All Chapters of 離婚翌日、消えた10億円と双子妊娠を告げぬ妻ーエリート御曹司社長の後悔ー: Chapter 491 - Chapter 500

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491.真実

空side「……あの、長谷部さん。もし、長谷部さんさえ嫌でなければの話ですが、宿泊予定のホテルがここからそう遠くない場所にあります。そこなら誰かに盗み聞きされる心配もありません」返答がなかったため、逡巡の末に頭にあった場所を伝えると、彼女は小さく息を呑んで丸い瞳をさらに大きくし、僕を真っ直ぐに見つめた。「相原さんのお部屋に……?」「決してあなたのことを騙しているわけでも、不安を煽って誘導しているわけでもありません。ただ、非情に重要な話で誰かに聞かれるのは絶対に避けなくてはならない内容なんです。もし場所が見つからないようなら、と思いまして……」彼女は唇をぎゅっと噛み締め、僅かな沈黙のあと、覚悟を決めたように小さく頷いた。「……はい。相原さん、案内してください」彼女がアクセルを静かに踏み込む。夜の嵐山を背に、ミルクティー色の車はホテルへと向かって走り出した。街灯に照らされる彼女の横顔は、いつになく凛としていて、それでいて壊れ物を扱うかのような儚さも兼ねている。彼女を抱きしめた腕の感触が、まだ手の平の奥に熱を持って残っていた。助手席に座る僕は、その熱を無理やり思考の隅へ追いやり、これから彼女に突きつける真実をどう伝えようか、必死に言葉を組み立てていた。
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493.進展

空side翌朝、熱めのシャワーを浴びて目を覚ましてから、昨日の出来事を報告するために瑛斗に電話を掛けた。探してもずっと足取りが掴めなかった長谷川智花が姿を現したことに、瑛斗は驚きを隠せない様子で、受話器越しでも分かるほど大きな声で話の続きを急かしてきた。「つまり、長谷部さんの縁談は偶然なんかじゃなくて、三村たちの手によって最初から仕組まれていたということか?」「ああ、その可能性が極めて高い。時期的にも、彼女が三村と二人で会ってからさほど期間を空けずに縁談の話が持ち込まれている。相手企業の社長も、結婚に相当に熱心ですぐにでも籍を入れたがっていたようだ」「結婚して籍を入れてしまえば、向こうの手の中に入ったも同然というわけか……。長谷部製茶を自分の物にできると考えていたのかもしれないな。……それで、彼女はどうするつもりなんだ?」「彼女には、三村と長谷川の関係をすべて話し、この縁談は断った方がいいと伝えたよ。彼女も事実を知って納得し、今は断る方向で話を進めている。今後、先方から理不尽な要求を突きつけられたり、不当な圧力をかけられたりしないようにサポートしていくつもりだ。必要であれば、縁談とは全く別の形で、長谷部製茶の再建案や事業拡大案をご両親に提示するつもりだよ。……だから瑛斗、悪いけれど、この件はもう少し僕に任せてくれないかな」電話の向こうで、瑛斗が短く息を吐く音が聞こえた。
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494.最終決戦

空side「これからは東京に来た時は僕のところに泊まればいい。毎回、京都から通うのは大変でしょう?」 「……空さん」 僕がそう提案すると、彼女は照れたように頬を赤く染めて俯いた。今後の経営計画について止まることなくずっと話し続け、そのまま月曜の朝まで一緒に過ごした。「縁談先は関西でも大手だから、ご両親は安心だと思うかもしれない。けれど、長谷部製茶の潜在的なブランド力を正しく磨き上げれば、他社に頼らなくても十分自走していけるはずだ。事実、芦屋のチェーン店とのコラボも決まっている。この結果次第では、長谷部製茶自身が関西を代表するブランドに成長する可能性だってあるんだ。今の段階で、あからさまな上下関係を強いてくる相手と手を組むのは、経営の独立性を損なってしまう可能性もある」「そうですよね……。あちらは完全に『救ってやる』という態度でした。私に仕事を辞めるように強要したのも、最初から、長谷部製茶を吸収する算段だったんですね」「ああ。その可能性が極めて高い。でも、真珠さんが大好きな仕事を辞める必要なんてどこにもないんだ。このまま、会社に残って営業活動を続ければいい」真珠さんの瞳に宿っていた不安の色が、夜明けの光とともに少しずつ確かな決意の光へと書き換えられていく。彼女の営業先リストには、北條さん
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495.最終決戦②

空side窓の外には広大な茶畑が広がり、のどかな風景とは裏腹に、室内には刺すような緊張感が漂っていた。 真珠さんの隣には、神妙な面持ちのご両親。そして僕も、長谷部製茶の「経営アドバイザー」という立場でその場に同席していた。「――長谷部さん、今日呼ばれたのは、婚姻に向けての具体的な日程調整と思って来たのですが、随分と人数が多いですね……これは、どういうことでしょう?我々としては、早く身内として迎え入れ、長谷部製茶さんを支えていきたいと考えています」大塚氏の言葉に、真珠さんは僕を一度見てから深く息を吸い込んでから真っ直ぐに前を見据えた。「大塚社長。せっかくのお話ですが、この縁談は、お断りさせていただきます」室内が静まり返る。大塚氏の笑顔がピキリと凍りついた。 「……何かの聞き間違いかな?この縁談を受ければ、関東進出への資金援助も御社の取引も約束されて、この上ない好条件を用意したと思うのだが。何を拒む理由があるのですか……」「詳細については、私からお話しさせて頂きます。結論としては、支援案を受けなくとも長谷部製茶は自走可能な状態であること、また縁談を受けることで自走が困難なる可能性が高いと判断し、この話を断る結論に至りました」「自走が困難になる?嫌だな、支援をすると言ってい
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496.最終決戦③

空side「……ある日、私の元に長谷川という女が訪ねてきて、ある資料を見せて私を脅してきました。相原さん、あなたが想像している通りです。彼女は、私の会社の主要取引先にあることをばらすと脅してきました。そうなれば、うちは全てを失うことになる。回避したければ、長谷部製茶に揺さぶりをかけ、自走できない状態に追い込めと命じたんです。私が躊躇していると、今度は縁談の話を持ってきました。これならば『経営難の相手を救う』という形になり感謝されるだろうと……」大塚氏は、絞り出すような声で独白を続けた。その顔には、名門企業のトップとしての矜持はもはや欠片もなく、ただ追い詰められた男の悲哀だけが漂っていた。「好条件に見せかけた契約内容を長谷部製茶に提示し、縁談が決まったら、真珠さんや将来有望な若手をこちらに引き抜くように指示されました。意図的に長谷部製茶の現場を高齢化させるためです。そうすれば、遠くない将来に必ず後継者不足に陥る。そのタイミングで、我々が『救済買収』を提案すれば、名前だけは残しつつ、中身を完全に飲み込めると。表面上、長谷部製茶という看板は継続しているように見えるから、世間体もいいだろうと唆されたのです」「……長谷川がそう言ったのですか?」僕の冷徹な問いに、塚氏は震える肩を丸め、力なく首を縦に振った。「はい……。実権を我々が完全に掌握した暁には、見返りとして、長谷部製茶の製造工場の土地と建物の抵当権を、三村さんに引き渡すように言われていまし
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497.終結

空side「あ、電話の邪魔をしてしまって、ごめんなさい。……あの、父と母が、もし空さんさえ良ければ、今夜一緒に食事でもどうかと言っていて……。でも、空さんもお疲れでしょうし、私から断っておきましょうか?」真珠さんは遠慮がちに申し訳なさそうに言っているが、その瞳の奥には、僕が自分の家族と過ごしてくれることを期待するような淡い希望が感じ取れた。「いや、せっかくのお誘いなので、是非ともご一緒させてください。……えっと、服装はこのままスーツの方がいいのかな?」僕が真剣な表情で問いかけると、真珠さんは口元に手を当てて、くすくすと可愛らしく笑い始めた。「ふふっ、空さん、そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。気にせずリラックスしてください。その方が、父も母もきっと喜ぶはずです。空さんは、もう私たちの恩人なんですか」「分かった。じゃあ、ジャケットはなしでネクタイも緩ませてもらうかな」二時間後―――――「相原さん。今回は、私どもの会社を、そして娘の真珠のことを救ってくださり、本当にありがとうございます」仕事の接待でも使うという、落ち着いた佇まいの小料理屋。運ばれてきた京料理を前に、社長は姿勢を正して深々と頭
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498.決戦前夜

空side「相原さん……長谷川さんと連絡がとれました。今週末に、もう一度京都に来るとのことです」少し震えた声の大塚氏から連絡がきたのは、長谷部製茶で顔を合わせた三日後のことだった。「そうですか。彼女は今、どこにいるんですか? 以前、蓬莱橋の料亭で会っていましたが、普段は京都にはいないのでしょうか?」「はい……私も詳しくは知らなくて。ただ三村さんの名前を出したので、てっきり東京から来ているのだと思い、前回は接待を兼ねて観光名所としても人気なあの店にしたんです。今回は、もう少し落ち着いた場所にしたいと伝えています。会社に迎え入れるのは抵抗があるので外部の貸会議室などを利用する予定です」「分かりました。大塚社長の言う通り、彼女を会社に招かない方がいい。接触は最低限にするために京都駅周辺の会議室で探してみてもらえますか?もし場所を渋るようなら、『見せたい資料があるから、ネット環境の整った場所がいい』など理由をつけてください」「……分かりました。やってみます。「そこで彼女と話をしてください。僕たちはしばらくしてから中に入ります。その間の会話はすべて録音して、のちに公判でも耐えうる証拠として使いましょう。」大塚氏の悲壮な決意を確認し、電話を切った。 何度かのやり取りを経て、土曜日の午後、京
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499.終焉

空side京都駅から歩いて三分、ワーキングスペースとして利用できるこの場所で大塚社長と長谷川が会う予定になっている。午前十時には京都に到着をした瑛斗と合流し、三人で早めの昼食を取った。「いよいよだな。……本当に長谷川はあらわれるのか?」「ああ、多分大丈夫だと思うよ。大塚社長を通して、『提示した再建案の資産評価がおかしいことを指摘されて鑑定書を渡されたから見て欲しい』と長谷川には伝えてある。最初はデータで送るように言われたらしいけれど、なんとか断って見せることしかできないと伝えたんだ。だから、長谷川は内容を確かめるために必ず来るはずだよ」「そうか、そこを確認しないと今後の計画や主張を組み立てられないから確認のためには会うことが必要ってわけだな」瑛斗は納得したように頷くと、僕たちの顔を交互に見てニヤリと含んだ笑顔を見せた。「それにしても、まさか二人が一緒になるとはな……。空と長く一緒にいるけれど、常に冷静沈着な空でも、好きな人が出来るとあんなに焦ったり必死になるんだな。違った一面が知れて嬉しいよ」「……瑛斗っ!」慌てて反応する僕に瑛斗はニヤニヤと笑っている。そんな僕と瑛斗の様子を真珠さんは照れて恥ずかしそうにしながらも、嬉しそうにはにかんだ笑顔を浮かべていた。
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500.終焉②

空side「警察だ!動くな!」刑事の鋭い叫びを先頭に勢いよく会議室のドアが開け放たれると、奥の席に座っていた長谷川は、勢いよく椅子を引いて立ち上がった。そして瞬時に辺りを見渡して逃げ場がないか探している。しかし、この部屋は窓ひとつない完全な密室だ。唯一の出口であるドアには、体格の良い刑事が壁のように立ちはだかっている。恐怖に顔を強張らせた大塚社長は、転がるようにして刑事の背後へと逃げ込んだ。「ちっ……」部屋の静寂を切り裂くように、長谷川の忌々しげな舌打ちが響き渡る。これまでの余裕に満ちた表情は崩れ落ち、そこには剥き出しの毒気が漂っていた。「長谷川智花。一条ホールディングスにおける巨額横領、および私文書偽造の容疑で逮捕状が出ている。大人しく署まで同行願おう」刑事が手錠を取り出し、一歩、彼女との距離を詰めた。その瞬間だった。長谷川は素早い動きで足を振りかざし、刑事の腕を真横から蹴り上げた。「っ……!」金属音を立てて手錠が床に転がる。彼女はひるんだ刑事の隙を突き、ドアへ向かって走り込んできた。慌ててドアを塞ごうとした時、背後から地を這うような低い声が響いた。このままでは、大塚社長もそして後ろに隠れている真珠さんも危ない。その時だった。
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