All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 231 - Chapter 240

260 Chapters

231.消えた継母と黒い疑惑

華side「……お父様は、死産したのは本当に自分の子だと思いますか」父の記憶がないことをいいことに、一方的な責任を負わされたのではないかという疑念が頭をよぎった。口に出してから酷なことを聞いたと思ったが、声に出して発した言葉は取り消せない。父は、私の鋭い問いに困ったように顔を歪めてから、静かに口を開いた。「それは……もう真実は分かりようがないことだからな。私自身、当時の記憶がない。しかし、櫻子に言われて、自分が覚えていないからと言って突き放すことは出来なかった。それは責任を放棄する無責任な行為に思えたんだ」「そうですね。ごめんなさい」父の言葉に、苦悩と誠実さがにじみ出ていた。「結婚後の櫻子さんについては―――――」「櫻子はよくやってくれていると思ったよ。ただ、私の前では『お母様』と呼んでいた華が、終始『櫻子さん』と名前で呼ぶところを見ると、華は私とは違った見方をしているようだな」父の言葉に、私は言葉が詰まった。櫻子さんは、みんなの前では私を気遣う優しい継母だったが、言葉や態度の端々から「本当に可愛いのは玲だけ」「前妻の娘は厄介だ」と感じていると思うことが多々あり、血の繋がりがないことを強く感じることが多かった。
last updateLast Updated : 2025-10-10
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232.過去の疑惑、再鑑定の提案

華side事件から二週間が経って、私の体調はようやく回復の兆しを見せていた。子どもたちの存在が、私を温かくて幸せな日常へと引き戻してくれる。そんな中、私のスマホに瑛斗から電話がかかってきた。「華、体調や気分はどう?少しは良くなったか?」「おかげさまで。体調は良くなったわ。子どもたちも元気よ」「そうか、よかった。警察から連絡はあったか」「事情聴取のあとに何回かあったけど、今は落ち着いたわ。監禁罪と盗撮罪になるみたい。でも、監禁の期間も短く、家を出れない以外は私生活が送れていたことや、交際相手への監禁は感情の縺(もつ)れとして、重罪にはならない可能性があるって」法の裁きを受けてほしかったが、実刑判決は二つを併せても三年から五年ほどだろうというのが警察の見立てだった。あの二週間に味わった恐怖、屈辱、そして長年の精神的支配の重みが、たった数年の刑罰で終わってしまうことに、気分は晴れない。盗撮も軽い罪に分類されるのかと思うと、やるせない怒りが込み上げた。「そう、なのか。あれだけのことをしておいて……」瑛斗の声にも、私と同じで納得がいかないという怒りが滲んでいた。
last updateLast Updated : 2025-10-11
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233.過去の疑惑、再鑑定の提案②

華side「玲は失踪して、玲と接点のあった三上は逮捕された。俺は、今までのこと全てが二人に仕組まれたことではないかと思ったんだ。子どもたちを見て、特に碧ちゃんは、笑った顔が小さい頃の俺によく似ていて、血縁関係がないなんて信じられないんだ」彼の直感的な言葉は、私の心にも響いた。「まさか……。DNAの時、瑛斗は子どもを認知したくなくてわざと関係が出ないようにしたんじゃないの?」「なんでそんなことをする必要があるんだ。俺は、真実を知りたかったからDNA鑑定をしたんだ。なんで故意に結果を操作させるんだ」「私は、あの時に結果が出て、情報を捻じ曲げられたと思ったわ。三上にもそう言われて、瑛斗が玲と一緒になりたくて、私や子どもが邪魔だから偽の結果で諦めさせようとしたんだと思っていた」七年前に固く信じ込み、私の心を蝕んでいた最大の誤解。それが今、二人の口で互いに同じように信じ込まされていた事実として明らかになった。「やっぱり……。三上はそんなこと言っていたのか。俺は決して自分以外の検体を提出していない。だから、おかしいと思ったんだ。そして、あの時、鑑定結果を操作できる人間は、神宮寺家の専属医として出入りしていた三上しか思いつかないんだよ」「……それなら、あの鑑定は三上の策略ってこと?」
last updateLast Updated : 2025-10-11
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235.父の道、関係の修復

瑛斗side「ありがとう。気持ちは分かったわ。少し考えさせてもらえるかしら」やり直して欲しい。これまでの全てを償い、華と子どもたちと共に生きていきたい。そう言った俺に対して華は、『ありがとう』と言って電話を切ってしまった。書斎の椅子に浅く座り、背もたれに頭を置いて、俺は華と子どもたちのことを考えていた。「はぁー俺、焦りすぎたのか。やっぱりこういうのは電話で言うべきではないよな」俺は落ち着いていられず、椅子から立ち上がって窓辺まで歩き、そしてまたデスクに戻ったりと右往左往していた。科学的にも子どもたちが俺の子だと証明された時、驚きよりも根拠のない強い納得の気持ちの方が強かった。華にした自分の言動、そして産まれてから子どもたちの側にいれなかったことへの後悔が、津波のように襲ってくる。だからこそ、今すぐやり直したいと強く願ってしまった。「今度、別荘に遊びに行っていいか?子どもたちともゆっくり会いたい」焦りを抑え、まずは関係を修復しようと、できるだけ配慮した言葉で華にメールを送った。しかし、すぐに返信はなく、しばらくしてから『子どもたちに聞いてみます』と短い返事が返ってきた。感情を一切読
last updateLast Updated : 2025-10-12
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236.神宮寺家の門

華side「華に会って話したいことがあるんだが時間を作ってもらえないだろうか?」「はい、私はいつでも大丈夫ですので、お父様のご都合のいい時でお願いします」瑛斗からDNA鑑定の結果報告の連絡を貰った二日後、父から電話がかかってきた。玲や櫻子さんが相次いで失踪し、三上が事件を起こした動機に苦しみ、心労が絶えないようだった。疲れの滲む声に憔悴具合が伝わってくる。数日後に届いたメールに、私は驚いて目を見開いた。「華さえよければ、子どもたちも連れて家に来てくれないだろうか」父と会う時は、いつも花村の運転で長野の別荘に来ていた。そして、子どもたちが帰ってくる前に用件を済ませると、すぐに帰ってしまうのだった。そのことが、子どもたちのことを受け入れてもらえていない気がして、密かに傷ついていた。(子どもたちも?父はこの子たちと会ってくれると言うの?)別荘には執事や家政婦、それに運転手など使用人はいるが、私以外に子どもたちと血縁関係のある『家族』はいない。産まれてから、子どもたちを家族として紹介できないことに申し訳なさを感じていたので心から嬉しかった。父の苦難の後に、ようやく家族としての絆を取り戻そうとしている。 週末の土曜日――――
last updateLast Updated : 2025-10-13
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238.神宮寺家を蝕むもの

華sideDNA鑑定結果の通知書を握りしめ、父は顔を真っ赤にして愕然としていた。「七年前の鑑定は、三上が取りまとめて検査を行いました。今回、その三上が逮捕されたことで、瑛斗はあの時の鑑定の信憑性を疑いました。そして、再度行ったところ、予想通り前回とは違う結果が出ました。今、この結果を警察に提出して、三上の余罪も調べてもらっています」「なんということだ……。彼がそんな昔から悪事に手を染めていたなんて。私は、何から何まで華に詫びることばかりだ。子どもたちの件も信じられない気持ちだったが、鑑定結果を受け止めるしかないと思っていた。夫以外の子どもを産んだと思い、あの七年間、会うのを避けていたんだ……」父の顔には、七年間の後悔が深く刻まれていた。「DNA鑑定の偽造なんて、当事者でなければ信じられないことです。結果として出たら信じるのも当然です」私は父の苦しみを和らげるように静かに答えたが、以前として後悔と自責の念で頭を垂らしていた。「……それでは妊娠中に華が命を狙われていたというのも嘘なのか?」「いえ、それは本当です。その時に助けてくれたのは三上です。三上の当初の目的は神宮寺家の乗っ取りです。そのために私が瑛斗と離婚することは望んでいましたが、命を奪う可能性があるようなことをするとは思え
last updateLast Updated : 2025-10-14
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239. 祖父との出会いと再出発

華side「先日、一条家から瑛斗君と玲の離婚届を提出したと私のところに報告があったよ。」「そう、ですか……。」「仮に全て玲が裏で手を引いていたとしても、結果的に神宮寺家は一条家に対して不正に会社のお金を使い、婚姻中に華と玲が何も言わずに失踪している。神宮寺家は、これから一条家に対して金銭的な返済はもちろん、誠意を込めて関係の修復に努めなくてはならない」父の言葉は、神宮寺家の主としての重い責任を示していた。「ご迷惑をおかけして申し訳ないです」「いや、過去のことは私が華に謝罪すべきことばかりだ。しかし、現状を考えると、瑛斗君と華がどうするかは分からないが、私の立場から強く言うことは出来ないんだ」父は申し訳なさそうに苦い顔をして、私を見ている。仮に瑛斗のご両親や祖父母など一条家が子どもの件や私たちとの関係について反対された場合、父は自ら強く推せないことを伝えているのだろう。私は、彼の苦しい立場を察した。「ご状況はお察しします。その件は、まだ決めかねているところです」父にはそれ以上話すのは止めたが、今回のことで一連の過去の誤解は解けたが、だからといって七年間の溝は簡単には埋まらない。私の心は複雑だった。
last updateLast Updated : 2025-10-15
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