離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー のすべてのチャプター: チャプター 121 - チャプター 130

172 チャプター

123.明かされる誤解side瑛斗②

「……結婚はしている。だけど、親同士が無理矢理決めた話で華とのような関係ではない。それに、玲が興味があるのは俺ではなくて、俺の親だけだ。この前、玲がこっそり電話をしている中で『監視』と言っているのを聞いて、てっきり華のことかと思って……心配でここに来たんだ。」俺がそう告げると華の顔から血の気が引いた。彼女は、ゆっくりと一歩後ろへ下がった。「え、監視……?それに、玲はこの場所のことを知らないはず。瑛斗に知られたら、玲が来るかもと怯えていたのに。まさか、玲に気づかれたというの?」(玲はこの別荘の存在を知らないだと?どういうことだ?)また新たな疑問が渦巻いた。俺の推理は、玲が華の居場所を知っているという前提で考えられていた。しかしその前提が崩れた今、何も分からなくなった。「玲にだけは絶対言わない。俺は、今、玲のことを疑っている。だから、真実を知りたくて、華と話したくてここに来たんだ」俺は必死に訴えた。だが、華は俺の言葉に耳を傾ける様子を見せない。「そう。でも、玲にここが見つかるわけにはいかないの。私にはもう関わらないで。……もう、この平和で幸せな生活を失いたくないの」「一つ聞いていいか?高校時代に、俺にいつもお菓子を作ってくれていたのは華だったのか?」
last update最終更新日 : 2025-08-15
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124.明かされる誤解side華

玲・監禁・監視――――おぞましい言葉を聞いて、私は身の毛がよだった。そして、瑛斗の「助けに来た」という言葉は、全く理解ができなかった。そもそも長野の別荘に来たのは、妊娠中にトラックやバイクに命を狙われたことが原因だった。あの時の恐怖は今でも鮮明に私の脳裏に焼き付いている。妊娠中のお腹を抱えて、いつ命を狙われるかと怯えながら暮らしていた。命を狙われ、さらに玲にも家の場所が見つかり、危機的な状況から逃れるために、護さんが父に話をしてこの別荘に逃げてきたのだ。(私と子どもが出産するのを阻止するために、命まで狙っておいて何が『助けに来た』なの?)瑛斗が別荘を見つけた時は背後に玲の存在を感じて、全身が凍るような恐怖と寒気がした。子どもたちの存在を知り、二人がまた命を狙ってこないかと心配で心配で仕方なかった。しかし、瑛斗は今、玲のことを疑っているという。それどころか結婚も親同士が無理やり決めたことだと言っている。(それなら離婚を突きつけられた翌日に、会社の地下駐車場で二人がこっそり会っていたのは何だったというの?)瑛斗が私に離婚を告げたことを知った玲は、喜んで好きだと伝えて微笑んでいた。親同士が決めた結婚には到底、見えなかった。 しかし瑛斗は、玲が隠れて
last update最終更新日 : 2025-08-16
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125.揺れる想いside華

「玲が誰かに監視を指示していた?もしかして護さんが言っていた尾行は、玲の仕業なの?もし、そうなら危険が迫っているかもしれない……そんなことはさせない。護さんは、私が守る!!」私の今の生活は、護さんがいてくれてこそ成り立つのだった。瑛斗との離婚も、家族との絶縁も、妊娠・出産時の恐怖も護さんがいたから乗り越えられた。過去の深い傷と恐怖から立ち直り、今の笑顔と幸せ溢れる生活は護さんと一緒に築き上げてきた。(でも、もし本当に護さんを監視していたとしたら、玲の目的は何?玲は、私が神宮寺家との縁が切れたと思っているはず。私を探すためだとしても、護さんの行動を探っても意味がないわ……。一体、何のためだと言うの?)私と護さんの関係は、この別荘に仕えている人々と瑛斗以外知らないはずだ。そして、瑛斗は今、玲のことを疑っている。私たちが付き合っていることを玲が知らなければ、護さんは私と無関係な人のはずだ。玲の目的がどうしても分からなかった。しかし、海外留学の時も自分の意志で飛び立ったのに、瑛斗に「華の指図で父親から海外に行くよう命じられた」と嘘をつき、私を悪者に仕立て上げていたのだ。もし、海外に行く前から一連の流れがすべて計画されていたものだとしたら……護さんの尾行も、今はその意味が分からなくても、実は裏でとんでもない意味を持っているのかもしれない。 (玲は、目的を達成するためなら平気で嘘をつく。玲は、今度は護さんを陥れようとしているというの?もし、玲が護さ
last update最終更新日 : 2025-08-16
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126.誕生日と護さんとの時間

「慶くん、碧ちゃん、六歳の誕生日おめでとう!!」この日、子どもたちが六歳の誕生日を迎えた。今年も別荘に仕えているみんなが部屋に飾りつけをしたり、記念日の料理に腕をふるって温かく賑やかにお祝いをしてくれた。私も子どもたちのリクエストにこたえてフルーツがたっぷり乗ったケーキを作る。この日のために前日からスポンジを焼き、HappyBirthdayの歌を歌ってろうそくを消す子どもたちの姿を思い浮かべながら、お祝いの準備をしていた。「もう慶くんと碧ちゃんも六歳か。大きくなったね。おめでとう」護さんが腰を落とし、子どもたちと同じ目線で顔を見ながらプレゼントを渡してくれた。子どもたちもすっかり護さんのことを家族のように思っている。「みーみ、ありがとう!」「みーみもケーキ一緒に食べよう!ママの作ってくれたケーキ、とっても美味しいよ!」子どもたちの弾んだ声と笑顔が、護さんの顔をさらに綻ばせる。護さんは、子どもたちの一歳の誕生日から毎年お祝いしに来てくれて、子どもたちだけでなく、私にも「ママになった記念日だから」とプレゼントを用意してくれる。私たちの人生における護さんの存在は、日を追うごとに大きくなっていき、いつしか瑛斗と過ごした時間よりも護さんとの時間の方が長くなっていた。
last update最終更新日 : 2025-08-17
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127.護さんと玲の接点

「護さんは、週に何回くらい神宮寺家の往診に行っているの?おじいさまやお父様は元気?」護さんのマンションで二人でお茶を飲んでくつろいでいる時に、さりげなく尋ねた。護さんはティーカップをソーサーに戻し、少しだけ驚いたような表情を見せた。「おじいさまは血圧が高くて薬を飲んでいるけれど、生活に支障はないから問題ないよ。華ちゃんのお父さんも会食が続くと胃の調子を崩すけれど、それ以外は元気にやっている。急にどうしたの?」不安そうに見つめてくる護さんの視線を感じながらも、私は気にせず続けた。「もうしばらく会っていないし、私から連絡することは出来ないから、なんとなく気になって。お母さまは?玲のことも護さんが見ているの?」護さんはわずかに眉をひそめ、言葉を選びながら遠慮がちに話してくれた。「……華ちゃん。玲さんは一条家に嫁いだ身だから僕はもう診ていないよ。彼女とはもう何年も会っていないんだ。奥様とは、おじいさまの往診の日に少し顔を合わせるくらいだよ」護さんは複雑な笑顔を浮かべた。玲ともう何年も会っていないなら、護さんが玲の標的になっている可能性はなさそうだ。その言葉に私は安堵した。(私を追い出して、一条家の、瑛斗の妻の座を手に入れたから、玲にとって私はもう過去の人になっているはずだわ。護さんも玲と接点がないなら、「監視」の件は私たちには関係ない&he
last update最終更新日 : 2025-08-17
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129.親子の会話、玲の評価(前編)

「瑛斗、一条グループの業績や今後の改革について、お前はどう思う?」この日、俺は会長でもある父に呼ばれ意見を求められた。父と俺の間には、過去の誤解や軋轢から一時は距離があった。しかし、時間が経つにつれ互いのわだかまりをなくし、以前のように会話をするようになっていた。「業績に関しては、相原専務を中心に改善と見直しを行っております。相原専務が戻ってきてからは投資比率も上げ、資産を回転させて利益が出る体制になりました。また彼のおかげで会社の雰囲気もよくなり離職率も下がっています。相原専務は、わが社にとってなくてはならない人間です。」俺は自信をもって空の手腕を高く評価した。空が戻ってきてからの会社の変化は、俺が誰よりもよく知っている。「そうだな。相原君が来てからは同じ売上高でも内容が違う。少ない費用で売上と利益が出て効率的になっているな」父は満足げに頷いた。そして、一息ついてから俺の目をじっと見て言った。「ところで、玲さんはどうだ」俺は、親父のこの質問が本題だったと確信した。父は、玲の仕事ぶりや俺との関係について、俺自身の口から聞きたかったのだろう。「玲については、少し気になる点があり、現在、調査中です。会長にも伝えるべき事項がありましたらすぐに報告します」俺は、玲の社内でのパ
last update最終更新日 : 2025-08-18
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130.親子の会話、玲の評価(後編)

「会長は、玲のことはどのように評価されているのですか?」玲の不審な行動を目の当たりにし、そして華との間に起きた過去の出来事を思い返した今、俺は父の本心を聞いてみたかった。しかし、その答えは俺の予想を裏切るものだった。父は、重厚な革張りの椅子に深く腰かけて、じっと俺の目を見つめた。その瞳には、長年、会社と家族を守ってきた男の深い知性と洞察力が宿っていた。「どうだろうな。俺は、今までたくさんの人間を見てきたからな。人は見かけによらないし、自分に見せている顔が本当の顔とは限らない。どう見えるか、それはお前の目でしっかりと見極めるんだ」その言葉は、まるで過去の俺に向けられた警告のようだった。玲の言葉を盲信し、華を信じられなかった過去の自分。その浅はかさを、父はすべて見抜いていたのかもしれない。(今まで玲のことを高く評価していると思っていた。だが、それは俺が勝手にそう思い込んでいただけだったのか……。今の言葉からは玲にいい印象を持っているようには見えない。これは、自分の言葉で俺を惑わさないためなのか……)そして父の言葉は、本質を見抜いてきた成功者の言葉に聞こえた。俺は、今まで目の前にいる人の言葉を、そして先に聞いた言葉を、そのまま信じ込んでしまう節があった。先入観で間違ったように物事を捉えていたのかもしれない。経営
last update最終更新日 : 2025-08-19
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