───フロントの方々に見送られてレストランを出た私たち。泣きすぎて顔面崩壊をしているであろう私は外に出る前に化粧直しをさせて欲しかったけれど、光春くんは「別にそのままでいいよ」と手を取って繋いで歩き始めるもんだから諦めた。せっかく可愛いワンピース着てるのに顔が・・・と思った時に「そういえば、」と口を開く。「愛衣さんからの伝言が忘れてた」「伝言?」「うん。ちゃんと約束守ってねって」そう告げると「はいはい」と光春くんは適当に流す。「何の約束したか、聞いてもいい?」「あー・・・・貴臣との食事会のセッティング」「貴ちゃん・・・?」首を傾げると「あの人、昔から貴臣が好きなんだよね」と面倒臭そうにため息をついた。その約束に「うそ?!そうなんだ・・・!」とテンションが上がった私の声はエレベーターホールに響く。「ちょっ・・・声抑えなよ」「ごっごめん」光春くんの話によるとスタイリスト時代から愛衣さんは貴ちゃんのことが好きだったらしい。アパレルブランドが軌道に乗って自分に自信がついたからと貴ちゃんにアタックを開始しようとしたものの、何と彼女は好きな人を前にすると緊張してパニックになるらしいのだ。「えぇ意外だなぁ。すっごく愛衣さん、仕事も出来て綺麗で格好良い人ってイメージなのに」「だからまずは俺が仲介しろってさ」「瑠衣くんはこのこと知ってるの?」「多分ね。でも弟には相談し辛いんじゃない」確かにそうかもしれない。そう思っていたらエレベーターが到着する。光春くんは先に私を乗り込ませてから後に続く。「私、自分の家の鍵光春くんの家に置いてきちゃったから一回寄らないと」外に出たら一気に現実に戻っちゃうなぁと名残惜しさを感じていると、私に背を向けていた光春くんはエレベーターのボタンを押した。「え・・・?」唯一『22』のボタンが点灯しているのを見て私は目を丸くする。私たちは1階の入り口から入って、ここまで来たはずだ。驚いて斜め後ろから光春くんの顔を見上げると、彼はスーツのポケットからとあるものを取り出したのだ。「まだ帰すなんてひと言も言ってないけど」それは紛れもなくカードキーだった。まさかと声が出ない私を見てイタズラが成功したかのように笑った光春くんはキスをする。「直前だったからスイートは取れなかったけど」 ───それはまた特別な日にね。宿泊する部屋に入ってか
Last Updated : 2025-07-11 Read more