Todos los capítulos de 元夫の初恋の人が帰国した日、私は彼の兄嫁になった: Capítulo 781 - Capítulo 790

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第781話

それを聞いた静真は、顔を青くして怒鳴った。「月子!」彩乃は、もう我慢できなかった。「静真、何を大声出してるの?そもそも子供たちのことだって全部あなたが一人でやったことじゃない。月子が自分の子じゃないって疑うのも当然でしょ?もし子供が月子の子じゃなかったら、父親だの母親だのって話もなくなるわけだし、あなたが一生月子に付きまとう理由もなくなるわね。そうなったらあなたは子供の本当の母親でも探しに行ったらいいのよ」静真はこめかみに青筋を立て、月子を睨みつけた。「俺がそんな初歩的なミスをするとでも思うのか?」「万が一ってこともあるでしょ?念のため、DNA鑑定をしよう。もし私の子じゃなければ、私が責任を負う必要もなくなるし」月子は言った。「ああ、そうかよ!」静真は、本気で怒り狂いそうだった。正直、月子の考えは理解できる。でも、月子がそう考えていることこそ、静真は腹が立って仕方がなかったのだ。静真は、もともと子供が嫌いだった。それでも、月子との間に生まれる二人の子供の誕生を心から待ち望んでいた。それなのに、自分と同じように喜んでくれると思ったはずの彼女は、まったく冷え切った態度だ。この温度差は、あまりにも辛い。怒りに震える静真の姿を見て、月子は鼻で笑った。「痛みは自分の身に降りかからないとわからないものね。昔の私も、今のあなたみたいに心から期待してた。でも、あなたはどうだった?今そこまで腹を立てるってことは、自分の過去にやましいところがあるって認めてるようなものよ。」月子の一言で、静真の怒りはすうっと消えていった。この辛さを身をもって味わったからこそ、ようやく月子の立場になって考えられる。そして、自分がかつてどれほど愚かなことをしたのかを身に染みて感じたのだ。静真は何度か深く息を吸い込んだ。確かに自分はどんなことにも無関心でいたけど、しかし、身をもって痛みを体験してみるといつものように平然とはしていられなかった。静真は月子を見つめ、心の底から罪悪感がこみ上げてくるのを感じた。だけど、今さら謝ったところで何になる?もう何も取り返しはつかない。「月子、お前は……」「DNA鑑定は必ずするから」月子の態度は、はっきりしていた。静真は胸の痛みをこらえながら、強い口調で言った。「子供たちの顔を見れば、絶対に自分たちの子供だと分かるは
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第782話

そういわれた静真は言い返した。「あなたには関係ないだろう」月子は言った。「彩乃は私の友達よ。言葉に気を付けて」静真も同じように、顔を真っ赤にして怒っていた。彼は、月子の険しい顔つきから彼女の考えを察した。これ以上何か言えば、月子はきっと彩乃を連れて帰ってしまう。月子がDNA鑑定を要求しているのは到底受け入れられない。だけど、彼女が子供を見捨ててしまうのは、それ以上に耐えがたいことだった。彩乃は、月子と静真が夫婦だった頃には会ったことがなかった。離婚した後の二人の姿を目の当たりにしているのはこれが初めてなのだ。この状況に彼女も思わずこめかみを押さえた。親友の月子はいつも落ち着いているのに、こんなに激しく言い争うなんて……でも、無理もない。静真なんて男に誰が耐えられるだろうか。黙っていればそれなりに見えるけど、口を開けば誰もがうんざりする。理不尽で、まるで常識がない。本当に月子が可哀想だ。結婚していた三年間、一体どうやって過ごしてきたんだろう?これじゃ、隼人と付き合ってからも結婚を考えようとしなかったのも無理はない。よっぽど大きなトラウマになったんだろうな。月子には彩乃が付き添っていたが、静真のほうにも友人が来ることになっていた。まもなく、病院の看護師が別の男性を連れて部屋に入ってきた。「入江社長」部屋に入ってきた男性は、とても恭しく静真に挨拶をした。しかし、その男性の登場で、待合室の空気はさらに重くなった。静真は翔太を見ると、座るように目で合図した。それまで親友のことばかり気にしていた彩乃だったが、今度は自分のことを気にしなくちゃいけなくなった。なにせ目の前に現れたのは……まさか自分がまだ婚約を解消していない相手だったのだ。翔太は席に着いてからようやく彩乃に気づき、同じようにひどく驚いていた。まさかこの待合室で、遠く離れた国にいるはずの婚約者に会うとは思ってもみなかったのだ。彩乃と翔太は数秒間見つめ合った。やがて彩乃は、口元だけを歪めて笑った。「翔太さん、久しぶり」翔太は尋ねた。「……どうしてここに?」静真は翔太と彩乃に目をやった。以前、隼人が静真の海外事業に手を出した時、その地域の責任者だったのが翔太だった。当然、責任を問われるはずだったが、彼が彩乃の婚約者だと知って、月子との関係に免じて大目に見やった
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第783話

この知らせを聞いた瞬間、月子の体はこわばった。もう子供は生まれてしまったのだ。彼女は彩乃の手をぎゅっと握り、不安そうに見つめた。彩乃も翔太のことは気にしていられなくなり、ただ月子に寄り添って今後どうやって、この赤ちゃんと向き合えばいいのだろうかとばかり考えていた。月子が立ち上がると、静真に見られていることに気づいた。その眼差しは、いつもの傲慢な彼とは少し違って見えた。静真のことをよく知っているからこそ、ふと思った。この男にも、緊張するなんてことがあるんだ。子供たちをちゃんと育てられなかったら、今日やったことを後悔するだろう。そう思いながら、月子は移動した。そして大きなガラス張りに囲まれた新生児室の外に一行が立つと、中の赤ちゃんたちの姿が見えた。でも、赤ちゃんはしっかりとおくるみに包まれていて、顔全体は見えなかった。見えるのは横顔だけ。生まれたばかりの赤ちゃんは、そんなに可愛いものではないのかもしれない。月子の第一印象は、まるで小さな肉団子みたい、というものだった。でも、よく見ると鼻筋はすっと通っていた。「両親は、中へどうぞ」と看護師が言った。だが月子は、立ったまま動かなかった。静真は振り返ると、有無を言わさず月子の手首を掴んだ。「自分の子じゃないって疑ってるんだろ?入って確かめてみろよ」静真に引っ張られるのが嫌で、月子は拳を固く握って振りほどこうとした。しかし、彼はもっと強い力で彼女を中へ引きずり込んだ。月子の心は、はっきりと抵抗していた。この小さな命は、彼女の同意なくこの世に生を受けたのだ。元凶である静真の策略によって。本来なら無視して、彼の思い通りになんてさせてはいけないはずだ。なのに、どこからか湧いてくる責任感のせいで、まず自分が責任を負わなければと思ってしまった。静真に引っ張られて新生児室に入ると、赤ちゃんの顔がはっきりと見えた。ベビーベッドで眠る赤ちゃんは、口をちゅぱちゅぱさせていた。唇は白く、透き通っているかのようだ。握られた小さな手は、卵よりも小さい。全体が小さくまとまっていて、とてもか弱くみえて、月子は触れることすら怖かった。静真も彼女と全く同じだった。すぐには近寄らず、しばらく赤ちゃんを眺めているうちに、その眼差しは複雑な色を帯びていった。月子は赤ちゃんの顔をじっと見つめた。できることなら、自分には似
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第784話

静真は腹を立てた。「お前のなかで、俺は一体どれだけ人でなしなんだ?俺がどんなに最低でも、さすがに子供二人を死なせるわけないだろ。心配しすぎだ。俺はそんなに頼りないか?」月子は鼻で笑った。「自分の世話もできないくせに、どうして子供二人をちゃんと育てられるって言えるの?」「俺はこいつらの父親だ。俺のやり方で育てるし、こいつらはそれを受け入れるしかない。どんな父親がいいかなんて、こいつらに選択する権利なんてないからな」月子は息を深く吸い込んだ。こんな高圧的な男に育てられたら、子供たちは絶対にトラウマになるだろう。安心して預けられるわけがない。月子は妥協案を口にした。「もう抱っこはやめて、まずは看護師に預けて。まだ小さすぎるから、大きくなってからにして」「お前に言われるまではその気もなかったが、そう言われると、逆に抱きたくなってきた」月子は怒鳴った。「静真!」コンコン。新生児室のドアがノックされた。看護師がドアを開けた。一樹がひょっこり顔を出した。「頼むからさ、子供の前でケンカするのはやめてくれよ!外でずっと見物させてもらったけど、一体何してるんだ?」静真はばつが悪そうに言った。「出てけ。お前には関係ないだろ」一樹は看護師に微笑みかけた。「子供の叔父です。ちょっと見せてもらってもいいですか?」看護師は信じられないという目で月子と静真を見ていた。この二人はまともな親ではないだろう、と察したのかもしれない。むしろ、優しく微笑むこの紳士の方がずっと頼りになりそうだった。「もちろんです」一樹は微笑みながら中へ入ると、赤ちゃんの顔を覗き込み、それから月子に向かって言った。「あなたに似てるな」それを聞いて月子の表情が曇った。彼女はこの子が自分に似ていることを望んでいなかった。一樹は確かに、この二人よりもずっと頼りになりそうだった。静真は短気で人の世話などできないし、月子は嵌められたことで腹を立てており、冷静に子供と向き合えずにいたからだ。一方の一樹はすっかり親の役になりきっていた。彼は辛抱強く、そして優しかった。看護師の手を借りて子供を抱き上げると、その手つきはかなり慣れたものだ。壊れそうな新生児を抱いても、慌てふためいていなかった。彩乃は、一樹が子供を抱く姿を羨ましそうに見ていた。でも、自分が抱いたら落として
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第785話

病院でDNA鑑定の結果を待つ間、月子は彩乃と一緒に車の中で一息ついていた。そして彼女は脳裏に二人の子供の顔が浮かべながら、窓の外を眺めて呟いた。「正直、一目見て彼らが自分の子だってわかったの。でも、はめられたのが悔しくて……鑑定結果を見れば諦めもつくだろうと思ったの」彩乃は月子の顔色をうかがいながら言った。「気持ちはわかる。意地になるのも仕方ない。もしかしたら、あなたの子じゃないかもしれないし、ね?」月子は万が一なんてないと思っていたけど、それでも彩乃の言葉に少し救われた。こんな風に二人の子供が、目の前で息をして、動いて、まばたきをして、泣いているんだから……初めてそれが生の命なんだという実感にあまりにも大きな衝撃を月子は受けていたのだ。そして月子には子供の世話をした経験が全くなかった。だから、赤ちゃんを前にして途方に暮れるばかりで、少し挫折感も味わっていた。静真はもっと頼りなかった。家政婦が付きっきりで見てくれるとはいえ、結局は誰かがしっかり監督しないと安心できないだろう。それに月子自身、母親になったという新しい現実にすぐには順応できなかった。でも、静真にいたっては、父親になる覚悟すらないみたいだった。さっき娘が泣いた時も、自分を前に押しやって彼は後ろに隠れるなんて。信じられない。この世に子供を生まれさせたからには、せめて父親になる準備くらいしておくべきじゃないの。月子ですら、育児に関する本を読んだりしたのに。きっと静真は何も調べていないに違いない。まあ、いいや。考えても自分がイライラするだけだ。月子は頭を空っぽにして、気持ちを落ち着けようとした。ゆっくりと心は穏やかになっていったけど、最悪な気分なのは変わらなかった。月子は気を紛らわすように、彩乃に話を振った。「あなたは今、どうなの?」彩乃は最初、何のことかわからなかった。「私が、どうしたの?」「翔太さんよ。彼、娘までいるみたいじゃない」彩乃の目に影が差した。「驚きはしないけど、それでも私の予想を超えていたわね」彼女は歯を食いしばり、怒りで声が冷たくなった。「まさか本当に子供まで作るとは。結婚する前からこんな面倒をおこしておいて、まあ、あいつと結婚する気なんてないからいいけど。そもそも、今も婚約を解消しないのは、あいつへの嫌がらせのためよ。だからたとえ今
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第786話

時間が経ったせいだろうか、月子がDNA鑑定の結果を手にした時、心はすでに穏やかだった。結果は予想通りで、子供は間違いなく彼女と静真の子だった。父親は、静真。そして母親は、月子。これから二人の子供が、自分のことを「ママ」と呼ぶのだと、月子の頭の中ではその事実が繰り返されていた。月子が鑑定書を閉じると、顔を上げた先にいた静真が、自分をあざ笑うような表情をしているのが見えた。月子は彼が何か言う前に、強張った表情で彼の言葉を遮った。「子供たちを見た時から分かってた。でも、意地を張りたかったの。あなたのやることなすこと、全てが気に入らない。静真、確かに子供たちは私の子だけど、だからといってあなたへの嫌悪感が消えるわけじゃないから」静真は、これまで月子から無情な言葉を何度も浴びせられてきた。もう慣れているはずだがそれでも、その言葉は彼の心を突き刺さった。静真は歯を食いしばった。いつものように弱音は吐かず、負けも認めない態度で冷笑を浮かべながら嫌味を言った。「お前がどれだけ俺を嫌いでも、顔も見たくなくても、これからは嫌でも顔を合わせる機会が増える。そうだよな?」月子は冷たく笑った。「静真、約束通り、私たちは一緒に子供を育てる。これは協力関係よ。だったら、ルールを決めないとね。ビジネスの交渉相手を、いちいち挑発したりしないでしょ?それと同じように私が子供たちの責任を負うと言ってるだけでも、あなたは感謝すべきよ。これからもその態度を続けて、私を本気で怒らせたら、この協力関係だって終わりにさせてもらうから」それを聞いて、静真の顔は、途端に気まずそうに歪んだ。月子は言った。「あなたが人に優しい言葉をかけられないのも、人の痛いところを突くのが得意なのも知ってる。でも、もう我慢する気はない。そもそも、私が我慢をしないといけない理由なんてないでしょ?態度を改めないなら、私だって考えを改めさせてもらうから」普段は誰もが静真をおだて、機嫌を取ってきた。だから、静真にとって頭を下げさせるのは、本当に我慢ならないことなのだ。しかし、彼の目的は二人の子供を利用して月子を縛り付けることだ。この関係を維持するためには、頭を下げたくなくても、下げなければならなかった。案の定、静真は不満そうな顔をしていたが、これ以上嫌味を言って月子を怒らせるようなことはし
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第787話

時差の関係で、国内は今ちょうど昼間だ。だから静真がこの時間に電話しても、正雄を煩わすことはないのだ。月子はソファに座って、育児に関する本を読んでいた。静真はリビングの窓の外にある椅子に座り、電話をかけていた。彼も子供が生まれてからようやく実家に報告するなんて。自分でもやましいことがあるって分かってたから、なかなか言い出せなかったんでしょ。リビングの窓は開け放たれていた。そのため、月子にも静真の声が聞こえていた。「おじいさん」静真は、まず正雄の様子を尋ねた。しばらく仕事の話をした後、ようやく本題を切り出す。「俺と月子の間に、子供が二人できたんだ」それを聞くと月子は読んでいた本を放り出し、窓際まで歩み寄り、冷たい視線で静真を睨みつけた。電話の向こうで正雄から色々と聞かれているのだろう、静真は眉間に深くしわを寄せていた。しかし、月子の姿に気づくと、ふっと表情を和らげた。そして、挑発するように口の端を上げては、明らかに嘲笑うかのような笑みを彼女に向けた。「おじいさん、子供のことは俺と月子で話し合った結果だ。彼女も、母親になった生活をすごく楽しんでる。子供たちの呼び名は、もう月子が考えてくれた。正式な名前はあとでおじいさんにつけてほしいと思ってる。女の子がねねちゃんで、男の子がけいちゃん。今度、子供たちの動画を撮って送るよ」その後、すこし話を二、三言続けてから彼は電話を切った。静真はスマホを放り投げると、ふてぶてしい態度で月子を見た。「さっき、ああ言ったけど。文句はないだろ?」月子は呆れて言った。「もう開き直ることにしたわけ?」静真は、悪びれもせずに眉を上げた。「俺が長い間計画してきたんだ。結果的にもう子供は生まれてきたことだし、今更この事実はもう変えられないんだから、どうしてこうなったかとかはもうどうでもいいだろ?こう説明すれば、おじいさんも受け入れやすい。余計な心配もしないだろ。お前も聞いたはずだ。おじいさんはひ孫ができて、本当に喜んでた。写真や動画が見たいってさ……あんなに嬉しそうなおじいさんの声を聞くのは、久しぶりだ」静真のあまりにも堂々とした物言いに、月子の表情はさらに曇った。「付き合いは長いけど、あなたを甘く見ていたみたい。どうしてそこまで厚かましい人間になれるの?」そう言われると静真
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第788話

月子は鼻で笑った。「静真、あなたのその妄想、一生叶うことはないわよ!」「どういう意味だ?」「私はもっと素敵な人を知ってしまったから。あなたみたいな人は目に入らないってことよ」それを聞いて静真は怒りに歯を食いしばった。「月子!隼人はそんなにいい男なのか?あいつのどこがいいっていうんだ!」「性格も人柄も、全部あなたより上よ。それにすごく優しいの!性的な相性だってあなたよりずっといい。あなたは何もかもダメ、テクニックも最低だったし、私がずっと我慢していたの、気づいてなかったわけ?そんなんであなたとよりを戻すわけないじゃない!」静真は怒りで頭が真っ白になり、顔を真っ赤にした。月子はいつも彼がどんな言葉に一番傷つくかを知っていて、わざとそれを口にして攻撃してくるのだ。静真はしばらくして、ようやく恐ろしいほどの怒りを鎮めた。彼は月子を睨みつけ、こう言った。「月子、どうしてもそう言うつもりなんだな!じゃあ隼人はどうなんだ、あいつとまだ付き合うつもりか?俺たちには子供がいるんだぞ。お前たちに未来があると思うのか?」月子は唇をきつく引き結び、何も言わなかった。静真の瞳は、今や執念と冷酷さに満ちていた。「もしお前が隼人と一緒にいるつもりなら、俺は子供たちを使って何が何でもお前を俺の元に引き戻すからな。俺を愛してなくても構わない。だが、お前があいつと一緒にいることだけは絶対に許さん!俺が何でもやる男だってこと、分かってるよな。俺を追い詰めるなよ」月子はもう静真の狂気じみた言葉には聞き慣れていたから今回も、大して動揺することはなかった。何しろ、彼女は今やいきなり現れた二人の子供の存在すら受け入れたのだ。以前よりもずっと打たれ強くなっていたのだ。月子は静真の前に歩み寄り、その顔をじっと見つめた。二秒。静真が、その勢いで月子の腰を抱こうとした。だが、月子はその手を振り上げ、彼の頬を思い切り引っぱたいた。パァンと乾いた音が響いた。静真の伸ばしかけた手は空中で止まり、顔は横を向いたままだった。月子は、彼のこわばった顔を見て言った。「静真、私たちはあくまでも協力関係だってこと、忘れないで。あなたからそんな言葉、聞きたくないし、不愉快よ。もう二度と口にしないでちょうだい」叩かれて呆然としながらも、殴り返すわけにはいかない静真は歯を食い
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第789話

一樹にはそうとは思えなかった。それに自分も友達として、静真が二人の赤ちゃんを好き勝手に扱うのを黙って見ているわけにはいかないからだ。一度この世に産まれてきた以上、それはもう授かった命だ。だから、これから思い通りにならないことも、きっとたくさんあるだろう。そうなればきっと静真も、好き勝手にできるはずがないのだ。なにせ、自分が止められなくても、まだ正雄がいるんだからな。二人の赤ちゃんを可愛がってくれる相手さえいれば、みんな静真が無茶をするのを止めるだろ。もちろん、静真という男はいつも予想以上のことをしでかす。それは一樹も否めなかった。静真は欲しいもののためなら、なんだってするやつだ。実際のところ一樹自身は、正雄の誕生日の前に隼人と月子が手をつないでいるのを見て、一気に心が折れた。その記憶は、まだ新しかった。まるで、いきなり運命を突きつけられたようだった。月子へのアプローチを考えていたのに、行動する前にゲームオーバーになってしまったんだ。今でも、行動が遅すぎたと一樹は後悔している。その後更に、静真が打ちのめされ、プライドも何もかも捨て、飲まず食わずで、熱を出して立ち直れずにいる姿を見て、あの時一樹は、静真も諦めたんだと思っていた。なにせ、月子と隼人が一緒にいる様子は、誰も引き裂けないほどお似合いだったから。たとえ元夫の静真だろうと、割り込む隙なんてないだろう。そのうち、月子と隼人の結婚報告が届くんだろうな、とさえ思った。そしたらヤケ酒でも飲んで、自分の実らなかった恋を受け入れるつもりだった。そう、一樹はとっくに諦めていたのだ。だから静真の落ち込みようを見て、一樹は彼もこれで手を打つだろうと思った。だが、静真がまったく諦めていなかったなんて、一樹にとっては完全に予想外だった。そう思っていたからこそ、静真が海外に半年以上もいて、お正月にも帰国しなかった理由が……まさか、試験管ベビーを作るためだったなんてを知ったときは、本当に、心の底から驚いた。あれだけ静真のことを知っているつもりの一樹でさえ、驚きを隠せなかった。それだけ、静真の月子への執着は強かったのだ。最初、一樹は静真のことを本気で狂っていると思った。狂人に関わるとロクなことがない。月子は本当についてない。こんなふうに付きまとわれるなんて。だが
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第790話

月子はため息をついた。もう一度スマホを手に取って見てみると、彼女は一瞬で固まってしまった。ベッドから飛び起き、信じられないという顔でスマホの画面を凝視した。なんと隼人にメッセージを送ってしまっていたのだ。指がうっかり触れてしまい、句読点だけを送ってしまった。句読点だけ。ブロックされてるかもと思っていたのに、まさかの送れた。月子はとんでもないことをしでかした気分だった。心臓が口から飛び出そうなくらいバクバクしていて、いつもは頭が回る方なのに、今は思考回転ピタリと止まってしまったかのようだ。間違って送っちゃっただけ、って説明する?でも、そっちの方が気まずくない?もし隼人から返信が来たら、なんて言えばいいの?今日、赤ちゃんが生まれたよ、とか?だめだめ、そんなこと隼人が聞きたいわけない。そうだ、送信を取り消せばいい。月子は慌てて取り消そうとした。でも、少し時間が経ってしまっていて、もう取り消せなかった。たとえ取り消せたとしても、送信取り消しの履歴は残ってしまう。そしたら、もっと説明が難しくなる。だって、隼人は「何を消したんだろう」って、あれこれ考えて、きっとモヤモヤするはずだ。月子はしばらくスマホとにらめっこしていたけど、やがてがっくりと肩を落とし、まるで人生に絶望したかのような顔になった。もういい、どうにでもなれ。放っておこう。そう思って月子は本当にスマホを切ってしまった。別れを切り出したのは自分なのだ。今さら隼人に関わるべきじゃない。気まぐれで、彼の気持ちをもてあそび、傷つけるためだけに別れたみたいに思われてしまう。別れたら、もう終わりだ。もう前へ向いて進まないと、月子はそう自分に言い聞かせた。今は二人の可愛い赤ちゃんがいる。自分の人生は新しいステージに入ったのだ。そんな人生の荒波を止めることはもうできないのだから、前へ進しかないのだ。午前4時。赤ちゃんがまた目を覚ました。月子はベビールームへ行き、家政婦が赤ちゃんたちにミルクをあげるのを見ていた。赤ちゃんがごきげんで飲んでいたので、途中で月子が代わってミルクをあげることにした。まもなく、一樹が眠そうな顔で入ってきて、ミルクを飲ませるのを手伝った。一樹はパジャマ姿で、胸元のボタンをいくつか開けていた。それを見て月子
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