All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 471 - Chapter 480

515 Chapters

471.提案

空side「長谷部さんは、長谷部製茶の一人娘なんですね。それで、事業拡大のために東京へ? 将来的には、ご両親の会社を継ぐおつもりなんですか?」「ええ、そのつもりで今、父に色々と教えてもらっているところなんです。父にはまだ任せるのは心配と言われていますが、少しでも早く安心してもらえるように励んでいるところでして……」「跡継ぎがいないために廃業する会社も多い中で、それだけ熱心に会社のことを考えているなんて、お父様も本当は心強いのでは? 最近は製造力で大手一辺倒のところもあるので、長谷部さんの実力不足ではなく、単に厳しい社会情勢を気にしての言葉かもしれませんよ」「ありがとうございます。相原さん、お優しいのですね……」三村に関する張り詰めた話を終えてからは、長谷部さんの生い立ちや家族、仕事に対する想いについて言葉を交わしていた。彼女は話すことが好きなのか、次から次へと話題をかえては笑顔で話をしてる。そんな姿を見ながら、僕は静かに相槌を打っていた。思い出すように微笑む彼女は、どこかあどけない少女のようだった。三村の名を出した瞬間に見せたあの悔しそうに顔をしかめる気の強い女性の面影は、今はもうどこにもなかった。食事を終えて店を出ると、夜の冷気が一気に肌を刺した。街灯の下、アスファルトには僕たちの影が長く伸びている。時計の針は、すでに二十二時を回ろうとしていた。
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472.朝日

瑛斗side「少し話があるんだ。オフィスではなく、どこか人の目に触れない場所で話せないかな?」空から連絡が来たのは、三村と長谷部真珠の密会を目撃した翌朝のことだった。昨夜、空は彼女と会ったはずだ。一体、どんな話をして、彼女がどんな関係なのか気になって仕方がなかった。会社だと、三村の目もあり聞かれてしまう可能性もある。過去に社長室に盗聴器をつけられたこともあり、防犯対策を強化したとはいえ、プライベートな内容を社内で話すのは避けるべきだ。出社の時間までもう少し余裕がある。俺は、家から空に電話を掛けることにした。「おはよう。朝早くからすまない。この電話なら誰にも聞かれないと思ったんだが、大丈夫か?」「ああ。……昨日、長谷部さんに会ってきたよ」空の声は驚くほど静かで穏やかだった。俺が予測していた最悪の事態にはなっていないようで安堵しながら、話を続けた。「そうか。それで……どうだった。彼女が三村と会っていた理由は分かったのか?」「ああ、どうやら三村の方から彼女に会いたいと連絡を取ったそうなんだ。彼女の話だと、創立パーティーで名刺交換してから、一度も連絡を取っていなかった。それが急に『君の事業に役立つ、有力な提携先を紹介したい』と持ちかけられ、昨日の昼、初めて二人きりで会ったとのことだ」
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473.招待状

空sideあれから長谷部さんとは三村の件で連絡を取り合うようになっていた。 彼女からの報告によれば、三村はやはり「電報社の子会社の紹介」というのは口実で、僕や瑛斗のことを引き出そうと、紹介よりも強い熱量で探りを入れてきているとのことだった。「彼は、相原さんが仕事とは関係ない私と連絡を取っているなんて何か私が知っていると思い込んでいるみたいです。相原さんのことをもっと知りたいから教えてくれと言っていました。出まかせを言っても信じてもらえるかもしれません」電話越しにいたずらっぽく笑う彼女の声を聞きながら、僕は舌を巻いていた。三村の考えは、半分は正しい。仕事とプライベートを分ける僕が、ビジネスに全く関係のない彼女とこうして電話をするなんて今までは考えられないことだった。二週間後の昼休み。長谷部さんから再び電話がかかってきた。受話器の向こうの彼女は、抑えきれない興奮を滲ませた早口で話し始めた。「相原さん、お疲れ様です! 聞いてください!!!今度、電報社が主催する大規模な異業種交流会に招待していただいたんです。商品の直接販売はNGですが、自社事業のプレゼンや商談は自由で、関東圏の有力企業が多数集まるとのことで、我が社をアピールする絶好のチャンスなんです!」「それはいいですね。お互いのニーズに合致する企業と出逢えれば、関東進出に拍車がかかる。良い収穫があることを願っていますよ」「ありがとうございます。……でも相原さん、そのためだけに電話したのではありません。今回の件、実は三村副社長からのお誘いだったんです。彼が『関東での活動を広げたいなら、人脈を作る場が必要だろう』って」「そんなことを言っていたのですか?珍しい……」なかなか口を割らない彼女の信頼を勝ち取るための餌なのだろうか、怪しみながらも聞いていると、長谷部さんは含みのある笑みをしてから話を続けた。「それで、北條先生や関東展開を支援してくださっている企業の方々も同伴していいか伺ったところ、快く承諾をいただけました! チケットを余分に五枚入手しています。……相原さんもよろしければ一緒に出席しませんか?」「いや、僕は……。主催側の彼が僕の顔を見れば、決して良い顔はしないでしょう。僕が出席するのは控えた方がいいと思うんです」「……やはりそうですよね」彼女のことは心配だが、場を丸く収めるために遠慮して断ると
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474.再会

瑛斗sideこの日、電報社主催の異業種交流会に会長と共に参加をした。広告代理店大手の電報社だ。一条だけでなく芦屋や住井とも取引があり、会場は日本を代表する大手企業の幹部クラスの人間が勢ぞろいした。芦屋からは彩菜さん、長谷部さんの付き添いで北條さん、そして一条からは会長と俺が参加している。空は、仕事の都合で少し遅れて参加の予定だ。 「壇上の中央にいらっしゃるのが、電報社の会長です。その隣にも、役員を務めるご親族の方が多くいらっしゃいますわね」 電報社と家族ぐるみの付き合いのある彩菜さんが順番に説明していく。もっとも、付き合いがあるのは経営に携わっている親族のみで三村のことは聞かされていなかったそうだ。認知はされているが、会長の息子の隠し子である三村は、出来れば公にはしたくない存在だったのだろう。今日、三村がこの場にいないこともそのことを強調させていた。 「会長のお隣にいるのが三人の息子さんと奥様です。会長の息子さんが各会社の代表を務めており、奥様が役員になっています。右から将司さんと奥様の洋子さん、次が……」 彩菜さんが順番に名前と役職を紹介していく。三組の夫婦が紹介されたあとに、少しだけ距離を開けて一人の女性が立っていた。 「それから一番端にいる女性は、会長の亡くなった息子さんの奥様で雅さん。夫を亡くし、子どももいない彼女は、電報社の中でも小さな会社の非常勤役員でこういう式典の時のみ顔を出すのみでなかなかお会いする機
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475.告白

空side会場に入ると、会長や瑛斗の姿も、長谷部さんと北條さんの姿も見当たらなかった。どうしても外せない会議があり、遅れて参加することにしたのだが、長引いてしまい大幅に遅れての参加となった。クロークにコートを預けて会場の奥まで進んだが、視界に入るのは見知らぬ企業のバッジをつけたビジネスマンばかりだ。 会場内では、多種多様な企業の担当者たちが真剣な面持ちで商談に花を咲かせている。あちこちで名刺が交換され、手帳を広げて具体的な打ち合わせの日程を調整しており交流会らしい活気に満ちていた。(長谷部さんは大丈夫だろうか。それに商談も張り切っていたけれど、どうかな……)会場を一通り歩いて回っていると、入り口のドアから入ってくる瑛斗の姿を見つけた。険しい顔をしていて、何かあったのだとすぐに分かった。人混みの中をかき分けて瑛斗に話しかけた。「瑛斗!」声をかけると、瑛斗はビクッと過剰なほど肩を揺らして振り返ったが、僕だと分かると安心して胸を撫で下ろしていた。「……なんだ、空か。心臓が止まるかと思ったぞ」 「遅れてすまない、今着いたところなんだ。それよりどうしたの? 顔がひどく強張っている。何かあったの?」瑛斗は周囲を一度
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476.告白②

空side「それは、どういうことですか? もしかして、三村に何かされているのですか? それでしたら、一緒に策を練りましょう。僕たちが長谷部さんのことを守ります」心配のあまり、無意識に早口になっていた。彼女の肩を掴みそうな勢いで身を乗り出す僕に対し、真珠さんは制するように胸の前でそっと掌を広げ、僕の方へ真っ直ぐに向けた。「……違うんです。今回のことは、三村副社長とは……いえ、一条グループとの一連の騒動とは全く関係がありません……」「それなら何故、そんな急に……。もうこちらへは来ないなんて」僕の問いに、彼女は視線を泳がせ、組んだ指先に力を込めた。エントランスの豪華なシャンデリアの光が彼女の長い睫毛に細い影を落とす。「実は……以前から、長年取引のある京都の老舗企業の社長から、縁談のお話をいただいていたんです。父も私も、最初は単なる社交辞令だと思って本気にはしていなかったのですが、先方が具体的な結納の日程まで提示してこられまして。……それに、私の関東進出に向けた営業活動の話を聞いて、ぜひ個人的にも、企業としても支援をしたいと。うちにとっても非常に好条件での合併話まで持ち出してくださったんです」「縁談……そして、合併……」その言葉が、冷たい水のように僕の喉元を通り過ぎる。 
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478.焦燥

瑛斗sideパーティーの途中で、突然、誰かと会うために消えた親父。長谷部さんを繋ぎ止めるために駆け出していった空。そして、今、、彼女が結婚の話をしたと空に話した時に、さりげなく華の名前を出し、笑みを浮かべる北條。俺の周りにいる人たちは、俺の知らないところで確実に変わり始めている。なんだか、俺だけが出口の見えない場所で彷徨っているかのように思えた。「さっき、華の名前を出しましたが……元気でやっていますか?」喉の奥に詰まった塊を飲み込むようにして北條に尋ねた。北條はそれを見透かしたように、悪戯っぽく、それでいてこちらの焦燥を煽るように優雅に微笑んだ。「ええ。華さんも、慶君も碧ちゃんも、とても元気ですよ。二人ともすっかり大きくなって、立派なお兄さん、お姉さんですね。小学二年生とは思えないほど言葉遣いも丁寧で、こちらが恐縮してしまうくらいです」(なんで華だけでなく慶や碧のことまで知っているんだ?……二人とも会えない間に二年生になっているなんて……)胸の奥を鋭いナイフで抉られたような衝撃が走った。スキャンダル記事が世間を騒がせ、彼女たちの日常を守るために距離を置いてから半年以上の月日が流れた。 俺は、慶と碧の成長を見届けることができなかった。華と子どもたちに会いたい。あの子たちの頭を撫でて、また一緒に遊びたい。しかし、あの子たちの今を知っているのは、俺ではなく北條なのだ
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479.朝日

瑛斗side昨夜は、結局ソファで寝落ちしてしまい、瞼を開けるとカーテンの隙間から差し込む朝日が、散らかったリビングを照らし出していた。手の中には、昨夜から握りしめたままのスマホがあり、画面を開くと、入力途中のメッセージが残っていた。『みんな、元気にしているか? 本当は、今すぐにでも華や子どもたちに会いたい……』昨夜、指が送信ボタンの上で何度も踏みとどまり、力なく離れた。三人のことは気がかりだが、一番は北條と華の「距離」だ。もし二人が、仕事上の関係を超えて、より親密な間柄なら、子どもたちが、俺の知らないところで北條を新しい父親代わりとして受け入れ始めているのだとしたら。そして、そのことを華の口から突きつけられるのが怖くて、送れなかったのだ。鏡の前で、どこか生気のない自分の顔を眺める。ネクタイを締め直して髪を整えながら、ぼんやりと昨夜のパーティーの異様な光景を思い出していた。 真相は霧の中だが、あのパーティーで親父も空も何かが大きく変わり、これまでとは違う方向へ回り始めた気がした。(ああ、もう……。親父のことも気になるし、空がその後どうなったかも気になる。でも、二人に聞いたところでまともに答えるはずがない。適当にはぐらかされるのがオチだ……)このまま家にいても、答えの出ない自問自答を繰り返すだけだ。俺はいつもより一時間以上早く家を出ることにした。冷たい朝の空気に触
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480.不審

瑛斗side「三村のやつ、自信満々に株主が反対すると言っていた割には大した波乱もなく承認されたな。否認も三パーセントだけだ。票を入れていない株主も母数に含めれば一パーセントにも満たない。」楽観的に考えれば、解任された事に対する最後の悪あがきだが、事実だったらこれで安心はしきれない。何しろ三村は、玲と長谷川との繋がりがある。長谷川は、今まで怪しい投資家サークルの勧誘やユニコーン企業に転々と勤め、そのいずれもが買収や上場廃止など不吉な終わりを迎えているのだ。役員たちの間でも以前のような派閥争いはなくなったが、それでも一部は安心はできないと、本当に経営権を取られた場合のことも考えて中立を保っている者もいるらしい。承認されたことを知ると、三村は静かに荷物をまとめてオフィスを去って行く。しかし、その顔にはまだどこか余裕さえ感じられる。そのことが、より一層悪い予感を増長させていた。三村のことを報告するため、会長室に行きドアをノックする。あの日、電報社のパーティーで親父の不審な動きを見て以来、なかなか顔を会わせる機会がないまま時間だけが過ぎていた。パーティーでの「真相」は、依然として霧の中だ。「失礼します。三村の旧ビルへの移動が完了しました。新年度は副社長不在の旧体制になりますが、また心機一転、一条を盛り立てていきたいと思います」デスクで書類に目を通していた親父は、顔を上げ
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