All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 501 - Chapter 510

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501.終焉③

空side膠着した空気を破ったのは、僕の隣で震えながら、しかし真っ直ぐに長谷川を見つめていた真珠さんだった。真珠さんは、床に膝をつけると、うつ伏せで身動きが取れなくなっている長谷川と目線を合わせた。その華奢な肩は小刻みに震えていたが、彼女は大きく深呼吸をしてから、迷いのない声で口を開いた。「あなたは……どうして、うちの会社を壊そうとしたんですか。三村さんの指示ですか? それとも、あなたの独断ですか?」「ふふっ……」長谷川が、初めて真珠さんを見ると片方の口角だけを吊り上げて嘲笑を浮かべた。「あなたが長谷部さんなの。可愛らしいお嬢さんだと聞いていたけれど、本当に幼い子どもみたいで可愛いのね」「話を逸らさないで、ちゃんと答えてください! どうしてうちだったのですか? 土地と建物を奪って、一体何をするつもりだったのですか!?」真珠さんの必死の訴えに、長谷川は凍りつくような冷ややかな声で答えた。「あなた……積極的過ぎたのよ。普通、見込みのある情報を全く与えない相手に対して、あんなに頻繁に連絡なんてしないわ。それに警戒心もなく、喜んでこちらの懐に入ってくる。そんな無知な人間は、私たちにとって絶好のターゲットだったってわけ。そういう人間はね、使えるだけ使って、あとは徹底的に搾り取るだけよ」
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502.終焉④

 瑛斗side「瑛斗、今、長谷川が言ったことだけれど……」空が厳しい表情で俺を見る。俺は深く溜息をつき、ポケットの中で拳を握りしめた。「ああ。分かっている。長谷川もまた、他の使い捨てられた人間たちと同様に闇の一部に過ぎなかったんだな。ただ、今までの奴らのような末端ではなく、もう少し核心に近い内部事情を知る人間……そう思いたいところだが」長谷川の不敵な笑みと去り際のあの言葉。それだけで、俺たちが築き上げてきた想定の土台が大きく音を立てて崩れ去った。 俺たちはこれまで、長谷川と三村が主犯であり、二人が私利私欲のためにすべての悪事を先導していると考えていた。神宮寺玲の存在を知った長谷川と三村は、企業買収に必要な多額の資金を世間知らずな玲から調達しようと画策した。彼女を懐柔するために用意したのが、あのNPO法人の奨学金制度だ。実質的には賄賂であり、玲を共犯者に仕立て上げるための罠。玲名義の口座に奨学金と称した汚れた金を振り込み、彼女が海外留学で日本を離れている間に、長谷川はベンチャー企業の内部情報を違法に収集。時期を見て玲の口座から資金を動かして企業を買収。その買収に加担していたのが、当時、大手証券会社で働いていた三村だ。玲は、自分でも分からないうちに名前と口座を貸し、その見返
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503.告白

瑛斗side「一条ホールディングスの資金を横領し、逃亡を続けていた長谷川智花を、この度、京都にて確保いたしました。現在、事情聴取が行われており、余罪を含め、近いうちに全容が明らかになるかと思います」週明け、東京に戻った俺は、父である会長に事の顛末を報告した。逆光を背にデスクに座る父の顔は、影になっていて読み取れない。ただ、部屋に漂う沈香の香りが、いつも以上に重苦しく感じられた。「捕まったのは秘書だけか? 玲さんはどうなっているんだ。彼女の行方は掴めていないのか」父の声は、安堵よりも焦燥に満ちていた。身内の不祥事という以上に、何か別のものを恐れているかのような響きだ。「それが……。長谷川の供述によれば、逃亡直後に玲とは行動を別にしたようです。現在の居場所については頑なに『知らない』と通しており、足取りは依然として不明です」「そうか……一網打尽というわけにはいかないということだな」「はい。それに、逮捕時に長谷川が非常に気になることを口にしていました。『自分が捕まったからと言ってすべて解決すると思ったら大間違いだ』と。さらに彼女は、玲のことを『被害者でも何でもない』と断言しました。玲を連れて逃げたのも、『指示があったから仕方なくやった』とこぼしており、彼女とは別に主犯が存在することを示唆しています」「指示があっ
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504.父の回想

瑛斗side混乱した頭で、俺は電報社パーティー当日のことを必死に思い出そうとしていた。「一条君、息子たちを紹介しよう」三村会長にそう言われて、俺たちは会長の息子夫婦と挨拶をした。三村の実の父親だと言われている将司さん、そして奥さんの洋子に挨拶をする。俺たちが一条の人間だと分かると、ジョニーのことを連想させたのかバツの悪い顔をして、将司さんは洋子さんの顔色を窺うように隣にいる奥さんの顔を横目でチラリと見た。愛人との間に子どもを作った夫。その子どもを認知して三村家の名前まで使用しているなんておもしろいはずがない。洋子さんは笑顔を浮かべているが、その笑顔は取り繕ったもので目は笑っていない。そして、一番最後に挨拶をしたのが、夫を亡くした雅さんだった。親父も雅さんも特に変わった様子はなく、名前を言って簡単に挨拶をしてその場を離れた。あの時、雅さんだけ他の女性たちと雰囲気が違うと思っていたが、それは夫を亡くして一人であの場に参加しているからだと思い込んでいた。実際は、親父に会ったことの動揺だったかもしれない。「私は、そして雅も、目が合った瞬間にすぐに分かった。雅に話を聞きたくて話しかけると、ここでは周りの目もあるから部屋に来てくれと言われてな。それで、あの部屋に言ったんだ」父は物思いにテーブルの上で組んだ指を眺めながら、部屋に入ってからの会話を話し始めた。哀愁漂う父の顔に
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505.父の回想②

瑛斗side「雅の話の真意を確かめるため、探偵に大学卒業後から今に至るまでの彼女のことを調べさせた。その封筒の中に、報告書が入っている」テーブルの上に置かれた封筒に手を伸ばすと、雅さんの経歴が事細かに記されていた。父が結婚した五年後、彼女は電報社の創業者一族に嫁いでいる。名門同士の政略結婚。しかし、その後わずか三年で夫が病死。以降、彼女は電報社一族の広大な敷地内にある別邸で、ひっそりと暮らしているとのことだった。「探偵の話によると、電報社の敷地内には大きな屋敷が二つあり、一つは現在の会長が住んでいる。創業者一族のルールは厳格で、結婚して子どもが産まれて初めて、会長たちと同じ本邸に住むことが許されるそうだ。……つまり、創業者の血を次代へ繋げる者と、そうでない者で住む場所を明確に区別していたらしい」「子どもを授かる前に旦那さんを亡くした彼女は、一族の中で『役割を果たせなかった者』として別邸に追いやられたというわけか」「ああ。会長の息子たちは全員結婚をして子どももいる。日頃から本邸で交流を持ち、一族の結束を固めているそうだ。……雅だけが、その輪から完全に外れていた」親父の声には、かつての恋人に対する同情が孤立していたことを悲しむ哀愁がいり混じっていた。 僕は、再び報告書に目を落としてページを捲り読んで
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506.吉報

華side「北條先生、華さん、お久しぶりです」二か月ぶりに教室に顔を出した真珠さんは、以前よりも表情が明るく、声も軽やかだった。以前、会った時の悲壮感や張り詰めた空気は完全に消えている。心なしか、彼女自身が放つオーラさえも華やかさを増している気がして、私は思わず目を細めた。「真珠さん、お久しぶりですね。元気にしていましたか? こうしてまた真珠さんとゆっくりお会いできて本当に嬉しいです」歓迎する北條先生に真珠さんは少し照れくさそうにしながらも笑顔で応えている。「実は、今日はお二人にご報告があって伺いました」北條先生が淹れてくださったお茶の香りが部屋に広がる中、真珠さんはソファに座り直し、少し落ち着かない様子で膝の上で手を組んだ。どこか緊張気味なのは、大切なことを伝えようとする決意の表れなのだろう。「実は、以前お話ししていた縁談ですが……先日、正式にお断りしてきました。すべて白紙に戻し、これからも今まで通り、私は長谷部製茶で働きます」「そうなのね……! 本当に良かった。でも、先方は納得してくれたの? 無理やりな条件を押し付けてきていた相手でしょう?」私が身を乗り出して尋ねると、真珠さんは少しだけ視線を落とし真剣な面持
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507.虚言

瑛斗side京都の貸会議室。床に組み伏せられて手錠をかけられながらも、長谷川は不敵な笑みを浮かべていた。俺たちを「何も分かっていない」と嘲笑っていたあの歪な表情は、今も脳裏に焼き付いて離れない。だが、警察の手に渡り事情供述が始まると、彼女は一転して「黙秘します」と沈黙を続けていた。口を割ったかと思えば、 「三村とは、NPO法人に在籍していた時期は重なっているかもしれないが、三村氏は非常勤だったので、面識があったわけではない」と関与を否定するような主張を繰り返した。 真珠さんがどんな風に三村と関わっていたか、まるですべてを知り尽くしているような口調で話し共犯関係をこれでもかと匂わせていたことを指摘すると、「あの時は逮捕されて気が動転していた。ちょっとした反抗心で周りの会話から状況を推測して話しただけ」 と取調官に対し、平然とそう言い放ったという。あれだけ大口をたたいておきながら、今さら「面識すらない」と言い切るとは。一体どんな神経をしていれば、これほど矛盾した言葉を吐けるのだろうか。すぐさま警察から聞いた話を共有すると、空は低く短い溜息をつき、腕を組んで深く考え込んだ。 「長谷川の黙秘は、三村を庇っているのかな……? それとも、黙っていれば三村が何とかしてくれるという確信があるのか、あるいは何か別の目的が……」 「分からない。長谷川のスマートフォンやパソコンといった私物からも、三村本人と思われる人物からの直接的な連絡は一切見当たらないそうだ。奴らのことだ、連絡には使い捨ての端末や、秘匿性の高い特殊なアプリ、あるいは第三者を経由させた複雑なルートを幾重にも張り巡らせていたんだろう。現状では、三村を共犯の重要参考人として正式に呼び出すための決定的な法的根拠が、あと一歩のところで不足しているらしい」刑事たちは、長谷川の逮捕を最大の足がかりにして三村を引きずり出し、過去の数々の余罪を一気に追求しようと躍起になっていた。取調室ではベテランの捜査員たちが、あの手この手を使って彼女の心理的防壁を崩そうと連日奮闘している。しかし、長谷川の沈黙と否認が捜査の進展を阻む強固な壁となって立ち塞がっていた。「それで、肝心の三村の様子はどうだ? 今もあいつは出社しているのか?」 俺が尋ねると、空は浮かない顔をして首を横に振った。 「ああ、先週までは出社していたよ。だが、三
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508.逃亡

瑛斗side「不正送金については、当時上司でもあり一条ホールディングスの副社長でもあった一条玲の指示で行いました。私は、彼女の指示に背くことが出来なかった。だからあんな不正を……」「今の証言に基づくと、あくまで自分は指示に従っただけで、具体的な計画立案や送金指示はすべて一条玲が取っていた、ということか?」「……はい、その通りです。申し訳ありませんでした」取調室のモニター越しに見る長谷川は、うな垂れるように罪を認め、深く反省しているような素振りを見せていたそうだ。しかし、今までの彼女の冷徹な行動原理からしてこの急な「改心」には裏があるとしか思えない。それに、この不正送金については決定的な矛盾点が一つ残っている。取調官もそこを見逃さなかった。「一条玲が主犯とのことだが、送金先の会社の代表は長谷川智花、お前の養父だろう? なぜ一条玲は、わざわざ秘書であるお前の身内の会社を送金先に選んだんだ。隠し場所なら他にもいくらでもあるだろう。本当は、父親を経由して多額の報酬を中抜きしていたり、最初から君の指示であの会社に振り込むように仕向けたんじゃないのか? 違うか?」「それは……あの人の、一条副社長の作戦です。私に関わりのある会社にすれば、真っ先に疑われるのは私でしょう。だからこそ、あえてそこを指定することで……捜査の手の裏をかいたんです。私を盾にするつもりだったのでしょう」
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509.対面

瑛斗side「三村と思わしき人物は、地下鉄に乗って移動中。場所から推測すると、東京駅に向かって移動している可能性が高いです」助手席に座る空のスマホをスピーカーにし、見張り役のナビを頼りに俺は車を走らせた。あいつが東京駅の改札を抜けてしまえば、その後の足取りを追うことは絶望的に難しくなる。新幹線、特急、あるいは高速バス……選択肢は無限にある。その前に何としても奴の逃走を止めなければならなかった。「その駅からだと車でも同じくらいの時間帯に着きそうだな。一条の専用駐車場に停めて最短ルートで向かえば間に合うはずだ」「ああ、そうだね。ひとまず駐車場に急ごう。それにしても、三村が向かうとしたらどこだ? 京都か、それとも高跳びを計って空港へ向かうための成田エクスプレスか?」「さあな。捕まえて面と向かって聞いてみたいところだ。奴の傲慢な顔が後悔に歪む瞬間をな」逸る気持ちを抑えながら、違反しないギリギリのスピードで駆け抜けていく。タイヤが路面を叩く音が俺の心音と重なって激しく響いた。見張り役からの連絡が来るたびに獲物との距離が縮まっている手応えを感じる。東京駅すぐそばの駐車場に滑り込ませると、すぐさま車を飛び出し全力で走った。何としても三村との因縁に決着をつけたかった。それから、俺と華を引き裂くきっかけを作った玲とも。もし見つけたら、玲には生涯をかけ
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510.逃走劇

瑛斗side「玲――――」俺と華を引き裂き、一条ホールディングスを混乱に陥れた張本人でもあり、俺の元妻だ。愛のない生活で夫婦らしい思い出は何一つないが、何度も顔を合わせてきた。玲のことを見間違うはずがない。俺は人の波を強引に割って、彼女の方へと全力で駆け出した。「待て!」大声で叫ぶが、その声は駅に響くアナウンスや大勢の人の音に飲み込まれていく。玲は俺の必死な形相を見ると、さらに深く歪んだ微笑を浮かべ、すぐさま早足で通行人とぶつかりながらも、網の目を縫うようにして人混みの奥へと走っていく。必死に追う俺の視界の先で、玲は改札へと滑り込んでそこで待っていたハットをかぶった男に向かって親しげに話しかけた。男の後ろ姿だけで顔までは見えない。だが、背格好からすると三村ジョニーにそっくりだった。男が着ているのはシックなロングコートで、さきほどまで見張り役から知らされていた服装とは全く異なっている。俺たちがさっきまでGPSを頼りに血相を変えて探していた男は、最初から俺たちの目を引きつけるためだけに用意された「ダミー」だった可能性が極めて高まったのだ。玲が話しかけると、ハットの男は少しだけ顔を彼女の方に傾けたが、こちらを振り返ることは決してなく、そのまま逃げるように奥へと進んでいった。「くそっ……! 待て!」
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