Semua Bab 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Bab 211 - Bab 220

華side「華、行ってくるけどいい子にしているんだよ」小さな子どもに言い聞かせるように、床に座らされている私に視線を合わせてから頭を撫でてきた。ペットの犬にでも話しかけるような仕草に、噛みつきたくなる衝動を押し殺して黙っていると、三上はうすら笑いを浮かべてから、敢えて私にこう話しかけてきた。「分かっているだろうけれど、リビングの外から鍵をかけるし、監視カメラもあるから可笑しなことをしたらすぐに分かるからね。車でも華の姿をずっと見ているよ」その言葉は、私に絶望を与えるにはふさわしく、単なる脅かしではないと分かっていた。このマンション一室が三上の監視網の下にある。カメラの映像が車にも繋がっているという事実に背筋に寒気が走った。「じゃあ、行ってくるね」三上が扉に向かって歩き出したその時、私は最後の望みをかけて声を絞り出した。「待って。あの、トイレに行きたいの。リビングから出られないならトイレだけ行かせて」かつては専属医として私に仕えていた三上に、今はトイレに行きたいと懇願しないと行けないことに耐えがたい屈辱を覚えた。しかし、子どもたちに会うためには今は耐えなくてはいけない。私は、一刻の猶予もないことを知っていた。「仕方ない。すぐに出るんだぞ」

瑛斗side「おはようございます。はい、分かりました。色々とありがとうございます。のちほど、報告させて頂きます」神宮寺会長からの電話を切った俺は、小さくため息をついた。玲の逃走、そして華の失踪という事態に会長も精神的に参っている様子だった。「会長はなんだって。三上はもう着いたの？」「ああ、今ついてこれから問診をしてもらうとのことだ。出来るだけ話を引き延ばすようにすると言ってくれたよ」「良かった。それなら華さんに連絡だね」「それだが、会長があのあと華宛てにメッセージを送ったらしいんだ。だけど、既読にすらならないようで心配していた。もしかしたら、三上がスマホを持っていて華は連絡が出来ない状態かもしれない」「そうなるとどうやって連絡を……」空が話し終える前に、俺は普段使っているものとは別の黒いスマホを見せつけた。「玲と三上は俺たちの連絡先を知っている。だから、緊急時は違う番号で連絡を取り合おうと話をしたんだ。これで華と連絡を取る」「いつの間に？それならこれを早く使えばよかったんじゃないの？」

瑛斗side「もしもし、一条です。はい、今到着しました。しかし、正確な階数までは分からず華さんとも連絡が取れない状況です」「そうか、分かった。少し待っていてくれ。電話を掛け直す。繋がったらしばらくは何も言わずに黙って聞いてくれるかね。念のため通話を録音してもらえると助かる」神宮寺会長に状況を説明すると、彼はそう言って電話を切った。会長の口調は、驚きと怒りを含みながらも、冷静に次の手を打とうとしているのが伝わってきた。十分ほどの時間が経ってから、会長から電話がかかってきたと同時に、俺はすぐに録音を開始した。イヤホンを付けて、隣で空と静かに固唾をのんで会話が始まるのを待った。「三上君、引き留めてしまってすまない。今日も朝早くから来てくれてありがとう。助かったよ」「いえ、会長の体調が問題なく何よりです」神宮寺会長は、自宅の別室に三上を呼び出して話をしているようだった。神宮寺家の主である会長に、三上は謙虚な姿勢を崩さずに返答しているが、その声の奥には微かな緊張と焦りが感じられた。「それでだ、数日前に華に子どもたちの入学の件でメールを送ったんだ。だけど、未だに既読になっていなくてね。執事の久保山に電話して尋ねたところ、華の血液検査の結果が悪かったそうで、もう一週間以上も別荘に帰っていないそうじゃないか。驚いたよ」

瑛斗side「もうすぐ君の父上の命日だな。あれからあっという間に時間が過ぎていった」「会長……」退院後のことを聞かれるだろうと次の言葉を用意していたはずの三上だったが、予想外の話に動揺を隠せずにいた。会長は、三上の嘘をすぐに突き詰めるのではなく、彼の今回の行動の真意を図るべく様子を伺っているようだった。「私は、あの日から君と君の母上に誠心誠意向き合ってきたつもりだった。だけど、届いていなかったようだね。三上君、私のことが憎いかね？」会長の声には、深い後悔と悲しみが滲んでいた。（三上と会長の間に一体どんな関係があるというんだ。）俺は自分が知らない過去に困惑しながらも黙って話を聞いていた。「そんな、そんなことはありません。僕が憎むのは会長ではありません」三上は必死に否定するが、その声は張り詰めている。そして、彼の行動が、会長個人に向けられたものではないと遠回しに認めていた。「私、ではない。ただ私以外に別の相手がいるようだね」「それは―――――――」

瑛斗side祈るような気持ちでインターホンの反応を待っていると、しばらくしてから通話へと切り替わった。「瑛斗……？」恐る恐る震えた声だったが、確かに華の声が聞こえてきた。その声を聞いた瞬間、俺の全身から力が抜け、安堵の息が漏れた。「華！ああ、俺だ。助けに来た。華、ここを開けてくれないか」華の無事を確認し安堵したのもつかの間だった。華は、声を震わせながら俺に尋ねて来た。「でも、……三上は？三上はどうしているの？」華は三上のことを怖がり躊躇しているようだった。「三上は、今、神宮寺家だ。神宮寺家で嘘が暴かれて、今、会長が対応してくれている。」「父が？それなら、もう三上が戻ってくることはないのね」華の声に、わずかな安堵の色が戻った。「ああ、だから大丈夫だ。怖がることはない。だから今すぐここを開けてくれ」「でも……リビングの扉は、外から鍵をかけられていて、この部屋から出ることが出来ないの。エントランス