「先に帰れとおっしゃられるのですか?アデリナ様?」 あの後、イグナイトにきっちり挨拶をして私はホイットニーと一度神殿の外へ出た。 と見せかけてホイットニーだけを王宮へ戻し、私は神殿にこっそり戻るつもりでいた。 「何をお考えになっているかは分かりませんが……危ないことをしては駄目ですよ。 アデリナ様はもう、お一人のお身体ではないのです。 駄目っ、絶対……!」 普段天然のホイットニーが、心配そうに私の両手を掴んでくる。 「だ、大丈夫よ?ほ、ほら、いつもの好奇心というやつだから心配しないで。」 「ううっ……アデリナ様。」 信用ならないというような、ホイットニーの目線が痛い。 「とにかく、少しだけ神殿を探検したらすぐに戻るから。ね?お願い。」 ◇ ここが、イグナイトの部屋ね。 あれから私はこっそりと神殿内部に戻り、ウィンドウを頼りにイグナイトの情報収集を始めていた。 それによるとイグナイトは、若いうちに神殿長となってから殆どの時間を神殿で過ごしているらしい。 もしこの部屋で何かイグナイトが絶望しているという理由を探り出すことができれば、うまい解決法が見つかるかも知れない。 そんな期待をしつつ、この部屋まで辿り着いたわけだが。 しかし、残念ながら扉は鍵がかけられていた。 「ま、そうか〜当たり前だよね。鍵なんて。」 だけど運が良かったみたい。 下級神官らしき一人の少年が、イグナイトの部屋に掃除用具を持って入って行くじゃない。 私、さては持ってるね? 彼が部屋に入った隙に私も、部屋の中にこっそりと侵入成功。 暫く、神官服が並んだクローゼットに隠れた。 やがて少年が掃除を終えて出て行く。 辺りを見回してクローゼットから出る。 ほとんど物がないシンプルな部屋。 ただ、たくさんの書類と、あ
Last Updated : 2025-08-18 Read more