All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 481 - Chapter 490

515 Chapters

482.想い人

華side「正直、自分の気持ちが分からないんです。先方は私が向こうの家や会社に入ることを望んでいます。そうなれば、長谷部製茶はいずれ後継者がいなくなるでしょう。関東進出への資金面の援助を受けても、営業をしていく人物がいなくなってしまえば、今、私が必死でやっていることも意味をなさなくなってしまうかもしれないんです」真珠さんは、手元の湯飲みを見つめたまま絞り出すような声で続けた。「結婚後は、今の会社では働けないっていうこと? すぐに向こうのご実家や会社に入らなきゃいけないの?」「まだ決定ではないのですが、お義母さまが『結婚して嫁ぐのだから嫁ぎ先を優先してほしい』と仰っていて……。ただでさえ長谷部製茶は人手不足で、私も営業や経理など幅広くやっています。先方と繋がりができることで、うちの会社も従業員も継続的な取引が増え、経営は安泰になると思うのですが、今、私が抜けて本当に大丈夫なのか心配で……それに……」「それに……?」「実は、気になっている人がいるんです。先日、その方にもお会いして縁談のことをお話してきました」「その方は、何と仰ったの?」「……私の選んだ決断を尊重するけれど、『私自身の幸せも大切にしてほしい』と。それから、私のためにその方が何ができるかを伝えてくださいました……」
Read more

483.想い人②

華side「華さん、ありがとうございます。私、真剣に向き合ってみます。父と母のため、そして、私自身のために。何が一番の幸せで最善なのか、逃げずに考えます」ひとしきり泣いた後、玄関でそう言った真珠さんは、先ほどまでの迷いが消え、どこか凛とした美しさを湛えていた。パンプスの細いベルトを止めるため、土間に荷物を置いた時だった。以前、真珠さんから抹茶のテリーヌをもらった日のことを思い出した。あの日、紙袋の中に私がもらったのと同じテリーヌがもう一つ入っており、空くんの名前が書かれた付箋が貼られていた。そして、別日に一条の封筒と名刺を見つけた時も、空くんのことになると真珠さんの様子がいつもと変わっていたのだ。(もしかして……)「ねえ、真珠さん。不躾だけれど、その……気になっている方っていうのは、相原さんのこと?」私の問いかけに、恥ずかしそうにビクッと肩を揺らした。隠しきれていない動揺が、彼女の純粋さを物語っている。「どうして……」「真珠さんの真っ直ぐで律義で努力家なところは知っているけれど、会場で道案内してくれた人にお礼がしたいってとても生真面目だなと思っていたの。真珠さん、相原さんは信頼できる人よ。私の夫だった一条がそう言っていたし、私もそう思うわ。」
Read more

484.繋がり

華side夜、子どもたちが寝静まった後に自分の部屋へ戻り、ベッドに横になりながらスマホで瑛斗の連絡先を表示させていた。昼間、真珠さんの告白を聞いてから、ずっと空くんのことが頭の片隅に引っかかっていた。空くんの連絡先は知っているけれど、私から直接連絡を入れるのは、何だか違う気がする。(真珠さんと空くんが、いつの間にかそんな深い関係になっていたなんて……。それに、私より真珠さんの方が三村の問題に深く関与していたのね。……瑛斗は、今頃どうしているのかしら……)瑛斗と最後に言葉を交わしたのは、あの週刊誌のスキャンダルが出てすぐに電話をかけてきた時が最後で、もう半年以上も前のことになる。着信履歴を遡っても、瑛斗の名前は消え去っていた。画面に並ぶのは、日常的に連絡を取り合う北條先生と送迎を頼む運転手の花村の名前ばかりだ。暗い部屋で、瑛斗との最後の会話を何度も反芻していた。あの時、スキャンダル記事を鵜呑みにしていた私は、瑛斗が捏造された写真だと必死に弁明しても、裏切られたという思いから耳を貸さなかった。それ以上話を聞くのが怖くて、遮るようにして一方的に電話を切ってしまったのだ。「週刊誌のあの写真が、私たちと一日中遊んだ直後でなければ……。もっと冷静に、瑛斗の話を聞けたのかしら。瑛斗を、疑わずにいられたのかな……」自問自答を繰り返すが、返ってくるのは虚しい反響だけだ。ただ、あの時、私が一方的に拒絶したことで、瑛斗がどれほど絶望し、突き放されたような孤独を味わったかを思
Read more

485.着信

瑛斗side新年度が始まり、社内の会合に顔を出すためスケジュールはパンパンに埋まっていた。二時間おきに違う部門の会合に参加し、今期の事業方針や課題について説明を受ける。事業が全く異なる分野を横断するため、売り上げ予想の数字の規模が数千万円から数百億円まで三桁違うこともザラだ。情報を一度脳に叩き込んでは、次の会議のためにリセットし、また別のデータを詰め込む。そんな目まぐるしい毎日の繰り返しだった。帰宅してすぐに、疲れた頭を強制的に休ませるため浴室へ直行した。いつもより長くぬるめのシャワーを浴び、目を瞑って心の中にいる自分と対話する。 (三村の解任、親父の不審な動き、空のこと……。仕事以外で考えることが多すぎる) モヤモヤとしたこの霧のような感情が、シャワーの水と一緒に流れ去ってくれればいいのに。そんな子供じみたことを考えながら、温まった体でリビングへと戻った。会社用のスマホだけをサイドテーブルに置き、ソファに深く身体を沈めて天を仰ぐ。 「毎年のこととはいえ、この時期は新体制になったばかりで社内調整に割く時間が増えるな。……まあ、どこの企業も同じようなものか。今年の新人はどんな人が頭角をあらわすか、今から楽しみだな」 一人暮らしの静
Read more

486.着信②

華side朝起きてスマホを確認すると、瑛斗からの折り返しと留守電に音声が残っていた。「昨日、連絡したからわざわざ折り返してくれたんだわ……寝ていて全然気が付かなった」再生ボタンを押してスマホを耳にあてるが、無言で何も聞こえてこない。留守電と分かって電話を切ったのだと再生を終わらせようとした時だった。微かに何か喋っているのが聞こえた気がした。数秒前に戻して、今度は注意してしっかりと耳を澄ませた。『……んで俺はすぐ気づかなかったんだ……声が聞きたかった……華や子どもたちに会いたい……』ところどころ聞き取りにくい箇所はあったが、瑛斗は確かに声が聞きたい、会いたいと言っていた。瑛斗も同じように離れていても私たちのことを想ってくれていることに胸が熱くなった。「瑛斗……」朝はゆっくり電話は出来ないため、返事を打ちこんでいるとバタバタと元気な足音と一緒に勢いよくドアが開いた。「ママ、おはようー!今日、僕たちの方が早起きで来た!!」いつもより早く起きた子供たちが私を迎えに部屋に入ってきたので、持っていたスマホの画面を下にしてテーブルに置き、両手を繋いでリビングへと向かった。子どもたちと一緒に
Read more

488.京都

空side週末、バッグに必要な荷物とノートパソコンを詰め込み、一人、京都行きの新幹線に飛び乗った。月曜日は休暇を取得していて三連休だ。相手側から、これ以上の具体的な結婚へのスケジュールや、不条理な契約、条件が出る前に情報を整理しておきたかった。「相原さんが京都に? ……そんな、わざわざ来ていただくなんて申し訳ないです。それなら、私が東京へ伺いますので」「以前、お土産にいただいたテリーヌが関西限定だと言っていましたよね。他にも、東京では手に入らないものがあれば、ぜひ教えてほしいんです。案内をお願いできませんか?」 彼女は最後まで遠慮していたが、相手の会社も見てみたいし。純粋に京都の街を見て回りたいとそれらしい理由も付け加えて申し出を断った。「……分かりました。今回はお言葉に甘えさせていただきます。京都のことなら任せてください。私が精一杯案内しますね」京都駅に到着し、中央口の改札を抜けると、古都特有の洗練された賑わいが広がっていた。 「相原さーん!」人波の中から聞き慣れた声が響く。声のする方へ振り向くと、そこにはいつものビジネススーツとは違う装いの長谷部さんが立っていた。 柔らかいシフォン素材のワ
Read more

489.京都②

空sideその後、彼女のおすすめの店でランチをしてから、個室のあるワークスペースで今までの話の整理をした。最初は緊張していた長谷部さんだったが、話していくうちに緊張がほぐれ、そのうち両親の事を思い、時折涙を流していた。彼女の涙に僕の心まで切なくて苦しい。相手企業は、財務面では良好だが今回の条件には長谷部製茶にとって不利な内容も多く、背中を押すことが出来ない内容だ。ただ、断った時に圧力など嫌がらせをされたときに耐えられる財力や販路があるかも重要な視点となる。相槌を打ちながら、静かに彼女の話を聞いていた。部屋を出た頃には、空はオレンジ色に染まっていた。 「相原さん、京都はあまり来たことがないと言っていましたよね。相原さんのお時間があるようでしたら、少し観光していきませんか?」真珠さんが車で向かったのは、京都・嵐山にある渡月橋だった。桂川のせせらぎを一望できる静かな茶屋の縁側で、朱色に染まり始めた渡月橋が鏡のような川面にその影を落としている様子を見入っていた。「写真では見たことありましたが、本物を見るのは初めてです。風情があって素敵ですね」そう言った僕に、ふわりと風に舞った一房の髪を耳にかけながら、彼女は柔らかく微笑んだ。その笑顔が夕陽と相まって輝きを放ち、僕の胸を動かしていた。
Read more
PREV
1
...
474849505152
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status