ソファ座ってて。と言われた通りに、3人掛けの革張りのソファに腰をかけた。サイドに毛布が無造作に掛かっていて、もしかしなくても天音くんはココで昨日は寝たのだろうと察する。来客なのに大きいベッドを取ってしまって申し訳なかったな。そうぼーっと思いながら沈むソファに身を沈めていると、目の前のローテーブルにことりとマグカップが置かれる。「はい。熱いから気をつけて」「ありがとう天音くん」お礼を告げてマグカップを手に取る。モノクロの部屋に浮いている薄いピンク色のこのマグカップは少し前に天音くんが私専用にと買ってきたものだ。聞けば2個セット割引になったらしく、自分の水色のマグカップと一緒に買ったらしい。水色なんて彼にしたら珍しいチョイスだと思ったが、今思えば天音くんのイメージカラーは青である。手帳だったりキーケースだったり、確かにちょこちょこ青色の小物を持っていたことを思い出す。「今日が土曜日で良かった・・・。天音くん、今日仕事は?」「午後から撮影。それだけだから今日はゆっくりするつもり」来週からまた忙しくなるから。そう言いながら私と一人分の距離を開けて隣に座った。そうだそうだ、たまには休め。休める時には休んだ方がいい。なんて思いながらゆったりとコーヒーを飲んでいるが、朝一から家に入り浸っている私はかなり迷惑に違いない。「ごめんね。私が朝から入り浸っちゃって」「迷惑だったら昨日タクシーに押し込んででも帰したよ」「今度から外に放り投げてもらっていいから」「は?できるわけないでしょ。もっと自分を大事にしたら」私は苦笑する。もっと自分を大事にしたらって、出会った頃に私が天音くんに思っていたことである。まさかここにきてブーメランを食らうとは。そう思うとなんだか面白くなってきて、肩を揺らすほどに笑ってしまう。「何で笑ってるの」「んーん。何でもない。ちょっと思い出し笑いしただけ」そして私はその場から立ち上がった。突然動いた私に天音くんは驚いた様にこちらを見る。「お腹空かない?朝ごはん作るよ」せっかくのゆっくりできるお休みの日。そんな日こそ美味しい朝ごはんを天音くんには食べて欲しい。そこまで彼の為に動く理由は、もうお節介だけの理由じゃないことは薄々感じ始めていた。───以前よりも充実した冷蔵庫の中。時間がある時には自炊にもチャレンジしているみたいで、卵とベーコンは
Last Updated : 2025-07-11 Read more