離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー のすべてのチャプター: チャプター 131 - チャプター 140

172 チャプター

132.華からの着信、一筋の希望(後編)

「これからもママのこと、たくさん笑顔にしてあげてほしい。でも、もし困ったことがあったら、この番号に電話して。俺が、必ず助けに行くから」「……?うん、分かった!!」二人は少し無言になった後、元気よく返事をした。その時、華の足音が再び聞こえてくると二人は慌てて通話を終了した。俺は画面を眺めながら、長野で華らしき人物を見つけた時の一瞬の出来事を思い出した。「子どもたち、大きくなったんだな……。もうスマホも操作できるようになっているなんて」そう言って微笑んだ後、俺はハッとした。(華は、俺のことを着信拒否していない……?)俺は、DNA鑑定の結果にショックを受け、華に離婚届を突きつけてすぐに彼女の連絡先をすべて迷惑電話に登録しブロックした。しかし、一週間が経つと、華が誤解を解くために連絡してくるかもしれないと思い、ブロックを解除して密かに連絡を待っていた。結局、連絡が来ることはなく俺たちはそのまま数年間すれ違った。俺は、華も俺の連絡先をブロックしたのだと勝手に思い込んでいた。しかし、今、この電話が繋がったということは、華は俺のことをブロックしていない。
last update最終更新日 : 2025-08-20
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134.玲の駆け引き、仮面の笑顔

「玲さんが誕生日に買ってきてくれた神戸のお菓子、美味しかったわ。ありがとう」母が感謝を伝えると、玲はいつもの完璧な笑顔でそれに応える。「お口に合って良かったです。実は、あのお菓子は友人のお店で買ってきたんです。お母さまの誕生日前日だったので、どこか美味しいお店の物をと思って必死に探していたら、友人のことを思い出して。いつも午前中には売り切れてしまうらしいんですけど、私が連絡したら一つだけ取り置きしてくれて。先日、『あの時は助かった』と、お礼の電話をしていたんです」玲の言葉に、俺は思わず息をのんだ。 あの時は助かった――― 副社長室を訪れた時に、俺が聞いた言葉と同じだ。(あの時の電話は、本当に神戸の友人だったのか?それとも、俺を惑わすために、敢えてこの話をしているのか?)玲の本心が分からなかった。玲の行動は、どれもこれも怪しさを感じる。しかし、だからといって、全てを怪しいと決めつけてしまうのは、また過去の俺と同じ過ちを繰り返すことになるのかもしれない。結論を急ぎすぎるのは良くないと自分に言い聞かせた。 「玲、母さんへのプレゼント、忙しいのに選んでくれてありがとうな」
last update最終更新日 : 2025-08-21
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135.瑛斗の決意と玲へのアプローチ

瑛斗side 「今夜、二人で食事に行かないか?」ある日の夕方、玲が副社長室から出てくるタイミングを見計らって俺は声をかけた。玲は、一瞬立ち止まり、俺の方を向いたがその表情は警戒心に満ちていた。「何?一体どうしたのよ。仕事の話ならここで聞くわ。」玲の冷たい口調に俺は少し怯んだが、それでも言葉を続けた。「いや、仕事ではないんだ。玲は、結婚してすぐに俺の実家に入ってくれただろう。だから二人でゆっくり過ごす時間がほとんどなかったなと思って。相手の親と同居だなんて、何かと大変だろうし、その選択をしてくれた玲に感謝しないといけないと思って……」俺の言葉は、まるでどこかの台本を読んでいるかのように自分でもぎこちなく聞こえた。結婚して六年以上が経ったが、俺は玲にこんな言葉をかけたことは一度もなかった。結婚した当初は、華との件で苛立って玲にまともに向き合うこともせず、その後は両親に媚びて俺に見向きもしない玲に対して不信感しか抱いていなかった。「……そう」玲は、まだ疑いの目で俺の方を見ていた。彼女の瞳の奥には、『今さら何事?それとも企んでいるの?』という明確な問いが浮かんでいるようだった。
last update最終更新日 : 2025-08-21
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137.海外送金の謎

「やっぱりお菓子は華さんだったんだ?それで瑛斗は諦めて帰ってきたの?諦めたようには全く見えないけれど」「ああ、華は自分だと言っていた。そして、なんで今さらそんなことを聞くのだろう、という顔をしていたんだ。玲と俺が付き合ったきっかけがお菓子だったことを、華は知らないのかもしれない」「じゃあ、瑛斗はプレゼントを贈ってくれていた本当の相手と結婚できたのに、自らの手で離婚しようと突き離しちゃったんだね」「それを言うなよ……」空の言葉で、俺の胸に再び深い後悔が突き刺さった。「そうなると、帰国後の玲さんの発言や行動も気になるね」玲は、帰国してすぐに俺の元に来て華に騙されたと泣きついてきた。「あれ……そういえば、華の海外送金。あの資金はどこから受け取っていたんだ?口座は一体どうやって作ったんだ?」あの時、玲は、華が海外の口座に不正な送金を行っていたと俺に言った。俺は、動揺と混乱で内容は内容をロクに確認もせずに華に怒鳴り建てたのだった。俺が知る限り、華は海外口座など持っていないはずだった。幼い頃は家族で海外旅行に行っていたらしいが、俺と結婚してからは海外に行っていない。
last update最終更新日 : 2025-08-22
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138.プロポーズと護の不安

華side 「華ちゃん、プロポーズの返事を急かすわけではないんだけれど、慶くんと碧ちゃんが新しい環境になるこのタイミングで一緒に暮らさないか?」ある日の夕方、子どもたちを寝かしつけた後、護さんから改めてそう言われた。護さんが長野の別荘近くにマンションを買ってから、私たちは毎日のように顔を合わせており、既に家族同然の生活を送っている。護さんが私たちのことを大切に思ってくれているのは、物凄くよく分かっている。しかし、一回目の壮絶な離婚を経て、再び籍を入れることに抵抗があった。護さんに限ってそんなことはないと思うが、万が一、関係が破綻した場合、今度は子どもたちまで振り回してしまう。神宮寺家の名に未練があるわけではないが二度目の結婚に私は躊躇していた。「護さん、ありがとう。子どもたちとも話してみるね」「慶くんや碧ちゃんは、僕たちの結婚に反対をしているのかな?もし、そうなら僕の方から二人には話してみるよ」護さんの言葉は穏やかだったが、その瞳には有無を言わせぬ強い圧が感じられ、私は一瞬たじろいでしまった。「そういうわけじゃないけれど……」「一体、どうやったら華ち
last update最終更新日 : 2025-08-23
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139.護の本音、瑛斗への憎しみ

「完全に消えないのなら意味はないんだ!!!」突然、護さんは大きな声で叫ぶように言った。「僕は、君の心から一条瑛斗の存在を消したいし、君を僕だけのものにしたいんだ。できることなら、すぐにでもこのマンションに来て、もう誰にも見つかってほしくないと思っているよ」護さんの瞳に憎悪が宿り、血走っているのが分かった。その言葉は、まるで何かに取り憑かれたかのような狂気じみた響きを持っていた。そこには、私が知る穏やかで優しい三上護ではなく、別人と話をしているようだった。「僕は、何を言っているんだろう。華ちゃんのことが愛しくて大切だと伝えたかったのに、なんだか変なことを言ってしまったね」護さんは、すぐに我に返ったように、いつものような穏やかな瞳で私に微笑んできた。だが、その一瞬の出来事が彼の二面性を見た気がして私は動揺してしまった。「ううん……。私のせいで護さんにも嫌な思いをさせてしまってごめんなさい」「そんなことないよ。僕は華ちゃんのことを、この手で守りたいだけなんだ。傷があるなら最初からなかったかのようにしたいんだ……これって、職業病かな?傷跡は目立たぬように、綺麗に治療したいと思ってしまう」護さんは、自嘲気味にそう言った。「
last update最終更新日 : 2025-08-23
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140.空の警告と瑛斗の決意①

瑛斗side 「瑛斗、ちょっといいかな。この帳簿を見てもらえる?」 ある日の夕方、空はそう言って過去七年分の財務資料のファイルを俺のデスクに置いた。それは、玲が一条グループに来てから現在までの期間とぴったり重なっている。空の真剣な表情を見て、これがただの業務報告ではないことを悟った。 「役員報酬と接待交際費は瑛斗の指摘通り、玲さんが来てから大幅に増えていたよ。内容も私的と捉えられてもおかしくないものもいくつかあった」 空の言葉に俺は静かに頷いた。玲の行動に不審な点があることは、すでに俺も感じていたが、空の次の言葉は、俺の想像をはるかに超えるものだった。 「それと、これなんだけど、玲さんが主になって動いている案件とその部門の財務資料だ。見ると、売上はほぼ一定なんだけど、なぜか支払額だけが増えているんだ。そして、その支払先と言うのが特定の会社だった。でも、おかしなことに、会社のホームページが存在しなくて、ネットで検索しても全く情報がないんだ」 「情報がない?そんなことあるのか」 俺は驚きを隠せない。ホームページがないような会社と、大企業である一条グループが取引するなど通常ではありえない。 
last update最終更新日 : 2025-08-24
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