伸ばしてくるローランドと目が合って、いつも以上にドキドキと胸が高鳴る。
ふわっ、とローランドから甘ったるい香水の匂いがする。
その逞しい手が優しく頬に触れた。
「ローランド……っ、」
思わずピクっと反応してしまう。
今までこんな瞬間を何度も経験してきたけど、やっぱり緊張する……ローランドの瞳、本当に綺麗……
私を見つめる彼の瞳の中に、アデリナの瞳が映ってる。 思えばローランドとアデリナは夫婦だったんだから、こういう夜は何度もあったはずだよね「……っ、アデリナ………」
切ないローランドの声が聞こえて、トサッとベッドに押し倒された。
それすらいつも以上に優しい気がする。「キス……してもいいか?」
「っ、……!は、はいっ。」
普通に恥ずかしい……!
なぜか熱い瞳で私を見下ろすローランドの顔が直視できない。 本当に、今夜はどうしてこんなに優しいの? 頷きながらも、緊張して片腕で口元を隠してしまう。思えば私は、翔以外の人とした事がない。
だからあまりに免疫がなくてめちゃくちゃ緊張するし、本当に恥ずかしいのだ。 こんなイケメンに迫られたら鼻血が出そう。「はあっ……アデリナ。
お前はっ、どうしてっ、またそんな顔をするんだ……?」「えっ?っと……どんな顔で
誰かから大切にされるっていいな。 私も誰かにそうされたい人生だった………… 「アデリナ。信じてくれるかは分からないが… 私にとってお前は大切な存在なんだ。 心から————」 ◇ あれからさらに、どれくらい時間が過ぎたんだろう。 暖炉の火の勢いが弱まってきているのに、私達は全く寒くなくて、むしろ熱く火照っていた。 今何時くらいだろう? カーテンの隙間から赤い日差しが漏れている気がするのは…気のせい? 「っ、はあ……っ、アデリナ。 身体はきつく、ないか?」 「ん、っ、ローランド、あ、あのっ、そろそろ止めた方がいいんじゃないかなと……」 やばい。声が枯れてるし、体がもう限界を超えている気がする。 なのにローランドは、本気で申し訳なさそうな顔をしながらもやめてくれない。 ……こんなに優しいローランドの描写はなかったよねって、思った私がバカだった。 「……すまない。アデリナ。けどあと少し。 もう少しだけ。」 吸い付くようなキスを背中に落とし、ローランドはまだ動き続ける。 「ろ、ローランド……ま、待っ…」 確かに熱は出なかったよ? でも……ローランドが元気すぎる!!! アデリナパパが持ってきた秘薬のせい? これ、一体どうしてくれるの……!!! 「アデリナ、逃げるな。もう少し、だけ。」 ………い、いや。優しいなんて誰が思った? 意識がぶっ飛びそうになりながら、ステータスを確認してみる。 [ローランドの状態▷ア
こんなに誰かに甘やかされ、優しく触れられ、求められる日がくるなんて思わなかった。 かつて翔の妻だった時でも、私はこんな風に愛された事があっただろうか? 熱い体が重なり、ローランドの本能的な男性の気配を感じる。 普段はかなりアデリナと同じくらいツンデレなのに、今はどうしてこんなに甘いの? 思えば初めの頃は本当に最悪の仲だった。 こんな男、冗談じゃないと思っていた。 なのに私達、いつの間にこんなに距離が縮まっていたの? 今は、初めの頃みたいにローランドが嫌いってわけじゃない。 「っ。アデリナ。お前はどこも甘いな……」 香水の匂い……のこと? まるで本当に大事にしてくれているみたいにローランドは私の服を少しずつ脱がしていき、少しずつ優しく肌に触れ、優しいキスを落としていく。 それからどれだけ時間が過ぎたのか。 男は自分さえ気持ち良ければいいんだって認識があったけれど。 まだローランドは耐えている。 何で、耐えてるの? 「っ、はあ……っ、ローランドっ………っ。 も、もう大丈夫ですよ?」 「っ、まだ、駄目だ。アデリナ。今夜はお前の事も、気持ちよくしてやりたい。」 う、嘘。そんな事されたら……! ローランドの優しくて丁寧な、あらゆる奉仕が気持ちよくて、思考がぶっ飛びそう。 こんな……こんな丁寧な描写、原作になかったよね? いくらリジーを愛していても、ローランドがこんな風に優しくするなんて描写は…… むしろ二人には障害が多い分、激しく燃え上がるようなのばかりで…… しかもローランドは、アデリナを義務で抱いてたから淡白だったよね? なのにこんな風に奉仕されたら。
しばらくの沈黙の後。先に口を開いたのは、大人の色気ダダ漏れのローランドだった。 「アデリナ……触れるぞ……?」 「は、はいっ、ど、どうぞ」 頬を赤らめながら、私の顔に手を伸ばしてくるローランドと目が合って、いつも以上にドキドキと胸が高鳴る。 ふわっ、とローランドから甘ったるい香水の匂いがする。 その逞しい手が優しく頬に触れた。 「ローランド……っ、」 思わずピクっと反応してしまう。 今までこんな瞬間を何度も経験してきたけど、やっぱり緊張する…… ローランドの瞳、本当に綺麗…… 私を見つめる彼の瞳の中に、アデリナの瞳が映ってる。 思えばローランドとアデリナは夫婦だったんだから、こういう夜は何度もあったはずだよね 「……っ、アデリナ………」 切ないローランドの声が聞こえて、トサッとベッドに押し倒された。 それすらいつも以上に優しい気がする。 「キス……してもいいか?」 「っ、……!は、はいっ。」 普通に恥ずかしい……! なぜか熱い瞳で私を見下ろすローランドの顔が直視できない。 本当に、今夜はどうしてこんなに優しいの? 頷きながらも、緊張して片腕で口元を隠してしまう。 思えば私は、翔以外の人とした事がない。 だからあまりに免疫がなくてめちゃくちゃ緊張するし、本当に恥ずかしいのだ。 こんなイケメンに迫られたら鼻血が出そう。 「はあっ……アデリナ。 お前はっ、どうしてっ、またそんな顔をするんだ……?」 「えっ?っと……どんな顔で
◇◇◇ 「ど……どうぞ、よろしくお願いします(?) ローランド。」 「あ、ああ……アデリナ。 そ、そうだな。こちらこそ、よ、宜しく頼む(?)。」 他国間協議に出ていたローランドが帰宅し、ついにあの日が訪れた。 そう。房事である。 城勤めの大半の人間が一大イベントとして、期待しまくっている今夜。 あの日の皆の意見通り、私は自分の部屋にローランドを呼んだ。 怪し気なピンクの照明が灯り、部屋にもベッドのシーツにも香水がばら撒かれ、甘ったるい匂いがしている。 私自身は少し際どい衣装を身に付けていて、普段はだいたいアップにしている長い髪を下ろしていた。 “〇〇日に王妃と房事があります” あの後、帰国したローランドに正式にそんな伝達がされたようだ。 しかもローランドがそれをあっさり了解したようで。 何か今までの夜と違うというか、皆やりすぎと言うか…… 私の部屋にローランドが入った途端に、なぜか窓の外では派手な花火が上がるという。 何だこの演出。 「は、花火だな……」 「で、ですね……?」 何か皆、楽しみ過ぎじゃない? それと比べたらローランドも私も緊張し過ぎじゃない? 棒読みに加えて、体はガチガチになってるんですが。 私はともかく、普段人前で物凄く威圧感ある態度を取るローランドが、こうも違うと何か笑えてくる。 「ふっ。あはは。」 そうやって吹き出した私を見て、ローランドもまた釣られるように笑った。 「ははっ……ったく、何なんだ?これは。 お前はいつの間に、城の奴らと打ち解けるようになったんだ。」 確かに。私がアデリナに憑依したばかりの頃は、城仕えの従者達にはかなり怖がられていたの
その後王太后は、しばらく何かを考え込んでいたようだったが。やがてキリッと美しい顔を上げた。 「最近ローランドも体調が良いみたいだし。 そうね。王妃。 ローランドが他国間協議から戻り次第、やりなさい。」 「………!!?」 やるって何を?ヤれってこと? それ、今真顔で言うこと!? 「そうだな、アデリナ。どうにもお前とローランド王は背中を押す者が必要なようだ。 よし。………必ず子作りしろ。」 「………!???」 アデリナパパまで真剣な眼差しをして私にそう訴える。しかも完全に目的を口にしている。 まさか両方の親からこんな事を後押しされるなんて。 「……王太后様!それなら! ぜひ、アドバイスを願いします!」 物凄〜く、ヤる気が湧いてきたよ? 目をギラギラさせ、私は王太后に詰め寄って、両手を握る。 「ローランド……陛下は、よく熱を出してダウンしてしまうんです。 まあ最近はマシになりましたけど。 せっかくチャンスがきても、またその時に熱を出した時はどうしたら……」 「あら、王妃。意外とヤる気なのですね? ふふ。 そういう素直さは嫌いじゃないですよ。 そうですね。あの子は幼い頃から体が弱かったですから。 でも大丈夫。王妃。そんな時はあなたが頑張りなさい。」 ひえー、大胆。私が積極的になればいいと? 「そうか、ローランド王は熱を出して挫折するタイプか。 仕方ない。アデリナ。ローランド王に特別な品を献上しよう。 それを飲めばいくら熱を出したとしても、暫く元気なはずだ。我が帝国に伝わる秘薬だ。 献上品として持ってきといて良かった。」 秘薬……&helli
「あ、今は皇帝陛下と謁見中だから後で…」 慌てて断りを入れようとしたが、アデリナパパに引き止められた。 「よい、アデリナ。許可しよう。」 「お父様…?」 大きな扉がそれぞれ左右に開き、そこに優雅なドレスを着た王太后が入ってくる。 彼女は凛とした様子で、私とアデリナパパの座るソファまでやってくると、上品なカテーシーを披露した。 ぞっとするほどローランドによく似てる。 北欧の色白美人って感じ。 歳はある程度取ってるはずなのに、全く衰えを感じさせない。 ローランドと同じ水色に近い銀の髪が、窓から入る陽光に当たって綺麗だった。 これがローランドを道具扱いしていたローランド母。うん。何か頷ける。 「マレハユガ皇帝陛下、ならびに王妃にご挨拶申し上げます。失礼を承知で、お二人のもとに入らせて頂きました。」 「久しぶりだな、クブルクの王太后どの。 アデリナの結婚式以来か?」 「はい。左様でございますね。」 アデリナパパがローランド母をギロっと一瞥。 だが彼女は動じない。 アデリナパパと私の座っている、ちょうど中間にあるソファに腰を下ろし、付き添いの侍女を下がらせた。 そして私の方に上半身を傾け、ニコリと微笑し、真っ赤な唇を動かした。 何だろ……確かこの人も例に漏れず、アデリナには冷たかったはず。 「失礼ですが、王妃。私も今の、マレハユガ皇帝陛下と同じ意見ですよ。」 「え………?」 「王妃よ。なぜ一刻も早く、ローランドと子供を作らないのです?」 「……へ?」 いきなり何の話?すごい真顔が逆に怖っ。 「……そうだな、アデリナ。なぜ、早く子を作らない? お前達の最大の責務はまさに「子作り」。 子を作ってこそ、ようやく夫婦の愛とは