「えっえっ本当に?!いいの?!」「俺に感謝しなよ。リピートアフターミー、ありがとう大好き光春くん、はい」「ありがとう!大好き!光春くん!」「ヴッ」「えっ何?!心臓発作?!」なんて茶番が数分前。何かとんでもないことを口走ったような気がするような気がしないような。しかしそんなこと考えている暇はない。彼が心臓を抑えて何かに悶えている様子だが、そんなこと気にしている暇はない。とにかく、私はそれどころではないのだ。「言ったでしょ。用意してあげてもいいけどって」「あ、天音くんと・・・友達になって良かった」「青山にとって俺の利用価値ってそれだけなの」滅相もございません、天音光春は世界で1番の良い男です。もう足を向けて寝ません!と誓うと「そこまでしなくていいから」と、さすがの彼も若干引いた様子でこちらを見ていた。 それはそうと今大事なのは自身のプライドよりも、深々と腰を折った私の頭上にぴらっと掲げられた一枚の紙切れである。その価値がどれほどのものか、数週間前に思い知ったところだった。『舞台 新選組~誠が導く我らの道~』天音くんの手にあるそれは、間違い無く私が抽選で外れた舞台のチケットだった。まさにゴクリと喉から手が出るほどの代物である。だって誰のファンクラブにも入っていない私は一般先行で応募するしかなくて、第3希望の日時まで1週間も吟味したのに、結果は呆気なく落選。海も渡る気満々だったのに、神様は私に恵んでくれなかった。キャスト先行がどれほど有利なものか思い知らされたばかりだったのだ。チケットをご用意できませんでした、と連絡が来た時はその悔しさから珍しくジャンクフードを爆食いした。その後の胃もたれも免れなかった。その後数日肌が荒れて、それを見かねた天音くんが高級化粧水をプレゼントしてくれたのが懐かしい。さらにあの天音くんから「ちゃんとしたモノ食べなよ」と言われた始末だ。少し前までTHE不健康生活の猛者だった癖に、と言い返したら喧嘩になった。もちろん言い負かされて終わったけれど。「本当に良いの?後で高額請求したりしない?」「人の善意を何だと思ってるの」「いやぁ、だってコレ、転売サイトで高額取引されているんだよ?」どうにかして手に入れたくて、チケットの流通サイトを覗くとその金額に驚いた。下手したら桁が1つ多いのもあって、泣く泣く諦めたのだ。そんなチケットが
Last Updated : 2025-07-11 Read more