All Chapters of 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!: Chapter 111 - Chapter 120

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ラスボスはイグナイト?危険な駆け引き!

  「先に帰れとおっしゃられるのですか?アデリナ様?」 あの後、イグナイトにきっちり挨拶をして私はホイットニーと一度神殿の外へ出た。 と見せかけてホイットニーだけを王宮へ戻し、私は神殿にこっそり戻るつもりでいた。 「何をお考えになっているかは分かりませんが……危ないことをしては駄目ですよ。 アデリナ様はもう、お一人のお身体ではないのです。 駄目っ、絶対……!」 普段天然のホイットニーが、心配そうに私の両手を掴んでくる。 「だ、大丈夫よ?ほ、ほら、いつもの好奇心というやつだから心配しないで。」 「ううっ……アデリナ様。」 信用ならないというような、ホイットニーの目線が痛い。 「とにかく、少しだけ神殿を探検したらすぐに戻るから。ね?お願い。」 ◇ ここが、イグナイトの部屋ね。 あれから私はこっそりと神殿内部に戻り、ウィンドウを頼りにイグナイトの情報収集を始めていた。 それによるとイグナイトは、若いうちに神殿長となってから殆どの時間を神殿で過ごしているらしい。 もしこの部屋で何かイグナイトが絶望しているという理由を探り出すことができれば、うまい解決法が見つかるかも知れない。 そんな期待をしつつ、この部屋まで辿り着いたわけだが。 しかし、残念ながら扉は鍵がかけられていた。 「ま、そうか〜当たり前だよね。鍵なんて。」 だけど運が良かったみたい。 下級神官らしき一人の少年が、イグナイトの部屋に掃除用具を持って入って行くじゃない。 私、さては持ってるね? 彼が部屋に入った隙に私も、部屋の中にこっそりと侵入成功。 暫く、神官服が並んだクローゼットに隠れた。 やがて少年が掃除を終えて出て行く。 辺りを見回してクローゼットから出る。 ほとんど物がないシンプルな部屋。 ただ、たくさんの書類と、あ
last updateLast Updated : 2025-08-18
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ラスボスはイグナイト?危険な駆け引き!

 出てきたのはローランドの写真だった。 しかも何か隠し撮りみたいなものばかり。 広い机の引き出しの中には、ありとあらゆる、ローランドの写真が並んでいた。 これ……ローランドが若い時の写真? ローランドが幼い頃まで…?(かわいい) それに隣に写ってるのはまさかイグナイト? 「え……?」 中には《No.5 ローランドの王位継承式》とか《No.3 ローランドと狩猟祭》《No.2 ローランドと避暑地にて》などのタイトルがふってあり、アルバムみたいに丁寧に綴じている物まである。 まるで宝物みたいに。 「No.6 ローランドの肉体美……!!?え」 やばい!今の写真何!!? 驚きすぎてアルバムを机に叩き付ける。 今のは………明らかにローランドの上半身裸の、お宝写真……!! 何か…分かってしまった気がした! だから私への親密度がマイナスのカンスト寸前だったってこと? これってつまり、そういうことだよね? ああ……!なんてこと!?つまりイグナイトはローランドを…… 全くこの小説は、どこまでも色々な要素ぶっ込んでくるね! 「これが噂のBLか……なるほど。」 ちょと美味しいかなとか考えていたら、そんなこと考えてられない事態が訪れてしまう。 「王妃陛下。見ましたね……?」 「………!!??」 声にならない。だって、今まさに私の目の前にイグナイトが立っていたのだから。 しかも私を殺しそうなほど恐ろしい目で睨みつけていた。 ホラーだ………!!ついにホラーぶっ込んできた
last updateLast Updated : 2025-08-19
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ラスボスはイグナイト?危険な駆け引き!

 「イグナイト。確かに貴方の言う通りです。 私はこれまで…陛下を。 ローランドを自分勝手に振り回し、彼を散々困らせてきました。 それに最近ようやく気付けたのです。 だから私は、この子を産んだら離婚するつもりだったんです。」 「嘘だ……!」 目を見開かれてまで疑われるという。 「嘘じゃありませんよ。 ただ、今は…妊婦なので、できたらこの子をしっかりと産むまでは猶予をくれませんか? 私にとってはすごく、大事な子なんです。 ローランドには、義務でできたような子かもしれないですが。」 まだ心音すら感じない自分のお腹をそっと撫でた。 妊娠してからは、単に推しのヴァレンティンだからという理由だけでなく、本当にここに生命が宿っているんだと実感するようになった。 愛おしいという気持ちが湧いた。 これが母性本能というやつなんだろう。 「その代わりイグナイト…… 貴方、サディークに売国行為なんて馬鹿な真似は決してしないで下さいね。」 「!!?っ、どうしてそれを……!!」 うーん。目の前のウィンドウにそう書いてあるからね。 [裏切りのルートに突入した場合▷ 軍事機密を持ち出し、クブルク侵略を企むサディーク国の王太子に売り渡す予定] サディーク国の王太子……! まさにそこが、戦争相手の国だ……!! 「ローランドを……裏切らないで下さい。 貴方達の絆は、そんなに脆いものだったんですか?」 「何を……!あなたに一体、私とローランドの何が分かると言うのだ……!」 「分かりませんけど、こうやって机の引き出しに宝物のように写真を隠しておくくらい、彼のことが好きだったわけでしょう? 
last updateLast Updated : 2025-08-20
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ラスボスはイグナイト?危険な駆け引き!

 そう。ローランドは確かに変わった。  私が変わったせいで変わったのかも知れないけれど、彼は私が憑依した最初の頃とすれば全くの別人だ。 不器用でツンデレで、愛を知らない人だけど今では驚くぐらい優しい人だ。  いくら義務で夫婦だとは言え、ローランドが傷つくのは私だって見たくない。 「イグナイト。約束しましょう。  私が子供を産んだら、離婚してローランドと貴方の前から綺麗に消えます。  その代わり……貴方も決して彼を裏切らないと約束して下さい。  あと軍事機密を盗もうとしていたことは一生、私の胸の中に留めておきます。  誰にも言いません。何なら誓約書を交わしてもいい。だから、お願いしますね。  イグナイト。今ならまだ、貴方は悪人ではないのだから。」 救えるとしたら本当に今のうちだ。 この先好きなローランドを裏切れば、イグナイトは大きな罪悪感を背負って生きることになるだろう。私の言葉が少しでも響いてくれたらいいんだけど…… 「王妃……陛下……あなたは……一体。」 一体、何だと言いたかったの? あの後イグナイトの部屋に神官が現れたので、それ以上の会話はできなかった。  ただあの時別れ際に、イグナイトは凄く困惑したような顔をしていた。  だけど少しだけ、何かが吹っ切れたような表情もしていた気がした。 慌てて神殿を出ると、どこかでまたピロン、という音がした。  多分、誰かの親密度が下がったとか上がったとかそんな通知音だと思って確認しなかったんだけど。 「アデリナ…!」 急いで王宮の自分の宮に戻ったら、ローランドが泣きそうな顔して待っていた。  相変わらずこの人、仕事は?  そばにいたホイットニーもまた泣きそうな顔して佇んでる。 「陛下?」 「そんな体で神殿に行ったのか?」 「あ、はい。私達の子供が無事に生まれてきたらいいなと思って……」 なーんてうまい言い訳にならない? 「そ、そうか。  そうだな。確かにそう
last updateLast Updated : 2025-08-21
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サディーク国の王太子と友達に?

 あれからレェーヴがこっそりイグナイトの監視を続けているが、今の所、おかしな動きはないらしい。 軽く確認したステ機能でも、軍事機密を盗むというのは消えていた。 それどころかローランドを通して一緒に食事をするようになり、以前にも増して胡散臭い笑顔を向けてくるようになった。 「王妃陛下、あの少年たちは一体どうやって手に入れたのですか?」 「えっと…ライリー達のこと?」 ローランドと私とイグナイトの三人で食事をするなんて、少し前までは考えられなかった。 時々イグナイトはローランドに楽しそうに話しかけていた。何か色々吹っ切れたみたいな顔をしてる。 二人のイケメンが生で私の前でイチャイチャしてる……! 最高だ!グッジョブだ!ありがとう何か知らないけど私を憑依させてくれた神様! 「あの鉱山はどうやって…?」 「えっと……あの。」 「おい、イグナイト。 ちょっとアデリナに色々聞きすぎじゃないのか?」 「そうですか?そんなつもりはないのですが。 というか陛下も、そんな風に怒るんですね。」 なぜかローランドは機嫌が悪くて、にも関わらずイグナイトは楽しそうに絡んでいるという。 ああ、まさかローランドも妬きもちを!? 私がイグナイトと仲良くしてるのが、彼を取られたみたいで気にいらないんだ。 これだと案外、二人が上手くいく未来とかあるかも!?何か新しい扉が開きそうな二人を肴に、私は食事を楽しんだ。 だが問題はそのサディーク国の王太子だ。 売国行為を持ち掛ける相手ともなると、また他の誰かを使ってクブルクの軍事機密を手に入れようとするかもしれない。 奴をサクッと排除しなければ…… だが、どうしよう。調べた所、サディークはクブルクに比べて大きな軍を持つ国。 その上、武器も最先端をいき、何もかもが格段に向こうが上。 だからこそクブルクの
last updateLast Updated : 2025-08-21
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サディーク国の王太子と友達に?

 ◇ 外交という名の席を設ける。 元々クブルクの外交官や、大臣達はサディーク国をよく思っていなかった。侵略を恐れているからだ。 だが、どうだ。 あれからレェーヴのアドバイス通りに、とある席を設けることに成功した。 友達になる第一歩。 つまりそれは飲み会……!! こちらの世界では酒宴というやつ。 確かに、会社で苦手な人と仲良くなるなら、飲み会が一番手っ取り早かった。 酒は人の警戒心を薄れさせるし、苦手意識を忘れさせてくれる。 お互いの本音をついゆるっと語り合ううちに、友情という絆が生まれることもある!いけるんじゃない? 「まさかクブルクの王妃様からお声がけ頂けるとは。以前からクブルク国とは親交してみたいと思っていたので、嬉しいかぎりですね。」 これが。この男がサディーク国の王太子。 オディロン・サディーク。 ウェーブした茶髪に、派手な見た目。 光り輝くピアスに宝石の指輪。 ていうか、服は宝石だらけ。 しかも馬鹿みたいなステータス。 [オディロン▷サディーク国王太子 31歳 Lv 78  性格▷とにかくチャラい 酒と女が大好き 独身だが恋人が数十人いる 野心家 隙あらばクブルク侵略したい] チャラ男か……苦手なタイプだ。 だけどだからこそ、苦手意識を取り払って仲良くなるんだ!平和のために。 隣国から、呼びかけに応じてわざわざ数週間かけて到着したサディーク国の王太子一行。 さすがに大国だけあって、着ているものが全員めっちゃ豪華。 持参した親交の証の品物も希少な宝石だったり、珍しい動物の毛皮や剥製、純金の盾や剣などかなりお高そうなものばかりだった。 いや、決してクブルクが貧乏臭いというわけじゃない。 ただ何か規模が違う……! 今回同席したのは、参謀長官のレェーヴ、それ
last updateLast Updated : 2025-08-22
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サディーク国の王太子と友達に?

 オディロンはずっとニコニコと笑っていた。 だがその内側では何を考えているのか全く読み取れなかった。 それでも、私にはあのウィンドウがあるから余裕だ。 [オディロンの思考▷クブルク王妃の腹の底を伺っている] 「今は第一子を妊娠されているのだとか。 それなのに、わざわざ参席して下さるとは。 本当にご苦労様ですね。」 「はい。やっと授かった子です。 産まれるのが楽しみですわ、オホホホ!」 腹の底なんか見せてやらない。今はまだね。 この男の警戒心が緩むまで油断しないでおこう。 「……そうですか。それはそれは楽しみですね。」 酒を浴びるように飲んでいたレェーヴや大臣達は、見事に酔い潰れていた。おいっ…!! かろうじて、外の互いの兵達は交代で食事をしながら、真剣に警備にあたっているからマシだったんだけど。 お茶しか飲んでいない私は、酔っ払い達を、特に楽しそうに飲んだくれているレェーヴを中心に睨みつける。 私だって本当はアルコールを飲みたいんだから!! だがその時、隣に誰かがピタっと密着。 「なあ。クブルク王妃様。 あんた……一体何が目的なんだ?」 「っ……!」 一瞬誰なのか分からなかった。 大臣との間に割り込むように入ってきたのは、オディロンだった。 まさに今回の交渉目的の相手。 だが、さっきまでの丁寧さが全くないし、しかもタメ口を聞いてくるという…… 「な、何のことでしょう?」 「あんたのその、本心が知りたいって言ってるんだよ。 なあ……あんた、クブルクでは嫌われていたはずだよな?性格が悪い王妃だって。 そんなあんたが、ただ親交のためだけにこの酒宴の席を設けた? そんな馬鹿な。何を企んでいるんだよ。」 脅迫するような低い声。
last updateLast Updated : 2025-08-22
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サディーク国の王太子と友達に?

 どうやらオディロンは背中を刺されたらしい。 身体がぐらりと傾き始め、それを私が真正面から必死に受け止める。 「サディーク王太子殿下!? しっかり!しっかりして下さい!!」 「く、くそっ……なぜっ、!!その女を捕まえ…ろ…」 「貴方が悪いのです……!オディロン様! 私を、私を弄ぶから!!!」 オディロンを背後から刃物で刺した女性は、血まみれの手をブルブルと震わし、泣きながらそう叫んだ。 先ほどのメイド達と同じ服。 従事させるため、サディークから連れてきたメイドだろう。 これはオディロンが愛を信じられず、人を弄んだ結果。因果応報だとすぐに理解する。 兵が駆け寄ってきて、女は瞬く間に取り押さえられた。 「アデリン……!?」「アデリナ様!?」 この騒ぎでレェーヴや外交官達もさすがに酔いが冷めたらしい。外からクブルクの兵達も慌てて駆け寄ってくる。 事態は深刻だ。 まさか親交の証として開いたこの酒宴で、こんなことが起きるなんて。 ますます両国間の関係は悪化してしまう。 せっかくローランドを説得したのに! [オディロン▷傷が深く出血が止まらない 手術および早めの輸血が必要 さもなければ死亡する] 「手術……!?こんな医療が中世の世界でどうやって……」  ピロリン。このタイミングで鳴る通知音。 [癒しの力を使いますか? ▷イエス ▷ノー] 「は?はい………?」 おいちょっと待て。何ですかそれ。 まさかあの時のイグナイトの…… [イエスですね 了承しました] 「え……?勝手に?」 私の手から何か
last updateLast Updated : 2025-08-23
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穏やかな午後

 暖かい日差し。珍しく気温が高い、穏やかな午後。 快晴の雪解けの山がくっきりと見える。 王妃宮の庭園のガゼボで、私はローランドと久しぶりにゆっくり過ごしていた。 妊娠6ヶ月。 そろそろお腹が重たくなってきた。 「あ……今、蹴ったな。」 ふっくらとしてきたお腹に耳を押し当て、胎児の胎動を感じるローランドの姿があった。 こうして二人でゆっくり過ごすのも、もう何度目かな? まるで本物の夫婦みたい。いや、一応夫婦ではあるんだけど。 「ふ……アデリナに似て、活発な子だな。」 「え?それって悪口ですか?」 「違う。悪い意味で言ってるんじゃない。 お前は……この間もサディーク国との間に色々と伝説を残したし、フィシとルナールの件もうまく解決してくれた。 私ができずにいたことを…アデリナ。 お前は本当にすごい妻だ。」 「あ、ありがとうございます、陛下。」 本当に、このところローランドが私にべったりだ。 なんだか犬みたいに可愛くて、このままだと離婚した時に寂しくなりそう。 ローランドはいいよね。リジーに出会って愛し合うんだから。 あれ?そう言えば何か肝心なことを忘れているような……? 「はあ〜。クブルクの国王陛下はいいですよねえ。 癒しの力を持つ聖女様を独り占めですか?」 それを少し離れた場所から傍観しているオディロンがいる。 「何ですか。和平交渉は終わったのですから、サディーク王太子はそろそろ国に戻られては?」 オディロンをローランドが睨みつけて言う。 そう。 あの酒宴の後、オディロンは本当に病気のサディーク王をクブルクに呼び寄せたのだ。 私は例の癒しの力を使い、サディーク王の病気を本当に治してしまった。 それによって、クブルクとサディークは、これからはぜひ仲良くしまし
last updateLast Updated : 2025-08-23
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本編スタート?ついにヒロインが登場!?

 それは冬が終わって、短い春が訪れた矢先のことだった。 妊娠7ヶ月目。 かなり膨らんだお腹を抱える私と、ローランドの前に現れた女性。 それは紛れもなくこの世界のヒロイン、白衣の天使、リジーだった………! 絹糸のような質感の黄色い髪。銀の瞳。 白くて柔らかそうな肌。 シュッとスマートな体型。細い腰。 垂れ下がっている目尻。 全体的に虚弱気味で、庇護欲を掻き立てられる、そんな女性。 ついにヒロインが登場した……! 本編が始まる………!? ちょっと予定より早くない? まだヴァレンティンは産まれてないのに。 そうか……私が戦争の火種となったイグナイトとオディロンの陰謀を消しちゃったから、戦争が起きなくて代わりのストーリーが……! これが物語の強制力というやつ!! ◇ それは、ローランドのあのお抱え医師が、年齢のせいで時々診断を間違うようになってしまったのが、きっかけだった。 「確かにアデリナの言う通りだ。 もし、私達の子に何かあってからでは遅い。」 初めの頃は私の意見を訝しがっていたローランドが、ここへきて、あっさりと医師の交代を決めた。 そうしてあの弟子医師が、侍医として抜擢された。 それに伴い彼もまた、弟子や補助役の看護師を雇う事に。 その中に何と、ヒロインのリジーが含まれていたのだ……!! 「王妃陛下は妊娠されていますので、女の看護師がいた方が心強いと思ったのです。 こちら、王妃陛下の出産までを手伝います、リジーと申します。」 侍医にそう紹介されて私の前に立った、白衣の天使、リジー。 う、うわー、可愛い〜!! 顔、小っさい!! 小説にあった通りの美しさ。 コスプレみたい
last updateLast Updated : 2025-08-23
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