個室は遮光がしっかりしていた。ドアを閉めると、中は本当に真っ暗になった。月子が照明をつけようと伸ばした手は、突然、温かい大きな手に包み込まれ、そのまま壁に押さえつけられた。月子はその手を引き抜こうとしたけど、隼人の力には敵わなかった。隼人が自分を傷つけたりしないとわかっている。でも、こんな真っ暗な部屋で、三ヶ月ぶりに会う男の人と二人きりなんて。月子の胸は激しい鼓動に襲われた。そして暗闇の中、五感が研ぎ澄まされていく。すぐ目の前にいる隼人の存在。彼の手が、まだ月子の手の甲にぴったりと重なっている……月子は息を深く吸い込んだ。よく見れば、相手の顔の輪郭がうっすらとわかる。月子は彼の瞳を見つめて尋ねた。「何か言いたいことがあるの?」以前はあんなに近かったのに、今では言葉ひとつを選ぶのにも探り合いだ。隼人が何を口にするのか、まったくわからない。ちょっとした言葉のすれ違いが、お互いの心を深く傷つけてしまいそうだった。月子は、そう問いかけることしかできなかった。すぐに隼人の声が返ってきた。「月子、お前に言いたいことは山ほどあるんだ。でも、ありすぎて何から話せばいいのかわからない」懐かしくなるほど優しいその声色を聞いて、月子の声も少しだけかすんだ。「それなら、一番大事なことから話して」でも、隼人は答えなかった。代わりにこう問いかけてきた。「お前は、俺に何も言うことはないのか?」月子は、途端に言葉に詰まった。すぐに隼人のもう片方の手が、そっと月子の頬に添えられた。温かい手のひらの温度が伝わってきて、その手がわずかに動くたびに、月子にはぞくっと鳥肌が立ち、体はどんどんこわばっていくのだ。「本当に、何も言うことはないのか?」隼人の声はとても静かだった。さっき感じた、よそよそしい男のような危険な雰囲気がまた月子を襲った。その瞬間、月子はもし何も答えなければ、きっと獲物になったみたいに、彼に飲み込まれそうな気がした。そう思いつつ、月子は、重々しく口を開いた。「……ある」「なんだ?言ってくれ、聞きたい」隼人の声が、月子を促す。月子はその違和感を振り払うように、小さな声で尋ねた。「別れてから、元気にしてた?」隼人は優しく問い返した。「お前は?元気だったか?」今まで、辛くなかったと言えば嘘になる。でも、月子は必死に平静を装っ
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