All Chapters of なぜか人気俳優に飼われています〜消えるはずだった私がまさか溺愛されているなんて〜: Chapter 91 - Chapter 100

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人気俳優の溺愛/やがて春が来るように

 皆酔っ払って、リビングで眠ってる。 私と昴生はほろ酔い気分で、ベランダに出た。 夜風が気持ち良い。私が外に出ると昴生はすぐに私に上着をかけてくれた。 「侑さん。ずっと言おうと思ってたんだけど」 「どうしたの?改まって。」 なぜか緊張していそうな昴生の手を取る。 いつだってこの手は温かい。 そう思って逞しい手を眺めていたら、逆に手を取り上げられて、指に何かがスッとはまった。 キラキラと輝く、シルバーの指輪だった。 多分いくつものダイヤが付いてる。 私は驚き、すぐに昴生を見上げた。 黒髪が風に揺れ、昴生の綺麗な瞳が輝いている。 「昴生、これって………」 「——————侑さん。 俺に一生、飼われるって約束してくれたよね?」 「言ったね…………」 「それなら、俺と結婚しないとだよね?」 「まさか、それってプロポーズ?」 何とも大胆で。昴生らしい。 「私、年上だよ?売れない女優だし。 今はあれでも……この先仕事無くなったらどうするの?」 「大丈夫だよ。社長の俺がそんな事させないし。 それに、もし侑さんの仕事が無くなったとしても。 それはそれで構わないよ。 その時は侑さんは、ただひたすら3食昼寝をして、ブクブク太って、どうしようもなくなれば良いいんだから。」 ……それ、他の人が聞いたら絶対いじられてるって思うだろうね。 「醜い私でも愛せると?」 「当たり前でしょ。 だってどんな侑さんも、俺が愛する侑さんなのに変わりはないんだから!」 そう言って昴生は嬉しそうに笑う。もう返事を聞いたみたいに。本当に子供みたいに。 「私を一
last updateLast Updated : 2025-08-13
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜イン.ハリウッド

  私⃞だ⃞っ⃞て⃞嫉⃞妬⃞く⃞ら⃞い⃞す⃞る⃞よ⃞ 私は今、強烈に緊張していた。 と言うのもこの日私は日本を抜け出し、アメリカのカリフォルニア州、ロサンゼルスにいるからだ。 一体なぜそんな場所にいるのかって?それは——— 「侑さん!わあああ!すごく綺麗です!まるで本物のハリウッドスターみたいです!」 一緒にホテルに滞在していた鳥飼さんが、会場に向かう少し前、ドレス姿に着飾った私を見て、やや興奮気味に叫んだ。 「鳥飼さん。本当に?その、大胆じゃない?」 私が戸惑うのも無理はない。 今私が着ているのは、ブランド品の黒のロングドレス。だが、それだけならむしろ地味な色のはず。 しかし実際は、シンプルながらも随所に特徴があって、背中は広く開き、片足の方は大きくスリットが入っている。 さらに左肩には吊り紐がわりのリボンが付いていて、もう片方は大胆にも肩が露出している。 高価なプラチナのピアスやネックレス、ブランド品のバッグに、シックなピンヒール。 これだと、どう考えても、目立つ。 まあ確かに、私は派手な色よりかは黒いドレスの方が好みだけれど…少し派手すぎない? 「何言ってるんですか!今からレッドカーペットを歩くんですよ!このくらい、いえ、もっと派手でもいいくらいです!」 興奮気味に鳥飼さんがそう言う。 「そう?鳥飼さんがそう言うなら…」 「そんな事より急ぎましょう!もう表にリムジンが停まっていますよ!」 ぐいぐいと鳥飼さんに背中を押され、ホテルのロビーから玄関前に出る。 外にいる警備の人に案内されて、リムジンに乗り込む。 「綿貫さんは先に会場に着いているそうです。私も後からついてきますので、侑さん、気をつけて行ってらっしゃい!」 笑顔で鳥飼さんに送り出され、リムジンが走り出すと、私は緊張を解くように窓の外を眺めた。 「昴生と別行動なのは少し、寂しいな…」 独り言を呟き、見慣れないロサンゼルスの街中をぼんやりと眺めた。 「キャアアアアアッ!」 会場手前。すでにここからでも外には人が溢れていて、物々しい雰囲気に包まれていた。 どこを見渡しても人、人、人だらけ。様々な国の人達が集まってる。 皆それぞれ、お目当てのスターが到着して車から降りてくるなり、歓声を上げる。日本では見られない、すごい熱気だ。 「すご…」 こんな中を歩
last updateLast Updated : 2025-08-14
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜イン.ハリウッド

 実は去年出演した我妻監督のあの映画。 私が殺人鬼を演じた役が、何とアカデミー賞の助演女優賞にノミネートされたのだ。 そのため正式に今回授賞式に招待され、今まさにレッドカーペットを歩こうとしている。 しかも、今回は何と我妻監督も脚本賞に一緒にノミネートとされているのだ。 さすが我妻監督だ。昔から才能に溢れた方だったから。 一方の私はというと、海外では全く名前が知られてない俳優だ。 でも今この場にいる奇跡、私を支えてくれた皆に心から感謝している。 もう二度と、こんな華やかなスポットライトを浴びるなんて夢にも思ってなかったから… それもこれも、全部。愛しいあの人のおかげ。 やがて運転手がドアを開ける。顔を上げ、イメージトレーニング通りに微笑しながら降りる。 その場に打ち合わせ通りに我妻監督が立っていて、降り立った私にエスコートの手を差し出してくれた。 「侑。今夜も完璧だな。」 タキシードを着た、正装着姿の我妻監督が、にこりと笑ってくれる。 「そうですか?ありがとうございます。」 彼の手を取り、レッドカーペットを歩こうとすると。 「アガツマ!!」「great!!」 「ユウー!!ユウー!!」「You’re stunning!」 と、金属製のバリケードの向こう側にいる数人の外国人が叫んだ。 「ほお。侑もすっかり有名人じゃないか。」 どこか監督は得意げに笑う。 「まさか私の名前まで呼ばれるなんて。」 「相変わらずお前は、自己肯定感が低いなあ。いいか、侑。堂々としていろよ。お前は世界に認められてもおかしくはない俳優なんだから。」 「…はい。」 我妻監督はさり気なく褒めてくれて、レッドカーペットの上を、私を慣れた様子でエスコートしながら歩き始めた。 私達の先には、本場のハリウッドスター達が勢揃いしていた。 どこもかしこも煌びやかで、スポットライトやカメラのフラッシュが飛び交い、目が眩むほど華やかだ。 ファン達の歓声、メディアの盛況ぶり。 こんな一大イベントに、まさか自分がいるだなんて、数ヶ月前なら思いもしてなかった。 日本のマスコミも来ていて、インタビューを受ける。 「常盤さん!!今のお気持ちは!?」 「常盤さん、こっち見てください!笑顔お願いします!」 以前とは比べ物にならないくらい、メディアの反応は違っていた。久しぶ
last updateLast Updated : 2025-08-15
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜イン.ハリウッド

 眩しいスポットライトにも負けないくらい、美しい容姿をした彼。 サラッと艶のある黒髪が揺れ、焦茶色の瞳が輝いている。整った顔立ち。しかもどこか日本人離れした雰囲気。 我妻監督と同じく黒の上品なタキシード姿なのに、華やかなで、エレガントで、かつ大人の色気が漂っている。 他のハリウッドスター達にも決して劣らない。 私の自慢の彼———。 「昴生。」 「侑さん。似合ってますよ、そのドレス。すごく。」 昴生はそう言いながらフワッと笑い、私の手を取り、その隙に囁いた。 そう。芸能プロダクションの社長でありながら、自身も俳優業を続ける昴生。彼もまた、別の映画で主演男優賞にノミネートされているのだ。 「あなたが買ってくれたものだからね。」 彼の私を見つめる瞳が熱いので、急に恥ずかしくなって視線を逸らす。監督も私達の関係を知っているので、和やかに笑って昴生と挨拶をした。 「そうでしょう?俺好みの…ちょっとセクシーなドレスですから。」 相変わらず昴生は、こんな場所にも関わらずとんでもない事を口にする。監督も苦笑い。 だが確かに今回、私が着飾っているもの全て、昴生が用意してくれたものだった。 一体いくらかかったのかと聞いても答えてくれない。ただ、「頭から足の先まで、全て俺の好みにしたいです。」とだけ。 そう言うところ、昴生らしいと言えば、らしいけれど。 「さあ、行きましょうか。侑さん。」 たくさんのフラッシュが向けられる中、私達はゆっくりと授賞式の会場となるドルビーシアターへと入場した。  ハリウッドでの滞在予定は2泊3日。 本当はもっと長くいたかったけれど、昴生の仕事が忙しく、また私も新しい映画の撮影があるためだ。 近郊のホテルにもう一泊して、明日の飛行機で帰る予定。 私達は残念ながら受賞とはならなかったけれど、それでも本当に良い思い出ができた。 鳥飼さんは私のマネージャーとして同行。我妻監督やその妻、スタッフなども同じホテル内に泊まっている。 「侑さん、食事は綿貫さんとするんですよね?私は、我妻監督達と一緒に、ホテルのバーで美味しいお酒を飲みに行ってきますね!それではごゆっくり〜」 私と昴生の仲はすっかり公認となって、みんな冷やかすようにバーに向かってしまった。 昴生の泊まっているホテルはこの近くにあり、もうすぐ彼がこちらに来ること
last updateLast Updated : 2025-08-16
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜イン.ハリウッド

 こうも私が変われたのは、本当に昴生のおかげ。 あれから死にたいだなんて一度も思わなくなった。 それよりも、結婚式はどんな風になるだろうかとか、その先の新婚生活はどんなだろうかと、ワクワクするような未来のことばかり考えている。 私の誕生日に合わせての結婚式。本当に楽しみ。 まさか私が人気俳優の綿貫昴生と結婚するだなんて、一体誰が思っただろう。 だが、待ち合わせした場所にはまだ昴生の姿がなかった。 なるべく人目につかないよう、客室がある階層にしたのだが。周りは静かだ。 そのエレベーターホール付近で人な話し声がした。 気になって近づいてみると———。 「だから、———言ったじゃない!」 フワリと、長く美しい、カールした金髪の髪が揺れる。 そこにいたのは、今夜、主演女優賞を受賞したハリウッドスター「キャスリン・カヴァデイル」と、待ち合わせしていた昴生の、二人だった。 「…昴生?」 「侑さん?」 どうしてあのキャスリンと、昴生が一緒に? 「アナタが、コーセーのパートナー?」 まるで映画の世界から飛び出してきたかのような美貌のキャスリンは、大胆なスリットドレス姿でなぜか昴生に接近していた。 しかしキャスリンは私を見るなり、決してテレビやメディアでは見ないような険しい顔をして言った。 「ふん!大したコトないわね!」 え……? 感想は、日本語上手だなとか色々あったけれど、そんなことどうでもいいくらい罵られたのが分かる。 どうして私がキャスリンに睨まれてるの? 訳が分からず、呆然としていると。 さっきまで向こうにいたはずの昴生がいつの間にか隣にいて、私の右手を取ったのち、キスをしてキャスリンを冷たく見おろした。 「??」 「キャスリンさん。失礼では?俺の侑さんは、他の誰も敵わない、素敵な女性ですよ。」 天下のハリウッドスターにも堂々とたんかをきる昴生。やはり只者ではない。 「…!コーセー!そんな人より、ワタシのほうがイイでしょ!?年齢だっておばさんじゃない!」 確かに、キャスリンはまだ二十代後半のはず。 ともかく、なぜ昴生とキャスリンが睨み合っているのか。 「分かってないですね。キャスリンさん。侑さんのこの大人の魅力がいいんじゃないですか。それに比べてあなたは」 ハッ、と昴生はキャスリンを冷たく一瞥し、私の肩を強く引き寄
last updateLast Updated : 2025-08-17
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜イン.ハリウッド

 *** 薄暗くした部屋。明るいシェードランプだけが、二人を切なく染め上げる。    「はあ……、っ、も、昴生、だめ。」 「駄目じゃないですよ?侑さん。一瞬でも俺を疑った罰です。ほら、もっと足を開いて。」 ロサンゼルス郊外のホテルのベッドで、もつれ合う私達。  さっきのキャスリンの件。  訳が分からず問い詰めると、昴生が怒り出して…部屋のベッドに押し倒され———今に至る。  すごくご機嫌斜めだ。  そのせいか、昴生はいつもより私を荒々しく抱いている。  粘着質に。よりじっくりと時間をかけて。 「だ、だって。キャスリンのあのセリフっ、どう考えても昴生が好きだってことでしょ?〜〜〜っ、あっ!!だめっ、昴生っ」 話してる途中にまた昴生が悪戯っぽく笑い、足を持ち上げて、私の奥深くに入ってくる。  微かに照明の灯りを受けた昴生の髪は湿り、額には汗が流れていた。  相変わらず逞しい体。人気俳優に抱かれてるのが今だに信じられない。 「駄目じゃないでしょ?侑さん。こんな時、なんて言うんだっけ?」 時々敬語とタメ語が重なる。こんな時の昴生は本当に意地悪だ。  さっきから、抗いようのない甘い快楽を何度も与えられて、すでに何度か達してるのに。  まだこんなに意地悪されるなんて。 「だ、だって。……っ、本当に何もないの?あのキャスリンと。」 「だから、さっきから言ってるでしょ。あの人とは何でもないって。  一方的に押しかけられて、好きだとか告白されて、本当に迷惑だったんですから。〜、気持ちいいのはここですか?侑さん。」 昴生は相変わらず継続して笑い、人の一番弱い部分を何度も執拗に責めてくる。  体が彼に貫かれ、快感の波が押し寄せてきて、もう死んでしまいそう。 「〜〜〜!!っ、あっ、昴生、もう私」    「また先にイッたら駄目ですよ、侑さん。  これはお仕置きなんですから。」    「お仕置きって…だって、っんん!」 「何です?まだ何か反論があるんですか?」 「だって、あんな大物のハリウッドスターに迫られたら、誰だって……っ!  昴生が、彼女に心変わりしたらどうしようって……!」 「侑さん。それって?」 昴生はピタッと動くのをやめ、なぜか今度は嬉しそうに瞳を輝かせ始める。  相変わらず誘導尋問が上手い男だ。私の方が年上なの
last updateLast Updated : 2025-08-18
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜ハリウッドスターの襲来

 こ⃞の⃞勝⃞負⃞、⃞絶⃞対⃞負⃞け⃞ら⃞れ⃞な⃞い⃞。⃞ どうして彼女が、私の目の前にいるんだろう。 日本に帰国した私を待っていたのは、あのキャスリンだった。  事務所の控え室。  お忍び風の格好で私の前に座っているキャスリンは、不機嫌そうに腕を組んでいた。 「ふん!本当は顔見たくなかったけど!」 相変わらずキャスリンは私に対して横柄な態度だった。  顔を見たくないなら、こなければいいのに。 控え室の前には、事務所の俳優やスタッフ達がいて、何事かと聞き耳を立てている。  なんせ相手は本当にお忍びで来日した、あのハリウッドスター、キャスリンなのだから。  聞いたところによると、キャスリンはハーフで、祖父が日本人なんだとか。  そのため日本にはよく遊びに来ていて、日本語も堪能だった。 とにかく変な噂が立つ前に、なるべく穏便に、早めに帰って頂かなくては。 「あの。ご用件というのは。」    「別れて。」 「え?」 「だから、コーセーと別れなさいって言っているのよ!分かった!?」 「分かりません。なぜ私と昴生が別れなければいけないんですか?」 久しぶりに人の意見に真っ向から対抗する。  だってそうだろう。なぜもうすぐ結婚する昴生と私が別れなければいけないのか。  納得いかなくて当然だ。久しぶりに私は唇を尖らせ、ううー!と唸るキャスリンを睨みつける。 「ふん…!だったらいいわ!侑!私と勝負しなさい!!」 「え……?勝負?」    「ふふん。何よ?自信がないの?」 キャスリンは私よりも年下なのだが、人の事を呼び捨てにして、美しい金髪の髪をかき上げ、自慢げに長い足を組み直した。    相手は、アカデミー賞を受賞した大物スター。  何の勝負か、全く見当もつかない。  同じ俳優として、この人を見下したような態度もどうなのかと思うけれど、恋人と別れろと言われて、黙っているわけにはいかない。 「分かりました。絶対に貴方には負けませんから。」 真正面からキャスリンに啖呵を切った。  少し前の自分なら、こんな風に人の喧嘩を堂々と買うなんてあり得なかったかもしれない。  だけど、甘い時間を過ごしたあの時に、昴生が私に言ってくれた。 『確かに、嫉妬してくれる侑さんも可愛くて好きですけど。  ———でもやっぱり、侑さんにはも
last updateLast Updated : 2025-08-19
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜ハリウッドスターの襲来

 勝負の場所は、とあるプライベートスタジオを借りてやる事になった。 お忍び中のハリウッドスターと私が火花を散らし、対決してる、と気づかれたら大変な事になるから。 スタジオには私とキャスリンに加え、キャスリンについてきた彼女のマネージャー、私のマネージャーの鳥飼さん、忙しい昴生の代わりに佐久間さんがついてきた。あとは、このスタジオの管理人。 佐久間さんは念のため昴生に、今こんな事になっているという連絡を入れたらしい。 隠れ家的な雰囲気のスタジオには、撮影用の機材なども揃っていたし、キッチンもある。 「じゃあ、さっそく!第一のテーマは…即興演技バトルよ!」 スタジオに着くなり、キャスリンは休憩もせずに、第一の勝負内容を発表してきた。 確かに、私もキャスリンも役者だ。 当然といえば当然のデーマ。キャスリンはよほど自信があるのか、「フフ!」と勝ち誇ったような笑みをこぼした。 審査員はそれぞれのマネージャーと、公正をきたすために、管理人にもお願いした。皆には忖度抜きで審査するように、と念を押してある。 「いい?この即興演技のテーマは…『別れ』よ!最後の別れ、親しい人との別れなら、家族、恋人、友人の誰を想定しても、どんなシチュエーションでも構わないわ!親しい人との別れを、言葉と表情だけで表現するの!制限時間は5分よ!」 「分かった。」 相手はアカデミー賞を取ったハリウッドスター。でも私だって、長年役者をやってきた矜持がある。 それにこの勝負には昴生がかかってる。 恋人と別れろなんて、冗談じゃない。私のプライドに賭けて、絶対にキャスリンに勝ってみせる。 先攻、後攻はジャンケンで決める事になり、一番手はキャスリンに。最初の印象が審査員の心を掴むと、後攻はやりにくくなるだろう。 さっそくキャスリンの演技が始まった。 四人が見守る中、キャスリンはこれまでの天真爛漫でわがままな女性像から一変。 彼女は、空港のターミナルで遠くへ旅立つ恋人との別れを演じた。 キャスリンはハリウッドスターらしく、情熱的でダイナミックな演技を披露。架空の恋人に向かい、叫ぶように訴える。 「あなたがいない人生なんて、考えられない!!」 身振りや手振りを大きく使い、感情を爆発させた。 涙を流しつつも、声のトーンや激しい動きで劇的な別れを演出。その迫力に、皆が息を飲んだのが
last updateLast Updated : 2025-08-20
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜ハリウッドスターの襲来

 正直、さすがだと思った。 悔しいけど、これがアカデミーの主演女優賞を受賞した、ハリウッドスターの実力。 制限時間はあっという間に終わり、演技を終えたキャスリンは勝ち誇ったように笑みを浮かべた。 「フフ、どうだった?侑。さあ、次はあなたの番よ!」 キャスリンは満足気に、空いた椅子に腰掛けた。 …私だって。ぐっと気合いを入れ、一歩足を踏み出す。 《別れ》。そのテーマほど、私に相応しいものはなかったかもしれない。 これまで私は様々な別れを経験してきた。家族や、恋人…聖との辛い別れ。 だけど私が生きてきた中で最も印象的で、最も辛かった別れがあった。バチっと目を見開き、私はキャスリンに向かっていった。 「私は…親友との別れを演じます。病院のベッドにいる彼女と、最後の別れを。」 ———もうずっと遠い昔の記憶。けれど決して忘れることはできない、記憶。 さりげなく目を閉じ、私は病院のベッドに横たわる《親友》を見つめていった。多くの言葉は語らず。 「…また、桜を見に行こうね。」 私は震える声で呟き、目で彼女を必死に捉える。瞳が潤み、頬に一筋の涙がこぼれた。悲しげに眉を顰め、それだけではない複雑な表情で彼女に訴える。 「………また、一緒に……っ、桜を……」 絶妙な間の空け方。様々な感情を表した表情で、彼女との別れを演出。 涙が落ちる瞬間に、親友の手をぎゅっと握りしめた。 ———私は彼女に、昴生の姉、渉を思い浮かべて演技をしたのだ。 親友との別れは、ただ悲しいだけではなかった。彼女の痛み、彼女の苦しみを分かってあげられなかった後悔や、自責の念。 それらが自然と私の演技に結びついたのだ。 渉と同じ、《死にたい》という思いを経験した私だからこそ、この切ない別れに全ての感情をぶつけられた。 「キャスリンさんの演技はダイナミックで、まるで映画を観ているようでした。」 と、佐久間さんがキャスリンの演技を評価。管理人も頷いた。 「私は、忖度抜きで、侑さんの演技すごいなって思いました!」 「ソウ!侑の演技に、私もナイテしまったわ!あ、ごめん、キャスリン!もちろん、あなたの演技もヨカッたのよ!ダケド」 何とキャスリンのマネージャーが、カタコトな日本語ながら、私の演技を評価。 「そうですね。どちらも比べようが無いほど良かったですが、あえて言うなら…常盤
last updateLast Updated : 2025-08-21
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人気俳優に溺愛されています〜after story〜ハリウッドスターの襲来

 第二の勝負のテーマは《料理対決》。 あらかじめ用意してあった食材を使って、私とキャスリンはそれぞれ得意料理を作った。 「侑!アナタもなかなかね!でも、ここで私も負けるわけにはいかない!」 「…私だって負けませんよ。」 隣り合うキッチンのシンクの上で、それぞれ料理を作りながら、お互いバチバチと火花を散らす。 キャスリンは横目で、私を挑発するように何度も話しかけてきた。 「コーセーは、一体アナタのどこが良かったのかしら?」 「私と昴生には、キャスリンさんには分からない、深い絆があるんです。」 落ち着いた口調で、私はキャスリンを一蹴する。 「私だって…!!私だって彼のコト、真剣に想ってるのよ!!」 「キャスリンさんは、一体どこで昴生と知り合ったんですか?」 相変わらず私は無表情で、しっかり手だけは動かしつつ尋ねた。あまり、何かを同時に作業するのが得意では無いからだ。 もし相手がキャスリンじゃなかったら、目の前でフライパンを揺らし、全力で料理を作る事に神経を注いでいただろう。 けれど今回ばかりは別。キャスリンがなぜ昴生に惹かれているのか、いつ彼を好きになったのか、すごく気になっていたから。 「コーセーとは…直接会ったのは今回が初めてよ!! 彼を見たのは、ズイブン前… 私、コーコーセーの頃、すごく太っていて周囲から虐められてたの。 けど、コーセーがテレビで言ってた言葉に、すごく励まされたのよ。何かのバラエティ番組だったと思うわ。」 キャスリンが高校生?その頃だと、昴生はまだ今みたいに売れてなかった時期だ。 「その番組に、ちょっと可愛くない芸人の女性が出てたの。司会者とかが、彼女に対して『ブスは見た目で判断されやすいよね?』『ブスの大会だと、君は一位じゃない?』とか腹の立つこと言ってたわ。 もちろん笑いを取るためなんでしょうけど、見ていて気持ちのいいものじゃなかった! それで司会者が昴生に尋ねたの! 『昴
last updateLast Updated : 2025-08-23
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