特別に俺が取っておいてあげてもいいけど。と、どこからか聞こえてきたが、私自身は新選組題材の舞台にテンションが最骨頂に盛り上がっていた。 これはきっと殺陣が間近で観れるチャンスである。あれやこれやが実際に見れるかもと思えば、正直天にも昇る気分だ。あ〜もう無理、沖田総司尊い。 とんでもない情報を貰ってしまったと思ったのと同時に、天音さんに恩を売っておいてよかったと過去の自分に拍手した。ちゃんと授業のノートを取った過去の自分に拍手。 「絶対にチケット戦争に勝利してみせます!」 「だから俺が特別に、」 「あっそうだ天音さん!お腹空いていませんか?」 「お腹?・・・まぁ空いていないわけじゃないけど」 そう聞いて私はふっふっふっとここぞとばかりに、鞄から特製おにぎりを取り出した。 出てきたものに天音さんは「おにぎり?」と不思議そうな目で、2つの三角を見つめる。 「天音さんいつもゾンビ見たいな顔しているので、良ければ食べて下さい!教えてくれたお礼です!」 「・・・アンタさ、よく面と向かってそういう事言えるよね。一応俺アイドルやってんだけど」 「健康にはまず栄養補給ですからね!」 本当はバイトの前に食べようと思っていたおにぎり。きっと天音さんは食堂や飲食店に行ったところで、ゆっくり食べることは出来ないだろう。どうしても視線を気にしてしまって休憩が休憩にならなはずだ。 そう思って、彼におにぎりを献上してみた。なにぶん、今の私は機嫌がとても良い。 「あっもしかして手作りのものって事務所から禁止されてたりします?」 「いや、そんなことないけど」 今日は、特製焼きおにぎりである。 水と一緒にしょうゆとだしとみりんを加えて炊き上げたもの。炊き上がった時点でおこげは出来ているが、さらに今朝フライパンに並べてごま油で焼いてきたのだ しょうゆとごま油の香ばしい香りが、冷めても香ってくる。 「別に無理しなくていいですからね。食べなくても私の胃に入るだけですので」 「いや、食べる」 天音さんはおにぎりをひとつ手に取って、食べ始めてくれた。 せっかくだったら海苔も付けていたら良かったと、私はどんどんなくなっていく焼きおにぎりを見つめる。どうやら口に合わないわけではないらしい。 その様子を眺めながら、ふと疑問
Last Updated : 2025-07-09 Read more