華side「……お父様は、死産したのは本当に自分の子だと思いますか」父の記憶がないことをいいことに、一方的な責任を負わされたのではないかという疑念が頭をよぎった。口に出してから酷なことを聞いたと思ったが、声に出して発した言葉は取り消せない。父は、私の鋭い問いに困ったように顔を歪めてから、静かに口を開いた。「それは……もう真実は分かりようがないことだからな。私自身、当時の記憶がない。しかし、櫻子に言われて、自分が覚えていないからと言って突き放すことは出来なかった。それは責任を放棄する無責任な行為に思えたんだ」「そうですね。ごめんなさい」父の言葉に、苦悩と誠実さがにじみ出ていた。「結婚後の櫻子さんについては―――――」「櫻子はよくやってくれていると思ったよ。ただ、私の前では『お母様』と呼んでいた華が、終始『櫻子さん』と名前で呼ぶところを見ると、華は私とは違った見方をしているようだな」父の言葉に、私は言葉が詰まった。櫻子さんは、みんなの前では私を気遣う優しい継母だったが、言葉や態度の端々から「本当に可愛いのは玲だけ」「前妻の娘は厄介だ」と感じていると思うことが多々あり、血の繋がりがないことを強く感じることが多かった。
Last Updated : 2025-10-10 Read more